ラングタン・リラング。標高7227m。ヒマラヤ山脈のほぼ中央の位置に存在する山。
「うぅ〜。寒い。」
ジジイから貰った物は、鞄と携帯食料、水筒に衣服。衣服も必要最低限しか無い。登山の途中に転がっていた死体から、防寒着を拝借した。いくら、オーラで身を包んでも寒いものは寒いからね。
俺はポケットからコンパスを出す。
さて、西か東。どちらに行こうかな?俺は手に持ったコンパスをじっと眺める。東はアジア、西は中東。どっちにしようかな?
あれ?
今、コンパスの針が?気のせいか?まあいい。どっか適当なものは〜、あった。
俺は落ちてた棒(たぶん鉛筆かペンの類い)を拾い、斜面に転がす。棒は左側の方へ転がり落ちて行った。
よし。西へ行こう!
西へ行くなら最初に向かう場所は決まっている。最近になって、あの事件もどうも世界に明るみになった様だけど。
正直、俺にとっては他人事のようなもんだ。記憶が無いし。それでも行かなければ成らない気がした。
俺はカトマンズのトリブバン空港を目指した。
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無事イラクのバグダッドに到着。普通に飛行機に乗れたね。やっぱり、『組織』のカードは凄いな。ただ、他の乗客には奇異な目で見られた。まあ、仕方ない。こんな子供が親を伴わずに飛行機に乗ってるんだから。「絶」で気配を絶っていると、そのうち興味が無くなってきた乗客は俺を見なくなったんだけど。
2年前に湾岸戦争でにより治安が悪い様だから、すぐに『組織』のホテルへ向かう。
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ホテルへのチェックインもカードで簡単に済んだ。自室に入る。
中はイラクとは思えないほど綺麗だな。
荷物はほとんど無いから、ベッドの側のテーブルに置く。地図とコンパスを持ってこれから向かうルートを考える。
観光バスを利用して、クルディスタンへ向かおう。バグダッドよりもクルディスタンの方が治安もいいらしいし。クルディスタンに着いてから現地の交通機関か最悪、徒歩でハラブジャを目指そう。念を使える俺は並みの人間の体力を大きく凌駕する。それでも数日はかかるかもしれんな。
ある程度の見通しをたてたところで次の作業に移る。部屋にあるグラスに水を目一杯注ぐ。そこに木の葉を浮かべる。
これから行うのは、「水見式」だ。念能力の「四大行」の内の「発」これは、個人の必殺技や能力を指す。また、「発」は6種類の性質に分類される。
・強化系:何かを強化するのが得意。
・変化系:オーラを別の性質に変えるのが得意。
・放出系:オーラを遠くへ飛ばすのが得意。
・具現化系:オーラを別の物に具現化するが得意。
・操作系:何かを操作するのが得意。
・特質系:他に類の無い特殊なオーラ。
ざっくり説明するとこんな感じだ。これらを調べるための方法が「水見式」だ。この水を張ったグラスに木の葉を浮かべた状態で「練」を行うと性質がわかる。
・強化系:水の量が変わる。
・変化系:水の味が変わる。
・放出系:水の色が変わる。
・具現化系:水に不純物が出現する。
・操作系:葉が動く。
・特質系:その他の変化。
これらの法則で判別する。俺もそろそろ「発」を覚えたかったしね。これから1人で旅をしていくには、必要であろう。だからといって、誰かに俺の能力を知られたく無かったから、道場とかでは一切やっていなかったんだ。でも、実は大体自分の性質がある程度、予想できていたりする。さらには既に「発」が今までに何回か無意識に使っていた可能性もあると思っている。それも今から確認すればいいか。
俺は椅子に座り、グラスに両手を翳す。
「練」
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どうやら、見た目の上では変化はない様だ。水の量が増えたり、色が変わったり、不純物ができる訳でもない。葉っぱが動いたりもしない。ならば、残るは.........
俺は水に指を入れて、舐めてみる。
...................甘い。
どうやら、俺の性質は変化系の様だ。俺の予想も変化系だったから、予想通りだ。つまり、「発」もやはり今までに無意識で発動していた様だ。
ああ〜。せっかく、俺の能力を試行錯誤考える楽しみがあったのに。でも、最初から能力のルートが決まってたのは、修行の効率上いい事なのかもしれない。複雑だなぁ。
今回の「水見式」でわかった俺の能力のルート上。変化系だが、具現化系の修行は一切要らない。代わりに放出系の修行が必要になりそうだ。もともと、強化系はどの系統になってもある程度は修行するつもりだったからいい。だが、放出系は変化系能力者が使うと本来の60%の出力しか出ない。これは、かなりの無駄だ。よって、能力の行使に必要なレベルまでの修行に留める。あとは変化系と強化系の修行に全力を注ぐ。これで決まりだ。
早速、修行をしようかな。さすがにホテルの室内で強化系の修行はできないから、変化系の修行からかな。最初の変化系の修行は、「纏」でオーラを纏った状態で、指先に数字の『0』を作る。
んっと。できた。0.5秒と言ったところかな。
次に『1』を作る。これも0.5秒。確か『0』〜『9』を連続で5秒以内でできれば理想的だったかな。..............もうできそうじゃん。一応、他もやってみるか。
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普通にできた。まあ、やっぱり得意系統だからかな。じゃあ、次のスッテプに行くか。次は数字よりもより複雑な図形をオーラで描く。
何にしようかな。じゃあ、コンパスで。
って、できた。さすがに普段肌身離さず持ってたコンパスは簡単か。なら、時計はどうかな?たぶん、これもコンパスに似てるから簡単だろうな。なら、この世界地図を描くか。
ん〜〜〜〜〜〜〜〜。...........難しい。幾ら何でも複雑すぎる。まあ、コンパスや時計が描けるなら十分だな。
まさか、修行開始10分で終了するとはな。本来ある程度の念の修行を積んだところで「発」の修行を行うのが、俺は他人に能力を知られたく無い気持ちが強かったために、一切触れようとはしなかった。挙句には、応用の「七大行」を先にしかも完璧に習得してしまった。それでもずっと、「発」に触れなかった。そんな状態で念を使っている内に、無意識に「発」を使ってしまうぐらいには、勝手に変化系の能力が成長してしまってた可能性が高いんだろう。
1日1系統の修行が基本だが、10分はあまりにも短過ぎる。強化系はできないから、放出系の修行をするか。放出系最初の修行の「球飛ばし」は既に「円」を半径300mで使える俺には簡単にできるだろうから、「浮き手」の修行をしよう。
床に手をつき、片手で逆立ちをする。オーラを体の中にためて、閉じた精孔を一気に開きオーラを放出する。
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全然、浮かねぇ。いくら、「円」ができても「浮き手」は簡単にはいかんな。体を70cm浮かせればいいが、俺は能力使用に必要な放出系の力が欲しいだけだから、40cmを目標に修行しよう。
俺は飯やトイレ、風呂以外ではひたすら逆立ちし続ける日々が続いた。
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数週間後。
ようやく20cmか。放出系はやっぱり難しいや。さて、予約していたバスの時間もあるし、そろそろ行くか。
外に出る。この街の治安は控えめに言っても最悪。子供が1人で歩いてると何があるかわからない。「絶」で気配を絶って行動する。たとえ、姿が見えていても、人々の関心はこれで弱まる。
バス停に到着。受付でカードを見せる。
「No.9372964 シャーキャ様ですね。2号車の4番シートでございます。」
「おう。ありがとう。」
4番シート。窓際だ。何かあった時窓から逃げやすい位置だな。スナイパーがいたら真っ先に狙われるが、オーラで守るから大丈夫。
街と違って、バスは自分で動く事ができない。つまり、狙われれば逃げる事ができない訳だ。つまり、「絶」で気配を消すのでは無く、オーラを纏ったまま、「隠」で気配を薄める。この状態でバスに乗るのが最善。バスに乗る時間は休憩を含めて5時間。こりゃ目的地に着いたら、1日休むかね。
俺はバスに乗り込み「円」「堅」「隠」を使う。窓の外の砂漠の景色を眺める。戦争の直後だけど、幹線道路とかは活発に自動車が行き来してるんだな。ただ、やっぱり少し都会から抜けると砂漠と瓦礫ばっかりだな、この国は。
俺は5時間、念を使いながらバスに揺られる。行き先はクルディスタンのサーワン。
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ああ〜疲れた。5時間も「堅」「円」「隠」を使い続けるのは俺のオーラ量じゃ正直しんどい。さっさと旅館に荷物置くか。
ここの旅館は『組織』が運営している旅館ではない。つまり、カードでごり押しができない。旅館の人間に上手く取り繕わなければならない。
「すみません。今、部屋は空いていますか?3日間、宿泊したいのですが。」
「あ、ああ。3日だな。今、部屋空いてるから、1番手前の101でいいかな?」
「はい。ありがとうございます。」
あっさり部屋の鍵を手に入れた。
おかしい。明らかに不自然なのに簡単に泊めてくれるなんて。それに、ここの人間の顔色が悪い。極め付けは、宿泊している人間の数が少なすぎる。いくら、田舎でも俺とあと数名って。
ここの旅館が異常なのか?これは何かあると考えた方がいいだろうな。
部屋に入る。特におかしな所は見当たらないな。一応「円」や「凝」も使ったが、不審な点は見当たらない。この旅館におかしな所は無かった。でも、それなら俺が子供だという事が気にならないような焦燥感の原因がわからない。外に出てみよう。
旅館の外に出てみる。時間は夜だけど、閑散とし過ぎて無いか?1人も人間が見当たらないなんてあり得ないぞ。わからないな。戻るか。
旅館に戻る。
原因がわからなければ、直接聞くしかないな。
俺は中にいたおっさんに話しかける。
「なあ、おっさん。この街になんかあったの?すげー静かなんだけど。」
「ん?なんだよ。ガキはもう寝る時間だぞ。」
「そう言わずにさ。大人の大きな器を見せてくれよ。」
「生意気なガキだな。話したらさっさと帰れよ。」
........................................................へえ。
「ああ、ありがとう。」
「そうだなぁ。事の発端は、この街にある噂が流れ始めだしたことかな。」
「噂?」
「ああ、なんでも夜中に墓から骸骨が出てきて近くの人間を襲うとかそんな噂だ。」
「そんなの、誰かが流した悪戯じゃないの?」
「ああ、最初は誰しも悪戯だと思ったよ。だが、数日前に夜中に出歩いた奴が何人かが居なくなったんだよ。」
「警察とかはどうしたんだよ。」
「今も捜査中だが、原因の特定には至っていませんってよ。」
「ふーん。そもそも、それっていつの出来事だよ?」
「4日前だな。」
「かなり最近だな!...............まあ、参考になったよ。ありがとう。じゃあ、お休み。」
「ああ、今日はゆっくりたっぷりお休み。」
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さて、長いバス移動で疲れが溜まってるけど、荷物をまとめますか!
俺はベッドに広げていた衣服を鞄に詰め込む。また、歯ブラシやハンガーの道具も鞄に仕舞う。
荷物を全て鞄に仕舞った俺は、旅館の窓を開ける。
せっかく旅館で泊まれると思ったんだけどなぁ。結局、野宿かよ。
窓から外に出る。「絶」で気配を消して走る。
あのまま旅館で寝てたら、あの街の連中のお仲間になっちまうだろうな。もし念能力者なら操作系かな。とりあえず、ハラブジャを目指しながら適当に野宿するか。
西に行くか、東に行くかでルートが分岐してます。いつか東のルートも書きたいですね。