アーチャーの話はこうだった。
アーチャーが森林区とその周辺を見て回っていたときだった。
遠くの校舎と思われる建物の上から殺気を放つ気配があったので高い木の上に上がりその正体を確かめたのだ。
「そこに二騎のサーヴァントがいたのか?」
七星の質問にアーチャーは首を振る。
「いや、そこに居たのは真っ黒な全身鎧を着たサーヴァントだった」
黒いサーヴァントがそこには居たのだ。
手には鎧と同じく黒い槍、腰には黒い剣がぶら下がっていたと。
「漆黒のランサー…ね」
何か心当たりがあるのか威燕がソファに深く沈む。
無論アーチャーは警戒しながらもランサーに近づいた。
相手も殺気こそ放つが攻撃はしてこなかった。
距離が遠いせいだろうと思ったアーチャーは話せて、それでいて相手の間合いに入らないギリギリの所で足を止めるとランサーに話しかけた。
「君はランサーか?」
ランサーは無言で頷いた。
そして一気に間合いを詰めてアーチャーに攻撃してきたのだ。
アーチャー咄嗟に右手につけている弓懸を防御に使って槍の軌道をずらした。
そのまま学校の校庭に落ちる二人。
「存外硬いのだなその篭手は」
「生憎とその程度で傷つくほど安い代物でもないのでね。次は宝具でも仕掛けるかい?」
「意外と好戦的なのだなアーチャー」
「そうだな、最初に戦った相手が英雄とは真逆の相手だったからだろうか?真の英雄を相手にすることができるのが少し嬉しいと思っている」
その時だった。
アーチャーがもう一騎のアーチャーに出会ったのは。
流石のアーチャーも驚いた様子でそれを見た。
校舎の上、屋上の端に現界した金色の英霊。
胸や胴には鎧は無く、腕や足を覆う金色の防具。
方の装甲からは紅い織物が垂れていた。
腰のところからも紅く、デザインがされた織物が垂れている。
紅い瞳に金の長髪を後ろに逆立たせ荒々しい。
それが自分たちを見下ろしていた。
「アーチャー、出てこないんじゃなかったのか?」
「アーチャー?」
漆黒のランサーの言葉に自身がアーチャーであると認識している翡翠色の手のアーチャーは驚く。
「いやなに、我もそのつもりだったのだがそこな男が良い物を持っているのでな、是非とも我が蔵に欲しいと思うてな」
アーチャーは理解した。
目の前の男はその身に神の血を有していると、この自分と同じように。
「もしかしてだが、この弓懸のことを言っているのか偽のアーチャー?」
「確かに我はどちらかといえば魔術師よりではあるが偽とは随分な言い方よ、お前が神代の出でなければこの場で殺しているぞ」
明確な殺意をあらわにする金色のアーチャー。
「気に障ったのならばすまない、今後は金色のアーチャーとでも呼ぼう」
「好きにするが良い、それで、その弓懸を譲る気はあるか?」
「申し訳ないがそれはできない。一応宝具でもあるのでな」
「謝る必要は無い、お前の答えは最もなのだからな。ただ、王である我の申し出は絶対である。その宝、力尽くで奪うとしよう。ランサーよ手伝うが良い」
「気乗りはしないんだがな、そういう理由だと…」
そう言いながらも渋々と槍を構えるランサー。
こうして翡翠のアーチャーと金色のアーチャーと漆黒のランサーの戦闘が始まった。