最愛の人へ 〜未来への光〜   作:糖也

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第三話 小さな願い

 

 

 

《side 真姫

 

 

グツグツ

 

 

 

「...」

 

 

キッチンで鍋を眺めながら立ち尽くす。

 

 

「はぁ〜」

 

 

先ほどのヒロとのやりとりを思い出すと溜息がこぼれた。

 

なんで私は、いつもこうなんだろう。

普段からヒロにはどうしても強く当たってしまい、その後必ず後悔する。

自分の素直になれない性格のせいで、あいつにはいつも逃げられてばかり。

最近では、いつにも増してこういうことが多くなった。

いや、原因はわかってる。

私はきっと、焦ってるんだ。

今年であいつと同じ高校に入学し、ようやく追いつけたと思った矢先、来年にはもうヒロはいない。

だからって、この一年であいつとの距離が縮まったのか考えると、そんなこともない。

告白した今でも、鈍感なあいつはいつも通りで、あいつは私が告白したことを忘れてるんじゃないかってほど今まで通りに過ごしてきた。

 

 

「どうしたら...いいのかしら」

 

 

この性格を治す方法はないのだろうか。

最近ではいつもそんな事ばかり考えている。

 

 

「一人で何言ってんだ?」

 

 

「...!」

 

 

声がした方向を振り返ると、ビニール袋を片手にぶら下げたヒロがすぐ後ろに立っていた。

 

 

「///あ、あんた!いるならいるっていいなさいよ!」

 

 

「そ、そんなに怒んなって」

 

 

あぁ...またやってしまった。

私の大声に反応して、ヒロはまたしても萎縮している。

 

 

「ほらよ、これ買ってきたから飯食った後に食べようぜ」

 

 

そう言ってヒロは机の上に私の好きなアイスを置く。

 

...そう、こういうところがまた、私の心をかき回す。

さっきあんな態度をとった私のために、アイスを買ってきてくれるところとか...

私の好みをちゃんと把握しているところとか...

何よりその無邪気な笑顔に、私はいつも揺さぶられてきた。

 

 

「///あ、ありがと」

 

 

「おう」ニシシ

 

 

この笑顔を見ると、不思議と安心するんだ。

今なら少しだけ、素直になれるかもしれない。

 

 

「ヒ、ヒロ」

 

 

「ん?なんだよ」

 

 

「///さ、さっきは...ご..ごめ...」

 

 

「おい!真姫!鍋!鍋!」

 

 

「...!」

 

 

私がヒロに謝ろうとした瞬間、ヒロは大きな声で私の後ろを指差した。

私がヒロの指差した方向を向くと

 

 

「ああぁ!!」

 

 

カレーが入っていた鍋が、黒い蒸気をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...」

 

 

「...ま、まあ、仕方ないさ。

新しく作ったんだし、そんなに落ち込むなって」

 

 

結局、カレーは丸焦げでとても食べられる状態ではなく、ヒロに手伝ってもらいながら初めから作り直した。

出来上がった頃には時計の針は20時を指しており、いつもより二時間もオーバーした夕食になってしまった。

 

 

「流石だな。すげー美味いよ。

お前も早く食えって」

 

 

そう言ってヒロはガツガツとカレーを頬張っている。

5分後には一皿完食し、おかわりをつぎに行った。

まったく、どこにそんな食欲があるのかしら。

毎日動くだけに、お腹が空くのかもしれない。

私はというと、昔から小食でカレー一杯も食べられないほど。

だからいつも器には少ししか盛らないのだけど、今日はなぜか少し多めについでしまった。

案の定、お腹いっぱいでもう食べられない。

 

 

「なんだ、もう腹いっぱいなのか?

かせよ、俺が食うから」

 

 

「あっ」

 

 

そう言ってヒロは私の食べかけのカレーを口に運んだ。

 

 

「///」

 

 

私が間接キスで赤くなっていると

 

 

「あ?お前顔真っ赤だぞ?

大丈夫か?」

 

 

そう言ってヒロは私のおでこに手を添えてきた。

徐々に体温が上がるのがわかる。

このままでは沸騰してしまうかもしれないほどに。

 

 

「///も、もう大丈夫よ!

私お風呂はいってくるから、お皿水に浸しててね」

 

 

そう言って自分のお皿を下げ、着替えを取りに行き脱衣所に逃げる。

頬をさわれば体温の高さがわかる。

鏡を見ると、まるでゆでダコみたいに赤くなっていた。

 

まったく、最近はあいつに振り回されてばかりだ。

何か仕返しをしないと気が済まない。

そんなことを考えながら私は服を脱ぎ、お風呂場のドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあそろそろ寝るか。

お前俺のベット使えよ。俺はリビングで寝るから」

 

 

夜もいい時間になったところでそろそろ寝ることになった。

ヒロは私に自分のベットを使うように言ってくる。

 

 

「いいわよ。

あんたのベットなんだからあんたが使いなさい」

 

 

「じゃあお前はどーすんだよ」

 

 

「私がリビングで寝るからあんたは自分の部屋で寝なさいよ」

 

 

「いや、いいよお前が使えって」

 

 

そんなやりとりを5分くらい繰り返したところで...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでこうなるんだよ...」

 

 

二人、ヒロの部屋で寝ることになった。

私がヒロのベット。

ヒロが隣で床に布団を敷いて寝る形。

 

ポツリとヒロが呟く声が聞こえる。

 

 

「しょ、しょうがないでしょ!

あんたが譲らないんだから」

 

 

「だからって、男と女が二人同じ部屋で寝るっていいのか?」

 

 

「///...!」

 

 

ヒロの言葉に再び顔が赤くなる。

そして少しだけ安心した。

だってヒロのことだから、私を女として見てくれてないんだと思ってたから。

 

 

「まぁ、べつにお前だからいっか」

 

 

「...」

 

 

...台無しじゃない。

見直した直後にすぐこれだ。

でも、それは逆に信頼してくれているってことなのかも。

 

 

「ねぇヒロ...」

 

 

「なんだよ」

 

 

ヒロはぶっきらぼうに返事をする。

 

久しぶりの二人の時間...

今なら...少しだけ、ほんの少しだけだけど素直になれる気がする。

 

 

「今...好きな人とかいるの?」

 

 

「...」

 

 

私の言葉はちゃんとヒロに届いているのだろうか...

ヒロは何も答えない。

しばらく待った後、ヒロは一言だけ

 

 

「もう寝ろ」

 

 

そう呟いた。

 

 

「...」

 

 

どうして...答えてくれないのだろう。

その疑問は、ヒロに届くことはなく、その会話を最後にヒロは私と反対側に寝返りをうった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくしても、私はなかなか寝付けなかった。

隣にヒロがいるからか、それとも色々なことを考えているからか、眠気はあるのに頭は冴えたまま。

 

「zzz...」

 

 

隣からは寝息が聞こえる。

どうやら完全に眠ってしまったらしい。

 

 

「ヒロ」

 

 

小声で話しかける。

 

 

「寝ちゃったの?」

 

 

返事は返ってこない。

 

 

「...」

 

 

どうして私は、こんな奴を好きになってしまったんだろう。

昔からいつも一緒にいた少し年上の男の子。

顔もいいわけでもない。

背なんか私より少しだけ高いぐらいで、男子からすると小柄な方だ。

いつもぶっきらぼうで、口が悪くて...

目を話すとすぐにどこか遠くに行ってしまう。

私はいつも振り回されてばかりで、追いかけても追いかけても遠ざかるばかり。

ヒロの悪いところを上げていけばきりがない。

 

でも...

私が困っていたら誰よりも早く駆けつけてくれる。

喧嘩しても、いつも折れてくれて先に謝ってくれる。

私の料理をいつも美味しいと言いながら食べてくれる。

失敗しても、挫折しても...

ずっと支えてくれたし、励ましてくれた。

 

出会ったときからずっと...私に変わらない笑顔を向けてくれた。

その笑顔に私はずっと勇気をもらってきたんだ。

 

 

ゴソゴソ

 

 

布団を抜け出し、ヒロの布団に入り込む。

背中に触れると、ヒロの体温を直に感じた。

なんでかな...すごく安心する。

 

 

こうしていられるのも、後もう少しだけ...

ヒロはまた、遠くに行ってしまう。

今までずっと、思ってきたことがある。

ヒロと同級生だったら...

あと二年、早く生まれていたなら...

そしたらあなたも、私のことをちゃんと見てくれるのかなって...

そんな話をしても仕方ないのはわかってる...

わかっているけど...それでも、そうだったらどれだけ良かったかなと考えてしまう。

もしも、これからの未来...

たとえどれだけ二人が歩む道が違っても...

向かう場所が離れていても...

最終的にはその二つの道が繋がって...

あなたの隣にいるのが私だったらなら...

どれだけ幸せなことだろうか。

 

 

「...おやすみ、ヒロ」

 

 

あと少し、ほんの少しだけ...

そう言い聞かせながら...私は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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