鋼の心   作:モン太

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シャーキャが咲夜と霊夢に念を教え始めて2ヶ月が経っていた。

 

今日は『燃』の成果の最終確認。3人と見学の外野はパチュリーが召喚した岸壁地帯に集まっていた。

 

「じゃあ、2人とも『纏』をやってくれ。」

 

2人は目を瞑りオーラを纏う。

 

「ふむ。全身を澱みなくオーラが流れてるな。合格としよう。」

 

「久しぶりだったけど、案外忘れないものね。」

 

「泳ぎ方とかと同じで一度覚えたらまず忘れる事はないぞ。無論練習する事でより高度なものにできるが。」

 

「でも前よりスムーズにできたわ。」

 

「これも『燃』の成果だな。」

 

2人は2ヶ月の『燃』の修行によってより強固な『纏』が可能となった。

 

「ねぇ、シャーキャの能力って何なの?………物を引き寄せたり、石礫を弾丸にしたり、あんな事私達でもできるの?」

 

「そうだなぁ。………難しい質問だな。一つずつ答えようか。1ヶ月前の美鈴との組手の映像を見ながら説明しようか。パチュリー様、お願いします。」

 

そうして、水晶に1ヶ月前の戦闘記録が映し出される。

 

映像はシャーキャが美鈴を引き寄せたところで止まる。

 

「実はここで俺のオーラが美鈴についてるんだ。」

 

霊夢と咲夜は目を凝らす。その他のメガネをかけた者達も目を凝らすが見えない。

 

「だめね。」

 

「全然見えないわ。」

 

「四大行の先、応用技の七大行の一つを使っている。オーラを見えなくする技だ。『絶』を応用した高等技術『隠』と言う。」

 

目の前で「纏」を行い、そのままオーラを消したり出したりするシャーキャ。

 

「『隠』を使えば強いオーラを発していても相手には見えなくなる。これに対抗するには『練』を使いオーラを目に集中させる事が最も有効。これも応用技『凝』と言う。厳密には体の一部にオーラを集中させる技だ。」

 

シャーキャは人差し指を立てる。

 

「俺の能力は一体どんなものか?その答えはお前達で見つてみな。最後はネタバレしてやるがな。」

 

「そう言うなら、その『練』の見本を見せてよ。」

 

「霊夢の言う通りだな。いいだろう。『練』」

 

シャーキャの身体からオーラが噴き出す。

 

(凄い力強さね。オーラが充満してる。)

 

霊夢は驚くが、咲夜や紅魔館組は見慣れていたものだ。

 

(あの噴き出すオーラは「練」だったのね。これだけのオーラを練れるなら、やっぱり戦闘には必須よね。)

 

「感じると思うが、この『練』が威圧感の正体と思っていい。お前達も本気で戦う時に霊力や妖力、魔力を身体から放出するだろ?それと同じようなもんだ。」

 

そのままオーラを目に集める。

 

「『凝』は未知の念能力者と一戦交える時の常套手段。相手の能力を探る重要な技術だ。………そして、お前達にも俺のような能力を使えるかはやれるし、やれないと言ったところか。俺の能力が何であれ、念能力を用いている限り同じ念の使い手ならば覚えられる筈だ。ただし、あくまでそれは可能性がゼロじゃないと言うだけ。念能力は個性に大きく影響を受ける。一人一人好きな事や得意分野があるように念にも得手不得手があるんだ。だから念能力の種類によっては俺が5年で覚えれた事でも2人なら10年かかるかもしれないし、或いは一生かけても習得できないかもしれない。誰かの真似をしようとするんじゃなくて、自分の資質を見極める事が第一だな。」

 

「……資質ね。」

 

「じゃあ、まずは『練』をやってみようか。……体内にエネルギーをためるイメージ。細胞の一つ一つから少しずつパワーを集め、どんどん増えていく…。たくわえたその力を一気に外へ放出。……こんな感じだ。ほれやってみな。」

 

(散々今まで見てきたから、何となくイメージできるわね。)

 

(ようは力をためて解放する。いつもやってることをオーラでやるだけよね。)

 

ブオッ!!!

 

「ふむ。問題なくできるな。そのままオーラを目に集めてみな。」

 

(一部にオーラを集めるのも見てきた。けど、これは疲れるわね。)

 

(しんどい。けど、何か見えるわね。)

 

「赤いオーラが美鈴に青いオーラがシャーキャについてるわね。」

 

「磁石みたいに引き合うのかしら。」

 

「いいだろう。文句なしだ。あとは慣れだけだな。」

 

「「ふう。」」

 

「結構しんどいわね。」

 

「『練』を維持するのもしんどいわ。」

 

「さて、じゃあ俺の能力の話も出たことだし、『発』の話に入ろうか。これをマスターすれば念の基礎は全て修めた事になる。」

 

「『絶』はいいの?」

 

「それはもう勝手に習得してるだろ?」

 

「あら、バレてたのね。」

 

「一応説明しておくと、オーラを消す技術だ。精孔を完全に閉じる事で可能だ。気配を消したり、疲労回復の効果がある。ただし、防御力はゼロになるリスクがある事に注意が必要だ。」

 

(俺は一番苦手だったんだけどな。)

 

「さて、『発』とはオーラを自在に操る技術。つまり念能力の集大成。必殺技や特殊能力がこれに該当する。放出系・強化系・変化系・操作系・具現化系・特質系の6つのタイプに大別される。」

 

シャーキャの「円」に見学者達が反応があった事を感じる。

 

(やっぱり、「発」はみんな気になるか)

 

「そこで大事なのは自分に合った能力を見つける事。念能力はその人の個性と深く繋がっている。一つは生まれ持った才能。もう一つは生活の中で磨かれた才能。例えば霊夢の直感力や咲夜の時間を操る能力だ。同じように念能力もその人が生まれつき持ってるオーラの性質によって6つのどれかに分かれる。もしもこれから覚えようとしている能力があっても自分のオーラの性質と合わなければ苦労することになる。」

 

シャーキャは白板にペンを走らせ、六角形の図形を書く。

 

「これが属性の相性を示す表。六性図だ。強化系は物の持つ働きや力を強くする。放出系はオーラを飛ばし、効果を維持する。変化系はオーラの性質を変える。操作系は物質や生物を操る。具現化系はオーラを物質化する。特質系は他に類の無い特殊なオーラ。」

 

説明を聞き、咲夜と霊夢に既視感が走る。

 

(あの懐中時計も具現化系の能力………)

 

(あの掌に現れてたナイフもオーラを具現化したもの……)

 

「近いものほど会得の相性がいい。例えば生まれ持つオーラの性質が強化系ならば、強化系の能力が最も覚えが早く力もつく。そして隣り合う変化系と放出系も相性がいいから覚えやすく、逆に特質系の能力は非常に覚えにくい。じゃあ、答え合わせとして俺の能力を改めてお見せしよう。」

 

シャーキャの身体に紫色のオーラが纏われる。

 

しゃがみ込み、石ころを掌に置く。石ころにも紫色のオーラが纏われる。

 

掌が赤いオーラに変わり、石ころも赤いオーラになる。

 

するとひとりでに石ころが浮かんだ。

 

(石が勝手に浮き上がった!)

 

オーラを消せば掌に落ちてくる。

 

今度は逆に石ころに青いオーラを纏わせて落とすが、空中で静止した。

 

(落ちずに空中に浮かんでる。)

 

「俺はオーラに磁性の性質を付与する能力を持っている。赤はN極、青はS極だ。俺以外の物体にも付与する事ができる。この磁力の引き合う力と反発する力を利用して戦う。これが俺の『大地の意志(マグネティックフォース)』。変化系の能力だ。」

 

(これがシャーキャの能力の正体。)

 

(メインの能力。………それと奥の手のあの懐中時計)

 

「なるほどね。でも、自分のオーラがどの系統に属しているかなんて調べる方法はあるの?」

 

「ああ、勿論ある。パチュリー様、お願いします。」

 

シャーキャが声を上げれば、小悪魔が水の入ったグラスを持ってきた。中には木の葉が浮かんでいる。

 

「水見式。オーラの選別法だ。『発』の修行にも使われる方法だ。ここに手を近付けて『練』を行う。その変化によって資質を見極める。」

 

シャーキャはグラスに向かって「練」を行う。

 

(……何も起きない?)

 

「何も変化が起きてないけど。」

 

「水を舐めてみな。」

 

2人は水に指をつけて舐める。

 

「甘い!」

 

「蜂蜜みたい!」

 

「水の味が変わるのは変化系の証。俺のオーラが変化系の性質に属している事がわかる。強化系は水の量が変化する。放出系は水の色が変化する。操作系は葉が動く。具現化系は水の中に不純物ができる。特質系はそれ以外の変化だな。さあ、2人ともやってみな。」

 

咲夜がグラスに手を翳す。すると僅かだが葉っぱが動いた。

 

「お!咲夜は操作系だな。じゃ、霊夢。」

 

霊夢もグラスに手を翳す。今度は葉が凍った。

 

「ふむ。この変化は……特質系か。」

 

「ねえ、シャーキャが見た中で凄い能力とかなかったの?」

 

「そうだなぁ。強化系なら単純に身体能力強化を極めた奴がヤバかったな。イメージとしては鬼を想像すればいい。放出系ならオーラを飛ばす念弾と言うのがあるんだが、それを極めた奴だな。一撃が山をも吹き飛ばす威力を弾幕で放つ奴がいたな。」

 

「想像するだけでゾッとするわね。ただ単純な力押しなら特殊能力で対応できるかも。」

 

「でも、それだけ強いと特殊能力も碌に効かないかもしれないわ。」

 

「具現化系なら念の異空間を具現化する人だな。紫の能力に近い。まあ境界を操る程ではないから、下位互換といった感じだけど。」

 

(ぶっちゃけノヴのことだけど。)

 

「まあ確かに紫の能力なら納得ね。癪だけど。」

 

「確かにね。」

 

「操作系で脅威だったのは、2人だな。人を針で操る能力者だな。針で刺した対象を操り人形にするんだ。人数も制限がないから、数十人を相手にしないといけない状況とかもあるし、自分自身がその針を受けたら、即アウト。もう1人は人ではなく、煙を操作する能力者だ。こっちは即死攻撃ではないけど、煙という気体を操作することから、応用力の化け物だったな。ありとあらゆる状況でも対応できる能力だった。」

 

(後者はモラウだな。)

 

「操作系や具現化系の方はさっきの力技と言うよりは特殊能力系ね。」

 

「操作系は何を操るかが重要そうね。」

 

「勘違いしたらいけないのは、力押しが多いと思われている強化系に近い系統でも、特殊能力系もあるんだぞ。強化系は少ないけど、放出系は瞬間移動とか念獣とかな。」

 

「念獣?」

 

「ああ、念で生み出された獣だ。その獣自体に特殊能力が備わっている事が多い。放出系の念獣なら、射程距離が長い。操作系の念獣なら複雑な命令が可能。具現化系の念獣なら射程距離は短いけど、特殊能力が凶悪なものが多い。」

 

「特質系は?」

 

「特質系は数が少なかったな。だけどどれもレアリティが高い能力者ばかりだった。他人の能力を盗み自在に扱える能力。未来予知ができる能力。他人の記憶を読み取れる能力。透明になれる能力。他人のオーラを吸収し、己の物にする能力。」

 

「凶悪な能力ばかりね。」

 

「そんな驚く事でもないぞ。この幻想郷の方がよっぽど凶悪な能力で溢れているだろ。全員が念能力者なら、どいつもこいつも特質系ばかりだ。」

 

「変化系は、オーラの性質を粘着性のあるゴムにする能力者だな。自由につけ剥がし可能で、ゴムの伸縮を利用してあらゆる状況に対応する。」

 

(あのピエロの能力……!!)

 

11年前のルーマニアでの記憶が蘇る。

 

「強化系のメリットは攻守ともにバランスが良く、隣り合わせの放出系が遠距離攻撃も可能にしている点。また反対側の変化系によって力押しが難しい相手にも機転を利かせれる点。また自己治癒力を強化して傷を負っても即座に回復するなど、戦闘という点に於いて最も優れていると言われている。

 

放出系も大体同じだ。遠距離が得意なのは勿論、接近戦も強化系が隣りにあるから、対応できる。それに操作系も隣り合うから、特殊能力持ちにも対応可能だ。

 

変化系最大のメリットは応用力の高さだ。能力がバレても大きな問題にならない程の応用力を持つ。強化系が隣り合うので、その応用力と合わせて、接近戦では敵無しレベル。具現化系とも隣り合うから特殊能力をより強化する事ができる。反面、射程距離が短いのが弱点だ。

 

操作系は人間を操る能力の場合、敵を操作条件に嵌める事で即死を狙える。ただし強化系から離れているから接近戦が苦手で、それにも関わらず相手に近付いて条件を満たさないといけない。ただし決まれば確実に勝てる。物質を操る場合は隣り合う放出系とも相まって、変化系と同等の応用力に富んだ能力が生まれる。ただし、強化系から離れているから決定打にかける弱点がある。

 

具現化系は最初に具現化するイメージ修行が大変だ。オーラを物質化することは非常に難しい。具現化系の能力者でも修行には時間がかかる。だが、付与できる能力は自由度が高く、凶悪なものが多い。ただし放出系から最も離れているから、体から離れた物体を維持することはほぼ不可能だ。また、接近戦も苦手だが、変化系が隣にあることから、変化系能力を身につけて弱点の補強をしているな。

 

特質系はそもそも使い手の数が圧倒的に少ない。だが、能力の凶悪さは具現化系以上。ただし、制約が多くピーキーな性能になりやすい事が挙げられるな。」

 

「系統によって色々な戦い方があるのね。」

 

「制約ってなんなの?」

 

「制約か………。それについてはまた後日にしてくれ。これだけでかなりの情報量だからな。」

 

(制約と誓約についてはあまり教えたくないんだが……。黙っている訳にもいかないよな。無意識に変な制約がついても怖いし。)

 

「それからオーラの強度についても説明する。」

 

「オーラの強度?」

 

「ああ、オーラそのものの強度だ。『燃』でオーラは質を高めれるが、それでも系統の壁があるんだ。六性図を見て上の強化系から下の特質系に向かってオーラの強度は下がる。つまり鎧としても矛としても強度が特質系に近い程弱い傾向にある。これが尚更、強化系が最強と言われる所以だな。」

 

「じゃあ、操作系と特質系はどうするのよ。」

 

「特質系に近い能力者は、それを自身の特殊能力で補う。逆に強化系に近い能力者は安定した強さはあるものの搦手に弱い傾向がある。」

 

「随分と奥が深いのね。」

 

「念能力が万能では無いと言う意味がよくわかっただろ。……じゃあ、この水見式の変化がより顕著にできるように1ヶ月間、『発』の練習だ。」

 

「また地味な修行ね。」

 

「まあ、瞑想ばかりの2ヶ月に比べればマシかしら。」

 

「お前ら、自覚ないようだから教えてやるが、これでもかなりのハイペースで修行が進んでるんだぞ。」

 

「そうなの?」

 

「ああ、通常なら『纏』でも半年。遅い奴なら1年かかる場合もある。それを1回で成功させてるんだ。これ以上の文句はありえないぞ。」

 

「そうなんだ。」

 

「わかったか?なら、また次は1ヶ月後に成果を見せてもらうからな。」

 

こうして2ヶ月に及ぶ『燃』の修行が終わった。

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