目が覚めると真っ暗な場所にいた。
いや、よくよく目を凝らすとどうやら牢屋の中だ。この暗さは地下か?
あたりには何もない。
「うう〜さぶ。」
肌寒さに顔を顰める。どうやら衣服は剥ぎ取られたようだ。
立ち上がり牢屋の外を確認しようとした所で違和感に気付く。
「なんだこれ?」
両手を前に手錠がされていた。ただの手錠では無く、何か幾何学的な模様が彫られた手錠だ。
ギィィ
鉄扉が開く。
「目が覚めたか。出てこい。」
カソックを着た神父が中に入って来る。俺の手錠に鎖を付け外に引っ張り出してくる。
この見た目からして、あのおっさんの仲間だよな。俺は捕まったって事か?咲夜はどうなった?
そのまま薄暗い廊下を歩かされる。
俺は神父の背中を眺めながら、すぐに「円」を使って状況把握する。しかし、分かったことは物静けさに対して多くの人間がいることがわかっただけだ。
これじゃ咲夜がどこにいるかわからないな。
懐中時計に意識を回す。
あった。
懐中時計はすぐに見つかったが、懐中時計周りに半径1mには人がいなかった。
「超能力を使おうとしても無駄だ。その手錠は霊力、魔力、妖力を抑え込む。........今からお前は神の洗礼を受け、我々の同胞となる。」
神父が何か言ってるが無視する。
能力が封じるって言ってもどうせ念能力は知らないこいつらだ。今だって「円」が使えているしな。
状況がわからないなら、とりあえず懐中時計を回収するとしよう。
油断しまくってる神父にオーラを放出し当てて気絶させる。
倒れた神父の服を弄る。
鍵見っけ!
直ぐに手錠を外す。開放された手首の心地よさに一息吐く。
「絶」で気配を消して懐中時計を探す。もっとも距離はそんなに離れていない
簡単に見つかった。小さな倉庫の中だ。鍵が付いていたが、無理矢理鍵を壊して開ける。中に入ると俺の服が見つかった。直ぐに袖を通す。
ふうー、寒かった。
他に取られている物は無いかな?
倉庫を探るとメイド服があった。考える必要も無い。メイド服着てる奴なんて咲夜以外にありえない。
背筋が凍り付く。焦った俺は「円」で気配を探る。相変わらず人の気配が多い。一箇所は特に集中している。
「絶」をやめて人が集まっている場所へ特攻した。
建物の壁をブチ抜いて、目的の場所に辿り着く。
そこには街中で会った神父のおっさんがムチを持っていた。部屋をぐるっと何人もの神父が囲んでいる。部屋の中心には裸に剥かれた咲夜。両手にさっき俺が付けられてた手錠。そこから鎖が天井に伸びており、宙吊りになっていた。咲夜の体には無数の赤い線が刻み込まれていた。顔は殴られたような青痣に涙の跡、虚な目で此方を見ていた。
何が行われていたか良くわかる。
「何ともまあ、古典的な拷問な事で。」
「少年か。どうやって手錠を解いた?」
「うるせえな〜。どうだっていいだろ。ああ〜、クックック........これが神の洗礼だって?クックック.....ふざけんじゃねぇぇぇっえええ!」
「素晴らしい速度だ。だが、この状況で一体どうするつもりかね?」
「ふん。どうするもこうするもテメーら倒せばいいだけだろ。」
俺は「練」でオーラを全開にする。
囲んでいたエクソシスト共が体を強張らせるのがわかった。
「.......シャ、シャーキャ。どうして....」
咲夜の震えた声が聞こえる。
まさに満身創痍といったとこだ。
状況を確認する。俺の直感が正しければ、こいつらは少なくとも最低でも俺の足元程度の力量はあるし、中には俺以上の使い手がいる。それも30人ぐらいいる、囲まれた状態だ。
「....シャ、シャーキャ」
「おめぇもうるさい。黙ってろ。」
震える咲夜を抱く手を強める。
今までにこんな事はなかったな。俺はいつも俺の為だけに力を奮ってきた。俺の生は俺だけの物。いつも考えていた。死んだ母親や父親の分まで生きろとか言う奴もいたが、顔も知らねぇ奴なんかどうでも良かった。紅魔館の連中に拳を振るったのも俺が楽しいから。フランとの
「....はい」
状況としては詰みだろうが、俺は別に悲観的にはならない。逆境で覚悟を決める。念能力は精神状態でパフォーマンスが大きく変わる。誓約によってより力を俺に与えてくれる。
オーラを当てて咲夜を気絶させる。
「大丈夫。君は護ってみせる。」
オーラが紫色に変わる。
「俺の命にかえても」
俺の「
S極の「円」を展開。俺のオーラに触れた物をS極に設定。俺と咲夜は中性。
その状態で全力でオーラを放出。
するとどうなるか。
ドカァァァァァァン!
S極同士は反発し合う。結果、俺を中心に人や物が吹き飛び、大爆発を起こす。
吹き飛ぶ瓦礫にもS極の磁性を与えているため、「円」の外に弾かれる。俺たちには全く被害が出ない。
欠点としては、俺が近付くと相手を遠ざけてしまうので、止めをさせない。しかし、飛んでくる攻撃に対しては絶大な防御力を持っている。お嬢様の「スピア・ザ・グングニル」を防いだのもこの能力だ。
「
吹き飛ぶエクソシスト共を尻目に「
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森を駆けて、別の街に着いた。
ここはどこだろうか?現在地がわからない。
咲夜ならわかるかもしれないが、今は眠っている。
それに追っ手が間違いなくいる状況で足を止める訳にはいかない。
地下から地上に出た時に気付いたがあそこは正教の教会の地下だったようだ。逃げ出しただけで無く、建物まで破壊したんだ。間違い無く血眼になって探しているだろう。
あのレベルのエクソシストを何人も相手にはできない。
......いや、俺が使えるツテがあった。
「組織」を頼ろう。
この何処かわからない街で「組織」のホテルがあるかわからないがその方がいい。
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何件かホテルを回ったがなんとか「組織」のホテルに入る事ができた。「組織」のホテルならエクソシストは入れないだろう。
眠っている咲夜をベッドへ寝かす。
一旦は落ち着いたか。
慌てて来てしまったが、咲夜の服を回収すべきだったな。今は俺の上着で包んでいるだけだ。
緊急ではあったがこんな恰好では外に出れない。咲夜の服を用意する必要があるか。
あとはここが何処か地図で把握すべきだな。紅魔館の近くなのか、それとも遠くか。
今日はもう深夜だ。明日服を用意する。......いや、「組織」のホテルだから俺が言えば用意してくれるか。
先に咲夜の傷を癒そう。
「
みるみると顔の痣は消えて、血色が良くなった。
目覚める事は無いがこれで大丈夫だろう。
プルルルル
室内電話からコール音がなる。
ガチャ。
「もしもし?」
『もしもし、シャーキャ様。モラウ様から伝言を頂いています。』
「大事な話だよな」
『ええ、そうです』
「わかった。お願い」
『では再生します。「よう、シャーキャ。元気にしてるか?悪いが直ぐに本題に入らせてもらうぜ。イラクでお前を襲った念能力者がいただろ?そいつらの仲間がお前を追っているそうだ。因みにイスタンブールでの強盗騒ぎはそいつらの仕業だ。テロ行為との関連はわからないがな。でだ、そいつら今ルーマニアに来てるそうだ。おそらく何らかの能力かでお前の足取りがバレていると考えた方がいい。用心しろよ。じゃあな!」以上となります。』
「ありがとう。あと地図と女の服を用意してくれ。年齢は7歳だ。」
『了解いたしました』
ガチャ
何とも間が悪い。あの念能力者もかなりの使い手だ。咲夜を護りながらじゃとても戦えないぞ。
すぐにここから移動する必要があるな。
俺は届けらた地図を睨み付けながら行動を考える。
エクソシストと念能力者を振り切らないといけない
そのまま夜が更けていった。