廊下を歩く。
「なあ、結局咲夜の用事は何だったんだ?」
「別にもう済んだわ。」
難しい表情を浮かべて、咲夜は答える。
何を考えているんだ?
「私はもう寝るわ。貴方も早く寝る事ね。」
「りょーかい。」
咲夜は階段を上がっていく。
「さて、どうしようかな〜。」
正直、明日が楽しみで寝る気になれないんだよな〜。
そういえば、庭は荒れたままだったな。
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庭に出る。庭の中心は俺の「
丁度いい。転がっている石を持つ。他に無数の転がっている石を集めて座る。
「石割り」するか。ついでに庭を平す事もできるし。
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ガシャン、ガシャン、ガシャン
石割りの数が600を超えたところで美鈴がやって来た。
「何やってるんですか?」
「石を砕いてんだよ。」
「なるほど、見ればわかりますよね。私も手伝いましょうか?」
「いや、いいよ。これ修行だから。」
俺は美鈴に構わず、「石割り」を続ける。
「これが修行なんですか?」
美鈴はジロジロ見てくる。
まあ、不思議だろうな。
すると何かに気付く美鈴。
「あ!シャーキャさんの持ってる石は壊れてませんね。」
「さすが、美鈴。気付くの早いね。」
「私も真似してみていいですか?」
俺は石を350ほど掻き集める。
「じゃあ、残りをやってみたらいいよ。」
念能力者じゃない美鈴には無理だけどね。
「では、早速!」
美鈴は石を持って、他の石にぶつける。
石は簡単に砕けた。2つだが。
「ありゃりゃ。どっちも壊れましたね。意外と難しいですね。どうやってるんですか?」
「ん?秘密。」
「ええ〜、教えてくれてもいいじゃないですか〜。あ、なら!これができると何ができるんですか?」
「それも秘密。ネタバレするなら、美鈴にはどんなに努力してもできないよ。できたとしても、それは俺のやってる事とは違う事をやってるだけ。」
「そんな〜。」
「それよりさ。美鈴ってなんで紅魔館に来たんだ?」
「私ですか?実はここの妖怪が大層強いって噂を聞いて、力試しにお嬢様に挑んだのがきっかけですね。見事に返り討ちにあって、その後にお嬢様のお眼鏡にかなって雇ってもらった訳ですよ。」
なるほど、俺と概ね同じパターンだ。なら、
「美鈴は妹様の世話をした事ある?」
すると美鈴の顔が暗くなる。
「それを知っているって事は、明日妹様の元に行くのですね。」
「ああ、だからもし何か知ってるなら教えてくれよ。」
だが、美鈴は俺の肩を掴んで小声で俺に語り掛けた。
「シャーキャさん、貴方は逃げてください。今なら大丈夫です。責任は私が負いますから。貴方はまだ5歳。だから、」
「美鈴。」
俺はオーラを体から噴き出す。
ドスの効いた声で美鈴に話す。
「勘違いするなよ。なぜ俺が死ぬ前提で話が進む?俺はやりたいんだ。邪魔するな。...............俺を舐めるなよ。」
美鈴は額に汗を浮かべながら険しい表情になる。
「.................わかりました。すみません。」
オーラを引っ込める。
「謝らなくていいよ。心配してくれたんだろ?感謝はする。でも、それなら質問に答えてよ。美鈴はよく妹様の世話をしてるんじゃないの?」
「なぜ、そう思うのですか?」
...........................
「勘だよ。」
「勘ですか。確かに殆ど私が妹様の世話をしています。咲夜さんも一回だけ顔を見るだけならやりました。でも、世話基本的に私が担当です。」
ビンゴ!俺の予想通り!じゃあ、後は適当に情報収集するか。
「なら、妹様の癖とか教えてよ。」
「そうですね。妹様は何をするにしても全力です。手加減がわからず、抱き着いたりするのも、何か掴むのも全力です。ですから、度々物を壊してしまいます。」
「ありがとう。参考になったよ。」
手元を見ると「石割り」が1000個達成できていた。
やっとクリアだ。後は「浮き手」だけだな。
俺は立ち上がる。
俺は館に戻る。
「シャーキャさん!」
後ろから声をかけられる。後ろを振り向く。
「本当にいいのですか?」
「ああ。ありがとう。」
全く心配性だな。まあ俺も生き残れるのかは、五分五分だと思ってるけどさ。
「あ、そうそう。」
これだけは言っておかないとな。
「どうしたんですか?」
「面倒臭くなったから、庭の整地はよろしくー。」
「え?ちょっと、シャーキャさん!」
俺は館に入る。後ろから美鈴の悲痛な叫びが聞こえるけど知らない。
やっぱり、俺の考えは大体合っている。さっきの美鈴の話で確信した。大図書館では難しく考え過ぎたが、お嬢様の妹愛から考えれば、わかりやすい。
まず、お嬢様は妹が何よりも大事。でも、妹は狂気持ち。だから、妹を制御できる従者を探した。そして、お眼鏡にかなったのが、俺や美鈴のパターン。
それとは別にお嬢様は、弱者に手を差し伸べるお人好しな面がある。本当にお人好しなだけなのか、過去に何かあって、それが原因かはわからない。で、その結果仲間にしたのが、咲夜やパチュリー様って事だな。
今回、俺は試練って事で妹の世話をするが、今後世話し続ける可能性が高い。実際、今までは美鈴が殆ど面倒を見ていた。咲夜は顔合わせで済んでいるしね。前者のパターンで従者になった俺は、これからも妹と命懸けの遊びに付き合う事を覚悟しておいた方がいいだろうな。
俺は自室の扉を開ける。
まあ、考えるのはここまででいいや。明日は存分に楽しもう。
「おかえり、シャーキャ。早く寝なさいって言ったのに随分遅かったじゃない。」
咲夜が笑顔で出迎えた。しかし、目が全然笑ってない。
なんで俺の部屋にいるんだ?それにあの雰囲気は一体?それになんで俺はこんなに冷汗をかいてるんだ。
「た、ただいま。」
「ええ、おかえり。で、どこに行ってたの?」
「え?」
「え?じゃないでしょう。どこに行ってたの?」
俺はなんとも言えない圧迫感に狼狽える。
「に、庭掃除。」
「ふーん。私は早く寝なさいって言ったよね。」
親がいない俺にはよくわからないけど、母さんに怒られるってこんな感じなのかな?
「いや、寝る気になれなくて。」
「......................」
「......................」
「はあ、わかったわ。とりあえず、ここに座って。」
圧迫感が無くなって、内心ホッとする。
促されたままに椅子に座る。
すると咲夜は机に紅茶のセットを用意する。
今、時間を止めたのか?
一瞬で現れたカップを見て分析する。
「はい、どうぞ。」
「ん。サンキュー。」
渡されたカップから芳醇な香りが漂う。
「ちょっと貸して。」
俺は咲夜からポットを借りて、カップに注ぐ。
「ほい。」
「...............ありがとう。」
咲夜も席につく。
「...................」
「...................」
「相変わらずの腕前だな。」
「貴方のはまだまだね。」
「そうか?前は認めてもらえたと思ったんだけど。」
「まだまだだわ。」
笑顔の咲夜。
まだまだって言う割にその表情はなんなんだ?
咲夜は白黒の板を取り出し、その上に大小様々な駒を置く。
「チェスは知っている?」
「ルールなら。プレイした事はないね。」
「なら、一方的に弄んであげる。」
本当にいい笑顔してやがるな。
「おいおい、そこは普通手加減してくれるんじゃないのかよ。」
「言う事聞けない馬鹿に手心は加えないわよ。とことん付き合ってもらうわ。」
「はあ、わかったよ。」
「専攻は譲るわ。」
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結局、俺は咲夜に一度も勝てずにこってり絞られた。
「ふふふ。」
「はあ〜。」
俺をボコボコにした咲夜は上機嫌だ。
「さて、私は満足したし片付けるね。」
咲夜はパチンと指を鳴らすと、チェスとティーセットが一瞬で片付けられる。
本当に便利な能力だな。
「じゃあ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
バタン。
さーて、さすがに寝ないと咲夜がうるさそうだな。
渋々、俺はベッドに潜った。