前回の作品を読んでくださった方も、そうでない方も楽しめるよう頑張りますので是非読んでいただけたらなと思います。
人生は選択肢の連続だ。
昔の歴史上の偉人から現代に至るまで、人間生きていれば何かしらの選択肢に出くわすことになる。
その選択肢が大事なものか、そうでないものか、色々あると思うがその選択によって今後の人生に大きな影響が出ることになる。
そう、つまりどんな選択肢も決してないがしろにしてはいけない。
「ん〜〜〜」
だからこそ、俺こと【高山 広】も今、頭を悩めている真っ最中なのだ。
「あーどうすっかな...」
進路希望表
高校三年の秋、もう何度目になるかわからないほど見たプリントがまたしても白紙のまま俺の前に現れた。
「...」
ちょっと前の俺だったら迷わず家からでも通える学力平凡、試験もそんなに難しくない勉強すれば誰でも入れるような大学を選択しただろう。
しかし、今の俺は少しちがう。
野球で日本代表に選ばれてからは進路の選択肢が大幅に広がった。
都外からも多くの推薦状が届いていた。
ゆえに、野球を続け強豪大学に入るか、勉強して普通に進学するか迷うことになる。
「あなた、まだ提出してないの?」
隣を見ると学力優秀、運動神経も抜群、まさに才色兼備という言葉が当てはまる我らが生徒会長様が腰に手をついて俺を見ていた。
「自分の将来のことなんだ。
そりゃ悩むさ。時間もかかる。」
「意外ね。あなたなら迷わず野球が強い大学に進学するものだと思っていたけれど...」
そう言って【絢瀬 絵里】は俺の白紙のままのプリントを覗き込む。
「まあ、時間はあるし家に帰ってゆっくり考えるよ」
「提出期限、明後日なんだけど...
それに他のみんなはもうとっくに出してるわよ?」
「...まじで?」
配られたの一昨日くらいなんだけど...
確か俺が遠征に行っている間に配ったって先生が言ってたな...
「ま、まあ、それでもあと2日ある。
期限までには出すから待っててくれ」
そう言ってプリントをカバンにしまいこむ。
「そういえば前のライブ、見事だった。
感動したよ」
「...あなた、いつの話してるのよ。
それはライブが終わった後に言って欲しかったわね」
「まぁ、お互い忙しかったからな...
でも、絵里がμ'sに入ったからあそこまで変わったんだと思うぜ?」
「///そ、そうかしら...」
俺がそう言ってやると絵里は意表を突かれたような顔をしたあと、少し顔を赤くした。
「次のライブはいつやるんだ?」
「今度の学園祭でやろうと思ってるわ。
みんな張り切ってる。あとはニコが講堂の使用権をとってくれればベストなんだけど」
学園祭では部活動で使う場所がかぶるため、場所どりはくじで決められる。
特に講堂は人気で使いたい部活動は山ほどあるだろう。
「ま、あいつのくじ運がいいことを願ってるよ。
それじゃ、また明日。
あ、あと今日も練習あるんだろ?
真姫が無理しないように見といてくれ」
「...どういう意味?」
俺の幼馴染である【西木野真姫】は体が弱く、運動をするとすぐに息が上がる。
μ'sに入った今では少し体力がついたようだが、無理をしないに越したことはない。
徐々に慣れていけばいいんだ。
そのため、練習に参加しない俺に変わって誰かにあいつを見ていてほしいというわけだ。
...ちょっと過保護すぎる気もするが、
「そのままの意味さ。じゃあな」
そう言って俺は教室を後にした。
「ただいまー」
時刻は午後四時半
家に帰ってきた俺は靴を脱ぎリビングのドアを開けた。
「あんた!学校から連絡があったわよ。
進路希望表がまだ出てないって」
「え!」
開口一番、母さんは俺に向かって言い放った。
一昨日に渡されたんだ、もうちょっと待ってくれてもいいだろ。
「その前のも出してないらしいわね。
父さんに言われたくなかったら早く書きなさい」
「ギクっ」
バレてたのか。
これは観念して今日中に書くしかないな...
ガチャ
「ヒロ兄ー野球しよ!」
「翼!しーー」
玄関を見ると赤い髪をした誰かさんによく似た男の子がグローブを持って俺の後ろに立っていた。
「どうしたの?」
こいつの名前は【西木野 翼】
真姫の弟だ。
「すぐ行くから、外で待ってろ」
部屋にこもって考え事なんて性に合わない。
俺は母さんにバレないようにグローブとバットを持って外に飛び出した。
場所は俺が一人でいつも練習している橋の下。
家を飛び出した俺は翼に野球を教えながら進路について考えていた。
「やっぱこれだわ...」
「?何か言った?」
独り言を呟くと不思議そうに翼が聞いてくる。
「...なんでもねーよ」
決めた!
野球は続ける。
それなら、できるだけ強い大学に行かなきゃな。
「まーたやってる」
「?」
声のした方向を向くと制服姿の真姫がいつの間にか近くまで来ていた。
「なんだよ、練習終わったのか?」
「ええ、それよりおばさんがカンカンだったわよ。
早く帰って来なさいって」
「げっ」
黙って抜け出しただけにタチが悪い。
父さんが帰って来てるならなおさらだ。
「父さん、帰って来てた?」
「もちろん」
真姫はニコニコしながらそう言った。
ため息が止まらない。
「翼、今日はここまでだ。
帰るぞ」
翼はえ〜と言いながら駄々をこねたがそれどころじゃない。
時刻は午後六時
早く帰ろう...
「そういえばあんた、進路決めたの?」
家への帰り道、真姫が唐突にそんなことを聞いてきた。
「あぁ、一応推薦状が届いてる中から選ぼうと思ってる」
「...それって、この街を出るってこと?」
「...そうなるかもな。なんだ、寂しいのか?」
「///そ、そんなわけないでしょ!」
そう言って真姫は顔を赤らめふんっとよそを向く。
「はいはい」
俺は適当に返事をし、歩く速度を早めた。
「俺、決めたよ。
野球は続ける。そんで大学も都外に出たい」
「!」
三人で家に帰った後、俺は親に進路について話した。
案の定両親は驚いた顔をしている。
しかし、俺がそう言った後父さんは俺を見て軽く微笑んだ。
「そうか...お前が決めたことならそれでいい」
それ以上は何も言ってこなかった。
真姫「...」
次の日、学校から帰った俺は一人部屋で大学について調べていた。
都外の大学と言ってもいろいろある。
今日中に書かなければいけないため早めに決めないといけない。
「んーー」
俺だってこの街を離れるのは少し寂しいがそれ以上に自分の力を試したい気持ちでいっぱいだった。
「ヒローちょっといい?」
俺が悩んでいると下からかあさんの声が聞こえてきた。
「なに?」
下に降り母さんの前に行くと、母さんは回覧板を俺に押し付けてくる。
「これ、真姫ちゃんの家に持ってってくれない?」
「...」
それぐらい自分で行けよと心の中で愚痴り受け取った回覧板を持って靴を履き、隣の真姫の家に向かった。
「ちわーす」
「あら、ヒロくんいらっしゃい」
玄関を開けると真姫の母さんが俺を出迎えてくれた。
俺は持ってきた回覧板を渡し、家から出ようとしたところをおばさんに捕まえられた。
「ヒロくん、お茶して行かない?
あと、なんだか真姫ちゃんの元気がないみたいなの。
だから励ましてあげて」
「え?」
真姫のやつ、なんかあったのかな...
今朝は普通だったけど。
せっかくなので家に上がらせてもらい、お茶セット一式とお菓子を持って階段を上がった。
「真姫入るぞー」
そう言って真姫の部屋のドアを開けると今まさに制服を脱いで下着姿になっていた真姫と目があった。
あ、死んだ。
「お、お邪魔しました〜」
俺はティーセットをテーブルの上に置きそのまま部屋を後にしようとすると肩をガシッと真姫に掴まれ
バシーン
左ほほをおもいっきりしばかれた。
「...変態」
「だから不可抗力だって!」
いまだジンジンする左ほほをさすりながら真姫に反論する。
まぁ、悪いのは完全に俺で弁解の余地なしなのだが...
「それで、なにしにきたのよ」
「回覧板届けにきたんだよ。
あと、なんかお前が元気ないみたいだったから話でもしようと思ってだな」
「...」
そこまで話したところで真姫が下を向いているのに気がついた。
本当に元気がないみたいだ。
「なぁ、なんかあったのか?
俺でよければ話聞くけど...」
今日の真姫は明らかにおかしい。
それは見ているだけでわかる。
「...ねぇ、昨日の話...本当なの?」
「昨日って?」
「...あんたが、この街を出て行くって話」
「ああ、それか」
その話がここで出てくるとは思わなかった。
「...本当だよ...
今日中に決めなきゃいけない」
実際、今考えてたところだしな。
「なんだよ。本当に寂しいと思ってたのか?」
「///だ、だから違うって言ってるでしょ!」
だよな。
「なんなんだよ。
それじゃ、俺帰って希望表書かなきゃだから。またな」
「ま、待って!」
俺が立ち上がってドアに手をかけようとしたところを真姫が後ろから俺の服を引っ張って止めてきた。
「真姫?」
「...」
真姫は俺の服を持ったまま下を向き話し始める。
「ごめんなさい...さっきのは嘘なの...」
「?」
俺は振り返り真姫の顔を見る。
下を向いていて表情がよく見えない。
「本当は、あんたが遠くに行っちゃうのがすごく...嫌なの...」
「!」
今わかった。
元気がなかったのはそれのせいなのか...
真姫は続ける。
「あんたが野球を再開して、嬉しいはずなのに...
トラウマを乗り越えてまた一歩踏み出せたことがすごく嬉しいはずなのに...
どんどん有名になっていくあんたを見てると、なんだかモヤモヤして...
あんたが...ヒロが遠くに行っちゃった気がして、すごく嫌な気持ちになってる自分がいて...」
「...」
「そんな自分がすごく嫌い。
応援するって決めたのに、時が経つにつれて少しだけ後悔し始めた...
こんなこと言ったら、またヒロを困らせるのはわかってる。
でも、今素直にならないとまたあんたは遠くに行っちゃうから...
そんなのもう、がまんできないから...」
「お、おい...」
そこで真姫は初めて顔を上げた。
「ヒロ...もう遠くに行かないで...」
「!」
真姫の表情はどこか懇願するような、必死に何かにすがるような...
そんな目で俺を見つめる。
「私も、あんたと一緒の大学に行きたい...
あんたと一緒にこの街で過ごしたい...
...ごめんなさい、急にこんなこと言って...」
「真姫...」
こいつが...真姫がこんなことを思っていたなんて...
素直になれない性格のせいでずっと我慢していたんだ。
真姫の思いを知った上で俺の心はまた揺れだす。
本当にこの進路でいいのか...
それで俺は絶対に後悔しないのか...優先順位をつけるにはあまりにも難しい問題。
「...」
ただ、俺だってこの街を離れたくない。
この街で積み重ねてきたものもある。
友達、野球、先生や家族...
それにこいつのことも...
自分が後悔しない選択は何か...
もうわかってるじゃないか。
「真姫...いくぞ」
「え?」
そう言って俺は真姫の手を取り外に連れ出した。
「父さん!母さん!」
「!?」
真姫をつれたまま高山家に入りリビングのドアを開け放った。
「俺、やっぱりこの街に残る!」
「!?」
「え...」
隣では真姫が驚いた顔で俺を見ているのがわかる。
「この街の大学に進学する!
わがまま言ってゴメン!」
「どおしたんだ?急に...」
「...色々考えた...
俺やっぱりこの街を離れたくない。
それに、初めから強い大学に行っても面白くないだろ?
俺がここの大学を強くしてやるんだ!」
俺がそう言うと今度は母さんが微笑んだ。
「そう...わかったわ。
だそうよ、お父さん」
「...好きにしろ」
「...ありがとう」
「ヒロ...」
「ん?どうした?」
俺の部屋に来た真姫はドアの前に立ったまま俺の名前を呼ぶ。
「本当に...よかったの?」
「なんだよ、お前が残れって言ったんだろ?」
真姫の表情はいまだどこか申し訳なさが滲み出ていた。
「それより、ここら辺で野球部もあって一番頭のいい大学探さないとな。
お前が来るんだからバカなところには入れねーや」
「え?」
見るとまた、真姫は驚いた顔をして俺を見ていた。
「一緒の大学に行くんだろ?」
「!」
とは言っても推薦で入学できても俺の頭じゃあ多分ついていけない。
これからは勉強もしないとな。
ふと真姫の方を見ると立ったまま顔を真っ赤にして泣いていた。
「お、おい!
泣くなよ!」
「うん...ごめんなさい」
「ったく、お前今日謝ってばっかだぞ。
そこはお礼を言われた方が俺も嬉しいんだ」
「うん...ヒロ
ありがとう///」
「どういたしまして」ニシシッ
人生は選択肢の連続だ。
その選択肢が大事なものか、そうでないものか、色々あると思うがその選択によって今後の人生に大きな影響が出ることになる。
俺の選択が間違っていたとしても...
たとえどんなに大きな不幸があったとしても...
俺は【後悔】だけは絶対にしない。