目が覚める。
何処だここは?
最近よく寝ていたパルスィの家では無い。昔懐かしい紅魔館のような洋風の天井だ。
ベッドに寝かされていた。
俺は風見幽香に叩きつけられて意識を失った。
普通なら殺されてる筈だ。なら、なぜ生きてる?
いや、状況確認が先だな。
「円」を使う。ここが何処だかわからないが、1人感知した。かなり近い、というか扉を隔てた向こうに誰かいる。
扉を開ける。
「あら、目が覚めたのね。」
風見幽香が食事していた。
「テメェ、何してやがる?」
「見ての通りよ。......そこに座りなさい。」
そこと言われて、風見幽香の向かえの椅子に座る。
「人間は食事を取らないと死ぬでしょう?」
「妖怪は必要無いのか?」
「これは趣味みたいなものよ。」
「.........どういうつもりだ?襲撃者を殺すでもなく、こんなことをして。..........俺が今すぐお前を襲うとは思わないのか?」
「いいわよ、攻撃できるのならね。..........いつでもかかってきなさい。寝ている時、シャワーを浴びている時、トイレに行っている時、弱ってる時。いつでも相手してあげるわ。ただし、私を倒さないと太陽の畑から出ることは許さないわ。それまで貴方はここの労働力になってもらう。」
何を考えてるんだ?こいつの考えている事がわからない。
「それとも、自信が無いのかしら?また地面に這いつくばるのが怖いかしら?」
安易な挑発だ。頭ではわかってる。
だけど、それでも頭に血が登ってしまう。
「いいぜ、絶対に後悔させてやる。」
俺は目の前の飯を食う。
今は
「一切躊躇しないのね。毒とか疑わないのかしら?」
「警戒する意味がないね。.......ふーん、結構美味いじゃん。」
「随分と上から目線ね。施しを受けてる分際で。」
「俺の方がもっと美味く作れるからな。クソババア。」
「貴方みたいな粗暴なクソガキが料理なんてできるのかしら?」
「ああ、結構自信あるぜ。クソババア。」
「まだ躾が足りないようね。クソババアじゃなくて風見幽香よ。」
「知ってるぜ。最強の四季のフラワーマスターだろ?」
「知ってて、喧嘩を売ったの?」
「勿論、俺に泥を付けたやつだからな。多少の下調べはやってる。」
「馬鹿な外来人だと思ってたわ。........いや、わかってて喧嘩をするんだからやっぱり馬鹿ね。」
「十六夜シャーキャだ。殺されるまで、精々覚えてろよ。」
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それから、俺は何度も幽香に勝負を挑んだ。すぐに倒せると思った。勇儀にだって勝てる事があったからだ。
だけど、実際は俺は一度も幽香に勝てない。
接戦だったり、全く歯が立たない時もある。
肌で感じる実力は勇儀と変わらない筈。勇儀だって手加減はしていなかった。ならばなぜ勝てないのだろうか?
幽香は俺を倒しても殺しはしない。労働力だからと言うが、考えがわからない。自分を殺しにくるやつを生かす意味がわからない。
また、幽香から戦いを仕掛ける事はなかった。俺は幽香の宣言通り、寝ている時や食事時に不意打ちを仕掛けた。それでも結果は勝てなかった。
結局俺は季節が一順しても、太陽の畑から出る事はできていなかった。
最近は不意打ちはやめた。それでは意味が無い事に気が付いたからだ。
万全の風見幽香を正面から打ち砕く。それが俺の目標になった。
家に入る。
「おかえりなさい。全て植えれた?」
「ああ、結構かかったがな。」
俺は黒のタンクトップと長ズボンの格好ではない。白い上下の長袖長ズボンに脛まであるブーツにズボンの裾を入れている。更に鼠色に上着に青いマフラー。頭にはターバンを巻いていた。まるで風来坊だ。ただ、農作業で半袖は植物がチクチクと刺さって鬱陶しいから、この格好は気に入ってる。
「お前の能力を使えば一瞬だろ?何でわざわざ農作業なんかするんだ?」
「それじゃあ、風情がないでしょう。それに生意気な貴方が農作業に勤しむ姿を見ながら、紅茶も飲めるしね。」
「チッ、このドSお花ババアが。」
「悔しければ、さっさと私を倒せるようになることね。」
非常に良い笑顔だ。俺の反応を見て心底楽しんでいるようだ。
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「そういえば、貴方は何の能力を持ってるの?」
これで三度目だ。紅魔館、地底と続きここでも能力を聞かれる。
嫌なら隠しておけと言われそうだが、念無しで妖怪と渡り合える筈もない。
俺個人としては、こいつに能力を教えても構わないと思っている。
何故なら相手十分条件で風見幽香を倒す事が目標だからだ。
相手に能力がバレている。此方は「発」が使えないなど、最悪を想定して勝つ。理想論ではあるが、実現できればこの経験は大きく活きるだろう。
ただ、心配事はこいつが他人に言いふらさないか。特に八雲紫の耳には入れたくない。
「教えてもいいけど、他人に言わないのが条件。」
「何を勘違いしているの?貴方が条件とか言える立場かしら?」
「アンタこそ勘違いするなよ。俺は絶対に曲げない。たとえここで命を落とす事になってもだ。」
幽香と睨み合う。
何もここまで意地を張る必要は無いかもしれないが、隠せるなら能力は隠しておきたいのが、念能力者だ。
いつまでそうしていたか。5分か、10分か。結局折れたのは幽香だった。
「いいわ。誰にも言わない。それで手打ちにしましょう。」
「オーケー。まず能力の源だが、アンタのような妖怪は妖力を元に術を使うが、俺はオーラと呼ばれる生命エネルギーを使って戦っている。」
「霊力じゃ無いのそれは」
「違うね。オーラは人間の精孔と言う穴か出ている。妖怪にはないから使えない。また、目の精孔が開いていないとオーラは見えない。このオーラを扱う能力を念能力と言う。」
「ふーん、通りで何をしているのか見えない訳ね。」
「オーラは体に纏って、強固な鎧となる。また、オーラを体の一部に集中させて攻防力を上げる事ができるが、その他の部位のオーラ量が減少してしまう諸刃の剣でもある。」
「不自然な頑丈さと破壊力はそれが理由かしら。」
「ああ、それと念能力者にはそれぞれ固有能力もある。詳しくは説明が面倒臭いから省くが、俺に限った話だと、俺はオーラに磁力の性質を持たせる事ができる。」
「磁力?」
「磁石だよ。あの引っ付いたり、反発したりする石。」
「なるほど、よくわかったわ。つまり、貴方は普段目に見えない鎧と磁力操作で戦っているって事ね。何か物を引き寄せたり、弾いたりしていたのも磁力操作。」
「その通り。」
「それにしても、随分と丁寧に教えてくれるものね。」
「そりゃ、お前が負けた時の言い訳を減らせるなら、それに越した事はないからな。」
「フフ、生意気な口は相変わらずね。それならさっさと私を倒せるようになることね。」
「チッ、.......ん?」
「円」に3人の人の気配を感知した。
幽香も気が付いたようだ。
「蠅が入ってきたみたいね。」
何しに来たのだろうか?ぶっちゃけ殺されると思わないのか?
「貴方はここで待ってなさい。私は蠅を駆除するわ。」
そう言うと足速に外に出ていった。
待ってろと言われたが、俺は基本的に太陽の畑から出ていない。正直退屈なのだ。だから、着いていった。
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「なあ、やばくないか?ここあの風見幽香がいるんだろう?」
「何、ビビってんだ。こんな畑の端の向日葵一本取るだけだぞ。バレやしねぇよ。」
「いいから早く、取ってこいよ。」
「わ、わかったよ。」
なるほどな。状況はわかった。ただ残念だけど、バレてるんだよな。
「ようこそ御三方。今日は何しにきたのかしら?」
彼らの手には一本の向日葵があった。そこからは特に多くは語るまい。
1人を惨殺し、残り2人を脅して逃がしていた。
「いいのか、見逃して?」
「いいのよ。ああやって人里で噂を広めてくれた方が人間は近寄って来なくなるから。」
そうだろうか。人間が近寄らなくなるってだけなら確かにそうだろう。でも、俺みたいな好戦的な奴は来るだろう。それに侵入したのはあちら側だが、こんな事をしていては悪評判が幽香に一方的につくのではないのか?
折れた向日葵を拾う幽香。何とも言えない表情をしながら家に帰って行ってしまった。
多分、自分の評判なんかどうでもいいのだろう。悪評すら利用している節もあるし。
今だって3人とも殺せばいいものを1人しか殺していない。俺みたいなガキを殺さずに手元に置いている。これに関しては意図が全く読めないけど。
彼女はただ
俺はこいつの事を誤解していたかもしれない。