「あなたたち、ちょっと街に出て食材とか日用品を買ってきて。」
「何ですか?その適当な依頼は?」
俺と咲夜は大図書館に呼び出された。
「淫魔はどこにいるんですか?あいつをパシらせればいいじゃないですか?」
いつも騒がしい小悪魔がいない
「今、こあがいると鬱陶しいから美鈴と一緒に庭いじりをさせているわ。」
自分の従者を鬱陶しいって言ったぞこの人
「あの、買い出しについてはいつも私が定期的にやっているのですが、何か問題でもございますか?」
「問題は無いわね。さっきシャーキャはこあが買い出しに行けばいいって言ったけど、普段は妖怪が街を出歩くより人間の咲夜が買い出しに行くようにしているわ。」
コンコンコンと左手人差し指で机を叩くパチュリー。右手で頬付き、苛立ちながら読書中のご様子。まあ、その読書もあまり身が入って無いようだけど。
「問題無いなら、いいじゃん。」
「ええ、だから今回のは咲夜がシャーキャを街案内することが目的かしらね。」
「ええと、それは次の買い出しの時でいいのでは?」
「.........はあ。」
俺と咲夜がゴネるとパチュリー様は溜息を吐き、ジト目で此方を睨みつけてきた。
「あれこれ建前言っててもしょうがないわね。なら単刀直入に言うわ。...........あなたたちいつまで喧嘩してるの?」
「「...............」」
俺と咲夜は目を逸らす。
「シャーキャ。貴方、最近は妹様の相手も碌にできて無いわね。」
そう。いつものように妹様と
「咲夜。貴女、最近は食器をよく割るようになったわね。」
美鈴と手合わせしてから1週間。食器の割れる音を何度か耳にしたが、あれは咲夜だったのか。
「この際、なんでもいいから仲直りするまで館に戻って来てはダメよ。」
「え?」「は?」
「レミィに泣きついても無駄よ。もう話は通してあるわ。」
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そうして館から放り出された俺たちは3時間かけて街にやってきた。
「............ここが紅魔館から最寄りの街、チェルニカよ。普段はここで物資調達する。私達はあまり目立つ事が許されないから、中心街へは必要無い場合は行かないこと。わかった?」
「........ああ」
随分と田舎町だな。殆ど人が居ない。
「..............」
「..............」
咲夜の説明に返事をし視線が合いそうになるが、お互い目を逸らしてしまう。
逸らす瞬間の咲夜の表情はなんとも言えない顔をしていた。俺も同じような顔をしているだろうな。
普段なら軽口の一つや二つ出てた筈だが、事務的な会話しか出てこない。
森を歩いている時も殆ど無言で歩いていた。
俺も別にもう怒っていない。
どうせこれからも同じ事を繰り返すだろうからと開き直っている。
ただ1週間もこんな空気感で謝罪のタイミングを失ってしまった。
「...........とりあえず必要無な物をさっさと買うぞ。」
「...........なら、私は食器を買うから。貴方は服と布を買ってきて。」
「わかった。......ほれ。」
俺はポケットの具現化した懐中時計を咲夜に投げ渡す。
「何これ?」
懐中時計を持っている咲夜は訝しげに時計を見つめる
「俺の能力の一種って事でよろしく。」
「そう。..........じゃあ、後でここの花屋に集合で」
難しい事は後で考えて、取り敢えず布を買うか
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「ふう.....」
胸に詰まってた息が抜ける。
後ろを振り返ると少しずつ小さくなるシャーキャの背中。
ポケットから二つの懐中時計を取り出す。
どちらもそっくりではあるが、片方だけ短針が無い上に12時から針が動いていない。
これも念能力なのね。
私はパチュリー様のメガネをかけてみる。
すると予想通り、針が動かない時計は白い光を放っていた。
オーラって物質化もするって事なのかしら。だったら色々と便利だわ。でも空を飛べないのは不便ね。念能力にも長所と短所があるようね。
お陰でいつもなら2時間の所を倍の時間かけて無言で移動する羽目になったわ。
正直な所疲れた。彼には買い物を命じたが私は今すぐ帰りたい気分だった。無論霊力で身体強化している訳だし、疲労は無い。ただの気疲れだ。
こんな物を渡してくるぐらいだから、彼ももう怒っていないのはわかっている。でも、この1週間ずっと私達はギクシャクしていた。
こんな時どうすればいいのだろう?
パチュリー様は仲直りしなさいと言っていた。
でも今の状況じゃとても仲直りできそうに無い。このままでは紅魔館に帰れない。
そもそも私は悪くないわよね.......。
怪我をしたシャーキャが心配だから止めただけで、彼の邪魔をするつもりはなかったし。
そこまで考えてブンブンと頭を振る。
ああもうダメダメ。これじゃ結局また喧嘩になるわ。
「はあ........」
とりあえず割ってしまったカップと皿を購入。
待ち合わせ場所に向かう。
こんなふうに人間関係で悩む事なんて今までなかったわね。
エクソシストだった頃は、私含めて皆が機械のように使命を全うするだけだった。コミュニケーションがある訳が無い。
紅魔館に来てからは私よりも100歳以上年上しかいない環境だったから今思えば、皆対人能力が高ったのだ。
だから同じぐらいの人間相手とまともに付き合いだしたのは彼が初めてで........。だからわからない。
で、でも私がお姉さんだからしっかりしないと。
こんなふうにウジウジ悩み、周りが見えてなかった。いくら紅魔館から近くてもここは妖怪側ではなく、人間側のテリトリー。油断してはいけなかった。警戒を怠っていたから、背後に近づく気配に気が付かなかった。
「........久しぶりだな、53号」
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買い物を終え、待ち合わせ場所に向かう。日が傾きだし、街並みが赤色を帯び始める。
このままじゃいつまで経っても帰れないな。とりあえず適当に謝るか。正直納得できないけど、あいつも悪気があった訳じゃないしな。こちらから謝らないといけないよな。
考えがまとまってきた所で待ち合わせ場所に着く。
どうやらまだ咲夜は来ていないようだ。
「早く合流したい所だな。このままじゃ日が沈むぞ...........ん?これは?」
足に何かが当たる。
どうやら布に包まれた何かを蹴ってしまったようだ。
蹴った拍子に布の中からカップが転がる。
なんでこんな所にカップが転がってるんだ?誰かの落とし物か?咲夜は食器を買うって言ってたな。なら咲夜か?でもなんで荷物だけここに置いてあるんだ?
とりあえず「円」で咲夜を探すか。
すぐにオーラの感知領域を広げるが、咲夜の気配を感知できない。
300m圏内には居ないのか。なら次の手だ。
咲夜に渡してある懐中時計に意識を集中させる。
あれ自身が半径1mの「円」の能力を持っている。
「......見つけた。」
結構遠いな。走ればすぐだが。咲夜の周りに誰かいるかはわからないな。半径1mじゃ仕方ないか。現状の懐中時計がどこにあるかわかるためだけの付加効果だからな。
それにしても気になるのが、日が傾きかけている現状でここから遠のくように移動している咲夜が不可解だ。
俺は買い物を済ませた訳だし、咲夜の位置もわかっているから追いかけるか。落ちてるカップは誰の物かわからんが、貰っていこう。咲夜のじゃなかったらすまんな。
俺は足にオーラの集中させて走る。「
走る事、3分。すぐに咲夜に追いついた。何故か暗い路地の中を歩いていた。
足音に気づいたのか、咲夜が此方に振り返る。
「.........ぁぁ、こないで.....」
酷く憔悴した顔で小さく何か言っている。よく聞き取れない。それに小刻みに体が震えている。
何かあったのか?
「おや、君は前にあった少年か。」
声をかけられ、暗い路地の奥を見るともう1人いた。目を凝らすと何処か見覚えのある神父がいた。
「んんん?あんたイラクにいたおっさんじゃん。」
何故こいつがここにいるのか?咲夜とどういう関係か?
そんな事はすぐにどうでも良くなった。
このエクソシストは念能力は使えないが、基礎戦闘能力が俺よりも上だ。まさかこんな所でまた会えるとはな。
思わず口角が上がる。
「わざわざ俺に殺されるために追いかけて来たか?ご苦労なこった。せいぜい楽しもうぜ、おっさん!」
俺は咲夜の前に出る。
良くわからないが、今の咲夜は足手まといだ。後ろに下がらせた方がいいだろう。それにタイマンは俺の望むところだからな。
「全く、血の気の多い事だ。その凶暴性は是非とも神に仇なす異端へと向けて貰いたいとこだね。」
まずは「凝」だ。前回戦った経験からこいつの動きは俺以上の俊敏性がある。無論音速ではないが、こんな狭い場所では脅威だ。目にオーラを集中させて奴の動きに対処する。残りのオーラは足に集中させる。対処しやすい動きならカウンターの蹴りを、対処しにくい場合は距離を離しやすいようにする。
「今日の私はついている。一度失った権能だけでなく、新たな原石にもこうして再びまみえる事になろうとは。..............やれ53号」
次の瞬間いきなり意識が刈り取られた。
「..........な、なんだ?」
倒れる瞬間視界に写ったのは、無表情で手刀を構える咲夜の姿があった。