「オオオオオオオ!」
「シャアアアアアア!」
奴の拳と俺の蹴りがぶつかり、爆発する。
さっきからこの繰り返しだ。こいつは典型的な接近戦タイプだな。距離が離れてもすぐに詰めてくる。しかも厄介なことに「凝」と「円」で対応しても接近を許す程、突進スピードが速い。また、遠距離攻撃されることにも慣れているのか、
傍目からは戦えてる様に見えるかも知れないが、膂力の差が大きく、俺ばかりが消耗する。
クソッ!またか!
着地した瞬間にはもう目の前にいる勇儀。
「モラッタァッ!!」
こいつは蹴りよりも拳が好きらしい。まあ、これだけ膂力が強いなら隙が小さい拳の攻撃が素早くて良いのかもしれない。
「硬」で強化した両手で勇儀の拳を掴む。
「どうしたぁ?両手じゃないと受け止めれなくなってきたか?ああ?」
左拳が飛んで来る。
「.........舐めんなよ。」
相手が格上は百も承知だが、バカにされる事はプライドが許さない。
一気にオーラが溢れる。掴んでいた両腕からオーラを放出。
「グアアッ!」
オーラは勇儀の腹に直撃し、吐血させて吹き飛ばす。
「ッ!!」
オーラは念能力者にしか見えない。
今の攻撃は勇儀には見えなかっただろう。不可視攻撃。それも無視できない程のダメージを負ったんだ。驚き動きが止まるのも仕方ない事。
「何ビビってんだよ!」
今度は俺が突進する。
「チィ」
「シャアアアアアア!」
渾身の「硬」でのボディブローが入る。
「グッ!」
再び吐血する勇儀。
だが今度は怯まなかった。お返しとばかりに右足の回し蹴りがくる。
ガードが間に合わないので、オーラを左脇腹に集中してガード。
「ガハァッ!」
吹き飛び、地面に激突。砂埃が舞う。
さっきと同じ要領で「隠」で気配を消して「硬」で殴る。
しかし、流石に同じ手は通用せず、ギリギリでガードされた。
「チッ」
すぐに左足にオーラを移動させて蹴る。
それも躱される。勢いそのままに左手を「硬」
で強化して殴る。
覚悟を胸に。敵を粉砕し、肉塊にする為に拳を振り抜く。
しかし受け止められる。
右拳がくる。
受け止められた左手を軸に身体を回転させて回避。
そのまま右足にオーラを集中させて、脳天に叩き込む。
だが次の瞬間、目の前で閃光が走る。
俺は吹き飛ばされ、片膝をつく。
油断していた。弾幕はそれ程、使わないと思ってた。オーラの攻防力を足に集中していた為に防御力がガタ落ちしていた胴体を撃ち抜かれた。
「不思議な奴だ。異常な硬さと攻撃の強さ。なのに今の唯の弾幕で大ダメージを負ったりする。何かカラクリがありそうだ。でも私は頭が悪くてね。こういうのはいつも拳で解決してるんだよ。」
「チッ。それは解決してるんじゃなくて、唯の脳筋だろ。」
「そうか?......悪いなぁ、そいつは見間違いだぁ!!『金剛螺旋』!!」
勇儀が腕をブンブンと振り回して、そのまま振り下ろしてくる。
直感的に受け止めれないと感じた俺は、左によけた。
拳は地面に激突し、瓦礫が散弾のように襲いかかる。
即座に距離を取る。
瓦礫の一部が額に当たったのか頭から血が流れる。
「はあ、はあ、はあ.......」
全身に鈍い痛みを感じる。オーラでガードしてきたが、それでもこいつの攻撃は少しずつは貫通していた。
常に全開でオーラを使い続けての戦いに疲労も重くのしかかる。
そこからの戦いは更に押されて始める。
攻撃よりも防御が増えていく。
死にはしないが、直撃を2発受けた。
気がつけば、全身血塗れで片膝をついていた。
「はあ、はあ、はあ」
「どうやら、本当に限界らしいな。」
限界......。確かにな。風見幽香と同等なら2年前の時は本当に手加減されてた訳か。
だが今はそんな事どうでもいい。この状況を打破しなければ。
「はあ、はあ、はあ......」
だが、身体がついて来ない。立ち上がれない。
「シャーキャ!!」
叫び声が聞こえた。
声の先にはパルスィがいた。
何故あいつがいる?彼女には教えていない。.......いや、これはさとりの差金か。
「逃げてっ!」
「ちょっとパルスィ!!落ち着いて!」
決闘場に乱入しようとするパルスィをヤマメが羽交い締めにして止めている。
そういえば今まで全く外野声が聞こえてなかった。まあそんなもの気にしてる余裕もなかったが。
「邪魔が入る前に決着をつけようか。楽しかったぜ!」
突進してくる勇儀。
そうだ。目的を思い出せ。風見幽香とのシュミレーションもこの決闘も唯の横道だ。本当の目的は勇儀に俺とパルスィが認めさせる事だろ。
なら戦い方勝ち方に拘ってる場合じゃねぇ!
左手を突き出す。
急接近してくる勇儀。それに構わず、勇儀を音速で引き寄せる。
「!!!」
不自然な加速に驚き、硬直する勇儀。
俺は右手に「硬」でブン殴る。
勇儀を撃ち抜く。
衝撃波で俺と勇儀の後ろの地面が爆ぜる。
「グハァッ!!」
口から血を吐き出し、両膝をついて蹲る勇儀。
ある意味一瞬の油断。勝利を確信した相手の隙を突いた。勇儀は動揺で硬直していたが、目では追っていた。やはり音速での速度にも対応できると考えた方がいい。
「はははは......。認めてやるよ、あんた達。私をここまで追い込んだ人間は久しぶりだ。」
笑いながら立ち上がる勇儀。
マジかよ、もう立てるのか。
「今のがお前の奥義か?.......なら私も奥義を見せよう。」
勇儀が大きく飛び、距離を離してくる。
「四天王奥義『三歩必殺』!」
「一歩!」
大きく足を踏み込む。それだけで地割れが起き、地底全体が揺れ動く。
「二歩!」
更に力が込められる。最後の攻撃に全ての力を注ぐ為。一気に跳躍して俺の頭上にくる。
全力の防御で対応するしかないな。
「ああああああああああっ!三歩ぉおおおおおお!」
拳が振り下ろされる。
だが、攻めの奥義が
拳が俺に届く瞬間。
「
拳が止まる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
それでも勇儀は吹き飛ばされない。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
勇儀の雄叫びが地底に響く。
やがて勇儀は地に伏した。
それを見た俺もオーラが切れて意識を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
意識が覚醒する。
「泣いてるのか?」
目の前には泣き顔のパルスィ。後頭部の柔らかい感触からして膝枕か。
「..........え?」
驚いた顔のパルスィ。
「......シャーキャ?」
「おう」
「.........良かった」
泣き止むまで待ち、あの後どうなったか聞いた。
両者倒れた後、半狂乱になったパルスィに回収された俺はどうやら死んでたらしい。脈がなかったんだとか。
でも生き返った訳で、パルスィは驚いてた。
本当に人間なのか疑われたが、もちろん人間だ。
勇儀は自力で目覚めたらしい。
今は両腕と腹に包帯を巻いて酒を煽ってるらしい。元気な事だ。
「よっと!」
とりあえず起き上がる。
「ちょっと、大丈夫なの?」
「平気。怪我も治ったしね。」
以前も小悪魔に疑われてからな。すぐに腹を見せて無傷である事を見せる。
「......信じられないわね。」
「まあ、俺の能力だな。」
「そういえば、シャーキャの能力って何なの?」
「........帰ったら説明するよ。」
パルスィになら念能力を教えてもいいか。
「おーい。シャーキャ!パルスィ!」
大声が聞こえる。勇儀だな。念能力者なら根っからの強化系だな。
俺とパルスィは広場の中心へ向かう。
「もう平気なのか?」
「当たり前だよ、鬼だからね。シャーキャこそ平気なのか?」
「ああ、怪我も治ったしな。」
「凄いじゃないか!もう一回やるか?」
「ジョーダンきついぜ。見た目だけだよ。今はすっからかんだ。今なら簡単に殺せるぜ?」
「そんな卑怯な事はしないさ。.........そんなことより飲め!」
ドンと酒瓶を出してくる。
「流石に7歳児に酒は無理だ。喧嘩で勘弁してくれ。」
「仕方ないなぁ。ならお姉さんはどうだい?」
「いいんじゃねぇか。」
「ちょっと、シャーキャ!」
「お!じゃあ、早速飲もう!」
パルスィは勇儀に引っ張られていく。先にはヤマメとキスメもいる。上手くやれるだろう。
「おい、ボーズ。お前やるなぁ!」
「姐さん相手に生き残ったぞ!」
さっきまでの野次馬が俺の周りに集まってくる。
一度死んで蘇ったんだけどな。
「お疲れ様です、シャーキャさん。」
「よお、さとりか。アンタがパルスィをここに呼んだのか?」
「まあ、似たようなものですね。」
「ん?どういう事だ?」
「私はお燐を使って、定食屋に噂を流しただけです。人間の子供が四天王に挑むと」
ああ、成る程。
「それをアンテナが広いヤマメさんが拾って、パルスィさんに伝わっただけの事です。」
せっかく黙ってたんだがな。
「でも結果的にいい方向に行きましたよね。」
さとりはパルスィの方を見る。
「ううぅー、勇儀が4人いるよ〜」
「妬ましい、妬ましい。パルパルパルパル」
「ははははははははははは!!!」
すっかり出来上がっているなありゃ。
「アンタも混ざらないのか?」
「私はペットに囲まれる方が好きですから。」
いつの間にか野次馬が散っていた。いや、さとりが来た瞬間には何人か逃げていたか。
「私にまで気を遣わなくていいです。ペット達はこんな私でも着いてきてくれますからね。十分です。」
「そうかい。」
「..........私にも妹がいます。その気持ちは大切にしてください。」
「妹がいるの?」
「ええ。放浪癖があり、偶にしか会えませんが。」
「じゃあ楽しみにしてるぜ。」
「ええ、では私はこれで。」
「サンキューな。アンタのお陰でパルスィも地底に認められた。」
「友人を助けるのは当然です。それに頑張ったのは貴方ですよ。」