Fate/Line Frontier   作:ジル青髭

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英霊召喚

簡単にこの人工島の説明をしておこう。

円形のこの島は中心にオフィス等のビル群、その周りを囲うように右半分が住宅街、左半分がショッピングモールになっている。

島の入口を最初に入るとテーマパークとゲートがある。

その真反対には広大なグラウンドと森林区域、正面入口から右は小中高大の学校や空港、その他公共施設が点在する。

左側には工場が所狭しとあるのだ。

まあ大体はこんな感じである。

 

あ、言い忘れていたが我々マスターが拠点にする屋敷は円状にある住宅街の端に均一の間隔で七つ点在している。

しかしそれも既にもぬけの殻だろう。

既にバレている拠点など捨てて正解だ。

 

しかし、私は違った。

あえて動かなかった。

理由としては工房を作るのに適切だったからと言えよう。

 

そして現在、魔術協会所属の魔術師兼マスターである龍ヶ峰七星(りゅうがみねしちせい)は肌寒い地下室、その床に描かれた魔法陣の前に立っていた。

この計画が始まった当初は二十歳だった七星も今や五十を超えてしまっていた。

しかしその容姿は三十代と言っても差し支えないものだった。

それが魔術によるものなのか体質によるものなのかは誰にもわからない。

いや答えよう、それは七星の魔術礼装によるものだった。

その礼装は魔術師としての質を高める効果があり、その副産物として体の成長が著しく遅れるのだ。

 

七星は手に持った媒体を祭壇に置きに行く。

これで本当に準備が完了した。

七星は直ぐに元の場所へ戻る。

そして令呪が宿った右手を掲げる。

龍が蜷局を巻いたようなそれは正に自分にピッタリだと七星は思う。

 

七星は自身と魔法陣に集中する。

七星が狙うのはキャスターだった。

彼の預言者を召喚してちゃっかりと色々教えて貰おうとか考えている。

そしてなにより他のマスターたちより出遅れてしまったのが大きいだろう。

故に余ってそうなキャスターにしたのだ。

七星は心の準備を整えると口を開いた。

 

「祖に銀と鉄、礎には石と契約の大公」

 

そのワードを引き金に魔法陣が淡く光り始める。

 

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

更に光は強さを増す。

既に部屋の四隅に付けられた燭台の明るさを上回っている。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すことに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

魔法陣を中心に渦巻くようなそよ風が生まれる。

 

「――――告げる」

 

そよ風はその言葉を待っていたかのように速さを増す。

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うのならば応えよ」

 

部屋は既に吹き荒れる豪風と覆い尽くさんとする光で溢れていた。

しかし触媒は飛ばされることなく祭壇に在り続けている。

 

「誓を此処に。我は常世全ての善と成る者、我は常世全ての悪を敷く者」

 

吹き荒れる豪風が更に増し、七星は飛ばされまいと右足を曲げて左足を後ろに下げる。

右手を支えるように左手で右手首を掴む。

 

あと少し、あと少しで完遂する。

その意気込みを全力で込めて最後の詠唱を言い切る。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

豪風と目を焼き尽くそうとする光りに思わず目を瞑る。

その時間が永遠にも刹那にも感じ、七星は平衡感覚すら失いそうになる体を寸でで止める。

豪風と光りは急激に収まり魔法陣の中に何者かが立っていることを視認した。

 

色白な肌、右目が水色、左目が黄色のオッドアイ。

深緑色の髪は首辺りまで伸びていて下に行くほどに黒くグラデーションになっている。

その肢体は白く細やかで、全体的にスラリとしていて美しい。

小ぶりだが確かに膨らみのある胸が女性であると示していた。

 

「問おう、汝が私のマスターか?」

 

「いや待て、何故裸なんだ?」

 

凛々しく七星に問うサーヴァントは衣類を一切身に纏っていなかったのだ。

 

「問おう、汝が私のマスターか?」

 

しかしサーヴァントはブレない。

まるでそれがどうかしたのか?といった態度である。

 

「問おう、汝が私のマスターか?」

 

このままでは進まないと思い七星は問いに答える。

 

「そうだ、私が君のマスターだ。名を七星、龍ヶ峰七星と言う。君はキャスターで相違無いか?」

 

確認は大事だ。

自分が知っている彼は確か男だったはずだが希に性別が違うことがあると事前に聞いていたので大丈夫だった。

 

「七星、私はキャスターではない」

 

しかし七星は違う理由で呆気に取られた。

 

「違う…だと?で、では君はミシェル・ド・ノストラダムスでは無いのか!?」

 

まさかの事態に七星は立ち眩みすら覚えた。

近くの壁にもたれ掛かる程だ。

落ち着け、落ち着くのだ。

キャスターでないのならそれはそれでいいことじゃないか。

もしかすると彼女はマスター殺しに特化したアサシンかもしれない。

今一度確認をするのだ。

 

「で、では君の真名とクラスは?」

 

一糸纏わぬサーヴァントは七星と目を合わせると口を開く。

普段ならその胸に目線が行ってしまいそうだったが彼女の独特な雰囲気と状況でそうはならなかった。

 

「サーヴァント・セイバー。真名はグラン・ロワ・ディフレイ。貴殿の呼びかけに応じ参上した」

 

「セイバーだと?」

 

まさか自分がセイバーを引き当てることになるとは思わなかった。

嬉しさがあるが七星はその真名に全くと言っていいほど覚えが無かった。

 

あの媒体ではてっきり著者が出てくるものと、占星術にも携わり、およそ日本での知名度は日本の武将や首相に並ぶだろう。

しかしその媒体から出てきたサーヴァントの名前を私は知らなかった。

 

「グラン・ロワ・ディフレイ…?」

 

「人は私をル・グラン・ロワ・ディフレイと呼ぶ」

 

いや、ル付けられてもなんにも変わんないから。

ちょっと大丈夫かこいつ的な表情をしないでもらいたい。

ただでさえ今の状況に混乱しているのだから。

 

「ああ、そうか、貴殿は日本人だったな。ではこう言った方が馴染みがあるだろう」

 

なんだ日本での通り名のようなものがあるのか。

少し安心した七星。

素性の知らないサーヴァントと聖杯を取れるほどこの聖杯戦争は甘くはない。

 

「そうなのか、では改めて名を教えてくれセイバー」

 

壁から離れ、七星はセイバーに向き直る。

 

「わかった。私はセイバー、この極東では恐怖の大王として親しまれている」

 

恐怖の大王?

しかし媒体を見て直ぐに思い当たった。

彼女はノストラダムスの大予言に記された恐怖の大王だと。

因みにだが別に親しまれてはいない。

 

なるほど、私は大変な人物をこの聖杯戦争に呼んでしまったようだ。

七星はとりあえず自身が来ていたスーツの上着を彼女に着せた。

 

「とりあえずセイバー、君の衣服を用意しよう」

 

「かたじけない」

 

二人は地下室を後にするのだった。

 

此処に最後のサーヴァントが召喚され、全てが揃った。

聖杯戦争の開幕である。

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