鋼の心   作:モン太

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イラク③

プルルルル、プルルルル、ピッ!

 

『もしもし。』

 

『やあ、クアン。セーチだよ。』

 

『セーチか。どうしたんだい?いきなり電話なんて。』

 

『ビックニュースだよ、クアン。』

 

『ビックニュース?』

 

『ネテロの秘蔵っ子が、今この国にいるらしい。』

 

『!?それは、本当かい?』

 

『放出系の探索能力者にも確認して貰った。間違い無いよ。』

 

『じゃあ、チャンスは今しかないね。』

 

『そうだね。ただ、今は首都にはいないようだ。だけど、あと2日で帰ってくるそうだ。』

 

『りょーかい。それじゃあ、早速ミーティングといこう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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帰りは強化系も放出系も修行する事なく、サーワンへ足早に向かった。あいつらに追いつかれるかもしれないし、別の何かに狙われるかもしれないからだ。サーワンについてから、無人(ビヨンドが皆殺しにしてしまったから)の旅館の俺に当てられた部屋に入る。もう朝日が昇って来ているが、関係ない。疲れた、寝る。

 

俺は数日ぶりに安眠についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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久しぶりにしっかり寝た気がする。時計は15:42を指していた。俺は荷物をまとめて、サーワンを出る。

 

もうこの街には用は無いしな。俺はサーワンから1番近いタパ・グラウィを目指す。

 

さて、今日は強化系の「石割り」をやりながら、移動するか。

 

俺は適当に掴める石を掴む。

 

じゃあ、1。

 

ガシャ

 

2。

 

ガシィ

 

3。

 

バキィ

 

4.....................

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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バキィ!

 

882か。1000個までまだ118個か。しんどー。さて、夜になったけど無事着いたな。えーと、宿は...........

 

俺は適当に泊まれる宿を探す。

 

この街はサーワンの様な殺伐とした雰囲気も無い。平和だ。

 

俺は『組織』が管理するホテルに入る。いつも通り、カードと生体認証を済ませ。自室に入る。荷物を纏めると、再びロビーへ向かう。

 

公衆電話は見つけたので、適当にお金を入れる。

 

プルルルル、プルルルル、プチッ

 

『もしもし、こちらゴートレンタカーです。』

 

「もしもし、予約についての相談があるのですが、お時間よろしいでしょうか?」

 

『はい。大丈夫です。ご用件をお伺いします。』

 

確か、合言葉は.....................

 

「メルセデスベンツ GLEクーペ ブルーテック」

 

『......................はい。畏まりました。少々お待ちください。』

 

「....................」

 

『もしもし、わしじゃ。ネテロじゃ。』

 

「もしもし、じーさん。シャーキャだ。」

 

『おお!シャーキャか!旅の調子はどうかの?まさか孫から電話がかかってくるとは、実に嬉しいのう。』

 

「誰が孫だ。そんな事より聞きたい事あるんだけど。」

 

『何じゃ。言ってみい。』

 

「昨日、見たことも無い怪物とエクソシストと名乗る男、魔術師と言う女に会った。また、それにまつわる『教会』や『結社』。ジジイなら、なんか知ってるだろ?」

 

『ふーむ。まさか其奴らに出会うとはのう。普通は出会うはずは無いんじゃが。』

 

「そんな事言っても、出会ったもんは出会ったんだよ。」

 

『まあ、良い。なら説明しよう。長い話になるがええかの?』

 

「ああ、いいぜ。」

 

『まず、怪物の方からじゃ。あれは、妖や妖怪と呼ばれておる。今の様な文明が発達しておらんかった300年以上昔の時代によくいた化け物じゃ。』

 

「ここ数百年はいないのか?」

 

『全くいなくなったわけじゃ無いが、弱体化が著しいのう。妖は人々の畏れを糧に存在を保っておる。数百年前の人々は神やお伽話を本気で信じておった。そのおかげで存在を強く維持できた。じゃが、最近は文明の発達でオカルトなどは信じられなくなった。それ故、畏れを集められず、弱体化し数を減らすことになったのじゃ。ちなみにわしら念能力者は「オーラ」で戦うのじゃが、彼は「妖力」と呼ばれるもので戦う。妖力を用いて行う技などを「妖術」と呼ぶのじゃ。』

 

あの怪物の実態はわかった。死体を操ったのも「妖術」と言う訳か。

 

「ああ、よくわかった。で、エクソシストや魔術師ってのは?」

 

『妖は畏れがなければ、存在を保てない。故に人々を襲い、畏れを集めた。当然人々はそれに対抗しようとした。そして生まれたのが『教会』。妖を異端と呼び、狩ることを生業とする者達の誕生じゃ。彼をエクソシストと呼ぶ。彼らは、異端を狩るための武器「宝具」を所持しておる者や、「霊力」と呼ばれる力を使い異端と戦うのじゃ。霊力は基本的に身体強化や霊力弾、浮遊に使う。わしらのオーラに近い力かもしれんな。霊力を使った技などを「霊術」と言う。西洋では十字架や宝具に霊力を通して術を発動する。東洋では「札」に霊力を通して使用する。』

 

「じゃあ、魔術師ってのは?」

 

『魔術師か。魔術師を説明するには、まず「魔力」についてじゃな。諸説あるが、エクソシストが更なる力を求めた結果、見つけられた力だったり、妖に魅せられた人間が妖に近くために得た力とも言われておる。その「魔力」に魅せられ、日々研究しているのが魔術師じゃ。』

 

「ふーん。そんな奴らがいるのね。」

 

『そんな魔術師達が集まってできたのが『結社』じゃ。魔術にも種類が多岐に有っての。わしが知り得るのは、ルーン魔術、黒魔術、白魔術、錬金術、召喚術、宝石魔術、呪術、魔眼、投影魔術、強化魔術、結界魔術、魔眼、治癒魔術、回避魔術じゃな。これ以外にも数多く存在するそうじゃ。霊術よりも種類が多いのは、魔術師が研究職の人間だからであろうな。魔術師は基本的に「礼装」と呼ばれる道具に魔力を通して戦う。具現化系に近く能力じゃ。』

 

「具現化系か。厄介だな。つまり、多彩な特殊能力を持っているって訳か。」

 

『人種としても魔術師は厄介じゃよ。エクソシストは異端を狩る事が目的であるから、基本的に妖がターゲットじゃが、魔術師は研究が目的であるから、ターゲットの幅は広い。妖も実験材料の1つにすぎんのじゃ。』

 

「エクソシストはどう戦うのがベスト?」

 

『操作系と思って戦えば良い。個人で能力が変わるであろうから一概にそうとは言えんが、まずは操作系と想定した戦闘を心がければ良い。』

 

「オーケー。他になんか変な奴らはいないの?」

 

『おるぞ。超能力者という者が存在する。彼らは、人間や妖、魔術師とは関係なく、産まれながらにして能力を有する者達じゃ。「程度の能力」と呼ばれる能力を使う。種族は関係なしじゃから、人間でも妖怪でも「程度の能力」を持っている者がおる。彼らはとても数が少なく希少な存在じゃ。発見されれば、大抵はエクソシスト入りか、魔術師の実験材料になる事が多い。そうなった者達は超能力者とは呼ばれずに普通にエクソシスト、魔術師として数えられるのじゃ。エクソシストや魔術師の中に「程度の能力」を持っている者がいれば、元超能力者である可能性があるのう。』

 

「可能性?絶対じゃないのか?」

 

『わしもよく把握している訳では無いのじゃが、自身の技や特技を修練の末、無意識でも行う程の技量に到達した物でも「程度の能力」と呼ばれるそうじゃ。「程度の能力」は基本的に特質系と想定して戦わねばならん。』

 

「つまり、能力は未知数って訳か。」

 

『それだけでない。「程度の能力」は念能力の様な「制約と誓約」が無くても強力な能力を持つ者もおる。』

 

「そいつはやばいな。念能力者泣かせじゃないか。」

 

思わず声が上擦る。

 

『...................シャーキャ。気持ちがわかるが、そう安易に喧嘩を売るのんじゃないぞ。』

 

「じーさんは心配し過ぎなんだよ。「制約と誓約」要らずの特質系能力者なんて、絶対一回は戦ってみたいしな。それに俺はもう旅に出るって自分で決めたんだ。」

 

『...............はあ、まあ良い。お主の好きにせい。』

 

「サンキュー。じーさん。」

 

『ちなみにな、シャーキャよ。お主も「程度の能力」を名乗れるのじゃよ。』

 

「え?まじで?」

 

『産まれながらにして持っている能力。それ故に超能力者は周りとの比較で初めて自身の異常性に気づく。故に「程度の能力」は自己申告制なのじゃ。お主は産まれながらにして、オーラを纏っていたことから、「オーラを扱う程度の能力」と言ったとであろうな。』

 

「なるほどね。俺にピッタリだ。しっくりくるぜ。」

 

『じゃが、お主にその能力名を名乗る事は基本的にしてはならんぞ。』

 

「なんでだよ。」

 

『念能力をそっちの世界に広める訳にはいかんからの。』

 

「ん?どうゆうことだ?もしかして、念能力ってそっちの世界に認知されていないのか?」

 

『そうじゃよ。あっちの世界の人間は念を知らん。理由は念能力者は皆、慎重な者が多いからの。人間であれば、修練を積めば誰でも覚えられる。教える者を選ぶのも慎重になるじゃろ。それに、わしらと彼らはほとんど接点は無いのじゃ。』

 

「なんで?」

 

『わしらは政治的な部分の裏社会を暗躍しておる。一方彼らは、この世の理の裏を暗躍しておる。』

 

「同じ裏社会でも分野が違う訳だな。」

 

『そうじゃ。じゃが、その均衡も最近は崩れ始めておる。』

 

「どうゆうことだ?俺が出会ってしまった事にも関係あるのか?」

 

『無関係では無いじゃろうな。近頃、一部の魔術師が超能力者を魔術の研究のためで無く、超能力そのものの研究のために集めようとしておる。彼らを「機関」と呼ぶ。』

 

「そんな奴らが、一体どうしたっていうんだよ。」

 

『「機関」も結局は魔術師達が立ち上げた物。彼らは一般人を捉えて洗脳し、人工的に超能力者を作っておるのじゃ。そして、其奴らを使って各国の政治に手を伸ばし出し始めておる。』

 

「つまり、俺たちの業界に手を伸ばし始めていると。」

 

『そうゆう事じゃ。しかも厄介なのが、自分達で作り上げた超能力者を持て余し気味になっておる事じゃ。最近のニュースでフランスで、一般人が14人を殺害する連続通り魔事件が起こっておる。実態は、「機関」の超能力者が自身の能力に酔って力を振るったのが実情じゃ。

話が逸れたの。要は、彼らがわしらに近くと言う事は、「教会」や「結社」も近づいてくる可能性がある。「教会」と「結社」も最近の妖怪の減少で獲物の取り合いが激しくなっておるそうじゃし。今まで、認知されていなかった念能力者は彼らから見れば、みんなが超能力者に見えるじゃろうな。そうなると、更に事態は混沌を極める。

「教会」からすれば、新しい戦力として捕まえようとする。

「結社」からすれば、実験材料が大量に現れたように見える。

「機関」も同様じゃ。むしろ超能力に関心が強いだけに、余計にタチが悪い。』

 

「話聞いてると、その「機関」ってのを潰せば俺達にとっては、大体の解決にはなるんじゃないの?」

 

『そうじゃな。まあ、簡単ではないがの。接触すれば、必ずこちらの情報も取られるからの。』

 

「まあ、想像以上にめんどくさい事情があるって事はよーくわかった。」

 

『ちなみに向こうはわしらを認知しておらんが、こちらもわしやお主以外は殆ど向こうの事は認知しておらん。それぐらい今まで接触が一切無かったんじゃ。』

 

「まあ、そんな事じゃないかなとは思ってたよ。」

 

『以上が、わしの知っている事じゃ。』

 

「サンキュー。この事はもちろん、他人には秘密でいいんだよね?」

 

『そうじゃ。基本は内密に。お主が必要とあれば相談しても構わんが、それは最終手段という事じゃ。』

 

「オーケー。じゃ、電話切るわ。」

 

『長電話になってしまったの。また連絡を楽しみにしておくぞ。』

 

プチッ。

 

電話を切って、自室に帰る。整理すると各陣営の構成は、

 

「組織」:念能力者(オーラ)

「教会」:エクソシスト(霊力、魔力)

「結社」:魔術師(魔力)

「機関」:魔術師(魔力)、人工超能力者(霊力)

 

妖怪(妖力、魔力)

 

の陣営が存在し、「組織」だけは何処とも一切接触は無かった。まあ、それはいいや。妖力は弱体化してしまってるみたいだけど。それ以外なら楽しめそうだ。実際、エクソシストは俺よりも戦闘能力が上だったしな。何が、世界最強だよ、じーさん。あんたを倒せそうな程の奴らはまだまだいるじゃねーか。

 

ああ〜楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ガチャ。

 

「ふう〜。」

 

わしは、電話を切り。外の夜景を眺める。

 

まさか、よりによってシャーキャが最初に接触することになるとはのう。やはり、あの子は特別という訳かの。

 

わしは夜景の更に遠くを眺める。思い出されるのは、約150年前の事。妖は以前から知っておったが、あれ程の力を「制約と誓約」も無しに妖力のみで力を振るう存在がいる事に戦慄した事があった。「境界を操る程度の能力」。なんとか、退ける事は出来たが一撃でも当たればこっちが死線を彷徨うことになった。ノヴの様に空間を行き来でき、制約と誓約要らず。相手を「スキマ」に引きずり込めれれば、脱出は不可能。恐ろしい能力じゃ。妖であるからにはいない今も存命しておろう。あれが早々滅される事もないじゃろうしな。最近では、唯一わしの命に届き得る存在じゃった。シャーキャが出逢わなければいいのじゃが。

 

わしは夜景を眺めながら、今この世界の今後の展望を思案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌朝、ホテルのロビーを抜ける。澄み切った空と太陽が俺を照りつける。今日は快晴だ。俺はタパ・グラウィのバス停から出るバスに乗る。行き先はイラク首都バグダッド。行きと同じ様に「円」で周りを警戒しながら、長時間移動だ。俺はバスの1番後ろに座り、眠りながら「円」を貼った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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7時間の移動。正直きつい。体中がバキバキだ。「円」も疲れるし、オーラ量ホントなんとかならねーかな。

 

怠い体に鞭を打って歩く。夕暮れの黄昏を眺めながら、未だに瓦礫も多い首都を歩く。

 

相変わらず治安悪いな〜。とりあえず「絶」使っとこう。

 

道端に座り込んでる浮浪者や暴徒達を「絶」ですり抜けて、ホテルの手前までくる。

 

とりあえず、放出系の練習もしないとな〜。最後に「浮き手」をやった時は20cmだったっけ。目標の40cmまであと半分だな。今日で5cm伸ばしたいところだな。

 

そんな事を考えながら、ゲートをくぐった瞬間に俺の視界は真っ白に染まった。

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