メディスンと初めて出会ってから2年が経過した。結局、あれ以来彼女が太陽の畑に来る事はなかった。時折、殺気を感じる事はあるから見られている事は確かだろう。ただ、「纏」の防御すら突破できない彼女が俺を殺す術がないだけである。
この太陽の畑には基本的に来客は無いが、妖怪や精霊が来ることがあった。
今も氷の妖精チルノと大妖精が来ていた。
幽香にとって妖精は無害と認識されているのか、人間と違って追い払ったりはしていない。
俺からすれば十分害悪だと思うが。チルノなんて花を凍らそうとしていたし。
まあ、幽香に頭を叩かれていたけど。
幽香との勝負も最近は数が減った。無闇に勝負を挑んでも結果が変わらないからだ。
俺は修行方法を見直す事にした。念を中心に修行する事も間違いでは無い。だが、もっと基礎能力向上を考えた。
つまり念無しでの素の身体能力向上である。
産まれた時から「纏」が使えた俺は、念に頼りきった戦闘方法しかない。霊力や魔力が使える訳では無いが、基礎身体能力が高い事は、「堅」や「凝」でのオーラ攻防力の向上にもつながる。
また「燃」の修行も増やした。オーラそのものをより強固にする為だ。幽香の攻撃をいちいち「硬」で防御し続けるなんて現実的では無い。それではいつまで経っても勝てない。せめて通常の「堅」で防御できないと話にならないだろう。
「それそれ!『アイシクルフォール』!!!」
「えい!」
「喰らえ!『ファイヤフライフェノメノン』!!!」
俺とチルノ、大妖精、リグルの4人で花畑を駆ける。
俺は「絶」で目を瞑り、3人の弾幕を避けていく。
「円」に頼らないで、弾幕が空気を裂く気配を肌で感じて避ける訓練(遊び)だ。
俺からは反撃しない。俺が投げナイフで応戦すると一瞬で片がついてしまう。
また「絶」で裸状態に目を瞑って修行する事で、心を鍛える「燃」と制約と誓約の役割もある。
彼女達との
だから、彼女達の
「はあああ!『ヘイルストーム』!!」
「もう1発!『リトルバグ』!!」
「ご、ごめんなさい!えい!!」
弾幕が降り注ぐのがわかる。
俺は紙一重で避け続ける。
向日葵畑には俺が能力で保護している。万が一にも向日葵に弾幕が被弾する事は無い。
自身は「絶」状態で、向日葵には「周」状態にしておくことができるようになるほど、念が上達した証拠だろう。
最近は新しい能力と
「ああもう!焦ったいな!『クールサンフラワー』!!!!」
「『バタフライストーム』!!!!」
考え事をしていたら、本気の弾幕を張られていた。
直感する。
隙間が一切ない。本来ならこうなる前に対処するか、投げナイフで弾幕に穴を開けるんだが。俺から反撃無しのルールだと詰みだ。
仕方なしに俺は「纏」でオーラを纏い防御した。
「やられた。俺の負けだよ。」
「当然よ!あたいったら最強ね!」
「だ、大丈夫ですか、シャーキャさん。」
「いやー、シャーキャも凄かったよ。よく目を瞑って避けれるね。」
「問題ないね。アンタらの攻撃でダメージ受けるなんてあり得ないわ。」
「ああ!私を馬鹿にしたわね!」
「虫を舐めてると後悔するよ!」
「チ、チルノちゃん落ち着いて。」
「ならもう一回やるか?」
「望むところよ!」
「もちろん!」
挑発すれば簡単に乗ってくるチルノとリグル。気弱な大妖精は2人を止めることができす流される。
だが、この大妖精が1番侮れない。どういう原理かわからないが、瞬間移動を使ってくる。
リグルは蛍の妖怪で虫を使役して、弾幕の数を増やしてくる。
チルノは3人の中で1番パワーがあるようで、弾幕での面制圧が得意なようだ。
殺し合いでは実力不足で楽しめないが、ゲーム感覚ならそれなりに遊べる。
再び「絶」になり、走り出した。
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夕方、俺は幽香と向日葵畑で向かい合っていた。
「ねぇ。」
「何だよ。」
「貴方はここに来て4年間、妖怪や妖精に出会った訳だけど、何か得るものはあったかしら?」
「さあな。」
「何もなかったわけじゃないでしょう?」
「.......お前と戦えた事とか......あとは友人が増えた事か。随分と精神年齢が幼い奴らばかりだが。」
「そう。」
「......逆に聞くけど、アンタは何も無いのか?」
「どうかしらね。子供がいるせいか、騒がしくはなったね。」
「へぇ。なら俺に感謝して貰わないとな。」
「ふふふ。相変わらず生意気な口を利く。」
幽香は日傘を畳み、右肩に乗せた。
俺も「練」でオーラを放ち、臨戦態勢に入る。
幽香は動かない。あくまでも自分は格上でいつでもかかって来いって事か。
望むところだ。
地面を蹴る。一気に幽香に肉薄する。
勢いそのままに右ストレートを放つ。
それを幽香は軽く避けて、右手で手刀を放ってくる。
俺はそれを避けずに攻防力90で背中をガード。
背中に衝撃が走る。だが痛みはない。
「硬」でのガードは必要ないな。
地面に叩きつけられる前に両手を地面に着けて着地。反動を利用して、アッパーを繰り出す。それを幽香が避けるのを確認して、右足で顎を蹴り上げる。それも避けられる。即座にラッシュを放つがこれも避けられる。
幽香がラッシュの隙間を縫って左ストレートを放ってくるが、これはフェイント。本命は左足の蹴り上げ。
案の定、俺の顔面の前で拳は寸止め。拳に釘付けされた俺は、蹴り上げに気が付かない......とはならない。「円」で感知しているからだ。
だが避けるつもりはない。攻防力80で顎をガード。
蹴り上げられるが、痛みはない。
攻防力80でも問題無しと。
すぐに着地して再び突撃。
右ストレートを放つ。幽香は体を左に動かして避ける。
幽香が日傘を横凪に振るう。
俺は屈んで避ける。そのまま左ストレートを放つ。それを幽香は体を左に倒して避ける。
俺のガラ空きの腹に彼女の左手の手掌が放たれる。
腹に攻防力70でガードする。
左手が腹に突き刺さるがダメージ無しって訳じゃないな。地味に痛い。これは手掌が内蔵に響いた感じか。オーラの防御としては機能しているが、上手くやられた感じか。
すぐに反撃のラッシュを繰り出すが、一瞬の動揺を悟られたように肘鉄を顔面に喰らう。
今のは攻防力60だが、ようやく痛みを感じた。
「燃」の修行は実を結んでいるようだな。
これだけ、オーラの攻防力が上がれば安定して戦える。
通常の念能力者相手なら以前のままでも十分だが。本物の大妖怪が相手だとそうもいかなかった。
「堅」を維持したまま戦えそうだ。
そうなると今度は、こちらの攻撃がどれだけの攻防力が必要か確認したいな。以前は「硬」で攻撃しないと碌にダメージが入らなかったが。
攻防力50で右回し蹴りを放つ。
左腕でガードされる。
特にダメージはなさそうだ。多少の衝撃は走っているようだが。
日傘の刺突が放たれる。
俺はバックステップで距離を離す。
すかさず、突撃してラッシュを放つ。
隙間を縫って日傘で殴られる。
俺は両腕ガードする。
結構痺れるな。流石に無防備なところを攻防力50でのガードはきついか。
攻撃時も殆どダメージがないんじゃ、まだ向こうの膂力の方が上のようだ。
「どうしたのかしら?動きが鈍いんじゃないの?」
「ああ?安心しろよ。まだ肩慣らしだ。」
幽香に殴りかかる。
間合いに入った瞬間、幽香が消える。
背後か。
「円」ではなく、肌で気配を感じる。これも修行の成果。
踏み込んだ左足を軸に即座に捻り込みをかけて、逆に幽香の背後をとる。
「オラァ!」
「ぐっ!」
ギリギリでガードが間に合ったらしい。
チッ。今のは決まったと思ったんだがな。
「休んでる暇は無いぞ!オラァ!」
攻防力60で殴りつける。
「ぐっ!」
ガードされるが、幽香の体は後方へ飛ぶ。
即座に後ろに回り込んで攻防力70で蹴る。
「がっ!」
これもギリギリでガードされるが、空中で大勢を立て直せない幽香の背後に回り込んで殴る。
「グアっ!」
攻防力70でダメージが入り出すな。より決定打を狙うなら攻防力80で攻撃する必要があるか。
「攻守交代だな。」
「そうね。なら今度はこちらからいくわ。」
幽香が此方に接近してくる。いつも受け身だった彼女が攻めの動きに入った事で俺は意表を突かれた。
咄嗟に右拳で殴るが、背後に回られる。
すぐさま左裏拳で対応するが、屈む事で避けられる。
隙ができた俺の顔面へ左拳が突き刺さる。
「ガハッ」
殴られた反動を利用して、左足で彼女の顔面を蹴る。
「ゲッ!!」
舐めてたぜ。今のは大いに反省するべきだな。
俺達はすぐに立ち上がる。
「痛み分けね。」
「チッ。」
お互い睨み合い、両者共に駆け出した。
俺も彼女も全力でのラッシュ。
隙間を縫って俺の拳が彼女の腹に突き刺さる。だが、彼女は止まらない。ダメージなど無いと言わんばかりに反撃してくる。もちろん俺もラッシュはやめない。
今度は右回し蹴りが入る。
徐々に俺の攻撃ばかりが決まってくる。次第に彼女は防戦一方となる。
「オラァ!」
「グッ!」
俺の拳が腹に刺さり、吹き飛ぶ幽香。
「どうした?もう限界か?」
「はあ、はあ、はあ。」
幽香は俺の挑発には耳を貸さずに日傘を俺に向けて来た。
次の瞬間、無数の妖力弾が飛来する。
チィッ!弾幕か!面倒くせぇ!
飛んでくる弾幕を全て弾く。だが、途中から弾幕の数が増える。
くそっ!向日葵からもかよ!
無数の向日葵からも妖力弾が放たれる。
流石に手数で押し切られ、俺は「堅」で全身を覆い、ガードする。
暫く弾幕を浴びせられるが、耐え抜く。
視界が晴れたそこに幽香の姿は無い。
すぐに「円」を使い背後にいる事を確認。
振り向くと、日傘の先から黄緑色の光線を放つ姿が見えた。
「マスタースパーク」
「しまっ......!」
俺は光に飲み込まれた。
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「スペルカードルール?」
「そう。人間が簡単に異変を解決できるように、妖怪が簡単に異変を起こせるようにする為の新しい
夜になり、俺が作った飯を2人で突きながら話をする。
「それがどうかしたのか?......まさか近々異変を起こす気か?」
「まさか......。弱者のお遊戯に興味は無いわよ。近々、次代の博麗の巫女のお披露目があるそうよ。それに合わせて異変を起こる予定だそう。」
博麗の巫女。
そう言えば、俺が幻想郷に来たばかりの頃に聞いた名前だ。もしかすると、あの日に会った少女かもしれない。正直、あの大人しそうな少女が妖怪と戦えるのか疑問はあるが、あれから9年も経っている。年齢としては14歳。いつまでも5歳児のイメージでは失礼か。
「弾幕ごっこか。霊力を操れない俺は、投げナイフでちまちま応戦するしかなくなるな。」
「ふふふ、幻想郷最弱も近いわね。」
「うるせぇよ。アンタも興味無いんだろ?なら別にどうだって構わないさ。」
放出系の能力者なら、何とかなったかもしれない。だが、念弾等はそれはそれで殺傷力が高すぎるから結局使えないだろうが。
「お前はそんな情報をどこで仕入れてるんだよ。」
「新聞記者気取りの鴉天狗天狗とか。スキマババアとかかしら。」
聞き捨てならない言葉が出た。
「アンタ、八雲紫と知り合いなのか?」
「.......ふん、ただの腐れ縁よ。」
少し不機嫌になる幽香。
どうやら仲はあまり良く無いようだ。
だが、それよりも確認しないといけない事がある。
「俺の事を話していないのか?」
「ん?.......言うわけないじゃ無い。地底からやってきた人間がいるなんて、紫に言っても厄介事になるだけよ。」
なるほど、確かにそうだ。だけど、それはいいのか?
「だけど良いのかよ、それ。」
「何で私がわざわざ、あのスキマババアに気を遣わなければいけないのかしら。」
相当仲が悪いようだ。話題を変えよう。
「で、異変って何が起こるんだ?」
「さあ?でも何処が起こすかはわかってるわよ。」
「何処なんだよ?」
「新参の巫女には新参の妖怪を当てると言えば、心当たりあるんじゃ無いかしら?」
そう言う幽香の顔はいやらしいニヤニヤ顔だった。