博麗神社の境内は騒がしかった。異変解決後の宴会だ。異変に関わった者が中心だが、それ以外の人外達も参加していた。
「よくもまあ、これだけ集まるものね。」
「幻想郷は宴会好きしかいないからな!」
「ただ、馬鹿騒ぎしたいだけでしょ。」
「そうとも言うぜ。」
開始の音頭はやった訳では無いが、好き勝手に酒を煽り、ツマミを口にしている。上空では妖精達が弾幕ごっこに興じていた。
騒がしい連中だと見下しつつも、私自身も酒は嫌いでは無い。
何が楽しいのか終始、ヘラヘラと笑いながら喋る魔理沙と酒を飲んでいたら、今回の異変の首謀者が子分を引き連れてやってきた。
「これはこれは、博麗の巫女とじゃじゃ馬魔法使いじゃないか。」
「何よチンチクリンの吸血鬼が。負け犬の分際で粋がってるんじゃないわよ。」
「まあまあ、いいじゃないか。異変が終わり酒が飲めるんだったら、なんでもいいぜ!」
「この私が自ら足を運んだのよ。隅で寂しく飲んでいる貴女に慈悲をくれる事を感謝しなさい。」
「何でやられたのにこんなに偉そうなのよ。」
「お嬢様に対する礼儀がなってないようね。それでも幻想郷の守護者なのかしら?」
「あら?力の差を理解できてないのね。もう一度、這いつくばらせてあげようかしら?」
「こいつらも大概騒がしいぜ。そう思うよな、パチュリー?」
「どうでもいいわ。本当なら、私は図書館で本を読んでいたかったのだけど。レミィがうるさいからこうして付き合ってるだけよ。」
「今度、もう一度第図書館に行ってもいいか?」
「いいけど、この前渡した本を返しなさいよ。」
「いつかは返すぜ!」
「それって、いつなのよ.........」
魔理沙はあの魔法使いと仲良くなったようだ。魔法使い同士、話が合うのだろう。
それに対して、何で私はこんなチンチクリンの相手をしないといけないのか。面倒で仕方ない。
門番の妖怪はまだ話がわかるタイプだが、この幼女は唯我独尊。此方の話を聞こうとしない。
そして、側に着いているメイド。異変の時には、凄まじい殺気を放っていたから、警戒していたが、何事も無かったように振る舞っている。どういう事なのだろうか?
あと、私に黒歴史を残した少年と何かしら関わりがあると見て、個人的に話したいが、この場では魔理沙や吸血鬼がいるので話せそうにもない。
とりあえず現状は再び殺し合いが始まる事はないというだけで十分か。面倒臭い事態にならなくて安心する。
目の前でゲラゲラと煩い幼女吸血鬼に徳利を投げつけながら、そんな事を考えていた。
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お嬢様お供として、博麗神社にやってきた私。お嬢様に恥をかかせる訳にはいかない。
そう意気込んで宴会に参加した。
宴会場には様々な妖怪や妖精等の人外が集まっていたが、ここでもお嬢様の威光は素晴らしかった。お嬢様の元へ集まってくる妖怪。時に取り入りたい者、逆に取り入ろうとする者。好奇心で近寄ってくる者。全てを受け入れ、瞬く間に傘下にした。
寄って来ないのは、隅でちびちび酒を飲んでる博麗の巫女と魔法使い。彼女達は異変の解決者だ。
それでもお嬢様は普段と変わる事なく、振る舞っていた。自身を打ち倒した人間に勇者の称号を与えてやると言っていた。博麗の巫女は興味が無いと言っていた。
この博麗の巫女には、個人的に聞きたい事がある。
何故、シャーキャの事を知っていたのか。
異変の時は頭に血が登って、無理矢理吐かせようとしたが。だが、今は彼が戻って来てくれたので、幾分落ち着いて考えられる。
冷静になって、違和感に気付く。この博麗霊夢もシャーキャの名前を聞いてから様子が変だった。並々ならぬ気迫で私に戦いを挑んでいた。
ただの知り合いという訳では無いのだろう。何か深い事情がありそうだ。お嬢様の相手をしながらも、時折此方へ警戒の眼差しを送ってくるのが証拠だ。
だからこそ、情報は知っておきたい。私の敵になるかもしれないから。
だけど今、この場では聞けない。周りの目が多すぎるからだ。
向こうも同じ事を考えているのだろう。視線を合わせる度に牽制してくる博麗霊夢を見ながら考える。今は急がなくても、そのうち話す機会が来るはずだ。この点はお互い利害が一致してるはずだから。
それに帰って、彼から10年間の事を聞き出せばいい。彼は今、紅魔館にいるのだから。
そんな事を考えながら、お嬢様のグラスにワインを注ぎ、飛んでくる徳利を時間を止めて回収するのであった。