ガヴリールと相手はファミレスで話をしていた。そこで、そろそろ二人とも、サングラスとマスクを外そう、ということになった。
待ち合わせていたその相手の正体は――。
「ヴィーネ!」
「ガヴ!」
じつは、相手はヴィーネだった。これにガヴリールは驚いた。まさか、ネトゲで偶然知り合った相手がヴィーネだったなんて。そもそも、ヴィーネがネトゲをやっていたことも知らなかった。
お互いに驚いた顔をしていたが、しばらくして、ガヴはフッと力が抜けた。そして皮肉な笑いを浮かべて言った。
「相手がヴィーネだったなんてガッカリだよ……」
「なによ、それはこっちのセリフよ!」
いつもの口ゲンカになりそうな雰囲気になった。それをガヴは察して、いったん口をつぐんだ。そして、ため息といっしょにセリフを吐く。
「こんなことなら、会わなきゃ良かったな」
「えっ……」
「だって、こうしてお互いの正体がバレちゃったから、ネトゲでの新婚生活の気分には、もう戻れないじゃないか」
「それはそうだけど……」
ヴィーネはまぶたを閉じて深呼吸してから、ゆっくりとさとすようにガヴに話した。
「戻れなくても、進めばいいんじゃないかしら?」
「えっ!?」
ガヴは動揺する。ヴィーネが相手だと分かった時点で、この恋は終わりだとガブは思った。また元の友達に戻るだけだと思っていた。しかし、ヴィーネの側はそうは思っていないようだ。
そう言われてみれば、自分の側にも、もしかしたらヴィーネと恋人になれるかもしれない、という気持ちが沸きあがってきている。今まではそんな気持ちになったことがなかったのに。なぜだろう?
ガヴは、自分自身が分からなくなっていた。思わず頭をかきむしる。ガブの金髪は、いつものようにボサボサではなく、昔のようにサラサラだ。
注文したコーヒーを飲んで、ガブは一息つく。コーヒーの香りとほろ苦い味で、少し落ち着いた。そして、淡々とした口調で話を切り出す。
「……怖いんだ」
「なにが?」
「もう元の友達に戻れないことが」
「あんたらしくないわねー」
「でも……」
「優柔不断ね。男らしくハッキリしなさいよ!」
「いや、女だから……」
「「クスッ」」
雰囲気が少し和んだのを見計らったかのように、ヴィーネがおずおずと提案する。
「……ねえ、この後デートしない?」
「え!?」
「どうせ、家でネトゲくらいしかやることないんでしょ!」
「おいおい、なんだよ。その言い方は……」
「いいから行くわよ!」
「どこに?」
「そうね……ガヴはどこに行きたい?」
「そうだなー、ラブホ?」
「えっ!? あ、あの、わたし……」
「おっ、おい。もちろん冗談だぞ?」
「(カアッ……)」
ヴィーネが顔を真っ赤にして、微妙な空気になった。しかし、その後マジメに話し合い、大型ショッピングモールに行くこととなった。そこなら、いろいろな店があるからだ。そこで、ふたりはファミレスを後にして、モールへ向かった。
ショッピングモールに来て、ウィンドウショッピングして回っているふたり。ガヴはピンクのフリフリな服、ヴィーネは水色のワンピースを着ている。見ているうちに、ヴィーネが腕を絡ませて腕を組む。
ガヴは相手がヴィーネだと分かったときに、いったん気持ちが醒めた。しかし、腕を組んだときに、手をつないだときに味わったあの感触が戻ってきた。身体の奥から熱くなってくるような感覚。
ふたりは店をめぐって歩き疲れたので、モールの中庭にある、小さな公園のような場所に来た。ベンチで隣に並び、ぴったりと密着して、ふたりとも座る。
あきらかに距離感が詰まっていた。サングラスとマスクで視線から守りたいという意識も、今はもうない。ガヴはふと、漏らすようにつぶやいた。
「なあ、ヴィーネ。わたしたちって恋人なのかな?」
「恋人じゃなかったら、なんなのよ?」
「まだ現実感がないって言うか……」
「もう、態度をハッキリしなさい!」
「いや、だから、その……」
「……」
そのとき――。
「!!」
ヴィーネがガヴの唇を奪い、ふたりはキスした。