夢を見た。
とても懐かしくて、そして悲しい夢だった。
でもこんな記憶あっただろうか?
それすらも思い出せやしない。
ただ、酷く悲しくて狂おしい、何よりも懐かしい夢。
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「んっ、ぅ、ん……?ぁ?」
まだ寝ぼけた眼を薄く開けると見慣れた自室が広がっていた。
悪夢を見ていたのか寝汗が酷い。
シャワーを浴びたいな、と考えながら頭を掻きながら起き上がるとまだ暁になった頃だった。
タオルと替えの下着と衣服を手に取るとおぼつかない足取りで風呂場に向かった。
風呂で汗を流すと少し醒めたので、冷水を出して眠気を吹き飛ばした。
夏場とはいえ冷水を浴びるのはこの骨と皮の体ではきつい。
風呂からあがって水を飲みに台所に向かうと、今起きてきたらしい雲雀がいた。
「おはようございます」
「おはよう」
彼は寝つきがあまり良くない。どこか疲れているような顔をしていた。
「朝食はボクが作りますね」
「うん、ありがとう…後できれば今日は一口サイズの」
「分かりました」
朝食を何度か作っていた。
最初はボクの料理は彼曰くかなりの薄味、というか味を感じなかったそうで、何とか味覚を合わせるため濃くして今に至る。
一時期鳥の餌と言われてたな、と思い出しながら卵を割りだし巻き卵を作り始める。
少しでも食が進むようにサイズは小さめに。普段なら米を茶碗に盛るが今朝はお握りに。サラダやお新香を小皿に盛り昨日作った味噌汁を椀に注ぐ。
少し時間がかかってしまったがそこまで遅くならずにスムーズにできた。
盆に料理を乗せて運ぶと服を着替えた彼がいた。よく観察すると、シャワーで眠気はある程度吹き飛ばしてきたらしい。
「お待たせしました、ご飯ですよ」
「……ん」
カチャカチャと先に雲雀さんの皿を置くと雲雀さんはちらり、と皿の料理を見やった。
「成長したね」
「一応、何とか」
「そう」
いただきます、と箸を手に取って先に彼が食べ始める。
ボクは自分の分を取りに戻ってまた運ぶと席について、手を合わせていただきますと小さな声で言った。
箸を使って器用に食べていると雲雀さんが話しかけてきた。
「蓮奈」
「はい、なんでしょうか」
「今日は何があっても外に出ないでね」
「それは…また」
随分と突拍子もないことを言うものだ、と思った。
「並盛を荒らす小動物が居るのは知ってるよね?」
「ああ…なんでも強い人を狙うそうですね」
「僕もその対象になるだろう?」
「それは…そうですけど、それくらいなら何とかなるのでは?」
「一応念の為に、だよ。それに人質に取られる可能性もある」
「あ」
その発想はなかった。
人質になる可能性は確かに無くはない。
「……だから、ここにいて。僕を待っててね」
「分かり、ました」
朝食を食べ終えると雲雀さんは行ってしまった。
仕方ないので学校の休み明けテストの勉強をしていたが、途中で投げ出してしまった。
暇だ。
初めてだ、人を待つのは。
確か、いつもはボクは見送られる側で。
誰かの帰りを待つなんてことは無かったのだ。
…いつもより帰りが遅い。
突然電話が鳴った。
恐る恐る電話を取ると誰の物なのか緊張のあまり分からなかったがこの言葉を聞いた。
雲雀恭弥が捕まった。
冥き闇に雲が囚われた日。