ネトゲの嫁は天使じゃないと思った?   作:青戸礼二

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ガヴリール編
1話:堕天使は恋に堕ちないと思った?


 

 ある日、天使ガヴリールはいつものように、ネトゲを遊んでいた。ゴミ袋などが無造作に置いてある散らかった部屋。そこでガブは、ジャージ姿で床に寝ころび、ノートPCにかぶりついている。

 

 しかし、今日はいつもと違う点が、ガヴの目に飛び込んできた。ネトゲの運営からの新着メッセージに【結婚】という文字がある。「結婚システム」を運営は実装したのだ。

 

「面白そうだな」

 

 ガヴは深く考えず、結婚してみたくなった。しょせんゲームの中の話なのだから、興味本位で行動したからといって、たいした問題はない。それならと試してみたくなるのが、人間……ではないが、天使の性(さが)だろう。

 

 

「だれを結婚相手にしようかな?」

 

 ガヴの頭に思い浮かんだ、ゲーム内のプレイヤーがいた。最近、いっしょにパーティを組んでいて、仲が良い者。しかし、ガヴにとってひとつ気になる点がある。そのプレイヤー(とアバター)は女性だったのだ。もちろん、ガヴは女だ。

 

「女同士で結婚? うーん……」

 

 

 そのとき、運営メッセージの文字がふたたび目に入った。【同性婚】という項目がある。同性婚が可能というのは、ネトゲに限らず、リアルでも最近の流行だ。ガヴがプレイしているゲームでも、その流れを汲んだのだろう。

 

「なんだ。できるのか。じゃあ、ポチ」

「結婚を申し込みました(システムメッセージ)」

 

 ――相手は結婚を承諾してくれた。それからというもの、ガヴはゲームの中で結婚生活を満喫している。身体の触れあいこそまったくないが、新婚生活はガヴにとって、何もかも新鮮な体験だ。

 

 

 そんなある日、ガヴリールが通っている学園の教室で、彼女は鼻歌を歌っていた。

 

「ふふ~ん♪」

「ガヴ、どうしたの? 最近は機嫌が良いじゃないの」

 

 悪魔ヴィーネが話しかけてきた。ガヴの人間界の友人で、悪魔のくせに面倒見が良い女の子だ。ヴィーネとガヴは学園の制服を着て、教室の窓側の後ろにある、隅の机に座っている。前の席に座っているヴィーネが振り向いて、ふたりは対面している。

 

「なあ、ヴィーネ。人間ってさ、恋愛や結婚をするんだな」

「ええ!? なあに? ガヴもやっと女の子らしく、恋に恋するようになったのね」

 

 

 ヴィーネがニッコリほほえみかけると、ガヴは照れた顔でブンブンと首を振った。

 

「いやいや、違うって。この前、天界に送るため、独身男性の調査をやっただろ?」

「ふーん。あくまで人間の生態観察って言いたいわけ?」

「そうだよ」

「ふーん。まあ、アンタじゃあ、恋愛には縁がないかあー」

「なんでだよ」

「髪ボサボサだし、ネトゲ廃人だし……」

「わたしだって恋くらいできるって!」

「できないわよ」

「してるって」

「……じゃあ、恋してるじゃん」

「あっ……」

 

 

 ニヤけながらジト目でガヴをみつめるヴィーネ。照れ隠しで腕を組んで、しかめっ面をするガヴ。しばらくふたりの間に沈黙が流れた。

 

「ねえガヴ、気になるお相手はどんな人なの?」

「……顔は分からない」

「ええ? 遠距離恋愛?」

「だから、そんなんじゃないって!」

「その人に会いたいって思わないの?」

「う……」

 

 

 ヴィーネと別れた後、ガヴリールは屋上でひとり、たたずんでいた。晴れた日だったので街の全景が見渡せる。この広い世界のどこかにいる、たったひとりの相手のことを、ガヴは想っていた。

 

「会いたい……」

 

 ガヴは、ネトゲでの仮想結婚で満足できなくなってきた。そして今日、ヴィーネに背中を押される形で、ついに決心する。

 

「よし、会おう」

 

 「現実世界で会いたい」という旨を、ガヴは仮想結婚の相手に告げた。そして、相手も承諾し、週末に駅前で待ち合わせをすることとなった。

 

 

 そして、週末の駅前。いつもはネトゲで夜更かしするガヴも、この日ばかりは時間通りに待ち合わせ場所にやってきた。相手のことが気になっていたからだ。

 

 この日のガヴリールはいつもと違い、帽子とサングラスとマスクをして変装していた。というのは、恋人と会っているところを天使や悪魔の友人に見られたら、ずっと言いふらされるだろうからだ。

 

 ガヴと待ち合わせの相手は、お互いに白百合の花を目印に持って、待つ約束だ。そして、それらしい人物を見つけた。その人物もガヴと同じように、帽子とサングラス、マスクで顔を隠している。ガヴは勇気を出して、ゲームのハンドル名で呼びかけてみた。

 

「××××さんは、あなたですか……?」

「はい」

 

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