東方男娘録支援作品集   作:いのかしら

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どうも井の頭線通勤快速です。
今回は健全ほのぼの路線です。
ていうかあの話で「風呂団藍」を紹介されたのは運命としか言いようがないw


ゆっくりたちのたのしいえんそく

常識と非常識を分かつ結界内に存在する、忘れられたものが集う地、幻想郷。

この幻想郷という場所には、ゆっくりという生き物がいました。

人間の首から上しかなく、見た目はまん丸、饅頭のようです。

この見た目から恐れられていても仕方ない生き物は、ゆっこさんという博麗神社に住むゆっくりの頑張りで、人里の皆さんにも受け入れられていました。

ゆっこさんは博麗の巫女の代理として、人里の人々のささやかな異変や問題を解決していく事で、人々のゆっくりに対する信用を得たのです。

その後、この幻想郷には多彩なゆっくりがその姿を現しました。

ゆっこさんが関与したもの以外にも、森で拾われたりして、飼っている者も増えていきました。

ゆっこさんを筆頭に、紅魔館というお屋敷にうーちゃんとふーちゃんの二匹、さらに橙が飼っている藍々、霧雨魔理沙が飼うこまり、そして赤蛮奇が飼う、ゆっこさんの子供?のゆっきです。

こうして仲間は増えて、体調の悪い時の治療などゆっこさんとそれぞれとの繋がりはあるものの、それ以外の繋がりは余りありませんでした。

特に紅魔館に住む二匹は飼い主に愛でられているためか、余り外に出てきません。

そこでゆっこさんはゆっくりのみんなが楽しく交流できる機会を作ろうと考えました。

何をしようかと考えましたが、ゆっきなど若い子もいるので、下手な事は出来ません。

神社の巫女の霊夢さんに相談すると、皆を連れて人里にでも行ってきたら、と言われました。

なるほど人里の人たちにも新たなゆっくりを知らせることが出来る良い機会になる、とその提案を呑むことにしました。

ですがその為に飼い主の皆さんを呼んで欲しい、 と頼みましたが、霊夢さんはどうしてそんなことをしなきゃいけないの、と乗り気ではありません。

そこをいつも乗っけている針妙丸さんの力も借りて何とか説得し、夕餉の支度と掃除の手伝いと引き換えに、一週間後に日程を組んでもらうことができました。

 

一週間後の朝早く、博麗神社の前にはゆっくりたちとその飼い主が一堂に会していました。

天気は綺麗な晴れ、あたりには薄く雪が積もっています。

「霊夢に呼ばれたから何事かと思ったが、そういうことか。まぁ、こまりを幻想郷一のゆっくりにするためには敵を知ればなんとやら、しっかり学んでこいよ。」

「じぇー!」

ゆっくりの会する場を見て、魔理沙さんがうなづき、こまりを撫でます。

「藍々、気をつけてね。」

「ちぇん!」

尻尾に小さなカバンをぶら下げ、藍々は元気に答えます。

「ゆっき、気をつけて……て、お前……」

「ゆ〜。」

ゆっきは飼い主さんから離れ、ゆっこさんと戯れています。

「二人とも気をつけて行ってくるのよ。あんまりお菓子食べすぎちゃダメよ。変な妖怪には注意して。」

「うー☆!」

「うー☆!」

「お嬢様がそれを言いますか……」

レミリアさんの後ろに立つメイドの咲夜さんは傘をさして少し身を前に倒しながらため息をつきました。

「……気をつけて行って来なさいよ。」

「今日はゆっこさんなしで頑張ってみせます!」

「ゆっこさん、楽しんできてください。」

「ゆゆっ!」

姿勢を正してゆっこさんは霊夢さんから渡されたカバンを頭に乗せて返事をしました。

正す姿勢は無いですが。

「ゆー!」

ゆっこさんが一声掛けると周りにゆっくりたちが集まります。

「ゆっゆっゆ。」

どうやら今回の遠足の為の注意を伝えているようです。

「ゆーゆっゆゆ。」

他のゆっくりはその話をじっと黙って聞いています。

五つ注意を述べ終わると、横一列になるようゆっくりたちを並べました。

見る先は彼らの飼い主さん方です。

「ゆっ!」

「じぇー。」

「ゆ〜。」

「うー☆。」

「うー☆。」

「ちぇん。」

ゆっこさんの合図に合わせ、残りの五匹は飼い主さん方に向けて頭を下げました。

「楽しんで来いよー。」

「行ってらっしゃい。」

飼い主さん方が見送るなか顔を正面に戻すと、ゆっこさんを先頭に博麗神社の参道をゆっくりと進んでいきました。

飛べるものは飛び、そうでないものは地上を跳ねていきます。

やがてその背中は人里に向かう道の向こうに消えていきました。

「それじゃ、夕方には帰るよう言ってあるから、その頃になったら迎えに来て。」

「分かりました。」

「りょうかーい。」

「おう。」

「分かったけど、霊夢。約束は守ってもらうわよ?」

レミリアさんが霊夢さんの顔を覗き込みます。

「分かったわよ。それじゃ、来週あたりね。それまでは小夜の相手するから。」

「お嬢様、宜しいですか?」

「ええ、いいわ。またね。」

こうして飼い主さん方は夕方の再会を約束して、各々の家へと帰っていきました。

 

人里へ続く道、ゆっこさんたちは人よりも遅く、まさにゆっくりと踏みしめられた雪の上を進んでいきます。

ゆっくりは身体があったかいので、冬の寒さの中で特に何も身につけなくとも問題ありません。

跳ねつつ、飛びつつ、雪の道に新たに跡をつくりながらゆっくりたちは進みます。

「ゆっ?」

「うー☆!」

「じぇー!」

時たまゆっこさんが後ろを確認しますが、みんなまだまだ元気です。

葉っぱの落ちた森の中を進んでいきますと、森の中から何かが現れました。

みんな驚いてそちらを見ましたが、その相手は立ち止まり何もしてこないので、敵意はないと皆安心しました。

「ふー。」

その相手はこちらに声をかけてきました。

よく見ると、これもゆっくりです。

髪の色は茶色、大きさはうーちゃんよりも少し大きいくらいです。

「ゆっ。」

「ふふふっ?」

「ゆゆっゆー。」

ゆっこさんが少しその者に近づいて言葉を交わします。

どうやら知り合いのようです。

「ふーふ。」

そのゆっくりはその場を離れましたが、ゆっこさんは先に進もうとしません。

少し待っていると、そのゆっくりは頭の上に別の、一回り小さなゆっくりを乗せて戻ってきました。

しかし上のゆっくりは挨拶をしようとしません。

顔色があまり良くなく、体調が悪いようです。

「ふー。」

下のゆっくりは上の子をゆっこさんの前に降ろします。

ゆっこさんは二本のおさげを上手く使い、その子をカバンをずらしてから頭の上にそっと乗せます。

「ゆっ!」

「く?」

一度息を吸ってから、木の上の雪が落ちるような大きな声でゆっこさんは叫びました。

すると頭の上の子の顔色は、みるみるうちに薄赤くなり、元気そうに頭の上から飛び降りました。

「ふー。」

「ゆゆっ。」

「くー!」

その子は一声あげて連れてきてくれた仲間の方へ駆け寄ります。

近づくと二人仲よさそうに頰同士を擦り合わせていました。

「ゆ。」

「ふー?」

「ゆーゆっ。」

「ふふっ。」

連れてきたゆっくりと少し話すと、小さなゆっくりは宙に浮かびながら、もう片方は跳ねながら森の中へ帰っていきました。

「ゆー!」

「うー☆!」

「ちぇん!」

そしてゆっこさんたちもまた道を進み始めました。

 

そこからさらに進むこと暫く、ゆっこさんたちは人里にたどり着きました。

街の中では人が行き交い、店も威勢良く声をあげています。

雪は路肩に避けられ、まだ少し残ってはいますが、かなり歩きやすくなっています。

ゆっこさんを先頭に里の中を歩いていると、時々里の人に呼び止められます。

子供から大人まで、男女問わず多様な人々がゆっこさんに声を掛けます。

ゆっこさんは嫌がる様子など微塵もなく、道中その人たちとおさげで握手を交わしていきました。

他のゆっくりも里の人と軽く話したり、ほっぺを揉まれたりと気軽に触れ合いました。

里を歩く中で他のゆっくりが気になる店を見つけると、ゆっこさんを呼び止めてそこにお邪魔します。

こまりは魔理沙さんに頼まれた小瓶を一本、うーちゃんとふーちゃんは甘い金平糖の入った袋を一つ、藍々はふきん用の布を一枚、ゆっきは飼い主の赤蛮奇さんのためにお酒を買おうとしましたが、断られてしまいました。

そんなこんなで巡っていると、いつの間にか陽は高い位置からゆっこさんたちを照らしていました。

誰か一人、お腹を鳴らしました。確かにお昼時です。

他のゆっくりもお腹を空かせているようなので、ゆっこさんたちは近くの店で昼食を取ることにしました。

入ったのは余り大きくはない一軒の食堂。残念ながら他の店よりお客さんが入っていません。

「ゆっ。」

ゆっこさんたちは店に一言告げてから奥の机に向かいました。

店のおばあさんは大きめの台を用意し、ゆっこさんは椅子に置かれたその上にぷもっと乗っかりました。

他のゆっくりは渡された手拭いで身体の下を拭いてから直接机の上に乗っかりました。

お品書きをみてから注文したのは、山菜うどん、魚の混ぜご飯と取り皿です。

調理場の奥でご主人の老人が腕をふるって作る姿と香りが、食欲をさらに刺激します。

先にうどん、次いでごはんが皿とともに机に運ばれてきました。

ゆっこさんは器用におさげを使ってそれらをそれぞれの大きさに合わせて取り分けます。

匙とお玉を借りて汁まで入れると、それを皆の前に配ります。

「ゆっ。」

ゆっこさんはが声をかけると、他のゆっくりも頂きますと発してから昼食を摂り始めました。

うどんの出汁、恐らく椎茸でしょうか、それの美味しいこと。

うどんもしっかりとコシがあり、汁を連れて口に入ります。

入っている川魚もしっかりもともとの味が付いていて、ご飯にもそれが伝わっています。そしてそれを微かな醤油の風味がかきたてます。

まだゆっきとうーちゃんとふーちゃんは上手く箸を使えていないようでしたが、他のゆっくりは器用に箸を使ってうどんとご飯を口に運びます。

うーちゃんとふーちゃんは代わりにスプーンとフォークを借りて頬を緩ませながら食べていました。

店にいる他のお客さんはその様を和かに見つめていました。

 

最後に器を傾けてゆっこさんがうどんの汁を少し飲み大きく息を吐いて、ゆっこさんたちの満面の笑顔と共にご飯は終わり。

ですがせっかく遊びに来たのですから、少しくらい贅沢してもいいでしょう、とゆっこさんは追加であるものを注文しました。

すぐに平らに乗せられたそれが机の上に来ました。

緑色の草餅が三つ、それに竹でできた小さな刃が脇に添えられています。

ゆっこさんは餅を刃で切り分けます。

小さめのものはこまりとゆっきに、中ぐらいのはうーちゃんとふーちゃんと藍々に分け、自身は残った一個の餅を一口に放り込みました。

あんの甘さと餅の適度な硬さを噛んで味わった後飲み込んで、みんなの食事は終わりました。

ゆっこさんはお会計をしようとカバンから財布を取り出しました。

すると他のゆっくりもそろって自身の財布を机の上に置き、中から小銭を引き出します。

それを掻き集めてゆっこさんがお札を一枚上に乗せると、ぴったりお会計と一致しました。

ゆっこさんは頰をほころばせ、おばあさんも笑顔でそれを受け取り、ゆっこさんたちは床の上に降りて、入り口でお礼を言ってから店を後にしました。

 

それからまた暫く里を歩き回っていましたが、頭上には灰色の雲が見えるようになってきました。

冬は陽が落ちるのが早いということもあり、まだまだ早めですがゆっこさんたちは博麗神社へと帰ることにしました。

自分たちが人里に入った場、森に入る道でおさげを人里に向かって振ると、寺子屋帰りらしき数人の女の子がそれに返してくれました。

ゆっこさんたちは再び森の中、雪道を進みます。

初めは皆ゆっこさんに付いて行きましたが、暫くしてはしゃぎ過ぎたためか、疲れを見せるものが現れ始めました。

まずはゆっき。飛ぶのに疲れて地面に落ち、そのままゆっこさんの頭の上に収まりました。

次いで藍々。これも同様にゆっこさんの頭に乗っかって、移動の揺れにもかかわらずいつの間にか眠っていました。

そしてこまりも頑張ってはいましたが、小瓶の重さに耐えきれなくなり歩けなくなってしまい、結局前の二人と同様になりました。

うーちゃんとふーちゃんは動きはまだまだ元気でしたが、顔に少し疲れが出ています。

流石のゆっこさんでも三人を乗せながら進み続けるのは大変です。

かといって残りの二人に任せるわけにもいかず、息を切らしつつ黙々と先を急いでいました。

もう三人は完全に疲れて眠りに落ちています。

神社まで暗くなる前に着けるか不安に襲われたその時、道の脇から何かが飛び出しました。

「ゆっ!」

思わず声を上げてしまい背中の三人を起こしてしまいましたが、よくよく見ると朝に会ったうち髪が茶色のゆっくりです。

「ふー?」

「ゆゆっ。ゆー。」

「ふっ!」

そのゆっくりが飛び跳ねると、あたりからぞろぞろと森に住むゆっくりたちが姿を見せました。

そのゆっくりたちはゆっこさんの頭の上のゆっくりを背負い、荷物も分けて持ちます。

そして軽くなったゆっこさんを先頭に、時々歌いながら神社へと帰って行きました。

「ゆっゆー♪」

「むっむー♪」

「ふっふー♪」

「うっうー☆♪」

 

博麗神社の前では、小夜さんと霊夢さんが鍛錬を続けていました。

「夢想封印!」

「甘いわね!」

ボムの行き先に意識を向けた間に霊夢さんは喰らいボムをした後小夜さんに近づき、札を撃ちます。

それらは大量に放たれましたが、速度が遅めでした。

それから避けようとしたその時、その札の群れの中から一枚の札が加速し、小夜さんの体勢を崩します。

そこに残りの加速した札が次々と襲い掛かり、音とともに小夜さんを地上に撃墜させました。

「まだまだね。ほら、次行くわよ。」

この鍛錬を始めてから小夜さんピチュったのは計67回、まだ4日目で後何回かピチュれるだろう、と霊夢さんは最終日に胸を馳せていました。

「霊夢ー。」

「あら、来たのね。あいにくまだよ。」

「お邪魔しとくぜ。」

魔理沙さんが箒に乗って縁側に腰掛けました。

「ていうか、大丈夫なのぜ?」

「小夜のこと?大丈夫よ。魔理沙だってこの子の残機カンストしてんの知ってるでしょ?」

「いやまぁそうだけどさ。」

「霊夢、迎えに来たわよ。」

そこに傘を持ったメイドを従えて、レミリアさんが現れました。

「まだよ。じきに帰ってくるけど。無事に帰ってくるって勘がそう言ってる。」

「それじゃ、見物してるわ。」

魔理沙さんの隣に座ります。

その後赤蛮奇さん、橙さんも集まって、一行の帰りをもう一度ピチュられた小夜さんを眺めつつ待っていました。

 

曇り空の中の日が雪を照らしている頃、ゆっこさんたちは博麗神社にたどり着きました。

そしてその後ろには何十という大小様々なゆっくりが、ゆっこさんの荷物を分担しつつ付いて来ていました。

ゆっこさんは手伝ってくれたゆっくりたちに礼を述べてから、森に帰るのをおさげを振って見送っていました。

飼い主の皆さんは動き回るゆっくりの大群に少し驚いているようでしたが、各々のゆっくりが手元にやってくると、安心したようにそれを抱きしめていました。

特にお使いをこなしたことに魔理沙さんが大喜びし、あるもので宴だと宣言し、家主の同意も十分に得ないまま神社に上がり込みました。

まだ宴には早い時ですが、こうなったらどうしようもありません。

結局霊夢さんも諦めて鍛錬を中止し、ゆっくりの飼い主たちによる交流会が執り行われ、元々眠かったゆっくりたちが眠りに落ちても気にせずに、その騒ぎは夜が更けて雪が舞い始めても続きました。

 

この時鍛錬が中止されたお陰で小夜さんの下が無事だったとか何とか。

 

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