しかし矢っ張り情けない我らがオリ主です。
巨人恐怖症に掛かっております。
克服した時、真の無双が始まります。
スイマセン。嘘です。
このSSは巨人にトラウマを抱えながらもヘタレながらも保身のために戦うリクの物語です。
オレとミーナはトーマスを連れて本部までやってきていた。
トーマスは直ぐに担架で運ばれていき、ミーナは直ぐに次の任務を言い渡された。
云わく「直ぐに持ち場に戻って巨人を足止めせよ」という。
ハッキリ言って無茶だろう。
オレは既に気づいている。
先程の場所には人間の気配が一つしか残っていないのだ。
その直ぐ近くで巨大な気が複数、一つ一つ消えていっている。
間違いなく巨人化したエレンが巨人を殺しているのだろう。
今から行っても間に合わない。まったくどうすれば?
オレはミーナを見る。
「分かりました!ミーナ・カロライナ訓練兵!これより心臓を国に捧げます!」
ミーナは顔を引き攣らせながらも力強く敬礼した。
マジですか。
巨人の恐怖を目の当たりにしたばかりなのに、もう戦う気なのか…。
超人というわけでもないのに。どんだけメンタル強いんだよ。
「さっさと行け!巨人共を此処に近づけるな!」
大柄の髭面の隊長が檄を飛ばす。
確かキッツ・ヴェールマンとかいったか…。
明らかに口だけ男だ。気に食わないが、コイツを攻める資格はオレには無い。
オレは間違いなくコイツ以上に巨人にビビっているから。
立ち向かえるのは、曲がりなりにも亀仙流の修行をやりきった自信があるからだ。
「わたし、もう行かないと…。アンタの話は聞きたかったけど」
ミーナは補給兵から新しい剣を受け取り、ガスの補給を完了させると俺に背を向けて歩き出した。
「待て。俺も一緒に行く」
折角拾った命だ。死なれたくはない。
それに出来ればオレの味方になってほしい。
この時オレは、自分の力を晒す覚悟を決めた。
それに大丈夫だよな。いくら強くても「国の為に死んでこい」とは言われないよな?
オレは兵士じゃない。国に心臓を捧げた覚えはないし。
巨人は怖いけど、目の前のコイツらは怖くないし。
「……そう」
ミーナは胡散臭そうにオレを一瞥した。
その視線に思わず後ずさってしまう。
「あんたが同期って事だけは思い出したわ。なんか胡散臭いけど…。一緒に連れていく」
「そいつはどうも」
「だけど、妙な真似したら…、その時は…」
おそらくミーナも怖いのだろう。
彼女にとってオレは正体不明だ。
敵対行動を取った覚えはないが、オレの存在はあり得ない。
そのあり得ない光景をミーナは目の当たりにしている。
立体機動装置を利用せずに巨人を殺し、更にこの本部までトーマス一人を抱えてミーナの立体起動に付いてここまで来たのだ。
しかもトーマスは兵士として完全武装した状態である。かなりの重量なのだ。
得体が知れないのだ。
だからこそオレは素直に頷いておく。
「わかってるさ。肝に銘じとくよ」
「じゃあ行くわよ、リク。道すがらアンタの事を話してもらうわ」
「ああ」
ミーナは立体機動装置からワイヤーを射出、屋根まで一気に跳躍した。
オレも後を追う。
オレは訓練兵団から追放された後の事を話して聞かせた。
立体機動の資質が全く無かった事は同期のミーナも知ることだ。
そしてその後、農地開拓に取り組みながらの修行内容を語って聞かせた。
ミーナは修行光景を想像し顔をしかめながらも黙ってオレの話を聞いていた。
気の事は東洋の神秘とてし代々家に伝わる書物に載っていた事にしておいた。
訓練兵団の訓練は凄まじい苦行だ。しかしオレは自信を持って言える。
亀仙流の、いやそれ以上修行を積んだオレは兵士たちの十数倍は血反吐を吐いて己を鍛えてきたと。
「そう…俄には信じられないけど…。いや人間がそこまで強くなれる事自体が…。知っていたとしても同じ事を出来る自信が私にはないわ」
「まぁ、修行はキツかったけど…、それでもオレは楽しんでやってたよ」
「あんた、マゾっ気でもあるの?」
「馬鹿言え。どっちかっていうとオレはSだ」
「ふふっ」
ここで漸くミーナは笑顔を見せた。
歳相応の少女の愛らしい笑顔だ。
恐らく初めて目の前で巨人を見たのだ。神経が張り詰めていても仕方がない。
そしてミーナは真剣な声音で言った。
「じゃあ巨人が出てきたら任せてもいいの?」
その言葉にオレは一瞬迷ってしまう。
一応、決意はした。それでも二の足を踏んでしまうのはオレがヘタレてるからだろう。
巨人怖い。超怖い。
ミーナが不思議な顔で振り返った。
「リク?」
「あ、ああ。何でもない。巨人ならオレに任せとけ」
それから約半刻程。
オレたちは向かってくる巨人達を蹴散らしながら街を進んだ。
ミーナには本気でドン引かれている。
「あんた実は中身は巨人じゃないでしょうね?」
そう言われた時は泣きそうになった。
仕方ないといえばそうなのだが納得できん。
オレは巨人に対してトラウマが在る。
あんなのと一緒にされるのは本気で心外なのだ。
「おりゃあっ!!」
巨人の手から残像を残して背後に回り込み、うなじを削ぎ落とす。
うなじを損傷した巨人は為す術もなく地に伏して息絶える。
強靭な肉体と生命力を持った巨人の唯一の弱点。それが『うなじ』だ。
うなじ以外の箇所をいくら欠損しても約1分程で再生してしまうのだ。
「よし!これで17体!!」
「たった一人で巨人を…。は、ははっ…、今までの私達の訓練って何だったの?」
そんなこと言ってる暇があるなら巨人と戦って欲しい。
巨人と闘いながらもオレは、緊張と恐怖でチビリそうになってるのに…。
ていうかうんこ漏れそう…。
今オレってどんな表情で戦っているんだろう?
襲ってくる巨人に対する恐怖は常にピークだ。
今も脳裏に父親が喰われた時の光景が過ぎる。同時に前世の記憶が流れていく。
それでも巨人と戦えているのは、きっと…。
巨人じゃ絶対にオレを殺せないからだ。
オレがどんなにビビってても、腰が引けて実力の半分しか出せない状態でも、そんなオレでも巨人よりも圧倒的に強いからだ。
実戦を経験してそれを理解した。
それでもビビってるオレは矢っ張りヘタれ、いやうんこ垂れなだけだろう。
「…巨人超怖い」
オレは決してミーナには聞こえないように小声で呟いた。
その時、街中に鐘の音が響く。
「これは?」
「っ、避難が完了したんだ!撤退の合図だ!」
出撃して直ぐに撤退?
どれだけ事態が動いているんだよ。
しかし其の割には妙だ。生き残っている兵士達に動きがない。
オレは“その方角”をじっと見つめる。
一箇所に兵士たちが集まっている。その先は間違いなく本部だ。
オレたちが発った時よりも人数が明らかに少ない。
それに巨人が集中している。
「どうして?みんな壁を登ってない?撤退でしょ?」
ミーナも事態の異常に気が付き戸惑う。
「向こう、本部に多くの兵士と巨人共が集まってる」
「分かるの?」
「ああ、気で分かる。ヤバイな…。また1人、いや3人死んだ」
「うそ」
正直言って行きたくない。
巨人の気持ち悪い面が並んでいるのを想像すると吐き気がする。
実際すぐにでも吐いてしまいたい。
「行こう!」
「ですよね」
ミーナは仲間を救おうと立体起動で進みだした。
待てよ。巨人と戦うのはオレだろ?全部オレが殺してんじゃん。
お前も働け兵士。生産者に代わって心臓捧げるのがお前の仕事だろ?
オレも一応、生産者だよ。
「けど立体起動ってやっぱりカッコいいよな…」
無理だということは理解している。
前に一度、放棄された中で無事な立体機動装置を装着、練習したことがあるが…。
亀仙流の修業によって強化された肉体の力に立体機動装置が耐えられなかった。
立体機動装置は全身に装着した固定ベルトを利用した細かい体重移動技術を要する。
オレも試してみたが、自身の筋力によって固定ベルトが弾け飛んだ。
折角の立体機動装置をお釈迦にしたのだ。勿体無い。
閑話休題
ミーナの進軍に続くこと数分、俺達の前に驚くべき光景が飛び込んできた。
「なにあれ?巨人同士で殺し合ってる?」
なんと15メートル級の巨人が仲間であるはずの巨人を攻撃していたのだ。
なるほど、知っていたとはいえ凄い光景だな。あれが巨人と化したエレンか。
まるで人類の怒りが形になったかのようなソレは咆哮を上げながら巨人を猛襲した。
「ミーナ!」
やって来たのはミカサとアルミン、そして坊主頭の兵士だ。
坊主頭の顔には見覚えがあるから同期だろう。
「一般人?なんでこんなところにっ!?」
「コニー、リクだよ。リク・クリムゾン」
「あ、ああ。なんか久し振りだな…」
アルミンの言葉で漸く思い出したのか納得した声を出す。
「アルミン、皆は?それにどうして後方のミカサが…」
ミーナの言葉にアルミンは項垂れる。
「ボク以外、みんな巨人に…」
「そ、そんな…」
「アルミン、いまは…」
「わかってる。ミーナ、リク、聞いてほしい」
アルミンはオレ達に簡単に自分達の現状と打開する為の作戦を説明した。
現状、立体機動装置のガスが切れそうであり壁を昇るためには補給が急務である事。
しかし補給部隊は戦意喪失し本部に立て篭もって出てこない。
その本部に巨人が集中し近づくことは難しい。
よって巨人を殺す巨人(エレン)を利用して本部まで誘導することによって巨人達に隙を作り補給部隊と合流、補給完了次第戦場を離脱する。
「いきなりで戸惑うと思うけど今は詳しく説明してる暇がないんだ」
「お前らも早く来いよ」
それだけ言うとアルミンとミカサはさっさと行ってしまった。
コニーもそれに続く。
「えっ!?ちょ、ちょっと!それだけじゃ!」
「行くぞミーナ。事情は後で聞こう」
「……っ、分かったわよ!」
ミカサを戦闘に一行は本部を目指す。
しかし事はそう簡単に運べない。
巨人の群れが前方でヨダレを垂らして待っていたのだ。
3メートル級から15メートル級、奇行種まで選り取り見取りだ。
オレは一気にミカサを追い抜くと巨人の前に踊り出た。
先ずは厄介な奇行種からだ。
残像によって巨人を幻惑して背後に周りうなじを削ぎ落としていく。
「き、消えたっ!?」
「嘘だろ!?」
「みんな驚いた?私も初めは、ううん、今も驚いてるけど…」
「でやああああああっ!!」
「私達が訓練兵団で必死でやってた頃、アイツは私達とは比べ物にならない苦行を積んでいたみたい…それに、信じられないかもしれないけどアイツ、皆に合流するまでに20体の巨人をたった一人で殺してるの」
「はぁっ!?冗談だろっ!!?」
オレは目の前の巨人を全滅させずに適当な小型の巨人をエレンの方へと蹴っ飛ばす。
巨人の生体は学んできたが、一番驚いたのは巨人の体重だ。
コイツらは思ったほど重くない。なにせ7メートル級程度なら簡単に投げ飛ばせるのだ。
難しいことは分からないがオレにとっては有難い。
体重が軽いという事は戦闘力にも直結するからだ。
見た目同様の体重なら間違い無く今以上に苦戦していた筈。
「ていっ!!」
オレを掴もうとした15メートル級の指を持ち背負投げ一閃。
勿論エレンの方角に投げ飛ばす。
皆からは勿論ドン引きされた。
「おいおい、マジかよ…」
「本当に人間?」
オレの暴れぶりに皆冷や汗をかいている。
それでも足を止めないのは流石だと思う。
皆は巨人を横切り、または指の隙間を抜けて股の下を掻い潜る。
オレは更に皆が掴まれないようにフォローする。
コニーに巨人の手が迫る。
「させるか!!」
オレは全速力で飛びコニーを掴もうとしている巨人の指を切り落とした。
鮮血が舞い顔を濡らす。
うわっ!ばっちい…、エンガチョッ!!
実際に巨人は本当にキモい。
「わ、悪い!助かった!!」
コニーは顔を青くしながらも礼を言い前に進む。
今のところ犠牲者は出ていない。
「よし!これなら上手くいく」
次第にオレの強さにも皆が慣れていくのを感じる。
マジで順応性高いな。流石だと思う。
皆の動きから固さが取れ起動も滑らかになっていく。
戦場の空気になれ緊張も取れ始めてきたようだ。
新兵ゆえの実戦での弊害、しかしもう大丈夫だろう。
こいつらは自分の実力を十全に発揮できる筈だ。
(くそ…比べてオレ情けねぇ…)
オレは未だに腰が引けて修行中の様に実力の全てを発揮できないのに…。
そして程なくして。
「皆!本部だ!」
アルミンの声に反応して顔を上げる。
目の前には本部と周りに集中している巨人共が見えた。
ゴールは近い…っ!!!
続く?
おまけ
リクの立体機動装置
立体機動装置とは全身に固定したベルトを利用した細かな体重移動技術によって成り立っています。
立体起動中は常に全身運動しているので体力を消耗します。
リクはエレンの様に装置に不備があったわけではなく本気で才能無しでした。
体力は人一倍あったのに全身の体重移動というものが今ひとつでしたww
後に再び立体機動装置を手に入れて試みます。
しかも亀仙流の修業によって超人化した身体能力にベルトが耐えられない仕様w
全身の体重移動なんてやれば圧倒的な運動エネルギーによってベルトがパツンと切れます。
そんなエレンの能力値
【LV50】
【格闘298】【射撃122】【防御301】【命中177】【回避302】【技量163】
地形
【地S】【空A】【海B】【宇-】
スキル
巨人恐怖症LV6
気力限界突破
見切り
カウンター
ガード
2回行動
SPアップLV3
精神
【加速5】【集中15】【直感25】【根性20】【気迫30】【努力10】
リク・クリムゾン
【HP500/500】【EN300/300】
【装甲750】【運動性230】【標準値120】
【移動3】【移動タイプ-陸-空-】【機体サイズS】
【特殊能力-亀仙流-】
スパロボ風でした。
なお以上の能力は本編には全く関係ありません。
アンケート
私的にヒロインはミーナにしようと思っているのですが皆さんはどう思いますか?
それともヒロインは無しの方が良いですか?
つぶらな瞳の巨人に喰われるのは忍びないので生還させてみたのですがww
因みにミカサをヒロインにするのは不可能です。
私、いえリクではエレンからミカサの心を奪うのは無理でしょうww
多分、他の誰であっても無理でしょうが…。