鋼の心   作:モン太

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春雪異変
凶兆


妹様が外に出るようになってから、半年以上が経過した。あれからも紅魔館は変わらぬ日々を送っていた。だが、異常はすでに起こっており、誰の目にも違和感を拭えない状態になっていた。

 

月は5月。暦上は夏。だが、幻想郷に夏が訪れる事はなく、ずっと冬が続いていた。

 

窓から眺める景色は今日も雪模様。

 

これ、どう考えても異変じゃね?

 

今回の首謀者は誰なのか。季節を変える事ができる奴なんて、随分と力を持った妖怪の仕業だな。

 

思い当たるのがチルノくらいしかいないが、いくら妖精として強くとも、こんな事はできないだろう。

 

博麗の巫女が解決してくれる事だろう。ただ、聞くところによると、スイッチが入るのに時間がかかるタイプらしい。

 

もう暫くは、この状況が続くかもしれない。それでもいずれは博麗霊夢が解決するだろう。異変解決は博麗の巫女の仕事なのだから。

 

そう思ってたのだが、

 

「これからお嬢様の命で異変解決に出かけるから、紅魔館の守りをよろしくね。」

 

博麗霊夢に対抗心を燃やしたお嬢様が咲夜を異変解決に送り込んだのだ。咲夜も人間だから有りだろうとの事。

 

「何で俺には声がかからないんだ?」

 

「貴方、空を飛べるの?」

 

「あー、そう言うことね。」

 

そう言う事なら仕方ない。まあ、基本的にスペルカードルールが適用だから、俺が行っても仕方ない。相手が守らない場合は別だが。

 

そうなるとどうするか…….

 

俺は再び、外を見る。

 

外は雪が吹雪いてる。

 

咲夜を見る。

 

彼女の着るメイド服は半袖に膝上のスカート。これは太ももに投げナイフのベルトをつけているからだが。

 

ただ、それにしてもその格好では寒過ぎるだろう。

 

「ちょっと待て」

 

俺は自室から、マフラーを持ってくる。

 

「せめてこれでも巻いて行け。」

 

「これは?」

 

「俺がここにくる時につけてたマフラー。ちゃんと洗ってあるから安心しろ。」

 

「別にそこは気にしてないわ。でも、いいの?最悪、無くすか破れるかもしれないわよ。」

 

「ああ、構わない。それとこいつも」

 

俺はポケットから記憶の懐中時計(リバースタイマー)を渡す。

 

「ありがとう。行ってくるわ。」

 

「ああ。」

 

咲夜の目が紅くなった瞬間、居なくなった。

 

時間を止めて飛んだか。

 

さて、パチュリー様の所にでも行くか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あら、シャーキャ。咲夜はもう出たの?」

 

「ええ、今し方出て行きましたよ。時間を止めて移動しているようで、凄まじい速度で移動してますね。」

 

「そんな事もわかるのね。」

 

まあ、具現化した懐中時計が「円」の役割があるからな。

 

「ええ、企業秘密ですが特別に少しばかり情報が必要だろうと思いまして。」

 

「成程ね。それで、見返りに何が欲しいの?ただでその情報を教えてくれた訳じゃないでしょう?私が等価交換を重んじる事を知っているからね。」

 

「パチュリー様に遠見の魔法を使っていただきたいと思っています。」

 

「咲夜の動向を見て欲しいのね。」

 

「ええ。」

 

ついでに博麗霊夢の動向も監視できれば尚良し。

 

「随分と過保護ね。その優しさを少しでも美鈴にも分けてあげたらどうかしら?彼女はこの雪の中、ずっと門の前に立ってるのよ。」

 

「美鈴は今も門前で居眠りできるくらい余裕があるので、不要かと思います。」

 

そうして、出された水晶に咲夜が映される。

 

最初の行先は博麗神社のようだ。

 

まあ、妥当だな。

 

博麗霊夢はこたつで寝転んでいた。

 

成程ね。確かに噂通りスイッチが入ってないようだ。それにしても、あの大人しかった子供が博麗の巫女に成長するなんてな。ある意味、才能の塊って奴か。

 

「初めて間近で見ましたが、こんな怠惰な人間があの博麗の巫女とは。才能とは何とも残酷なものですね。」

 

「自分を棚にあげて言える事じゃないわよ。」

 

「昔に伝えましたが、念は人間なら誰でも習得可能です。俺は寧ろ才能が無い側ですよ。霊力も極僅かでそれを操る術もない。お嬢様や妹様、咲夜の能力こそ、正に才能でしょう。」

 

「そうなのだけど、それでも納得いかないわ。」

 

「ところで小悪魔はどこにいるんですか?」

 

「あそこよ。」

 

光の縄でグルグル巻きになった芋虫が床を這っていた。

 

また、何かしたんだろう。

 

「……..従者はちゃんと選んだほうがいいと思いますが。」

 

「そうね。考えておくわ。」

 

小悪魔がウーウーと唸る。捨てられると思ってるんだろう。

 

そう思うならやめればいいのに。まあ妖怪がそう簡単に変わるのは無理だろう。

 

視線を水晶に戻すと、咲夜がチルノや他の妖精達を弾幕ごっこで蹴散らしながら、情報収集していた。

 

「春度ってなんだよ。本当に幻想側は何でもありだな。」

 

「問題は主犯がそれを集めて何をしたいかでしょうね。」

 

やがて空に大きな穴が現れ、咲夜は入っていく。

 

空に大穴って……..。

 

その中では魔理沙と剣士の少女が戦っていた。

 

「戦況は魔理沙が押されてますね。」

 

「相性が悪いんだわ。十八番のマスタースパークが切り裂かれて通用してないし、機動力も彼女の足とどっこいどっこい。逆に向こうの斬撃と弾幕をいなす事は出来ず、回避するしかないからね。」

 

そうしてる間に咲夜が魔理沙と交代し、魔理沙が先に行った。

 

「懸命な判断ね。」

 

「それよりも気になるのは、あそこが冥界なら先に向かった2人と咲夜は死んだって事でしょうか?」

 

「どうかしらね。あの剣士の台詞ではそうでは無さそうだけど。」

 

戦いは最初は剣士が優勢だったが、次第に咲夜が手数で圧倒しだす。

 

「咲夜って能力無しでもこんなに強かったんですね。」

 

「まあ、元エクソシストでしょ。近接の斬り合いは寧ろ得意なんじゃないの?」

 

実は彼女が戦ってる姿を見た事無かった。

 

剣とナイフ。どちらも両手持ちの二刀流。武器の重量差からそのまま打ち合えば、剣の重さに押されるはずだが、咲夜は技量でカバーする。

 

無理に力で勝負ぜすに剣の間合いよりも内側に入ったり、間合いが離れたら即座にナイフを投げる。投げナイフに対処している隙に再び懐に入る。

 

結局、能力を使わずに勝利した。

 

「戦闘経験の差ね。」

 

これで弾幕ごっこではなく、暗殺で能力を行使されたら即死だな。

 

やっぱり咲夜もチートだよな。昔から思うのだが、何であんなに自己評価が低いんだ?もっと自信を持てばいいのに。

 

先に進むと、異変の首謀者と思しき女性が霊夢と魔理沙を相手に弾幕ごっこで戦っていた。

 

強いな。一眼見ただけでわかった。弾幕ごっこだからいいが、実際の戦闘なら一筋縄ではいかないだろうな。勇儀や幽香クラスか。さっきの剣士とは正に格が違うな。見たところ、遠距離タイプか。

 

八雲紫が俺にぶつけるにはうってつけか。

 

いや、それよりも……….

 

思考がそれかけたが、俺はその首謀者よりもその背後にある枯れた桜に目がいった。

 

あれか、目的のもの。春度を集めてた目的。

 

首謀者はあの桜を咲かせようとしてるのか。だが、普通の桜なら何もしなくても咲くはず。それをわざわざ異変を起こして咲かせようとする理由はなんだ?

 

そう普通じゃないのだ。冥界にある桜。その時点で普通じゃない。

 

何より俺の直感が警鐘を鳴らしている。あれは咲かせてはいけない。危険だ。

 

何だあの黒いオーラは?確かに樹木には精孔がある。だがあの禍々しい凶兆は一体?

 

このまま座ってるべきではない。オーラは俺にしか見えない。つまりパチュリー様にもあそこで弾幕ごっこをしている3人も観戦している咲夜と剣士にも見えていないはず。

 

「すいません。少しトイレに行きます。」

 

俺はすぐに席を立った。

 

咲夜が危険だ。

 

紅魔館を出る。「絶」を使い美鈴の目を盗んで外へ出る。

 

ある程度移動した所で、俺は記憶の懐中時計(リバースタイマー)の方角を確認する。

 

方角は西北西の上空。

 

大地の意志(マグネティックフォース)発動。地面にN極に、俺の体をN極にする。

 

磁力の反発によって体が浮く。大地の意志(マグネティックフォース)の新技の飛行能力だ。

 

磁力の弾丸(リニアバレット)

 

俺は音速で冥界へ飛んだ。

 

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