ベル・クラネルの隣に煩悩魔人を置いてみたら・・・・・・? 作:知ろう人
【ダンジョン】
巨大な迷宮都市オラリオに保有される壮大な地下迷宮の総称。
未知で強力な怪物が跋扈する幾多の階層。
怪物の残す魔石を資源とする生活の中、その自給は尽きることが無い。
故に、多くの命知らずの冒険者が今日も迷宮に潜る。
しかし、迷宮に潜るというのは――
『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「ほぁああああああああああああああっ!?」
「だぁああああああああああああああっ!?」
一瞬で、対価の命を失う可能性があるということでもある。
「ああああああああああああ!!しぬしぬしぬしぬ、死んでまうう、おがーーん!!」
「タダオ!!叫んでないで足動かして!!」
「言われんでも走ってらぁ!?ああ!?」
ごつごつっとしたダンジョンの地面潰れろ!といわんばかりに力強く疾走を続ける、見るからに初心者と思われる装備をしている二人組の少年と青年。
その背後を追撃するように追いかけてくるのは牛頭人体のモンスター『ミノタウロス』。
Lv2のモンスターに分類されるそのモンスターは、初心者二人が倒せる相手ではない。
『ヴゥムゥンッ!!』
「でぇっ!?」
「ぎゃぶっ!?」
ミノタウルスの一撃で足元の地面が砕け、足元が取られる。
白髪の少年はそのままダンジョンの地面をゴロゴロと転がり、黒髪の青年は地面に顔面を強打した。
「タ、タダオ・・・・・・!」
『フゥー、フゥーッ……!』
「く、来んじゃねぇ!!俺はノンケじゃあ!!」
青年は、座り込んだまま後ずさり、手に触れたものを手当たり次第と言わんばかりにミノタウルスに投げつける。
涙や鼻水まみれの顔ではまともに相手も見えないのか、いくつかは外れて転がっていく。
そうしているとドンッと背中が壁にぶつかる。
もう後がない。
そんな追い詰められた獲物に止めを刺すため、ミノタウルスは両手を組み、高々と上げる。
『ヴヴォオオオオオオ!!』
筋骨隆々の肉体を一層盛り上げ、絶命の一撃が青年に叩きこまれる――はずだった。
【ヴヴォオ!?】
「――ナイス、ベル!!」
「――間に合った!?」
突如、怪物の動きが一時停止する。
追い詰められていた青年は笑みを浮かべ、片手に光る玉をつまんでいた。
そして、それに答えたもう一人の少年も、ミノタウロスの後ろで、光る玉を持っていた。
少年が投げたものの中に、その玉があったのである。
二人が持つ光る玉には、模様が浮かび、片方には【糸】。もう片方には【専】というのが浮かんでいる。
「ったく、来て早々文殊を使わせんなよ、この牛面!!」
「でも、これで【縛】れたんでしょ!?早く逃げようよ!?」
「おぉ、せやな。しかし、ちょっと復讐に、このマジックで角にでも『馬面になりたかった』って書いてからでも――」
ピキピキピキッ!
「タ、タダオ!文殊に罅が入ってきてる!」
「なっ!?嘘やろ!?」
『ブモォオオオオオオ!!』
「「わあああぁぁぁぁぁっ!?」」
二人の玉が砕けると同時に、ミノタウロスは両手を広げて、その場で回転する。
直撃を避けることはできたが、風圧で二人は壁に叩きつけられる。
そして、今度は白髪の少年に向かってミノタウルスが突進する。
「ベル!!」
「あ、あ、あ、あ・・・・・・・・・・・」
次の瞬間には、ベルがその角に貫かれる――と思われた瞬間、今度は怪物の身体に光が走った。
「え?」
『ヴぉ?』
間が抜けた両者の声が響き、瞬く間にミノタウルスはバラバラと崩れた。
そして、突進の勢いのままベルの両端を通り、己が中身をベルにぶちまけて落ちた。
ベルは全身に大量の血を浴びながら、呆然としていた。
「……大丈夫ですか?」
そんなベルに少女が話しかける。
――蒼い装備に身を包んだ、金眼金髪の女剣士。
ここ、オラリオで知らぬものなしの第一級冒険者。
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインである。
「あの・・・・・・大丈夫、ですか?立てますか?」
「だっ――」
「だ?」
「だぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
絶叫を上げ、ベルは脱兎のごとく逃げ出した。
その場に、ぽかんと目を見開いて立ち尽くす少女が残される。
「……っ、・・・・・・っっ、・・・・・・くくっ!」
そして、いつの間にか来ていた獣人の男性、ロキファミリアの冒険者であるベートが、必死に笑いを堪えようとしているが、まったく隠し切れず、お腹を抱えている姿がそこにあった。
それをアイズはきっ、睨み付けるが、頬を赤らめた表情に迫力は感じられなかった。
「……あっ!」
そして、アイズは思い出す。危ない目に合っていたのはもう一人いたことを。
反対側にいたはずの青年の姿を確認しようと振り返る。
――そこには、花束が目の前にあった。
「――えっ?」
「――美しいお嬢さん、危ない所を助けてくれてありがとう。どうだろう?お礼に、おいしいジャガ丸くんを出すお店があるのだが、一緒にいかが?」
「えっ?えっ?えっ?」
「さぁ、この出会いに感謝して、こんな血生臭い所から出yo――」
「てめぇ、アイズの手を軽々しく触ってんじゃねェ!!」
「かぼすっ!?」
困惑するアイズを救うべく、軟派青年の顔面に向かって、ベートは助走付きの跳び蹴りを喰らわせた。
青年は文字通り吹き飛び、壁に激突する。
その威力で壁が崩れ、青年は瓦礫の中に消えていく。
「べ、ベートさん、今の人、死んだんじゃ……?」
「はっ!死んで当然だ!雑魚の分際で馴れ馴れしい――」
「――(ガラガラガラッ)――あ~、死ぬかと思った」
「「生きてる!?」」
瓦礫の中から出てきた青年は、顔など血まみれで重傷に見えたが、問題ないように動いていた。
明らかに初心者にしか見えない青年が、Lv5のベートの一撃を喰らったのに、だ。
「――てめぇ、こら、犬!人がナンパしているのに横やり入れてくんなや!」
「オレは狼だ!ってか、アイズにナンパだぁ!?100年はえぇよ!!」
「はんっ!そんなの待ってたら死んでまうわ!良い女は口説くもの!世界の真理だろうが!?」
「雑魚の分際でふざけんなぁ!!てめぇ、どこのファミリアだ!?」
「ワイか?ワイのファミリアは無い!――ヘスティアファミリアに居候させて貰っている冒険者、横島忠夫だ!」
ダンジョンの真ん中で、堂々とロキファミリアの二人に宣言する青年の姿が、その日、そこにあった。
~~ダンジョンに煩悩魔人がいるのは間違っているだろうか~~
私は知ろう人(しろう)である。文才は無い。
そして、続編は(絶対に)無い。
おそまつ。