さて、俺の直感が正しければこれから向かうと相手はかなり危険な匂いがするんだが。
嫌な予感を感じながら、地下の部屋に向かう。
今誰も居ない状態で逆に良かったかもしれないな。
お嬢様と咲夜が、居ないこの状況がベスト。宴会から帰ってくるまでに最短で4時間。それを予測したうで、早期解決を図らないといけない。
扉を開けて中に入る。
血の匂いがムワッと広がる。この匂いも懐かしいな。
「フフフフフ、今日もオモチャがキタァ」
今日は最初からフラン様か。どうにも狂気がより強くなっているような気がする。
「アハハハハ!ソレェ!」
問答無用。いきなりの突貫。
速力は中々のもの。流石は最強種の吸血鬼。
俺は体を左にずらして、飛んでくるフラン様の射線から逃れる。
そのまま横を通り過ぎる前に、フラン様の右手を掴む。彼女の勢いを利用して、左足を軸に体を右回転させて、裏拳の要領でぬいぐるみの山へ投げ返した。
「キャハハハハ!」
すぐにぬいぐるみの山から這い出てくるフラン様。
「もう!女の子を物みたいに投げるなんてダメだよ!」
お気に召さなかったようだ。
「それは失礼しました。レディに対して配慮が欠けていました。」
「わかればいいのよ!でもスゴイ!よく見えたね!お兄ちゃんは何の妖怪なの?」
どうやら妖怪だと思われているようだ。まあ、吸血鬼の攻撃を生身で凌ごうとする人間は普通はいないよな。
「えい!」
可愛らしい掛け声と共に頭上から振り下ろされる拳。それは掛け声とは裏腹に、岩をも砕く破壊の鉄槌。
俺はそれを右手で優しく包み込む。乱暴に扱うなと言われたばかりである。
とはいえ、この速度を殺しきるにはフラン様の拳を破壊してしまう。だから、そのまま左手でフラン様の膝を持ち上げる。俺の頭上でくるりと宙返りするフラン様。そのまま彼女を地面にストンと着地させた。
「妖怪ではありませんよ。人間です。」
「え?人間?」
キョトンとした顔で振り返るフラン様。
「挨拶が遅れましたね。お久しぶりです。シャーキャです。」
その瞬間、先程よりもより速い拳が飛んでくる。
即座に背後に回って避ける。
今までと雰囲気が変わった。さっきまではオモチャで遊ぶような無邪気で無機質な殺気だった。だが、今のは指向性を持った憎悪の殺気だった。
「嘘つき.......」
「フラン様?」
「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきィイイイイイ!!!!!」
地面が爆ぜた。俺は後方に飛んで回避する。
砕け散った破片が散乱する。
「私と友達になるって言ったのに!遊んでくれるって言ったのに!何で居なくなったの!!」
フラン様.......いや、狂気ではなく素で怒ってる。........妹様か。
狂気よりも怒りが上回った訳か。
苦い経験が頭をよぎる。
3年前にメディスンと喧嘩した時の事だ。結局解決しないまま、今も尾を引きずってる状態だ。ましてや今回は完全に俺に非がある。
「申し訳ありません。約束を守れませんでした。」
「...............」
頭を下げる俺をじっと睨みつけてくる。ここで更に怒鳴られると、いよいよ収集が着かなくなるから助かる。
「どうしたら、許してくれますか?」
「今度こそ約束を守って。それと.........今から
「わかりました。」
俺は二つ返事で了承した。
「じゃあやろっか!!」
妹様が叫びながら弾幕を放ってきた。
最近見た弾幕ごっことは違う殺意のある弾幕。スペルカードルールのような隙間はない。当たれば痛い程度ではもちろんない。さしずめ死の雨と言ったところか。
最強種の吸血鬼。それも凶悪な能力の持ち主相手に受身で対応する愚挙。普通ならありえないが、今回は仕方ない。精々死なない事を祈るとしようか。
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4つの炎の大剣が空間を埋め尽くすように振われる。飛び散った破片が不可視の力によって爆散する。何千もの弾幕が雨の様に降り注ぐ。この部屋は正に死の空間。
その空間を俺は駆け抜ける。やっている事はチルノ達との遊びと大差ない。ただ飛んでくる攻撃が致死性が高いだけだ。ただ目隠ししていない分、こちらの方が難易度が低いかもしれない。
特別速く走る必要はない。あえて立ち止まったりしながら、緩急をつける。緩急にリズムをつけたり、ずらしたりしながら妹様の攻撃を翻弄する。
どうしても回避不能になれば、その時は
それにしても狂気に染まらずにこれだけの攻撃をしてくるとは、遊びと彼女は言っていたが、これは怒りをぶつけられていると考えるべきだな。
「堅」を維持する必要はない。レーヴァテインに対しては、オーラで防御しても熱までは完全に防御しきれない。だから、「周」で強化したナイフで対応する。弾幕に関しては、そもそも全て回避するつもりで避けれない場合は、
よって「纏」のみでオーラの消費を最小限に持久戦を可能にする。
「円」で常に周囲の状況を把握し、4人の妹様の行動を監視する。
それぞれが好きな様に弾幕や炎剣、破壊能力を行使してくるのを感知し、適切な対応をする。
背後で妹様の1人が掌を握る動作を感知する。
その瞬間に地面に落ちていたぬいぐるみを蹴り上げて、俺の背後に飛ばす。
その頃にはぬいぐるみは爆散し、ちぎれた布と綿の塊になった。
それを目視する事なく、目の前の弾幕を姿勢を低くして避けて、炎剣を右に跳んで回避する。
再び掌を握る動作を感知したので、今度は跳んでくる弾幕を射線上につかせて、弾幕を爆散させる。
いくら最強の能力を有しても、当たらなければ効力を発揮する事はない。
無限に等しい時間、回避に専念していたが、次第に攻撃の流れが読めなくなってくる。
「あはははははははははははっははjsじゃhsjsjsっっははははははh!!」
彼女を見れば、ギラギラの輝かせた目で此方を見ていた。
再び狂気に呑まれたようだ。
いい傾向だ。狂気が面に出てきたと言う事は、狂気が怒りを凌駕したと言う事。それはつまり、怒りが収まってきたと言う事だ。
暴れまくって、落ち着いてきた証拠だ。
あとは彼女が疲労で攻撃を止めるまで、回避していればいい。
俺の動きを見て、的確に仕留めようとしていた動きから、ただ力を振り回すだけの動きに変わる。大振りなり、攻撃の流れが読みにくいが、その分彼女の消耗が大きくなる。
彼女の攻撃力は凄まじい。直撃すれば普通の人間なら、一瞬で肉塊になるだろう。だが、俺にとってはその攻撃力が逆に都合が良かった。
彼女が攻撃を空振る度に、瓦礫が増える。それを盾に破壊の能力から逃れる事ができるからだ。
これがお嬢様ならもっと苦戦しただろう。
さてそろそろ、フラン様も疲れてきたようだ。
狂気的な笑いは収まっていないが、肩で息をしている。
全ての攻撃を縫うように、3本のナイフを投げて、3人の偽物のフラン様を消す。
我ながら投げナイフの腕も上がったものだ。こんな曲芸染みた真似ができるとは。今度咲夜と10年ぶりに投げナイフを競ってみるのもいいだろう。
消えた分身に驚き、気が逸れてる彼女の背後に周り、優しく首を手刀で叩く。
意識を失った彼女が倒れる前に抱える。
そのままベッドに運び寝かせる。
「おやすみなさい、妹様」
これで機嫌が直ってくれるといいのだが。
俺は荒れた部屋を片付けて地下室から出て行った。