鋼の心   作:モン太

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図書館主従の受難

大図書館。その部屋の真ん中で椅子に座り、机に置かれた水晶を見つめる魔女がいた。

 

「終わった様ね。」

 

「そうですね。彼、無事でしょうか?」

 

「多分、まだ息はあると思うわ。すぐに回収してちょうだい。咲夜が来る前に。」

 

(レミィの言ってた事はこういう事だったのね。確かに、妹様とシャーキャは相性が良いみたいね。良い意味でも悪い意味でも。彼をここに招いたのは、レミィの能力によって導かれた天命かも知れない。でも、あんなやり取りを続けていたら、どちらも持たないわ。仮に2人は良くても、周りは持たない。特に咲夜は耐えられないかも知れない。この映像は咲夜には見せれないわ。)

 

「え、ええ〜。私、彼がちょっと怖いので..............。」

 

「いいから、早く。面倒をかけさせないで。」

 

「ええ!ひどいです、パチュリー様〜。」

 

(彼の繋ぎ止め方は情を抱かせるのが、1番だと思っていたけど。このままじゃ、裏目に出てしまうかも知れない。彼の戦闘意欲を妹様に向ける意味では良いかも知れない。でもその結果、妹様が死ねばレミィが、シャーキャが死ねば咲夜が精神的なダメージを負う。そんな事になれば、紅魔館は完全に分裂、崩壊するかも知れない。この映像を見るに、どちらもいつでも起こり得る感じがするし。妹様とシャーキャを繋ぎ止めれるかも知れないリターンと、紅魔館の崩壊のリスク。リターンに対してのリスクが大き過ぎる。)

 

「いいから、さっさと行きなさい。」

 

「わかりました〜。」

 

小悪魔が大図書館の扉から出ていく。

 

(それでも、レミィは彼に妹様の世話をさせるんでしょうね。ある意味1番狂っているのは、レミィかも知れないわね。)

 

小悪魔の背中を見送って、再び水晶に目を向ける。

 

「あ。」

 

水晶の先で、倒れているシャーキャの前に咲夜がいた。

 

(時間を止めて来たのかしら。)

 

パチュリーはそんな現実逃避しながらも、嫌な予感を拭えなかった。

 

水晶の先で咲夜は、倒れている血塗れの少年を見て、

 

『あ……あぁ』

 

と声にならない嗚咽を漏らした後、

 

『いやぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

絹を裂くような咲夜の悲鳴がこだました。

 

「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 

パチュリーは頭を抱える。

 

「まったく、世話がかかるね。いい加減、私もイライラして来たわ。あとで、こあには制裁を入れようかしら。」

 

そう言いながら、パチュリーは咲夜とシャーキャに転移の魔法をかける。

 

パチュリーの目の前に魔方陣が浮かび、2人の少年少女が転移される。

 

すかさず、眠りの魔法を錯乱している咲夜にかける。

 

ポロポロと眼から大粒の涙を流し、シャーキャを抱いていた咲夜は魔法に抵抗することもなく、眠りにつく。

 

(ついでに馬鹿な従者も呼び戻すか。)

 

再び、転移魔法で小悪魔を呼び戻す。

 

「あれ?パチュリー様?どうして?」

 

「見てわからないの?本当に愚図な従者ね。」

 

パチュリーの絶対零度の視線に小悪魔が凍りつく。

 

(ひえぇ。パチュリー様が怖いです。機嫌がものすごく悪い感じです。)

 

「あなた、咲夜の介抱お願い。」

 

「わ、わかりました。」

 

小悪魔は、咲夜を抱えるとすぐに走り去った。

 

「やっと、静かになったわね。」

 

そう呟き、パチュリーは回復魔法を発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レミリアの部屋。そこに佇む主人は、館全体を揺るがす振動が収まった事を関知していた。

 

結果はどうなったか。

 

結果が気になるなら、自分の目で確かめればいい。だが、レミリアはそうしなかった。彼女自身、どのような結果になっているかわからない。また、その結果をどのように受け入れればいいか、戸惑っているからかも知れない。

 

振動が収まって、1時間。扉からノック音が響く。

 

「............入りなさい。」

 

入って来たのはレミリアの友人の魔女、パチュリーだった。

 

「レミィ。終わったわ。」

 

「.........そう。どうだった?」

 

するとパチュリーは水晶を取り出す。

 

「これを見て、判断して。」

 

そうしてレミリアは水晶のから写し出される映像を見る。

 

映像のスタートはあえて、咲夜とシャーキャのやり取りから写していた。フランの世話をするシャーキャの映像が目的なのだから、カットしてもいい場面だが、パチュリーはあえてレミリアに見せた。

 

(レミィは、シャーキャをフランを御す為の道具と考えている節がある。でも、咲夜にはそれなりの情を抱いている。それは、ここに来る前の咲夜が昔の自分と重なるから。咲夜がシャーキャを必要としているのなら、自然と彼の事も大事にするはず。その上でこれからの事を考えてもらう。)

 

映像は、シャーキャがフランとしりとり遊びをしているシーンに映る。

 

楽しそうにはしゃぐフランの姿をレミリアは、慈愛の表情で眺める。

 

(本当に妹好きね。シスコンもここまで来ると本当に呆れるわ。)

 

そんなレミリアに緊張が走る。

 

水晶の映像は、フランが狂気を発症し始めた様子が写し出されていた。

 

戦いはやがて激しさを増し、フランが眠りについた事で終わった。

 

「ふう〜。」

 

レミリアは気が抜けたのか息をつく。

 

「まさかフランを相手にして、生き残るとはね。」

 

「私はむしろ、妹様が殺されるんじゃないかとも思ったわ。」

 

「...........どちらもあり得たかもしれないわね。」

 

「これを見て、あなたはこれからどうするつもり?」

 

「どうするもなにも、これからも定期的にフランの相手をさせるわよ。」

 

予想通りの返答にパチュリーはため息をつく。

 

「理由を聞いていいかしら?」

 

「確かにリスクは大きいわ。フランが死んでしまったら、彼を殺してしまうと思う。それに私自身も許せなくなる。でも、彼が1番フランに近付けているのも事実よ。」

 

「まあ、気は合いそうね。」

 

「そう言う事じゃ無いのよ。彼は私達にできなかった事を簡単にクリアしてしまっている。」

 

「..........何よ?」

 

「彼は、フランの狂気を受け入れたのよ。」

 

「受け入れた?」

 

「そう、狂気に呑まれたフランにもう一度名前を問い、友達になろうと言った。つまり、彼は普通のフランも狂気に呑まれたフランも、友達として付き合っていくって言ってるのよ。」

 

「..................」

 

「だから、私はシャーキャに賭けてみようと思う。」

 

(レミィは妹様の視点で映像を見るから、何を欲しているかを悟れた。そして、シャーキャは妹様の望むものを咲夜からのヒントで的確についた。咲夜と過ごした3日間。鉄扉の前の咲夜とのやり取り。様々な偶然と奇跡がこの結果を導いた。そもそも、3日間であそこまで仲良くなったのも奇跡。まさしく「運命を操る程度の能力」。どこまでがレミィの思惑通りだったのかしら。)

 

「.........あなたの執念はよくわかったわ。」

 

「パチェ。あんたは彼を恐れすぎよ。確かに戦闘能力は高い。でも、彼にはもう咲夜という枷がある。そして、その咲夜は私に忠誠を誓っている。つまり、シャーキャの反乱はあり得ないわ。これが、私が彼をここに連れて来た全体の理由よ。」

 

「..........はあ、わかったわ。とりあえず、結論が出たから、さっさと彼に伝えてあげなさいよ。」

 

「わかってるわよ。」

 

パチュリーはレミリアの部屋を出る。

 

(レミィ。確かにあなたの考えは正しいかもしれない。でも、1つ大きな事を見落としているわ。)

 

パチュリーは転移魔法を唱える。

 

(シャーキャの中で咲夜の存在が大きくなっている。それは正しいと思うわ。でも、咲夜にとっても彼の存在が大きくなっている。その事に貴方は気付いて無い。むしろ、咲夜の方が彼に依存しつつある節もある。..........はあ〜。なんか私って、最近気苦労が絶えないわね。)

 

パチュリーの姿が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目がさめる。場所は俺の自室。俺はベッドで横になっている。

 

俺は生きているのか?てっきり死んだと思ったけど、また誰かに助けられたか?パチュリー様あたりか。

 

「痛、」

 

起き上がろうとしたが、全身に電流が流れたような痛みが走り、起き上がれない。よく見ると、俺の体は全身を包帯で巻かれていた。

 

なんだよ、これ〜。まるでミイラじゃん。

 

「あ、起きたのね、シャーキャ。」

 

声が聞こえて来た。声の方向を見ると黙々とリンゴの皮を剥く紅魔館のメイド長。十六夜咲夜の姿があった。

 

咲夜の姿を見て思い出す。

 

ーー友達ーー

 

俺が目覚めるまで世話してくれたのだろうか?この包帯も咲夜がやってくれたのか?でも、何より目覚めた時に誰かがいるってのが、前に怪我した時とは大きな違いだな。

 

「咲夜、いつからここに居たんだ?」

 

咲夜は俺の言葉に笑顔で答える。

 

「さっき、リンゴを取って来た所よ。」

 

笑顔で答えていたはずだが、目が笑っていなかった。

 

「えー……と。怒ってる?」

 

咲夜の顔色を伺った俺は、嫌な感じを感じる。

 

「別に怒ってないわよ。でも、全身血塗れだったから、やはり心配なものは心配だから。」

 

少しトーンが低かったので思わず肩を震わせてしまう。

 

人はそれを怒っているというのだ。

 

そう思った俺だったが、有無を言わせない空気に口をつぐんでしまう。

 

そんな俺の困った顔を見たかったのか、俺の顔を見ると、口を押さえながら上品に微笑み、剥いたばかりのリンゴをフォークに刺して俺に向ける。

 

「え.....?」

 

「え?じゃ無いわよ。はい、あーん。」

 

「ふざけんなよ!俺は赤ん坊でも無きゃ、介護が必要な老人でもねーんだよ!」

 

「あら、そう。じゃあ、はい。」

 

咲夜はフォークの持ち手を向けてくる。

 

俺はそれを手に取ろうとする。

 

「いってー!」

 

体を動かそうとすると、傷が引きつって痛む。

 

そういえば、起きる時も痛かった。

 

「ふふふ。無理じゃない。貴方は大人しく私のおもちゃになってなさい。」

 

咲夜は上機嫌に笑う。

 

こいつ、下心隠す気も無いのかよ。

 

「.........ちくしょう。」

 

屈辱の気分を味わいながら、咲夜が剥いてくれたリンゴを口に含み咀嚼する。

 

「どう?」

 

「..........うまい。」

 

「ふふふ。」

 

すると、咲夜が右手を振りかざした。

 

「え?何をしてる?」

 

「約束。」

 

「約束?」

 

「ええ、後でもう1発って言ったじゃない。」

 

そう言うと、笑顔で迫って来る。

 

「いや、俺怪我人だしさ。ちょっと、待って!まじで!いや、俺が悪かったって!」

 

「問答無用!」

 

パシィン!

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

全身に響く痛みに悶絶する。

 

「咲夜!テメェ、こn」

 

このヤロウ!と叫ぼうとしたら、今度は無理矢理リンゴを口に突っ込まれた。

 

「むぐっ!」

 

「はい、暴れない。お姉さんの命令です。」

 

俺は口の中のリンゴをすぐに飲み込む。

 

「だから、2歳しか変わらないって、言ってるだろ!それn」

 

また、リンゴで口を塞がれる。

 

ガチャ

 

「目が覚めた?入るわよ、シャーキャ。」

 

扉が開き、お嬢様とパチュリー様に美鈴と小悪魔も入って来る。

 

俺と咲夜のやり取りを目にして、4人は固まる。そして、

 

「お邪魔だったわね。」

 

ガチャ

 

扉が閉まった。

 

なんだったんだよ。まったく、騒がしいな。

 

すると咲夜が急に慌て出す。

 

「ち、違うんですお嬢様!お邪魔なんかでは、ありません!」

 

咲夜が扉を開けようとしても開かない。

 

「え?え?なんで?」

 

はあ〜。俺は一生こいつには敵わないかもしれないな。

 

「咲夜。」

 

「な、何よ。」

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

扉の向こうでは、パチュリーが扉に魔法をかけ、開けられないようにしていた。

 

理由はレミリアが面白そうと言うものだった。

 

そして、中の様子を水晶で見ていたのだが。

 

「レミィ、どうするのよ。まさか、本当に私達の事忘れらてるんじゃ。」

 

水晶の映像は、咲夜が扉をガチャガチャしていた。だが、シャーキャが何か言ってからは咲夜が再びリンゴをシャーキャに食べさせていた。

 

「で、でも完全に2人の世界に入っちゃったし、この空気で突撃は嫌よ。」

 

「いや〜。若いっていいですね〜。」

 

「美鈴さん、現実逃避しないでくださいよ〜。」

 

「じゃあ、こあ。行きなさい。」

 

「ええ!なんで私なんですか?」

 

「もう一度、お仕置きを受けたいのかしら?」

 

「ひいいいいい。わかりました。」

 

(くっそー。こうなったら..........)

 

小悪魔は扉を開け、勢い良く中に入る。

 

「うおりゃー。リア充死n」

 

小悪魔の額にナイフが突き刺さり、小悪魔は気絶した。

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