「うぅ。頭が痛いわ。」
「ほれ、水。」
「ありがとう。」
家に着いた俺はパルスィを布団に寝かせる。すっかり酔い潰れてしまった。
ヤマメも潰れていた。勇儀だけは元気に飲んでいたが。流石鬼だな。そもそも自分の体積以上の酒をどうやって身体に入るのかわからない。
「黙ってて悪かった。」
「.........本当にそうよ。貴方が一度死んだ時の私の気持ちがどんなだったかわかる?」
「ごめん、わからない。」
「.........正直なのね。」
「どうせすぐバレるし。」
「女の勘はよく当たるのよ。」
そういうもんかんね。
「でも、貴方のお陰で誰にも睨まれる事は無くなったわ。人や妖怪に囲まれる経験はあったけど、いつも悪感情を向けられるばかり。今日みたいな笑顔で囲まれた事なんてなかった。こ、こんなに........う.....嬉しい....のは初めて」
また泣き始めるパルスィ
酒が入ってるから余計にか。
「......ありがとう。でもあまり無理しないで。」
「..............」
「地上にいた頃もこうして色んな人に心配かけてたんじゃないの?」
そう言われれば、心当たりが多過ぎた。今まさに紅魔館の連中は行方不明の俺の心配をしているはず。
まあ、2年も経てば既に死んだと思われてるかもしれないが。
「何でも1人で解決できる訳じゃないわ。私が言えた事じゃないけど。........それでもありがとう。」
そのままパルスィは眠った。
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私はいつも後悔している。いつも選択を誤る。悔いのない選択ができたことがない。自分の意思で決めているようで他人に与えらた選択に甘えるばかり。それなのにいつも後悔して他人の所為にする。
本当に無能だ。主人はそんな私を優秀だと褒めてくれるが、私はいつも自分の無能さ苛立ちを募らせていた。
今も後悔している。何故、あの時私も着いて行きたいと言わなかったのか。直前にボロボロになって私を護ってくれた姿を見ていたのに。何で目を離した?
あれから館は以前の静けさが戻った。子供が喧嘩する声が聞こえなくなったから。
元々、彼が来る前に戻っただけだ。なのに胸にポッカリと穴が空いた気分になる。
主人は最初の1年間は権力の基盤作りに奔走していた。
消えてしまった彼の捜索は魔法使いが手伝ってくれた。使い魔を幻想郷に放ち捜索された。だけど一向に見つからず、1年で捜索は打ち切られた。それでも此方に来たばかりの忙しい時に手伝ってくれた事には本当に感謝している。
私だけは今も探している。買出し等と何かと理由を付けては外出しては探し回った。
門番は私をよく慰めてくれる。こっそり出かける時も見逃してくれている。
本当はわかっている。
彼は死んでる可能性が高い事を。
私が忠誠を誓っている最強の吸血鬼の主人が、半死半生で帰ってきた。全身から血を吹き出し、さらに全身が焼け爛れた異様な腐臭を放ち、文字通り虫の息となった主人。
信じられなかった。主人が負ける姿なんて想像した事が無かった。今までも誰にも負けた事が無かった。主人を追い詰めた者なんて、彼ぐらいしか知らない。
そんな主人の頭掴んで引きずっている敵の首領。そいつは主人を館の庭に捨てて、上から目線で「認めてやる」とそれだけで言って去っていった。
これ程屈辱的な事はないだろう。主人の仇を取るべきだ。だけど、瀕死の主人を置いておく訳にはいかない。すぐに魔法使いに見せて治療された。
主人は一命を取り留めた。吸血鬼の不死性に救われた。皆、一安心した。
だがそこで皆が気がつく、もう1人帰ってこない人物がいる事を。
それと同時に私の脳裏に嫌な予感がよぎる。
主人がこんな姿になったんだ。人間の彼がどうなるか不安で堪らなくなる。
館に攻め入る妖怪の数は当初予想された数より、かなり少なかった。特に彼が出ていった方角から来る妖怪は殆ど居なかった。彼が数を減らしてくれたのだ。
彼の足取りを追っていく内に魔法の森と妖怪の山で人間の子供が現れたという情報を得た。だけど、妖怪の山と魔法の森の距離は遠い上にその間で目撃情報が無い事から、妖怪の山に現れた者は別人だろうと判断した。
魔法の森なら彼が出ていった方角とも一致する。それでも魔法の森で彼の消息がわからなくなる。
今日も私は唯一の友達を探す。
今も私は探している。
彼が居なくなって2年。
彼は未だ見つからない。