――俺は、貴方を愛していた。
――僕も、貴方を愛していた。
――二人には、子供が二人いた。
――二人には、男の子と女の子の可愛い子どもがいた。
――俺は、君を沢山泣かせた......。
――僕は、君に沢山泣かされた......。
――笑い合いながら、
――分かち合いながら、
――幸せだったな、
――これからも幸せがいいね。
二人は深い絆で結ばれた夫婦、死という別れの先に見えたものは、再会、愛し合った二人の温かい再会の物語。
2
九月某日、一人の少年は酷い頭痛に見舞われていた。そして、見えるのは、紫色の髪をした、綺麗な女性の姿。そして、その傍らには、雰囲気が違う自分の姿。愛し合う二人、誓い合う愛。心すら、分かち合う、美しき夫婦の姿。
頭痛が引いていく、そして、京太郎は泣いてしまう。彼女が誰なのか、自分の何なのか、何もわからないが、ただ、彼女の事が酷く愛しかった。
「俺は、俺は!! 彼女は......俺の最愛の人なのに、人なのに! 思い出せない!!」
悔しくてベッドを何度も何度も殴りつける! だが、酷い苛立ちは消えることなく、胸の中に留まり、心を荒ませる。恋煩いじゃない、これは、愛しき人との別れの悔しさ、辛さ、苦しさ、彼女は、京太郎の前世の最愛の妻である。何故、前世の記憶が蘇ったのか、それは、次に訪れる運命がそうさせたのだ。
居ても立ってもいられない、京太郎、ジャケットを着て外に飛び出す。そして、この苛立ちを沈めようと一歩踏み出す。ある意味、この選択肢は正解だった。彼の最愛の人、その人に会う最高の選択肢が、動、動くことだった。だが、この物語は最初のハッピーエンドに到達する。
3
「あ、須賀くん!」
京太郎、長い散歩の末、先週、透華をポンコツというか、アンドロイドというか、謎の存在にしてしまった龍門渕邸の前に到着してしまう。そして、声をかけられる。振り返ると相変わらずの布の面積の少ない洋服を着た、国広一がにこやかに挨拶してくる。
「どうも、国広さん」
「透華に用事があるの? それともハギヨシさん?」
「いえ、ただ、散歩をしていたらここまで」
「なになに? 人生に迷って行き着くところまでやってきたみたいなぁ~」
「まあ、そうかもしれません」
静かに空を見上げる。少し違和感を感じた。こんな、明るい空じゃなくて、彼女とは、星空を見たような、そんな、思い出が走馬灯のように駆け巡る。楽しかった思い出や、苦しかった思い出、そして、愛おしかった彼女のかけてくれた言葉は、とても、とても、温かった......。
「す、須賀くん!? 何で泣いてるの!! お腹痛いの?」
「いえ、ただ、悲しいことを思い出して......」
「うーん、少し心配だから寄っていきなよ! お茶くらいなら出すからさ」
「いいんですか?」
「いいよいいよ、須賀くんなら」
大きな門をくぐり、龍門渕邸に入る。ハギヨシさんに料理を教わるために何度も入ったこの屋敷、少しだけ、懐かしく感じられる。一に手を引かれて、庭を回る。泣いている京太郎を落ち着かせるために、綺麗に整えられた庭を回るのがいいのではないか、なんて、彼女の小さなでも、とても重要な気遣いであった。
「あ、透華。今日も読書? 最近は読書ばかりだね」
暖かな陽気の中、縁に座って静かに読書をしている龍門渕透華、京太郎の対局の影響で、寡黙な人柄になり、ネット麻雀よりは、こういう風に物静かに本を読むことが多くなった。メイド達は少しだけむず痒さを感じたが、時折見せる静かな優しい笑みを見て、やはり、この人は透華なのだな、なんて、安心するので、特別に心配しているわけではない。
透華は静かに頷いて、本の世界に入り込む。京太郎は少しだけバツが悪そうな顔になるが、一が大丈夫、中身はやっぱり透華だから、と、笑って許してくれる。それを聞いて、少しだけ、胸を撫で下ろす京太郎だった。
「お、須賀と一じゃないか、庭を歩くなんて珍しいな」
「須賀くんが少し思い詰めた顔してたからね、純くんとハギヨシさんが整えてくれたお庭を見たら、少しはマシになるかな、なんて」
「国広さんの気遣いにありがたく乗っているんですよ」
純はにこやかに笑って、庭仕事に戻る。京太郎と一はそのまま、一礼して、また、庭の散策に戻る。暖かな昼下がり、温かな手に引かれて、美しき庭を回る。ようやく、一が見たかった顔に戻る。
「ようやく、笑ったね......」
「えっ?」
「須賀くん、笑わなかったから、少し心配だったんだよ?」
「......ありがとうございます。少し、気が楽になりました」
空を見上げる、もしかしたら、この空の下に、彼女は居るのかもしれない。姿形を変えても、それでも、京太郎のことを思って、静かに待っていてくれるのかもしれない、そんな、思いが加速する。
「お、キョータローではないか!?」
「あ、衣」
「天江さん......」
「あの、えっと、あの時は済まなかった、卓に頭をぶつけさせて......」
衣はバツが悪そうな顔で、京太郎の顔を覗き込む。京太郎は苦笑いを見せて、大丈夫ですよ、悪いのは自分ですから、なんて、なだめるように告げると、衣はパッと笑顔になる。そして、じゃあ、打とうではないか! なんて、京太郎と一の引く。
4
三人で卓を囲む。だが、今更になって一人足りないことを理解する。衣が少し涙目になった瞬間に一がハギヨシさんと声をかける。すると、一瞬でハギヨシさんが現れる。そして、にこやかにお呼びでしょうか? と、尋ねてくる。
「すいません、ハギヨシさん、一局お願いします」
「わかりました、では」
ハギヨシも静かに卓に腰掛けて、闘牌が開始される。
京太郎の立ち親、下家に一、対面にハギヨシ、上家に衣という卓順になる。
サイコロが回る、出目は三、対面からの取り出しとなる。
ドラ表示牌は、
{裏裏裏裏三裏裏}
ドラ表示牌は{三}でドラは{四}となる。
「(配牌は並、ドラは赤が一枚、まあ、平均的で伸ばしやすい手だ)」
京太郎の配牌、何の変哲もない静かに伸ばす必要性が高い平凡な手。
{九②③⑤⑦⑨1248西西北} ツモ{赤5}
字牌整理、{北}を叩いて、様子見をする。
この手、難産だった。終局間際、十五順目にようやく聴牌、だが、上家の衣がリーチを宣言している。捨て牌を見る限り、良型の両面待ち、他の二人も衣のリーチを警戒して、ベタオリの姿勢を崩さない。
{四赤五②③③④④⑤⑤⑦⑦赤57} ツモ{三}
この手、断么九、ドラ、赤赤、一盃口の満貫手、だが、京太郎の河には、引掛けになる牌は存在せず、ダマでもリーチでも和了できるか怪しい手、なら、男らしくリーチを宣言して、降りているだろう他の二人の攻めっけを尚更削ぎ落とすのが得策と考え、千点棒を取り出し、リーチを宣言する。
「リーチ」
打{②}でリーチ、リーチ、断么九、ドラ、赤赤、一盃口で跳満の手。このリーチ、正解だった。下家の一は清一色の一向聴、京太郎の和了牌{6}を打ったら面前清一色の聴牌、場には萬子はあまり出ておらず、索子が多く叩かれている状態。それだったら、一勝負に興じて、高い点棒を毟ろうとする攻めっけが彼女にはあった。
「ロン、リーチ、一発、断么九、ドラ、赤赤、一盃口、裏はいいです。跳満、親は18000ですね」
「あはは、勝負に出過ぎたかな......」
この時、一番動揺しているのは衣だった。彼女の能力が発動されていない。そして、京太郎の親っぱね、能力を封じているのは確実に京太郎。彼女が打ち合ったどの好敵手よりも強き友、興奮と同様に、恐れも感じられた。牌に愛された人間、それらがこの世界には存在する。多分、その存在に片足を踏み込んだのだろう。
連荘、京太郎は賽を回す。出目は六、下家からの取り出しになる。
ドラ表示牌は、
{裏裏裏裏9裏裏}
ドラ表示牌は{9}で、ドラは{1}となる。
「(跳満で流れが来ると思ってたけど、そこまでだいそれた物は来なかったな)」
京太郎の配牌、やはり、あまりいいものではなく、伸ばすことに徹しなければならない難しい手、少し悩む。
{六九①①②⑦⑧22468東} ツモ{五}
打{九}で両面を残す。だが、中々に手が動かない。面前で最後の最後まで仕上げようとするが、一向聴地獄から抜け出せない。仕方なく、十七巡目に上家の衣から鳴いて、聴牌系に取り、連荘に期待する。
{②③④⑦⑧45688} {横四五六}
「(一応は聴牌、でも、和了できるのは、{⑥}だけ、{⑨}で和了するなら、牌の枚数を見て、俺が海底牌を積もる。つまり、海底をするしかない。でも、海底の牌は天江さんの支配下だろう。この手、次に繋げる一手としておこう)」
京太郎の思惑は当たり、海底ではツモれず、流局、京太郎、ハギヨシ、衣の三人聴牌で一の点棒がジリジリと削られてしまう。
連荘、二本場で賽を回す、出目はまた六、下家からの取り出しになる。
ドラ表示牌は、
{裏裏裏裏1裏裏}
ドラ表示牌は{1}で、ドラは{2}となる。
「(来た! 良好な手、出来面子こそ少ないが、これはよく伸びる!)」
{二四七七八①赤⑤⑧3344白} ツモ{6}
京太郎、伸ばしやすい手に少し顔が緩む、だが、出来面子はない。慎重に伸ばす必要性がある。だから、じっくりと確実に手を伸ばす!
「(よし、張った! まだ四巡目、愚形なリーチのみだが、早い段階なら愚形でも良型に等しい和了率に変わる。曲げるぞ!)リーチ!」
{二三四七八九3344678}
京太郎、{3}と{4}待ちの聴牌、四巡目、和了の期待が高まる! だが、京太郎の流れを見越した全員がベタ降り、最終的に鳴きを入れて聴牌系を維持したハギヨシが聴牌していて、二人聴牌、また、一の点棒が毟られる。
「(厳しいな......最初の親っぱねで点棒に余裕がない。須賀くんが満貫をツモったら飛んじゃうよ......)」
「(支配が強い......これがキョータローの底力なのか......)」
「(なんとか、聴牌を維持して流局こそ出来ましたが、こんな危ない橋、続け過ぎたら確実に突かれますね、考えものです)」
東一局三本場、流れは京太郎にあり、臆す三人は彼の背中に閻魔の姿が見える。天は、彼に勝利を与えようとしているのだ。
三本場、賽を回す。出目は五、京太郎の山からの取り出しである。
ドラ表示牌は、
{裏裏裏裏9裏裏}
ドラ表示牌は{9}で、ドラは{1}となる。
「(流れは俺にある! この配牌、三本場で終わらせられる......)」
{二二五六七八八⑦367南白} ツモ{中}
京太郎、良好な配牌、場の支配を完全に掴み、ジリジリと手を伸ばしていく! そして、八巡目リーチ。
{二二三四五六七八12367}
そして、京太郎、一発でその牌を山から引き当てる! {8}!!
「ツモ、リーチ、一発、ツモ、平和、ドラ、裏はいいです」
一を飛ばしての一着、そして、静かに一を見つめてみる。彼女は泣いていた。負けたから悔しいのではなく、嬉しそうに泣いていた。そして、京太郎に抱きつく。そして、前世の俺の名前を何度も、何度も告げるのである。
「ようやく会えた......すずか......」
「うん、探してたよ......あなた......」
恋い焦がれていた最愛の人、世界で一番愛していた、最愛の妻、もう、二度と会うこと叶わないと思っていた彼女を、彼は見つけることが出来た。涙が、零れ落ちる。探していた彼女は、すぐ近くにいて、見つけられなくて、でも、ようやく見つけられて、だから、だから、嬉しかった。
「本当に......あなたは女の子を泣かせるのが得意なんだから......」
「ごめんよ......俺だって、君を泣かせたいわけじゃないんだ。でも、会えて良かったよ......」
5
三年後、俺はすずか、いや、一、そして、今日から須賀一になる人の晴れ姿を眺めていた。純白のドレスを着た、彼女は、とても麗しく、愛おしく、胸が張り裂けそうなくらい、神々しく思えた。
「結婚式はこれで二度目だね......」
「三度目もあるさ、二度ある事は三度ある......」
「その時も見つけてくれる?」
「ああ、絶対に」
誓いのキス、そして、ステンドグラスが光り輝き、俺達を祝福してくれた。
End
まあ、私が最初に書いた小説を知っている方なら、まあ、なんとなく理解できると思います。なのはに出ている声優のキャラクターを選ぶと、高確率でこうなります。まあ、少ないですから、あんまり気にしないでいいですよ。もちろん、次から普通にハイテンションなポンコツ製造の話に戻りますので、ご心配なく!