ネトゲの嫁は天使じゃないと思った?   作:青戸礼二

4 / 6
4話:あの素晴らしい天使にもう一度、と思った?

ふたりはキスをしていた。時間が止まったような感覚。

 

ガヴとヴィーネが唇を離すと、一時停止していた時間がふたたび動き出す。ふたりはモールの中庭にある公園にいた。その喧噪が聞こえてくる。ふたりでいるうちに、まわりの目が気にならなくなっていた。ガヴの瞳に映るのはヴィーネだけ。

 

「ヴィーネ……」

「ガヴ……」

 

お互い背中に手を回して抱き合っていた。ふたりはうっとりした顔で見つめ合う。柔らかい少女の身体の感触。体温の温かさ。髪の良い香り。身体が熱くほてってくる。

 

ガヴはもう身を任せてもいいと思った。もう過去を手放してもいい。友達だった頃に戻れなくてもいい。恋人としてのヴィーネを手に入れたい。もう後戻りできない。ヴィーネが欲しい。

 

「ヴィーネ。わたしを本気にさせちゃったな。もう離さないぞ」

「うん、わたしもずっと一緒よ」

 

 

その後、ショッピングモールを離れて、ふたりはガヴリールの部屋にやって来た。昼を過ぎて、ほんのりと空が赤くなってきた。今日の部屋は片付いている。それがヴィーネには意外だったようだ。

 

「へぇー。あんなに散らかってたのに、キレイになってるじゃないの」

「わたし、前はキレイ好きだったからな」

「女の子を連れ込むために、ずいぶん涙ぐましい努力をしたのねえ」

「う、うるさい!」

 

照れるガヴをよそに、ヴィーネはゴソゴソと部屋を漁りだす。そして、コンドームの袋を見つけると、驚き呆れた顔をした。

 

「なによこれ……」

「あ、それはっ!」

「女の子どうしなのに、何に使うつもりだったのよ?」

「う……、うるさい、うるさい、うるさい!」

 

 

モールでふたりはすでに昼食を取っていたが、それでも歩き疲れて腹が減っていたため、すこし早めの夕飯に、スパゲッティを作って食べることにした。

 

窓から夕日が差し込み、夕日の色に染まるテーブル。そこに、オレンジ色のパスタを盛った皿がふたつ並ぶ。美味しそうなパスタソースの匂いが漂ってくる。そして、カチリ、カチリとフォークの音が部屋に響く。

 

「ガヴ、あーん」

「あ、あーん」

「わたしにもちょうだいよ」

「ほら、あーん」

「あーん」

 

お互いに食べさせ合う甘いひととき。そのとき、手元が狂ってガヴの頬に、赤いソースが付いてしまう。すると、ヴィーネは頬にチュッと吸い付き、舐めとってしまう。ガヴの頬が赤く染まった。しばらく沈黙が流れる。

 

 

「……な、なあ、ヴィーネ。今夜はどうする?」

「もちろん泊まっていくわよ」

「じゃ、じゃあ、シャワー先浴びろよ」

「一緒に浴びましょうよ」

「なっ……」

「ほらほら、脱ぐわよ」

「ちょ、まっ……」

「ガヴは『女同士』って言って、わたしの前で裸になってたじゃない」

「あれは、今みたいに恋人じゃなくて、友達時代のことだから……」

「ほら、いいから脱ぐわよ」

「なんでここで脱がせるんだよ!」

「脱がしたいからに決まってるでしょ」

「あーもう……」

 

ふたりは脱がし合いを始めた。クスクス笑い声を漏らしながら、服を脱がしていく。ヴィーネのパンティに指が掛かったときは、ガヴの手が一瞬止まったが、けっきょく脱がしてしまう。

 

 

夕日の前で、お互い一糸まとわぬ姿で、向かい合って立つ。しかし、差し込む夕日がまぶしくて、大事な部分がよく見えない。

 

「謎の光があるから、R-15でも大丈夫だな!」

「なんの心配してるのよ、あんたは!」

「ハッハッハッ!」

 

ガヴは腰に手を当てて、なぜかドヤ顔をしている。ヴィーネはそんなガヴを見て、フッとほほえむ。

 

「ホント憎めないのよね、ガヴって」

「そりゃあ、天使だからな」

「うん……、ネトゲで堕天してたけど、前のようなホントの天使にちょっと戻ってる気がする」

「アクマで天使だからな」

「わたしの天使だからね」

「うん」

「……」

 

 

ふたりは裸でキスをした。肌が夕日を浴びて光り輝く。ふたりっきりで人目がないので、今度は思いきり唇を求め合う。舌を絡めるピチャピチャという音と、吐息だけが部屋に響く。

 

そして、むさぼっていた唇を離すと、唾液が糸を引き、ふたりの間に橋を架けた。それは夕日を浴びてきらめき、まるで運命の赤い糸のよう。

 

「ヴィーネ、好きだよ」

「ガヴ、私もよ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。