巨人の世界で(笑)   作:トッシー

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なかなか文章がまとまりませんでした。


査問

巨人によるウォール・ローゼ破壊から三日。

オレは調査兵団の使いからエレンが目覚めたとの知らせを受けた。

付いては、これから行われる査問会に出頭するようにとの事だ。

修行中だったのだが仕方がない。

オレは修行用の重りを外すと手早く着替え、更に重りを背負った。

迎えの兵士が口をポカンと開けて聞いてきた。

 

「そのまま行くのか?」

 

「当たり前だろ?」

 

オレは自分の背丈よりも更に高い石柱を見せながら当然のように言った。

 

 

現在ウォール・シーナ内は混乱していた。

王政府が発表したトロスト地区奪還作戦によって。

人々は新聞を手に取り目を丸くしている。

巨人が人類に味方し壁を塞いだ。その報道を簡単に受け入れる事は出来なかった。

そしてもう一つ。立体機動装置を用いること無く、何の武装もなく正面から巨人を蹴散らす戦士が現れた。その事実についても人々の反応は懐疑的だった。

実際に目にしないと信じられないのだろう。

その身一つで巨人の群れに立ち向かう男リク・クリムゾン。

人々の手に取った新聞の一画に大きく記されていた。

そして遂にエレンの運命を決定する兵法会議とは名ばかりの査問会が始まる。

 

 

オレが連れて来られたのは審議所だった。

中に入るのは初めてだ。

会議は既に始まっているらしく、急ぐように言われた。

 

 

正に前代未聞の事態であり、法も適用されない。

それ故に様々な感情論が飛び交い、ひしめいていた。

そして意見も見事に割れた。

エレンを救世主と呼ぶものも居れば、悪魔と呼び直ぐに殺すべきだという声もあった。

しかし決定権は全兵団の長ダリス・ザックレー総統に委ねられる。

そして今回決めるのはエレンの処遇を、どちらに委ねるかだ。

即ち憲兵団か。または調査兵団か。

 

 

扉の向こうで声が聞こえてくる。

少し開いてみると両手を拘束されたエレンが中央で跪いているのが見えた。

憲兵団のエンブレムを付けた壮年の男が資料を読み上げている。

 

「私は憲兵団師団長ナイル・ドークだ。我々の提案はエレンの人体を徹底的に調べあげ、速やかに処分するのが最善と考えています」

 

中央の権力者たちエレンの事を危険視している様だ。

そして五年前の悲劇を繰り返して尚、内地に住まう王族や有力者達も、壁外への不干渉を貫いているのだ。

そして今回の巨人襲撃でエレンを英雄視する者も出始めた。

ウォール・ローゼ内の民衆や商会たちだ。

結果、残された領土をめぐる内乱が勃発する恐れもある。

エレンの功績は理解しているが、それ以上に高度に政治的な存在になってしまった。

 

「だからこそ、情報を出来るだけ残してもらった後、我らの英霊になってもらう」

「その必要はない!」

 

話に割り込んできたのは、神父の様な格好をした男だ。

確か5年程前から注目を集め出したウォール教の司祭だ。

 

「此奴は神の英知である壁を欺いた害獣だ。即刻始末するべきだ」

 

司祭はエレンを憎しみの篭った目で睨みつける。

 

「静粛に、ニック司祭殿。次は調査兵団の案を聞こう」

 

「はい。調査兵団団長エルヴィン・スミスです。我ら調査兵団はエレンを正式に団員に迎え入れ、巨人の力を利用してウォール・マリアを奪還します」

 

以上です。

正にシンプル・イズ・ベスト。

聞いていてスッキリするくらいの清々しさだ。

同感だ。議論の余地など無いはずだ。

しかし異議ありの声を上げるものがいた。

 

「ちょ、ちょっと待て!今度こそ全ての壁を完全に封鎖するんじゃないのか!?」

 

巨人の恐怖を知る元内地の有力者だった。

これ以上巨人との戦いに巻き込まれたくない保守派の声。

 

「豚が…扉を補強してる間、巨人共が待ってくれる保証があるか。お前らが言ってる我らというのはお前らが肥えるための豚の話だろう?」

 

リヴァイは男を睨みつけながら正論を放つ。

痛いところを突かれたのか男の顔が真っ赤に染まった。

 

「わ、私は唯扉さえ封鎖してしまえば…」

「黙らんかっ」

 

司祭が更に割って入ってきた。

 

「神より授かりし偉大なるローゼの壁に人間如きが手を加えるというのか!?この不届き者めっ!!」

 

オレは事の次第を覗きながらも、段々と腹が立ってきた。

他の者達はまだ良い。皆それぞれ国の行く末を憂いているのが分かる。

しかしこの司祭は気に食わん。

実際は何の役にも立たないくせに支持だけは結構集まっている為、質が悪い。

昔オレもこの宗教に入信を薦められた記憶がある。断ったけど。

ていうか無神論者だしオレ。死んで転生した時も神なんぞに会わなかったし。

ていうかお前はまだ案を問われていないだろうが。

生臭坊主、空気読めよ。

 

「うるさい奴だな。空気読めよ」

 

気がつけばオレは勢い良く扉を開いていた。

不恰好だったから背中の重りは下ろしておいた。

 

「な、何者だっ」

 

「オレはリク・クリムゾン。人類に最も貢献している生産者だよ」

 

オレの自己紹介を聞いて集まった者達が騒ぎ始めた。

期待を込めた眼差しを向ける者もいれば、恐怖を篭った視線を向けてくる者もいた。

 

「静粛に」

 

ダリス総統の声にざわめきが止まる。

なるほど、この爺さん只者じゃねぇや…。

オレは居心地の悪くなる視線の集中を受けながら入室する。

 

「その反応を見る限り自己紹介は要らないみたいだが、改めて…リク・クリムゾンだ。開拓地で働いている」

 

視線の集中。

その光からは様々な感情が見て取れる。

期待と喜び、不安と恐怖。

正直これだけの人数がオレに対して興味を抱く。

良い意味でも悪い意味でも、これは悪くない。

巨人の視線は御免被るが、どうやらオレは人の注目を集めるのは嫌ではないかもしれない。

オレは歩きながら周りの人達を見渡す。

目の合った者は直ぐにオレから目を背ける。

まさかここまでビビられてるとは思わなかった。

歩を進める先には調査兵団。

 

「ここで良いのか?」

 

オレの顔を見て嫌な顔をするリヴァイに確認を取ると、了承の返事をされる前にその横を陣取る。

押しのけられるように場を奪われたリヴァイから殺気が放たれるが無視。

一瞬だけ剣に手を掛けるが思い直したようだ。

面白くなさそうに舌打ちする。

 

「話を進める」

 

そして総統による質疑が続けられた。

全兵団の意向を確かめた次はエレン本人の意志の確認だった。

それは当然の疑問。エレンは巨人の力を制御できるか。

エレンは出来ると答えた。

それは性格な事実ではなくエレンの願望。

実際はエレンは暴走し、敵味方の区別なく暴れまわった。

家族である筈のミカサにまでその豪腕を振り下ろしていた。

初めて知らされた事実にエレンは愕然とする。

次にエレンの人間性についての審査が行われた。

 

「まるで裁判だなこりゃ」

 

前世では体験したことはないが物語の中で見たソレを思い出し苦笑する。

そして明かされるエレンの過去。

6年前、当時9歳だったエレンとミカサは強盗3名を殺害していたのだった。

正当防衛ではあるが、普通の子供の所業としては根本的に異常である。

そんな者に人類の命運を託すべきなのか?

それが憲兵団の意見だった。

 

エレンの過去を知った人々は、更に怯えた表情でエレンとミカサを見た。

子供の姿で人類に紛れ込んだ恐ろしい巨人なのではないか。

その拘束も無意味ではないか?

一度負の感情へと流れてしまった人々は暴走を始める。

 

「お、オレはバケモノかもしれませんがミカサは違います」

 

「エレン…」

 

「それに憶測だけで都合のいいように物事を進めても現実と乖離するだけです」

 

エレンはせめてミカサだけはと抗議するが負の感情は止まらない。

このままではミカサまでもが…。

 

「そもそも貴方らはこの内地で巨人の脅威も知らずにぬくぬくと過ごし、巨人の姿を見たこともないくせに何が分かるんですかっ」

 

「なんだと?こいつ…」

 

エレンの表情が怒りに染まる。そして大声を張り上げようとした瞬間…。

 

――ドゴンッ!!!

 

轟音が響き床が砕けた。

いやオレが砕いたのだった。やっちまった。

砕けたオレの足元から亀裂が伸び、口煩くエレンを罵っていた坊主の足が囚われる。

坊主は体制を崩して強く背中を打ち付けた。

 

「ひ、ひぃっ」

 

再びオレに視線が集中した。

 

「人は見たいものだけを見て信じたいものを信じたいように信じる…。さっきエレンが言ったこと、同感だな」

 

自分の都合の良いようにか…。

確かにな。何かの物語でこういうの合ったな。忘れちまったけど。

でも至言だと思う。

 

「な、貴様っ、この化け物に肩入れするかっ!やはり貴様も巨人の仲間だなっ!」

 

今ようやく足を亀裂から引きぬいた坊主が怒りの声を上げる。

 

「それがお前にとって都合の良い解釈か?」

 

「な、何だとっ」

 

「一分だ」

 

オレは指を立てて静かに言った。

全員何の事だと首を傾げる。

 

「オレがその気になれば、ここにいる全員を一分以内に始末できる」

 

全員の顔に緊張が走った。

その言葉に鉄砲を構えようとした男、そいつの背後に移動すると行動を制する。

 

「ひっ」

「慌てるな。出来るといっただけで殺るとは言ってないだろう?」

 

距離にして約7、8メートル。

しかも人垣を無視したように一瞬で移動し銃を制したオレの行動に更に人々は恐怖する。

 

「オレを敵に回して、それでオレを処分する為に戦う?それがお前の都合の良い答え、真実でいいんだな?」

 

オレは正面から坊主の目を睨めつけてその真意を問う。

 

「言っておくが、オレは抵抗するぞ?全力でな」

 

「……っ」

 

オレの言葉に坊主は息を呑んだ。

 

「そこまでだ。話が脱線している。それに君に発言を許可した覚えはない」

 

全員が総統に視線を移す。

こんな状況でもブレずに、そして法に則って進めようとする姿勢には感心する。

 

「そして此処は暴力の場ではない。これ以上、その力を行使するなら退場してもらう」

 

「……わかったよ」

 

これ以上オレが口を出しても話が縺れるだけか。

坊主には釘を差したしこれ以上は余計な事は言わないだろう。

 

 

そして査問会は続いた。

 

「次にリク・クリムゾン、君の番だが」

 

取り敢えずエレンに対する処遇は保留、次にオレに対する審議が始まる。

あれ?何故に?

 

「は?オレ関係ないじゃん」

 

オレに巨人化能力なんて無いし、オレの能力は厳しい亀仙流の修行の成果だし。

オレの力の秘密についての質問。当然だが正直に答える。

 

「厳しい修行の賜だけど」

「嘘をつくなっ!」

 

その言葉にイラっとくる。

そして明かされるオレの過去。

兵士になるために訓練兵団に入団。

落ちこぼれて追い出された後、開拓地に送られて生産者として過ごす。

 

「それで開拓を続けながら修行を続けてきたわけだ」

「巫山戯るなっ!落ちこぼれた貴様に出来るわけがっ!」

 

更にイラッと来る。

どうやらどうしてもオレを化け物にしたいらしい。

そして問われるオレの真意。

何故今になって戦場に現れたのか?どうして巨人と戦ったのか?

 

「とうぜん保身だけど」

「な、なんだとっ!?」

 

またまたイラッと来る。

人間社会が崩壊すればオレの生きる場所もなくなってしまう。

厳しい修行に耐えたのも巨人に喰われて死ぬのが嫌だったからだ。

既に会場はオレに対する非難の嵐だ。

正直に答えたのに何故だ。中にはオレが巫山戯て面白がっているなどと言う奴もいる始末。

オレが総統の言うとおり手を出さないと思って…。

 

「静粛-」

「-お前ら顔を覚えたからな…」

 

場を収めようとした総統とオレの声が重なる。

オレの漏らした言葉に全員が押し黙る。

総統が咎めるようにオレを見るが、別にいいじゃないか。

こいつら静かになったわけだし、暴力も振るっていない。

 

 

そして矛先は再びエレンへと向かう。

改めてオレとエレンの処遇についてだ。

オレについては問題ない。

団長さんがオレを傭兵という形で調査兵団へ組み入れる旨を伝えた。

しかし問題はエレンだった。

意見は見事に真っ二つのままだった。

人々にとって真実など関係なく、理解できない正体不明の恐怖の元凶を早々に排除したい。

しかし報復を恐れて一歩踏み出すことが出来ない。

待っているのだ。都合よく誰かがエレンを始末してくれるのを。

 

「どうやら意見は出尽くしたようだな。決めてもらおう」

 

リヴァイとエルヴィンが立ち上がる。

 

「確かにエレンの巨人化には不確定要素を多分に孕んでいる。そしてその危険性は常に付きまとう。そこで…」

 

リヴァイの強烈な蹴撃がエレンの顔面を捉える。

ミカサが飛び出そうとするが、周りの仲間が必死に抑える。

これは間違いなくリヴァイのデモンストレーションだ。

知っていたとはいえ、無抵抗の者を痛めつけるのは見ていて気分が悪いな。

一頻りエレンを痛めつけたリヴァイは迷いなく宣言した。

 

「コイツを調査兵団に入団させる」

 

エレンを調査兵団の管理下に置き、不測の事態に対してリヴァイが対処する。

リヴァイの実力は総統も認める所だ。十分に抑止力足りえる。

 

「出来るか?リヴァイ兵士長」

「殺すことなら確実に…、問題は」

 

リヴァイはオレに視線を移す。

 

「こっちから敵対する気はない。むしろエレンが暴れたら一緒に止めてやるよ」

 

「…決まりだな」

 

調査兵団の決意に総統は「ウム」と頷く。

憲兵団と坊主は不服そうにエレンを睨みつけている。

 

「ナイル…」

 

エルヴィンの諭すような声。

 

「我々は内地の事を軽視しているわけではない。我らの行動が人々の安定の上に成り立って要るのも分っている」

 

このまま納得出来ないのが人々の真理だ。

結局のところ軍は要るだけで金食い虫だ。様々な者を消費していく。

収まる訳がないのだ。

 

「そこで提案があります」

 

エルヴィンが出した事態を沈静化する為の答え。

それは劈外調査によるエレンの存在の有効性の証明だった。

 

「ほう、壁外へ往くのか?」

 

「はい」

 

「わかった…、エレン・イェーガー並びにリク・クリムゾンを調査兵団に託す」

 

こうしてエレンと、オマケだがオレの処遇が決定した。

取り敢えず難は去った。

しかし未だ問題は多く残されている。

周りを見ると、この決定に不服だという感情を隠そうともしないでエレンを睨む人々。

中にはオレを睨んでいる者もいる。

坊主とか、坊主とか、坊主とか…。本気でウザい。

しかし今は…。

 

「素直にこの結果に喜んでおくか…」

 

傷ついたエレンを肩に担ぎながら退室していく調査兵団、それを追いかけようとして止められているミカサ。

そんな様子を眺めながらオレは天井を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

リヴァイ 

 

【性別】男 【性格】強気 【隊長効果】命中率+20%

 

【地形適正】【空】A 【陸】A 【海】- 【宇】-

 

【レベル】40

 

【格闘】170 【射撃】152 【技量】201 

【防御】101 【命中】230 【回避】255

【SP】98

 

特殊技能

 

立体機動術LV8 切り払いLV5 援護攻撃LV4 闘争心

気力+ 見切り ヒット&アウェイ

 

精神

 

集中 迅速 覚醒 熱血 直感 直撃 気迫

 

私の妄想です。

 

本編とは関係ありませんw

でもこれぐらいの能力が有りそう…。

リヴァイさんチート使用。




更新が遅くなってスイマセン。

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