12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります 作:ないしのかみ
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結局、アルヌス方面へ出る案は危険度が高いという結論で廃案。
私の実家、テュエリ領へと向かいます。
途中、折角整備した飛竜便の事務所が帝国軍の手で焼き討ちされていたり、かなり憤りを覚えましたけど、どうにかこうにか歩み続け、気が付いたら既に一週間。
帝国軍に発見される事を恐れながら、領地へ近づいて参りました。
『自衛隊の翡翠宮救出作戦失敗!!』
『殉職者でる!』
センセーショナルな見出しですね。
後に知ったのですが、これは私達が荒野でさまよっていた初日、翌朝の新聞の一面だそうです。
いえ、翡翠宮脱出自体は成功してるのですよ。ただ、作戦に犠牲者が少なからず出てしまったのが、マスコミに火を付けてしまった様です。
ヘリパイロット(後に湯布院一尉との名を知りました)と、最後まで撤退援護してくれた朝霞隊の半分が散ったのです。
まともに考えれば、こっちが全く犠牲者無しで相手が被害甚大なんてのは、夢想も甚だしい物だと思うのですが、アルヌスの丘で膨大なキル・レシオを稼いでしまった日本人にとって、戦えば自分達が無傷であるのが当たり前になってしまっていた様です。
剣と弓しかない野蛮人は、こちらを傷つける事も叶わず、銃器の前に一方的にやられて行くだけ。とでも思ってたんでしょうね。
でも、この事態は日本を激高させました。日本人は一旦怒り出すと流れががらりと変わります。
日本はこれまで押さえていた戦力の増強を開始しました。
こんにちはシェリーです。
アルヌス方面への道が封鎖されていたので菅原様も一緒です。
「盗賊が横行してるらしいね」
チチは、あっけらかんと言います。通過した村々の雰囲気から治安は急速に悪くなってるのが肌で感じます。中には落ち武者狩り宜しく、私達自身を捕らえようとする動きすらあって、慌てて村を夜逃げしたって事もありました。
習志野三尉は目立つ自衛官の制服を脱ぎ、平民風の装いでしきりに周囲を警戒しています。ただ、この服も盗品ですから私達も似た様な者ですね。
「あれは何でしょう?」
私は背負って貰ってる菅原様の背中で問いました。明らかにカタギとは思えぬ男共が藪に潜んでこっちに窺ってます。
「ちっ」
舌打ち。それとほぼ同時に男共は、わっと左右の藪を飛び出してきました。
野盗ですね。旅人が少しでも隙を見せると、連中はハイエナみたいに襲ってきます。我々が組み易しと見て獲物に定めたのでしょう。
「シェリー、降りて!」
私は菅原様に背負って頂いていたので、彼の動きを阻害してる事は否めません。
その背中から慌てて降ります。
「うぬっ」
とっさにベルトに挟んだ拳銃を抜き、賊共へ向ける姿は贔屓目に見てもカッコイイです。
「あれ、あれ?」
しかし、彼の銃はいつまで経っても火を噴きません。
「スライドを引いて、安全装置を外すんだよっ!」
叫ぶのはチチ。チチは大型拳銃のレバーみたいのをがちゃりと後ろに引くと、けたたましい音を立てて、銃弾が吐き出されます。
チチの正面に居た盗賊が数人、血しぶきを上げて倒れていきます。 右手から攻めて来た賊は、これで壊滅ですね。
習志野三尉の拳銃も発砲され、左手側の白刃を持った賊がもんどり打ってひっくり返ります。この予想外の損害に士気が崩壊したのか、遁走に移る賊徒共。
習志野三尉は無言で手榴弾を取り出すと、ピンを引き抜いて投擲します。
それは敵の真ん中で炸裂。この戦いは敵の全滅で終結しました。
「怖かったろう。しかし、慣れない武器は持つ物ではないな」
自嘲気味に呟く菅原様を、私は否定しました。
「それでも菅原様は、私の騎士様です」と。
そして徒歩での移動は危険度が高いと判断した我々は、次の村で小さな荷馬車を購入したのです。敵が騎馬でなければ振り切れますからね。
<ここで解説>
菅原の黒背広は目立ちますが、服泥棒を嫌がった為に着替えてません。
それ以上に目立つ、自衛隊の緑の服はさすがに…。
本当は制服を脱ぐと国際法上「正規兵ではなく、ゲリラと化す」為に駄目ですが、習志野三尉は「特地に国際法はナンセンス」と現実主義者でした。
オリジナルファンタジー『エロエロンナ物語』は、明日更新予定。