「今日は世話になりっぱなしだったな。」
「貴方は子供なんだから気にしなくていいわよ。」
「そう?じゃあ好きにさえてもらうわ。」
俺は畳に寝転がる。
「本当に好きにするのね。妬ましいわ。」
「安心しろよ。料理ぐらいは作れるからさ。」
「貴方が料理なんてできるのかしら?」
「この服装は伊達じゃ無いぜ。」
「執事のコスプレじゃないの?」
「なんなら今晩腕を見せてやってもいいぜ。」
「そう。期待しておくわ。.........その前に貴方の服を用意しないとね。」
「この旧地獄ではあまりに目立ちすぎるからだろ?」
「そうよ。いくら気配が消せてもそんな服を着た人間の子供なんて妖怪からしたら、格好の餌よ。」
「まあ、全部返り討ちにしてやればいいがな。」
ニヤリと笑ってやる。
「やめてよ。ここの奴らは地上よりも血の気が多いのよ。キリが無いわ。」
まあ、俺も実際にそんな事はしない。俺だけなら面白そうだからやったが、パルスィと一緒に居るんじゃ、彼女にも火の粉が降りかかるだろう。彼女は命の恩人だ。面倒臭い性格をしているが、義理はある。俺も出来るだけ穏便に済ませるよう努めよう。
「じゃあ、今から服屋に行くか?」
「ええ、そうしましょう。」
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それにしても視線が鬱陶しい。さっきも多分に含まれている。隣にパルスィがいるからか、直接仕掛けてくる奴らはいないが。
「鬱陶しいな。1人ぐらい殺したいな。」
「やめなさい。さっきも言ったけど、キリが無いわよ。」
「じゃあ、さっさと行くしかない訳か。」
「そうよ。」
俺達は足速に服屋に着いた。
「じゃあ、私は外で待ってるから。」
「お前も中に入ればいいじゃん。」
「私を見ると店主が縮こまってまとも買い物出来ないからね。」
「普段はどうしてるんだよ。」
「予め買う物を決めて素早く買い物を済ませてるわ。接触時間はできるだけ短く。」
そう言うと俺にお金を握らせた。
このお金はどうやって稼いでるのか?
とりあえず中に入るか。
「へぇ〜。意外と品揃えいいじゃん。」
こんな所だから期待してなかったけど、色んな服が置いてある。最も執事服なんてものはないが。
とはいえ俺も服には興味がないから、品揃えなんてどうでもいい。余り目立たない黒色とか鼠色の服を買うか。
タンクトップとラフな長ズボンを買う。動きやすさ重視だな。
「おっさん、この服買うわ。」
トカゲ頭の妖怪に声をかける。この店の店主だろう。
「ああ?お前人間か?プックック。ガキはママの乳でも吸ってな!お前如きに売る訳ねーだろバーカ!」
「おいおい。金出してんだから、そんな事どうでもいいだろ?」
「本当にバカだな、ここは地底。妖怪の街さ。人間に居場所なんてねぇよ。」
面倒臭いな、こいつ。
俺はオーラをおっさんに当てる。
「ただで持って帰っていいのか?」
瞬間、おっさんは顔を青褪めて震え出す。
「ヒッ!わ、悪かった!持っていけ!」
服を投げつけられた。
殺してやろうかと思ったが、今はそんな気分じゃないぐらい面倒臭い。
俺は服を抱えて外に出る。
「今度は人間のガキを捕まえて来たのか?哀れな事だな!ハッハッハッハ!」
「................」
パルスィが牛頭の妖怪に絡まれていた。
頭が痛くなる。これなら彼女も店の中に入ってた方がマシだったのではないか?
「無視してんじゃねぇぞ!このアマァ!」
牛頭が彼女に掴みかかろうとする。
パルスィもただ見ているだけではない。緑色の目が光る。おそらく能力を使おうとしているのだろう。咲夜も時間を操作する時、青い目が赤く光る。
まあ、彼女に能力を使わせる気はないが。
2人の間に割り込む。牛頭の手を受け止める。
「おっさん。面白そうな事してるじゃん。こんな女よりも俺と遊ばない?」
「練」で念を放つ。
一瞬、顔を青褪めてすぐに不機嫌な顔になる。
「チッ、ガキには興味はねぇよ。クソッ、興が冷めた。」
地面に唾を吐き捨てて、牛頭の妖怪は去っていく。
「人間のガキに守られるなんて、橋姫も落ちぶれたもんだ。」
聞こえてんぞー、おっさん。
まあいいか。
「行くぞ、パルスィ。」
「もういいの?」
「ああ、別に服に拘りは無いしな。着れたらいいんだよ。」
「そう、貴方がそれでいいなら別に何も言わないわ。」
パルスィの家に帰る。
その間、ずっと後ろからさっきの牛頭の妖怪が着いてくるのを「円」で感知していた。
こりゃ、課題だな。こいつはどんだけ皆に嫌われてんだよ。今までよく生活してきたな。いや、今は人間のガキの俺が一緒にいるから余計に悪い状況か。
余りこいつに能力を使わせない方が良いだろう。能力が恐怖や嫌悪の理由になっていると言ってたからな。
とはいえ、降りかかる火の粉を払うには能力を使わないといけないのだろう。
根本的に問題解決しないといけないかもしれない。
家に着く。
「さっきは助かったわ。ありがとう。」
「気にすんなよ。お前があそこで能力使ったら、余計に嫌われるだろ?」
「もう既に嫌われてるから問題ないわよ。」
「でも、そこまで戦えないだろ。その内生きていけなくなるぞ。それに今は俺の寝床になっているここが襲撃されたら、俺は路頭に迷う事になるからな。」
「本当にいい弟だわ。」
「全くお前といい、姉貴面したがる奴が本当に多いな。」
「貴方のヤンチャが無くなれば、少しはマシになると思うわよ。」
「俺は大人っぽいと言われるんだが?」
「たしかにそうだわ。でも見てる側からしたら、凄く心配になるわ。」
「はあ、お人好しな事で。」
「ねぇ、貴方は地上でどうしてたの?」
「どうって?」
「なんでここに落ちてきたのか、聞いてなかったからよ。」
「そういえば、言ってなかったか。さとりは心が読めるから、それでいいと思ってたわ。」
「さとりはわかっても私にはわからないわよ。」
「拗ねんなよ。話すからさ。」
俺はパルスィに今までの出来事を話した。旅の話。紅魔館の話。紅魔館のメンバーの話。幻想郷にやってきた話。ここに落ちてくるまでの話。
思いの外、楽しく話していた。そんな自分に驚いていた。こうやって誰かに話したかったのかもしれない。
パルスィはそれをにこやかに聞いてくれた。
料理も作った。彼女は料理のできに驚いていた。咲夜に教えて貰った事だからな。できて当然だ。
だから、気になった。彼女の今までの事が。
「なあ、パルスィは今までどうしてたんだよ?」
「私?.........余り楽しい話はできないわ。」
「でも気になるんだよね。俺ばっかりしゃべって、お前は秘密なんてずるいじゃん。」
「じゃあ、今度話してあげるわ。でも今日は寝ましょう。」
「........仕方ないか。」
話を聞けば、彼女が嫌われた経緯もわかったかもしれない。
布都を2枚敷く。
「おやすみ、シャーキャ。」
「おやすみ。」
俺達は布団をかぶった。
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寝静まった夜。
俺はゆっくりと起きる。パルスィを起こさないように。
静かに家を出る。
「円」で感知していた方向を見る。街の路地裏から此方を伺っている牛頭の妖怪。
「絶」で気配を消して背後から声をかける。
「よお、ストーカー。」
声をかけた瞬間に目の前の妖怪が消える。
いや、背後か。
妖怪の膂力が発揮された強烈な一撃が後頭部に直撃する。
衝撃に思わず地面に倒れ伏す。
「ふん、雑魚が。」
そのままパルスィの家に向かう妖怪。
「........へへ.....」
歩き出していた牛頭が振り返る。
「予想以上に手際がいいな。話しかけたら、何かしら返してくると思ったが、問答無用で殺しにくるとはな。オーラでの防御が間に合って良かったぜ。」
「...なっ」
「正直舐めてたぜ。これは面白そうだ。」
だが、同様は一瞬。すぐに冷静な表情になる妖怪。
結構やり手だな。
「今度はお前が不意をつけたはず。それを呑気に話しかけてくるとは、........少し低く見てないか?この俺を.........」
いや、だからこそこいつは純粋な体術でのみ倒したい。今後倒す敵達を想定して。
「こいよ!おっさん」
「後悔する事になるぞ。」
ダン!!
妖怪が突っ込んでくる。
速いな。だがこれなら「凝」でなくても見える!
「目を潰してやるぜ!」
手刀が顔面目掛けて飛んでくる。
俺は仰反るって回避し、その勢いのままバク転の容量でガラ空きの腹目掛けて、蹴りを入れる。
「オララアアァ!」
「グッ!」
全オーラの7割を足に集中させた渾身の蹴り。ギリギリで左腕を引っ込める事でガードしてきた。
だが、牛頭は吹っ飛ばされ、左腕が折れる。
牛頭が着地し、再び突っ込んでくる。
「チィッ!!」
俺も即座に体勢を立て直す。
俺も敵も蹴りを同時に放つ。
「チッ」
「グッ!」
お互いの蹴りが顔面に入る。
両者共に吹き飛ぶがすぐに起き上がる。
流石に「発」無しじゃ、一筋縄ではいかないな。だが、最近は「発」に頼りっぱなしだったからな。旅に出始めた頃を思い出す。所謂、初心に帰るって奴だな。
蹴りは俺も敵にも入ったが、オーラを操作して顔面を守った俺の方がダメージは少ない。
「お前の事を甘く見てたな。悪りぃな坊主。」
いや、初心に帰るってんなら、こんな様子見はせずに突貫して即殺してこその俺だったはず。今だけは難しい事を考えずに殺そう。地底に来てから、暴れて無いんだ。鬱憤を晴らすには絶好の機会だ。
俺は狂気的な笑みを浮かべる。
そうだ。問答は必要ない。目の前には敵。ならば、力を叩きつければいい。狂気に身を委ねるんだ。
「クックック.......ハッハッハッハ!.......シャアアアアアア!!!!」
俺は足にオーラを集中し加速、敵の懐に入る。
「バカが、無策で突っ込んでくるなんてよ。死ねよ。」
敵が俺の顔面に拳を叩きつけてくる。
俺はそれを頭を下げてかわす。左腕頬に擦り、血が吹き出す。
今俺は体をオーラで全く守っていない。文字通り捨て身の突貫。だが、死すら超越した覚悟で持って攻めの姿勢を貫いた誓約により、オーラ増加する。それを右拳に集中「硬」。全ては究極の一撃で仕留めるため。
「はああああああああ!!」
躊躇なく右拳を敵の心臓に叩きつけた。
拳は心臓を貫き、胴体を貫通した。
即死だ。
腕を引き抜く。胸の穴から夥しい量の血液が流れ出し、男は倒れた。
動く気配はない。妖怪だから人間よりフィジカルで秀でているはずだからと警戒したが、どうやら死んだようだ。流石に吸血鬼程、生命力がある訳ではないらしい。
俺は右手の感触を確認する。
そうこの感覚だ。
ここのところ、
「.......感謝するぜ。」
顔にできた傷が無くなる。
さて、帰って寝ますか。
でもこの調子じゃ、おちおち眠ることもできないな。余りに酷いなら、さとりのところに相談するか。