ひび割れた床からは草が生え、外に生えている木々の枝が壁や窓を貫いている。
人の手によって整備されることがなくなり自然と一体になっている体育館。そこには場に沿わない声が鳴り響いていた。
「ボクこそは、この新世界の神であり・・・」
その声の主は壇上から飛び出てきたヌイグルミ。
クマの形を模った縫いぐるみでありながら背中には本来存在しないはずの大きな翼を生やし、身体は白色と黒色の二色に彩られている。
愛らしい外見とは裏腹に、そのヌイグルミからは憎悪、嫌悪、嫉妬、狂気、愉悦、慢心、悪意、敵意一概に表すことができない不気味な雰囲気を発していた。
ヌイグルミは目の前にいる16名の男女の困惑する様子などまったく気にせずに、
「そして、才囚学園の学園長!」
彼等を嘲笑うかのように声を高らかにあげながら、
「そう、モノクマだよ!
オマエラ、どうもはじめまして!」
クマは―――――モノクマは登場した。
「―――――え?」
それは16名の内、誰が無意識に溢した言葉かは分からないが、当然の反応であった。
「わーい!お父ちゃんだー!」
「お父ちゃん♪」
「ヘルイェ!お父ちゃん!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
モノクマの子供たち『モノクマキッド』は父親であり母親でもあるモノクマの登場を大喜びしているが、現状も自身も何もかも分からない彼等には、冷静に落ち着いて現状を理解するなど無理な話であった。
どう見ても生物には見えないヌイグルミが、まるで生きている人間のようにコロコロと表情を変えながら平然と言葉を発する。
それもモノクロ色の一体だけではなく、赤、青、黄色、ピンク、緑のどこか戦隊シリーズの配色を思い出させる塗装がされている別の五体のヌイグルミも当たり前のように言葉を話している。
今現在居る場所もギリギリ原形を止めているだけで荒れきった体育館。
体育館の隣に建てられていた見知らぬ学園に、学園を丸ごと円形に囲むように建てられていた巨大な壁。
ヌイグルミがしゃべり出すというだけでも理解の範疇を超えた出来事であるのにそれ以外にも理解不能な出来事が多数。
それらを声の一つも出すことなく冷静に受け入れるなどできるはずがなかった。
「ヌイグルミが喋てる・・・・・」
「何これ・・・・・?」
ある者は顔を青くさせながら震え、またある者は顔にたくさんの汗を浮かべ目をグルグルと回している。
困惑している内面を表に出ないように取り繕うとしている者もいるが、感じられる独特の寒気が消えることはなく。
表情や容姿は別々でありながら共通して彼等には、この後にやって来るだろう未来が希望に満ちたものではないと予感めいたものを感じていた。
――――――たった1人を除いて。
(モノクマが・・・・目の前に.や、やった!僕は・・受かったんだ!オーディションに。そして、僕は・・大好きな・・・・あの超高校級の・・・コロシアイに参加できるんだ!!)
顔半分を隠すように帽子を被った少年は、他の者たちが圧倒されている中ただ一人、恐怖心からではなく抑えきれない歓喜によって体を震わせていた。
他の15名とは違い、この少年だけは現状を受け入れ喜んでいる。
それは他のメンバーがここはどこなのか、またモノクマとは一体何なのかも忘れている中。
ただ1人記憶も、そして、自分がどこの誰なのかを覚えている彼にとって、
何度も画面越しに見続け憧れたこの現状は
何回何十回と憧れ夢にまで見ながらも決して叶わないと諦めていたこの世界は
この――――ダンガンロンパの世界は夢の舞台であった。
☆☆☆☆☆
僕はどこにでもいる平凡な高校生だった。
生まれは特殊な血脈の一族でもなく、立派な旧家の跡取りという訳でもない、極々普通のサラリーマンの父さんと優しい母さんとの間の子供として生れた。
父さんはちょっと厳しいけど優しく、母さんは優しいけど怒ったら鬼に変身する。
どこにでも居るようなありふれた家族で、不備なんて感じない幸せな毎日。
優しい両親に見守れ、学校を卒業して就職し、人生のパートナーと出会い結婚し子供を産み、孫や子供に囲まれながら生涯を終える。
そんなありきたりで普通な人生を迎えるといつも思っていた。
だけど、僕の人生は『ダンガンロンパ』と出会うことで大きく変わった。
『ダンガンロンパ』
ダンガンロンパシリーズ、と呼ばれるこの作品は、ある会社により開発・販売された、アドベンチャーゲームのシリーズ作品。
作品内容としては、「超高校級」と呼ばれる特殊な才能を持つ高校生を学校や無人島など閉鎖環境下に閉じ込め、さまざまな動機を与え『コロシアイ』を強制させ、『コロシアイ』が起きた際にはその事件について捜査を行ない、『学級裁判』と呼ばれる裁判を開き犯人の追求を行なう。
推理とアクションが混ざり合ったアドベンチャーゲーム。
超高校級と呼ばれる希有な才能の持つ、一癖も二癖もある個性豊かなキャラクター。
ハラハラドキドキのシナリオ展開に考えもしない殺人トリック。
今までの前提すらもひっくり返る新事実、希望を折り砕く強敵の登場によって襲ってくる圧倒的絶望。
どんな絶望に襲われようが、諦めずに希望を信じて前へ進む勇気。
そんなキャラクター達に、世界観に魅了され、僕はすぐにダンガンロンパの世界に惹かれていった。
その日から歴代の作品を繰り返しプレイし、関連アニメ作品の視聴をして楽しみ、時にはオリジナルなキャラクターや設定など考え、研究ノートなんて物も作ったりした。
どんなに考えても湧き出てくる発想は底を尽きることがなく、勉強もせずに寝ないで一日中考えている日もあった。
気付いた時には僕の人生はダンガンロンパ一色に染まっていた。
他人から見たら無駄と罵られそうな生活を過ごす内に、ダンガンロンパは趣味の範囲を超え崇拝の域にまで達し、僕はあの世界に行きたいと考えるようになった。
だけど、ダンガンロンパはフィクション。
現実にある世界や実在するキャラクターなんて存在しない。ミスがないようにプログラミングされ、ゼロから百まで設定され人の手で作られた存在するはずのない世界。本物なんて欠けらもなく人を楽しませるためだけに作られたエンターテイメント作品。
僕はどうしようもないほどに『ダンガンロンパ』に魅了された。
その物語に生き様にただただ憧れ、狂ったように恋い焦がれ。
何としてもそこに行きたい。たとえ全てを捨てでもその場所に行きたいと、と思ってしまうほど僕は狂ってしまっていた。
それから幾つもの方法を試した。
信憑性のないオカルト染みた方法を試したり、神隠しスッポットを訪れたり。
思いつく限りの方法を試したが、しかし結果は失敗ばかり。
その頃には、僕のしていることに気付いてか父さん母さんにはいつも心配そうな顔をさせ、相談事はないか、といつも聞いてきた。
いつまでも成功しない虚無感や不安そうな顔を両親にさせている事への罪悪感から、もういっそ止めてしまおうかと諦めそうになっていた。
この思いに区切りをつけるかつけないかの瀬戸際。
あの場所に行くことが出来るチャンスが訪れた。
ダンガンロンパ新作作品情報
『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』
【お知らせ】
我が社では『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』を制作することになりました。つきましては、『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』に登場するキャラクターを演じる出演者を募集することに致しました。詳細については‥‥‥
それは。
ダンガンロンパの制作会社から発表された、次回作の出演者募集の案内であった。
☆☆☆☆☆
無事募集選考を受かった僕は『超高校級の探偵 最原終一』になった。
確かに『****』という元の人間の記憶を持つが、記憶の半分以上が『超高校級の探偵 最原終一』としての作られたフィクションの記憶に染まっている。
記憶は特殊な手術によるもの。これで僕は『超高校級の探偵 最原終一』としての記憶だけでなく、その探偵としての才能や運動能力を手に入れた。
たくさんの変化はあったが面影は元の顔立ちのままだった。
感覚的には、『最原終一』になった、と言うより入れ替わった、と言うほうが近いのかもしれない。
だが手術の仕直しや記憶の消去はすることができず、僕はもう二度と『****』として生きていくことはできない。
(父さん母さんが悲しむかな‥‥ダメダメ。そんなことより、せっかくこの世界に来れたのだから楽しまなくちゃ!)
モノクマの有り難いお話(笑)を聞いた後、色々あったが夜時間をむかえていた。
布団の上に寝転びながら僕は、今日のことを振り返る。
最初に教室で目を覚まして、同じ教室で『超高校級のピアニスト 赤松楓』と出会った。赤松さんと一緒に体育館に向かい、そこで毎度お馴染みのモノクマが登場。モノクマのルール説明を聞いた後に、他の超高校級の彼等と一緒に食堂でこの後の方針を決めた。
軽い衝突はあったけどこの学園からの脱出口を探す方針に決まり、一度解散。解散後は各自で学園の捜索に向かい、僕は赤松さんと一緒に学園の捜索を行なった。
赤松さんとの捜索中に出会った他のみんなは、自身の超高校級のキャラクターになりきっていて、僕なんて終始長年の夢が叶ってうれしい気持ちが顔に出そうになるのを我慢するため黙っているしかなかった。
他の超高校級のみんなも僕と同じ一般応募からの参加者なのに、ずっと黙ることしか出来なかった僕とは違って自然体で。
ホントは元々この世界の住人ではないのか、と何回思ったことか。
僕も明日からしっかり見習っていきたい。
赤松さんとの捜査は本当に楽しかった。どんな状況でも負けないように笑顔で励ましてくれる彼女との時間は輝いていて、ずっとこの時間が続いてもいいとも思った。
(もしかしたら僕はそんな彼女のこと・・・・・いやいや、彼女もこのコロシアイの参加メンバー。出会ったその日に・・・・・・違うから!これは、そう!もしかしたら僕が彼女の演技に騙されていて僕は騙されて・・・・・・・・別の事を考えよう。)
さっきまでのことを頭の隅に押し込め、僕はこの世界に来たらやってみたいと考えていた『コロシアイ』の方法、つまり殺人計画を実行するための準備を始めた。
方法自体は『****』の時からずっと考えていて、裁判が起きても僕が犯人だとバレることはないと自信をもって言える。だけどこの方法にはまだ決まっていないことが一つあった。
それは、殺害対象。
これは仕方がないことで、当日コロシアイ学園生活が始まるまで、他の超高校級の彼等がどのような体格、才能を持っているかが分からないから決めるに決めれなかった。
当初はみんなの性格や才能を見て決めようと考えていたが、ある人物にあった時にターゲットは決まった。
その人物は耳にピアスを付け、ネックレスや腕輪を身に付け、一見チャラそうに見える外見をしている『天海蘭太郎』。
もちろん、そのどんな女の子もイチコロに落としそうなイケメン顔を憎んだ訳でも、力強くなさそうなモヤシボディだからでもない。
ただ僕は彼の才能が存在が、今後の障害になると知っていたから、ターゲットに決めた。
彼の才能は『超高校級の生存者』
そして彼は―――――
――――――――――前回のダンガンロンパの勝者であった。
天海君は前作『ダンガンロンパ52 絶望の名は』の参加者。
彼はその探偵顔負けの推理力を発揮し数々の学級裁判を乗り越え、その甘いマスクで多くの女性キャラクターを落としていった。
(今回も参加するなんて羨ましい。僕の殺人計画がバレないとは思うが、一度このコロシアイを勝ち上がった経験者である彼は気づくかもしれない。)
彼の実力を恐れた僕は先手を打つためにも、天海君をターゲットに選んだ。
さすがの天海君も、殺人を促す『動機』が発表されるまでコロシアイは起きないと油断していると考え、僕は彼を明日殺す事に決めた。
長年考えた殺人計画を実行するためには、時間も場所、凶器にアリバイと準備する必要があるため、この人気の少ない夜時間を使って明日の用意をする。
そのためにベットから降りて部屋を出る。
(今日赤松さんと学園中を捜索した事で、犯行に使う予定の場所の目途は立っている。後は犯行に使う凶器となる包丁を食堂から調達するだけ。)
幸い夜時間であるため辺りは暗く、時間帯も時間帯なだけに食堂まで人目につかずに辿り着くことが出来た。
僕は通路に人が居ないことを確認してこっそりと食堂に入り、お目当ての包丁を手に入れる。
(この包丁で彼をグサリと・・・・・・・・・・)
包丁を手に入れた僕はそれを自室に持ち帰ろうと歩き始めた。
このとき僕は冷静ではなかった。
長年の夢が叶ったうれしさや何の問題もなく進んでいく犯行計画、順調に進みすぎている準備、そして少しの躊躇い。一度に多くの事を考えてしまっていた僕は外の様子など確認することをせずに食堂を出てしまう。
そして、たまたま散歩していた彼女と出会ってしまった。
「最原くん?」
その名前を、その声を聞いた瞬間、頭の中で考えていた事などすっかり消え、心臓を掴まれたような衝撃に襲われた。
僕は今にも破裂しそうなほどドキドキと鳴っている心音を感じながらギィギィ、と古びた扉が開くようにゆっくりと声の主に振り返る。
そこには誰よりも僕と時間を共有し、誰よりも見られたくないと思っていた彼女、赤松さんがいた。
(――――ど、どうして、なんで、何で!赤松さんが!!それよりも、見られた!彼女には僕が持っている包丁が見えているはず。こんな疑い用のない物を持っている時点で言い訳は通用しないだろう・・・・・ここで殺すか。いや、ダメだ。準備もまだ途中なのに突発的に殺すなんて、あのあぽ君と同じだ!!それに、寄りにもよって赤松さんだなんて!そんなの僕には・・・・・)
「最原君、どうしてこんな場所に?あ、分かった!最原君も寝付けなくて散歩しているんでしょ!私も今日モノクマに言われたことが気になって上手く寝れなくて・・・・・。それでね、気分転換に散歩でもしようかな、と思って・・・・・あれ?最原君が持っているそれって・・・・」
(くそっ。何とか誤魔化すし―――)
「最原君」
「はい!な、何かな赤松s―――」
「ちょっとお話しようか」
「いや、でも、もう夜時間だs―――」
「お話しようか」
「あ、はい」
こうして始まったコロシアイ学園生活。
裏切りに友情、封鎖された学園に未知なる冒険、恐怖に勇気、そして、絶望と希望。
全てが詰まったダンガンロンパな日常が幕を上げた。
(今回は失敗した。だが、見てろよ、天海君!!第2、第3の計画を考え、必ず君を殺してみせる。今日は精々穏やかな安眠を貪るがいい、フハハハハハハh―――)
「誰が正座を崩して良いなんて言ったかな。」
「申し訳ございません。」
「明日から最原君が変な事をしないように見張っておくね。」
「・・・・・・・・・・・・・」
人物説明
『最原終一』
ダンガンロンパが大好きなどこにでも居る高校生。夢はダンガンロンパの世界に行くことで、日々殺人計画や設定をシュミレーションすることが趣味なちょっとイタい男の子。今回ダンガンロンパV3のキャストに見事に当選し『超高校級の探偵 最原終一』となった。そのため、今まで『****』として生きていた記憶と、作られた『超高校級の探偵 最原終一』としての記憶を持つ。本人談。
原作では当初、主人公(赤松楓)を支える助手ポジションであったが、途中から主人公にクラスチェンジ。おしゃれポイントであった帽子属性をすぐに捨てるという、どこかのデミサーを思い出させるスタイル。
今作では彼は、記憶を改ざんされたのも関わらず元の『****』としての記憶を持っている。
前回のダンガンロンパの勝者である天海蘭太郎(イケメン)を警戒(嫉妬)しているため、自身の『(自称)完璧な殺人計画』で殺したい。だが、赤松・・・・・etcに邪魔されて上手くいかない。彼の計画が登場するのか今後が楽しみ。あと、チョロイン。
「天海君、覚えていろよ~(足が痛くて涙声)」
『赤松楓』
『超高高級のピアニスト』の才能と歴代主人公達と同じアホ毛を持つ女子高生。気がついたら学園に閉じ込められていて、コロシアイを強要されるも、持ち前の明るさと諦めない気持ちでみんなを励まし、引っ張っていくリーダー。
原作ではパッケージや事前体験で彼女を主人公として強調させ、その健気な姿で多くのファンを魅了させたにも関わらず、あっさり脱落するという、多くのファンを驚かせたドッキリ少女。
その男泣かせの仕草で最原君をあっさり堕とす。最原君が殺人を計画している場面を偶然全発見し、大切な友達である彼が殺人を行なわないようにOHANASIを実行。それだけでは反省しているか心配なため、彼の行動を逐一観察するため、より一緒に行動することに。生意気な幼なじみがどうしても心配でお節介を焼いている子のよう。
「最原君、私がしっかり見ておかなくちゃ!」
『天海蘭太郎』
チャラい見た目で最原君も認めるイケメン。『超高校級の???』という謎の才能を持つ、後に覚醒するんじゃね?系の男の子。
原作では、多くの伏線を残したまま最初に殺された出落ちキャラ。実際は、前回行なわれたダンガンロンパに生き残った『超高校級の生存者』。前回のダンガンロンパではその冴えに冴え渡った推理力でもうお前だけでよくね?、というほど活躍し、その甘いマスクで全女性キャラを堕とす。全(男)ファンは(殺意に)沸き、今では爆死して欲しい男性ナンバーワン。
今は記憶が改ざんされていて自信の才能や記憶を忘れていて不安に。また見覚えのないPadを持っていて、その中には意味深な文章が書いてあり、超絶不安に陥っている。さらに、黒幕が殺したいと虎視眈々と狙っている。やったね!もうすぐ胃薬が必要になるね!因みに、最原君と黒幕に狙われていることを知らない。頑張れ、超頑張れ、天海君。
「このPadも自分も意味わかんなすぎて、眠れないっす・・・・」
続かない・・・・・