真剣でサスケ(偽)に恋しなさい。 作:体は大人!!心は中二!!
風間ファミリーとそこそこ交友をもった頃。
小学校は遊び場である原っぱを巡った争奪戦が繰り広げられていた。
川神には武家の家系が多いせいだろう、原っぱで殴る蹴るなどのケンカをして日々小学生が奪い合う。
広い遊び場を独占したい小学生にとっては戦国時代の合戦のように重要だ。
それ故に……。
「頼むよ、うちは!!俺達の助っ人に来てくれよ!!」
目の前の彼の様に、わざわざ俺のクラスにやってきて助っ人を依頼する奴が後を絶たない。
俺の運動能力と百代を凌駕する戦闘能力をこの小学校で知らない奴はいない。
クラスで大きな声を出して勧誘するのはライバル達へ牽制と勝利宣言の為。
俺が、承諾すれば原っぱは俺が加勢したグループの領土。
たとえ俺が断ったとしても、断られた後に俺と仲良く会話をすれば、少しでもうちはが加勢するかもしれないというプレッシャーをライバル達に与えられることが出来る。
と彼らは考えているようだ。
正直、小学生が考える事じゃねぇと思う。
そして、当然であるが原っぱに興味のない俺は……。
「断る」
「あ~~、今日もダメか……。
猫を殺した事で箔を付けた六年生グループが狙っているし…諦めるしかないか……」
俺の机の前で項垂れる彼は一組のクラスカースト上位に居るトニー。
自称、風間ファミリーを倒す男は粘ることなく帰っていった。
さすがに4回も断られたんだ、もう来ることもないだろう。
俺は、楽しみにしていたアリー・ベッターの新シリーズ『アリー・ベッターと動かなくなったマイケル』を取り出して読書に励むのであった。
マイケルはどうなるのだろうか?
………。
全ての授業が終了し、新しく担任の先生になった神原(かんばら)教諭の帰りのホームルームが終わった俺と京は他クラスに居る小雪と学年が一つ上の百代と合流した。
「サスケぇ~なんか大和の奴が面白い物を見せるから原っぱに来てほしいってさ」
「…あっ、そういえば僕も大和に言われてたー」
合流し、学校の昇降口で上履きを靴と履き替えていると珍しく戦いや依頼以外で百代が話題を振って来た。
「サスケが行くなら行くけど、争いの絶えない原因となっている場所には行かないほうがいいと思う。
利用されるだけだよ」
「だよな…明らかに利用する気満々だよな……」
純粋な小雪は漫画の類を想像をしているようだが、現実をよく知る俺と京は軍師と呼ばれる少年の考えをなんとなく察した。
恐らく俺達を呼ぶことで俺達暁は風間ファミリーの助太刀として参加すると言う情報の拡散。
もしくは、情報の密度を上げる為にケンカに巻き込むつもりかもしれない。
「なぁ~行こ~う。野球のキラカードも貰っちゃったし、アイツを舎弟にしちゃったんだよ~。
お前らを呼ばないと引っ込みがつかないんだよ~~」
「今ならマシュマロが一人に付き、一袋もらえるんだー」
「物に釣られるなよ。そして、どうして直江が百代の舎弟になるんだ?」
間違いない…直江のヤツは原っぱに命を懸けてやがる。
百代の舎弟なんて、ゴリラの玩具になるような物だ。
根拠はある。
俺達が川神院に遊びに行った時の事だ。
百代の部屋に行った時、おもちゃ箱の中に唯一女の子らしい着せ替え人形があったのだ。
その人形は鉄心の爺さんが幼い百代の誕生日にプレゼントしたバピーという人気の人形。
俺もテレビCMで見ていたのでよく知っている。
購入当時は誰もがよく知る綺麗でかわいい人形だったのだろう。
しかし、現在の姿は見るも無残な姿へと変貌していた。
ロングの金髪ストレートの髪があった頭部は…スキンヘッドになり、殺の文字がマジックで汚く記入されている。
外人女性特有の青い瞳は赤く塗られて片方はマジックで書いた眼帯をしている。
頬には人斬り主人公のような十字傷。
片方の細い腕は無残にもへし折られて、あらぬ方向を向いている。
そして、この人形の持ち味である自由な着せ替えとポージングだが……。
服装はGIショーンの軍服を着ており、何故か筋肉バスターを決められた怪人のようなポーズを決めていた。
ちなみに服を取られたGIショーンは可愛らしい花柄のワンピースを着て筋肉バスターのポージングをしていた。
爺さんが見たら人形たちの哀れな姿に涙を流すだろう。
「おかしい……私は何ももらっていない。
モモ先輩とモモ先輩のクラスメイトにどうやったらサスケを落とせるか相談していただけなのに」
「ああ、きせいじじつだったか?それをどうするかだったよな?
睡眠薬を入れるとか、ジュースに酒を混ぜるとか…色々話したよな」
小学生がしていい話じゃない!!
この子時々怖いよ!!思ってくれているのは嬉しいけど、これは愛が重すぎるよ!!
そりゃあ、巻き込まれないように直江も逃げ出すよ!!
あの中二でませた直江の事だ、純粋な小雪と違って具体的な想像をしたに違いない。
つーか、百代のクラスメイトだけど友達出来たんだな。
俺は嬉しいよ……正直、既成事実について話し合っていなければお祝いの一つくらい送ったよ。
まあ、利用されるのは気分がよくないが、これで原っぱが風間ファミリーの物になって、助っ人の依頼がが来なくなれば俺としてはいいか。
「わかった、いく事にしよう。
ただし俺は、マタタビに用があるから先に行っててくれ」
「了解」
「待ったねー」
「確か喋る動物を召喚して雑用をさせるんだよな……いいなぁ。
そうすれば舎弟が一杯で宿題からお使いまで24時間無休で全部パシらせるのに……」
京、小雪、百代は俺よりも先に原っぱに向かう事となった。
そして、まるでブラック企業のような不穏な独り言を喋る百代には絶対に口寄せは教えないと誓った。
☆☆☆
変態橋と呼ばれる橋の下に来た俺は右手の親指を手持ちのカッターで薄く切った後、印を結んで地面につける。
「口寄せの術!」
術を発動させると右手を中心に文字で構成されたサークルが地面に出現し、一匹の三毛猫が煙と共に現れた。
三毛猫は忍装束を身にまとい額には忍びの文字が刻まれた額あてをしている。
彼が忍猫マタタビである。
「おお!待っておったござるよサスケ殿!!」
「で?今日呼び出して欲しい理由はなんだったんだ?
わざわざ、場所まで指定して……」
「今日はこの間の任務で知り合った、ニャンミちゃんとデートなのでござるよ!!」
デート…だと!?
目の前のクソ猫の発言にショックを覚え、二歩ほど後退する俺。
俺ですら…俺ですらまだデートした事ないのに………。
ま、まぁ。お相手は猫だし?
猫の方が早く歳を取るし?
俺は遅くはないはずだ。←精神年齢=彼女なし
「ニャンミちゃんは髭がとってもキュートで体も心も真っ白な乙女なのでござる。
雄猫達を退け、何度も何度もアタックしてようやく…ようやく、デートしてもらえるようになったのでござる」
心を落ち着かせた俺はマタタビから気になるあの子の詳細を教えてもらった。
どうやら相手は白猫でとてもかわいいようだ。
正直、ネコの美的感覚だからお相手が白い猫という事しかわからない。
髭がキュートってなんだ?
それにしてもマタタビのヤツ…いい笑顔しやがって……末永く爆発しろ。
「何ならサスケ殿にも紹介してもいいでござるよ?」
「いや、俺は遠慮しておく。時間までたっぷりデートすればいい」
「おお!気を使って頂いて申し訳ない!!今度、呼ばれた時は仕事を今まで以上に頑張るでござるよ!!」
「ああ、期待している」
黒い猫とすれ違うように幸せそうなマタタビと別れ、原っぱに向かう俺であったが………。
「ニャンだとぉおおおおおおお!!??」
「ん?」
マタタビの絶叫で背後に振り返ると先ほどすれ違った黒猫がマタタビと向かい合っていた。
なんだろうか?ニャンミちゃんにすっぽかされたのか?
「さ、サスケ殿ぉおおおおおおお!!!」
「な、なんだ?」
涙と鼻水で顔面を濡らし、俺の足に縋りつくマタタビ。
一体何があったのだろうか?どうやらすっぽかされたなんてやわなもんじゃないようだ。
浮気でもされたのか?浮気されたなら慰めるから離れてくれませんかね?
俺のズボンにマタタビの毛がついているんだが……。
「ニャンミちゃんが……ニャンミちゃんが……」
ぐずりながらも何とか説明をしようとするマタタビ。
まさか、浮気以上の展開になっているのだろうか?
浮気相手と子供でもできてしまったのだろうか?
まぁ、なってしまったものはしょうがない受け止めるのは重くてつらいだろうが、マタタビのような真面目な猫はすぐに新しい恋人を見つけられるさ。
そうだ、俺も相手探しを手伝ってやろう。
こいつにはネコ探し時にパックンと二匹で手伝って貰った事もある。
俺に出来る事ならなんだってしてやろう。
今のマタタビには慰めと癒しが必要なはずだ。
マタタビが大好きな鰹節とマタタビ酒でも買ってやるかな。
酒を飲み、鰹節でも食べて。
もっといい雌猫がいるさ、元気出せよと言って…
「ニャンミちゃんが殺されちまったぁああああああああああ!!!」
言えるかぁあああああああああああああ!!!
マタタビの言葉に絶句してしまう。
まさか殺されたとは………。
これは重いよ、重すぎだよ!!鰹節でも元気でないよ!!
泣きじゃくるマタタビの背中を黙って摩る。
今のマタタビにはどんな慰めも無駄と悟ったのだ。
先ほどまで幸せそうだったマタタビ。
彼は大事な人を何の前触れもなく突然に奪われた。
彼の悲しみと絶望を俺は…自分にもいつか起こるのではないかと怖くなった。
………。
「犯人は子供の集団のようでござる」
さすがは忍猫と言うべきか、マタタビは五分ほどで泣き止み、猫助と呼ばれる黒猫から情報を教えてもらったようだ。
事件の詳細を聞いて、時々悔しそうに涙を流していたのは見なかった事にしよう。
猫助から聞いた話を要約すると人間の子供がニャンミちゃんを針のような物で笑いながら刺し殺したらしい。
中々に趣味趣向が歪んだ子供達のようだ。
子供の起こす凶悪事件の前兆として、動物を殺す行為を重ねる行動があったのをニュースでよく覚えている。
彼らは対人関係や何らかのストレスを解消する為に行っていたり、自分の強さを証明する遊びのような感覚でやるかが大半だ。
これは色々と動く必要があるようだ。
「木遁影分身の術」
これの背中から現れる五人の影分身。
木遁影分身は分身シリーズの最高峰。
須佐能乎を発動させる事も出来て常に情報を本体と共有できる高等忍術だ。
「とりあえず情報を収集するぞ」
「うう、サスケ殿かたじけない……」
飛雷身のマーキングを付けた分身たちは散開し、猫を殺した小学生を探す為に辺りの捜索に出て、オリジナルである俺も肩にマタタビを乗せ、情報集めの為に駆けだした。
………。
「なんか混乱して来たな……」
「情報が沢山あり過ぎて絞り込めないでござる」
猫と人間の両方から犯人を捜す為に情報を集めているが、全員聞いただけらしいので確実性はないし、証言は様々だ。
グループで行動しているせいか、角刈りの子供だったり太った子供だったり痩せて眼鏡を掛けた子供だったりと情報に統一性ない。
唯一全員に一致している情報は小学校の高学年という事だけだ。
小学校の高学年か……。
つまり、五年生から六年生辺りだろう。
……ん?
なんだろう?もの凄く引っかかる……。
今日、六年生について何か聞いたような……。
『あ~~、今日もダメか……。
猫を殺した事で箔を付けた六年生グループが狙っているし…諦めるしかないか……』
そうだ!!思い出したぞ!!
トニーが言ってた六年生だ!!
『オリジナル、こちら分身A。今情報に強い直江大和に話を聞こうと原っぱに潜入中。
猫を殺したと自慢する六年生が一子ちゃんのほっぺにコンパスの針をチクチクしながら耳にピアス穴を開けると脅している模様。
原っぱに来る途中に捕まった模様。
風間ファミリーおよび百代、京、小雪は動けないようだ。
正直、あの小僧を殴りたくてたまらない』
なんだと?
あの、純真無垢なロリを人質にしただと?
小雪と並ぶ俺の癒しを怖がらせているだと?
よろしい、キツイお仕置きを実行してヤロウ。
「マタタビ。犯人らしき子供を発見したから飛雷身で飛ぶぞ!!」
「おう!!」
☆☆☆
飛雷身で飛んだ俺とマタタビ。
俺達の前には、分身と共有した情報通りの光景が広がっていた。
一子ちゃんはコンパスを押し当てられ、恐怖で泣いていた。
「わーん、助けてー!!」
交友を持ってからだろうか?あの子は自分の娘の様に感じる事がある。
泣き虫だけど、明るくて優しいおばあちゃん思いのいい子だ。
島津や直江、風間はケンカをしているが、あの子は違う。
何故、あの子が泣かねばならない?何故、傷つかなればならない?
俺の頭がマグマのように熱くなったのを感じた瞬間。
俺は瞬身の術で小僧の隣に移動して、コンパスを持った腕をへし折っていた。
「あぁああああああ!!う、うでがぁあああ!!?うでがぁあああ!!!?」
ゴキンという音が聞こえ、痛みのあまり悶絶する小僧。
俺はうずくまる小僧の髪を掴み顔を無理やり上げさせる。
「いでででっでで!!止めて!止めて止めて!!」
「俺の目を見ろ」
痛みで泣きわめく醜い小僧の汚れた瞳を見る。
記憶を見る為だ。
もし、小僧の家庭環境が最悪なもので小僧がゆがんでしまったのなら、すぐに腕を治療し、謝罪してうちはの名に賭けて家庭から助けてろう。
仮に、そうでなかったら……地獄を見せてやる。
「シャァアアア!!!」
『ぎゃぁあああああぁあああ!!』
肩に乗っていたマタタビもコンパスを持つ子供の集団を見て察したのだろう。
子供十人に影分身して襲い掛かり、憎しみを込めた爪で顔面をひたすらに引っかいた。
顔面を血みどろにした小僧たちが、痛みで気絶した頃。
俺はこいつと気絶した小僧たちの関係性と家庭環境を知った。
この小僧は建設会社社長の息子。
母親は息子を激しく溺愛するモンスターペアレント。
教師を優秀な教師を何人もストレスで潰し、子供の不祥事は金で解決して来た。
去年の小僧の担任は逮捕された内海だ。
道理でここまで歪んだ子供が誕生するわけだ。
周りの小僧共は社長の取り巻き。
まさにこの親にしてこの子あり、って奴だ。
同情の余地はなし。
全てはこいつらが選択して選んできた事だ。
小学六年生は分別が付く年頃だ。
今回の事は出るところに出れば事件となる。
頭の悪いバカは体感させて覚えさせるのが一番だ。
世間一般では俺は悪と呼ばれるだろう。
しかし俺は、誰かを助ける為に何かを守る為にやる自己満足は正義であると考えている。
現実の正義は百を救う為に一を捨てる。
千を救う為に十を捨てる大衆の為の正義だ。
俺の正義は違う。
百を捨て、一を拾う。
世界が俺の敵になろうとも、俺の大事な物を守るために己の正義を信じて執行していく。
後日……。
六年生グループ11人は海パンにネクタイを装着した状態で駅前で自分と親たちのやって来た悪行を暴露しながらダンスを披露した。
両手を後頭部で組み、顔面に包帯を巻き付けた少年たちをバックに腕を吊るしたボロボロの少年たちによる腰を使った華麗なるダンシング。
この事件はSNSで瞬く間に拡散されて、警察が知る事となった。
少年たちを保護した警察は、自分と親たちの悪事を暴露し続ける少年たちの証言を確認する為、拘留中の内海被告に事情聴取が行われた。
それにより、少年たちの証言は真実とされ、少年たちの両親は世間からのバッシングと余罪の追及を一身に受けている。
そして、保護された少年たちは駄目親の教育による被害者として扱われ、保護施設でしっかりとした教育を受けている。
その後、世間では子供の教育は学校の責任だけではなく親の責任も重要として、教育評論家の先生たちが保護者に訴えかける番組が増えた。
もう、少年たちのような子供を増やさないために……。
一匹の雄猫はその番組を見ながら彼らが早く自分たちの罪を自覚し、深く反省して更生する事と、二度と愛する雌猫のような事件が起きない事を、雌猫が好きだった鰹節を食べ、涙を流しながら心の底から祈ったのだった。