5年後
俺の名前はシャーキャ。5歳だ。名前はネテロのジジイにもらった。俺は今、ネパールのカトマンズ郊外のパタンに門を構える『心源流』と呼ばれる道場に住んでる。外からは『心源流拳法』ってよく呼ばれている。ここの師範はアイザック=ネテロで俺の育て親だ。ついでに『組織』の最高責任者、通称『会長』だそうだ。なんで『会長』なんだろう?
『心源流』には『燃』と呼ばれる4つの心構えがある。
・『点』:心を一つに集中し、自己を見つめ目標を定める。
・『舌』:その想いを言葉にする。
・『練』:その意志を高める。
・『発』:それを行動に移す。
以上の4つをまとめると
「点」で目標を定め、「舌」で目標を言葉にし、「練」でその意志を高め、「発」で実行に移す。
というもので、心の強さが何ものよりも勝るという教えを説いたものだ。まあ、表向きの話だが。
ここの生徒の内、師範の目にとまった何人かは別の修行を行う事になる。その修行が『念』の修行だ。
簡単に言うと、人間には精孔と呼ばれる目に見えない穴があり、そこから溢れ出す生命エネルギー、通称「オーラ」を自在に使いこなす力の事を『念』という。『念』にも『燃』の様な「四大行」と応用の「七大行」がある。「四大行」は心構えではなく、「念」の習得手順を表す。
『念』の修行が決まった者は、ラングタン国立公園のヒマラヤ山脈の麓の秘匿された道場で修行する事になる。こちらの道場はいわば、公園そのものが念の修行する場所の様なもので、広大な敷地で各々、念を磨く。
俺はすでに『発』以外は習得を済ませている。1番苦戦したのが、『絶』だ。俺は物心ついたときから、オーラが見えたし纏っていた。それが普通だったから、いざオーラを止めろと言われてもなかなか止めれなかった。『絶』だけで1年修行する事になった。それ以外はすんなり終わらせることが出来た。今は暇さえあれば、「練」と応用の「七大行」の練習をしている。
俺はポケットに入れてるコンパスを握りしめる。コンパス、または方位磁針と呼ばれるこの道具は方角を知るために必要な道具だ。俺が1歳の頃にこれに興味を示した俺はネテロのジジイから与えられたそうだ。別に何か面白かったり、宝物って訳では無いが、いずれここを出て旅に出るのが俺の夢だ。
「よう!シャーキャ!元気にしてるか?」
「なんだよ。おっさん。今さっきまで元気だったよ。」
折角、自分の夢について考えていたのにうっさい声で気分が下がる。
見ると大きく手を振るグラサンのごついおっさんとメガネで神経質そうなスーツ姿の男がこっちにやってきた。
「相変わらず、口が悪いな。まったく、会長は甘やかし過ぎなんだ。」
「まあ、まあ。いいじゃねーかよ、ノヴ。ガキはこれぐらい元気な方がいいってもんだぜ!」
ばしばし頭を叩いてくるモラウ。だんだんと頭に血が上った俺はモラウに殴りかかる。
「頭叩いてんじゃねー!」
「おっと!」
「ぎゃっ!」
顔面を殴ろうとしたが、逆に顔面を掴まれてしまった。いくら暴れても離してくれないし、手が届かない。この馬鹿力め!
「ハッハハハハ!俺を殴るなんざ100年はえーよ!」
「こっの野郎!」
「2人ともいい加減にしろ。モラウこそ子供じゃ無いんだから、本題に入るぞ。」
「もう少しこいつで遊びたかったが、まあいいか。」
「なんだよ、本題って?あとモラウはぶっ潰す。」
「それはな。..................これだ。」
ノヴが地面からバスケットボールを取り出す。
「念を使ったバスケの1on1だ。」
「ふーん。面白そうじゃん。」
俺は笑みを浮かべる
「これでモラウをぶっ潰せるぜ!」
「じゃあ、あっちに行くか。」
「おう。」
あっちとは、ここのパタン道場ではなく、ラングタン国立公園の方の道場を指す。そこに何故か、バスケットゴールとかサッカーのグラウンドが有ったりする。俺は3人でそこに向かいながら作戦を考えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よーし、じゃあまずはルール確認だ。ゲーム方式は1on1。ゴールが1回決まる毎に攻守交代。3点先取で勝利。基本はバスケのルールに従うが、「念」の使用はありだ。「念」の使用開始は、ホイッスルが鳴ってからだ。」
「オーケー。最初は俺から行かせてもらうぜ。」
俺はボールを持ち、モラウが俺の前で構える。審判のノヴが笛をくわえる。
ピィィィィ!
速攻で決める!
俺はオーラを足と手とボールに纏わせて、通常ではあり得ない速度で左右に揺さぶりをかける。慣性による反動も手足のオーラで踏ん張る。体の大きいモラウは小回りの効く動きに対応できない。
(!?なんて、出鱈目な!器用にも程があるだろう!念の修行初めて2年でこれ程のオーラの攻防力移動ができるようになるとは。)
モラウの表情が引き攣る。
そして、モラウを抜く。
「よっしゃあ!」
ゴール手前まで駆け抜け、足にオーラを集中させジャンプ。レイアップを狙う。しかし、
バシッ!
「えっ?」
俺が飛ぶ瞬間のオーラが手から足に集中する隙をついて、モラウがボールを奪った。
(5歳児がレイアップって、あまりにも非常識でしょ。)
やばい!俺は今空中に飛び出している!
(だが、まだ青いな。)
クソ!滞空時間がもどかしい。
俺はそのままモラウがシュートする様を空中で眺める事となった。
ピィィィィ!
「モラウ1点。攻守交代」
「しばらく見ない内にやるようになったな!」
「チッ。」
次はモラウがボールを持つ。
ピィィィィ!
ホイッスルと同時に先程の反省から、即座に『円』と『凝』を使う。これでモラウの動きに対処する。さあ!どう来る?
モラウが走って来る。左右のどちらに動く?右か?左か?
だが、モラウはどちらにも揺する事なく、尚近づいて来る。それに動揺しオーラが乱れる。そのままモラウに弾かれて、尻餅をついてしまった。
「クソ!フィジカルでゴリ押しかよ!」
「大人の特権だな!ほうら!2点!」
ピィィィィ!
「モラウ2点。攻守交代。」
「もう後が無いぞ〜。」
「うるせー!次、入れてやんよ!」
ボールを手に取り、構える。
ピィィィィ!
最初の攻めと同じく速度でモラウの抜く。そして、ゴール手前まで加速。急停止。
からの高速バック!
(!?)
こちらに走って来ているのが、「円」から感じることができる。モラウとの接触のギリギリで急停止。モラウを中心に時計周りに体を回転させ、ボールを思いっきり地面に叩きつける。
ボールは大きくバウンドして、上空に上がる。
モラウはその様子を驚きの表情で見ている。
その放心が唯一の隙だよ、モラウ!
俺はオーラを足に纏い、大きくジャンプ。空中のボールをキャッチし、そのままダンクシュートを決めた。
ピィィィィ!
「シャーキャ1点。攻守交代。」
「いやあ、驚いたぜ。あんなプレイされるとはな〜。子供は発想が豊かだな。1点も取らせるつもりなかったんだけどな〜」
「残念だったな。大人のメンツが丸つぶれだな。クックック。」
俺が小馬鹿にして笑うと、モラウの額に青筋が浮かぶ。いい気味だぜ。
再度、両者向かいあって構える。
ピィィィィ!
守備だが、関係ねぇ!攻めるぜ!
俺はホイッスルの瞬間にモラウに突っ込む。モラウも意外だったのか、驚きの表情になる。そして、虚を突いた俺のアタックでボールを奪い。先程と同じく、ボールを地面に叩きつける。だが、モラウも先程見ているため、冷静にボールの起動を観察している。ダンクの瞬間に奪うつもりだろうが、そうはさせねぇぜ!
俺はオーラを足に纏い、大きくジャンプし、ボールをキャッチする。そのままダンクではなく、オーラをボールに纏わせて思いっきり、ゴールに向かってぶん投げる。
「ちょっ!それは反則だろ!」
オーラで強化されたシュートは音速を超えて、ゴール。大爆音と土煙に覆われる。結局、バスケットゴールとボールを破壊。真下の地面を2メール掘り進める結果となった。
「やりすぎだ!馬鹿野郎!」
「イテェ!何しやがる!」
「お前は俺たちを殺す気か!」
頭を思いっきり叩かれた。相変わらずの馬鹿力だ。覚えておけよ。
殺す気ねぇ。俺にそのつもりは無いし、モラウも本気で殺される気は無いだろう。
いくら、俺が周りから天才だの神童だのチヤホラされてても、わかることはある。やはり、大人と子供。手加減されている。今のボールだって、いくらモラウは操作系能力者でも受けれるはずだ。俺は全力で打ったつもりだが。いつか、俺はジジイやこいつらと対等に戦いたい。そして、世界を見てみたい。
俺は無意識に拳を握り締めていた。
あれから別のバスケットゴールで続きを行なったが、
こいつら、大人気ねぇぇぇぇぇぇぇ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シャーキャと遊んだ俺達は、会長に飛び出されていた。
コンコン
「会長、モラウとノヴです。」
『おう。入って来なさい。』
「失礼します。」
「2人ともこんな時間に申し訳ないのう。2人に来てもらったのは、他でもないシャーキャについてじゃ。どうじゃ、あやつは?」
「我々から見ても、とても元気に育っていますよ。あと、念の習得の速さとセンスが素晴らしいですね。やはり、子供は発想が豊かですね。」
「贔屓目で見ても、彼は既に並みの使い手と渡りあえる実力を有しているかと。『発』の習得によっては、我々とも対等な実力を発揮できると思います。」
「まあ、強いて言うなら経験の浅さと小さい体故のオーラの総量の少なさかのう。オーラ量は『練』の積みかせねで増えるが、経験はどうしようもないのう。」
「ええ、経験不足は否めませんが、吸収の速さは今日少し彼と遊びましたが、なかなかのものです。」
「ふむふむ。..................では、そろそろかのう。」
「そろそろとは、会長?」
「そろそろ、あやつに選択させようかと思うてのう。ここに残るか、ここをでるかについてじゃ。」