鋼の心   作:モン太

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お浚い

念の修行を始めて1ヶ月。今日は途中経過をシャーキャが見るとの事。私に関してはいつも彼といるから必要はないのだけど。

 

今日もあの岩盤地帯で3人が揃う。

 

「じゃあ、今日は途中経過という事で早速、『纏』をやってみようか。」

 

かなり久しぶりだ。あの感覚を忘れていないといいのだけど。

 

自身の心配とは裏腹に私と霊夢は『纏』ができた。しかも、以前よりもスムーズに。

 

「これが『燃』での成果だ。泳ぎ方と同じで一度覚えればまず忘れる事はない。勿論、高度に使いこなす為に鍛錬は必要だがな。」

 

「で、今日はこれを見るだけに呼ばれたの?」

 

「まあ、そう言うな。ずっと瞑想していても退屈だろうから、今日は理論の続きをやろうと思う。無論、残り1ヶ月も『燃』に努めてもらうが。」

 

「まあ、貴方が言うなら仕方ないわね。」

 

「さて、美鈴こっちに来てくれ。」

 

「はい!」

 

美鈴がやってくる。

 

「今から俺が美鈴と組手をする。美鈴にはメガネをかけた状態で戦う。美鈴には俺のオーラが見えた状態での組手となる。そこから、後でオーラを使った技術の説明も一緒にやろうと思う。」

 

「もう一度、シャーキャさんと戦えるとは楽しみですね。」

 

「これはデモンストレーションなんだが………。まあいい。」

 

美鈴が準備運動に入る。かなりの気合の入りようなんだけど、大丈夫かしら。

 

シャーキャも「纏」で身体をオーラで包む。

 

やはり彼はオーラを分厚くはしていない。これはあくまでも私達に見せる為なのね。

 

「では行きます!」

 

美鈴がシャーキャに飛びかかる。右手の手刀が彼の顔面へ走る。

 

それを屈んで避ける。避けた先には既に左の回し蹴りが来ていた。

 

彼はそれを避ける事なく喰らうが、すぐに体勢を立て直す。

 

再び美鈴が今度は左手の手刀を放つ。同じように屈めば右回し蹴りの餌食なる。

 

その後もシャーキャは反撃せずに攻撃を避けるか受け続けていた。

 

美鈴が動きを止める。彼も合わせて止める。終始美鈴が押してるはずだが、その表情は険しい。

 

「………舐めてるんですか?貴方がこの程度で手も足も出ない筈がない。」

 

そうだ。私はこれまで彼の戦いを見ていた。美鈴にも引けを取らない近接戦闘のプロの彼、が一方的にやられて黙ってる筈がない。

 

「ふう……、あのなぁ。これは組手だと言ってるだろう?それにな。そんな事を言うぐらいなら、少しは俺の『纏』を貫いてみたらどうだ。」

 

そう言う彼は自身についた埃を払っていた。成程、どうも全くダメージが入ってないようだ。

 

「このままだとアンタは1000発打ち込んでもダメージ入らないぞ?」

 

「わかりました。ならこれでどうでしょう!」

 

美鈴が腰を深く下ろし、右拳を引く。その右手に虹色の光が集まっていく。

 

「ちょっと、美鈴!」

 

あれは美鈴の『気』を使った一撃。冗談抜きで本気で攻撃しようとしている。

 

私の制止も聞かずに彼へと拳を振るう美鈴。

 

だけどその攻撃は呆気なく彼の左手で受け止められた。

 

「いやぁ、侮辱するような真似をして悪かったけどさ。そんな簡単に挑発に乗るなよ。」

 

目を見開き硬直する美鈴。私も目を疑った。普段の彼が纏うオーラよりも遥かに薄いオーラ。その状態で美鈴の本気の拳を止めてしまったのだから。

 

「ほらよ。」

 

漸く彼が攻撃する。左回し蹴りで隙を晒した美鈴の米神を撃ち抜く。そのまま右に吹っ飛びかけた彼女の左頬に拳が突き刺さり吹っ飛ばす。

 

「うわっ、えぐっ。」

 

隣で霊夢が小さく呟く。

 

吹っ飛ばされた美鈴は、鼻血を流して悶えていた。

 

「本気でやってほしいんだろ?休憩してる暇は与えないぞ。」

 

彼は左手を翳せば、美鈴が引き寄せられる。あれは彼が偶に使ってる能力。そのまま顔面を殴りつける。

 

一瞬殺してしまうのか心配したが、美鈴は立ち上がった。だけどダメージが大きいようでふらついてた。

 

それを見た彼は地面を蹴りつける。地面を砕いて大きなヒビを地面に描く。何をするつもりなんだろう?

 

「ほら、弾幕だぞ。」

 

すると何もしていないのに、瓦礫がひとりでに美鈴へ飛来する。

 

それを避けようとするが、全て彼女を追尾する。それでも全ての瓦礫を砕く。

 

だけど、彼女の背後に回ったシャーキャがナイフを美鈴の首に当てる。

 

「チェックメイト」

 

「はあ〜、参りました。」

 

美鈴が降参して終了。彼女はすぐにパチュリー様に治療された。

 

「シャーキャ、大丈夫なの、蹴られてたけど?」

 

「ああ、問題ねぇよ。」

 

「信じられない耐久力ね。私達もあんな風になるの?」

 

「いや、俺でも美鈴の膂力を『纏』だけで防ぐ事はできないぞ。」

 

「え、でもどうやってあの攻撃を防いだのよ。」

 

「インパクトの瞬間に少しだけ腕を引いて、衝撃を逃してるんだよ。まあ、『纏』でも小手先の技術と組み合わせれば、妖怪の膂力にだって戦えるってパフォーマンスだな。まあ、お嬢様や鬼相手に同じ事をするのはお勧めしないがな。」

 

「そんなの貴方ぐらいしかやらないわよ。」

 

「でも最後の石礫とか物体の引き寄せはなんなの?」

 

よく彼が見せる決め技に引き寄せて殴るものがある。今回は流石に殺すほどの威力ではないが、いつもは恐ろしい破壊力を有する。

 

「それは1ヶ月後にネタバレしようかな。それまで、予想してくれ。これも念の戦闘に於いて大事な要素。戦闘考察力だ。瞬時に判断するものと綿密に作戦を立てるもの。今回は後者に属するものかな。念でなくてもアンタら2人はいつ見てもやってる事だとは思うが。」

 

そうして今回の成果確認は終わった。正直私達の進捗よりも彼が如何に規格外かを改めて思い知らされた。

 

あの美鈴が終始、圧倒されていた。接近戦での殴り合いだけなら、お嬢様以上の美鈴。彼と彼女の戦いは、大人と子供ぐらいの差があった。何も知らない他人が聞けば、耳を疑うだろう。妖怪と人間が戦って、妖怪を子供扱いしたなんて。普通は逆だろう。

 

事実、11年前は美鈴が圧倒していた。オーラの鎧も分厚くしていた彼を殴り倒していた。すぐに割って止めたが、それが彼の怒りを買い、喧嘩に発展したのは、今じゃいい思い出だ。

 

さっきの理屈はわかる。攻撃される瞬間に後ろに衝撃を逃す事はエクソシスト時代に教わった事もある。

 

だが、それを本気の美鈴相手にやるのだ。私も時間停止を使えばできるだろうけど、なんの補助無しにできる訳ではない。

 

どうしても11年前のイメージに引っ張られて、彼の事を過小評価してしまう。彼自身もその傾向があるように見える。自己評価の低さは私も同じ事なのだけど。

 

無論、11年前でも念能力者として彼は完成された存在だったように思う。念能力に関して、まだニワカ程度の知識だが、そう思っている。10年間を経て、念能力以上に戦闘経験が彼を成長させたんだと思う。

 

地底の事はあまりわからないけど、幽香さんのところで5年間戦い続けたものが活きているんだろう。

 

私も力を磨いて彼の隣に立てるようになりたい。

 

「いいから、今教えなさいよ!」

 

彼の腰をお祓い棒でゲシゲシと叩く霊夢を見て考える。

 

とりあえず、彼ににわざと絡もうとする霊夢を阻止するところから始めよう。

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