ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第6話〝創立、テゾーロ財団〟

 海を行く一隻の船。

 テゾーロとステラは、ウォーターセブンへ向かっている。

(ウォーターセブンか……おれの夢と野望はそこで始まるのかな……)

 ジャケットを海風でたなびかせ、酒を片手に水平線を見据えるテゾーロ。

(やっぱりトムに頼るのが一番だよなァ……)

 コンゴウフグの魚人であるトムは、非常に高い造船技術を持つ船大工。懐が深い人物でもあり、テゾーロは彼と交渉して力を蓄えるつもりだ。

 ウォーターセブンは、交易の困難と年々水位が上昇していることにより島の孤立化が進んでいる上、造船所や店も次々と潰れ海賊が闊歩するようになった町は治安の悪化も進んでいる。トムはそれを憂いて海列車開発に尽力した筈だ。

 テゾーロはそこに目を付け、彼とWin-Win(ウィンウィン)の関係を築いてウォーターセブン発展と共に自らの力を強大化させようというのだ。勿論、賞金稼ぎの一面としても活躍予定だ。

(となると…プルトンの設計図をどうにかしなきゃな)

 トムについて語る上で、欠かせないのが古代兵器プルトンの設計図だ。

 プルトンとは、かつてウォーターセブンで造られた造船史上最悪の戦艦。島を一発で消し飛ばすことができるくらい強大な武力を有しており、あのトムですら「バケモノ」や「存在させれば世界が滅ぶ」と言わしめる程だ。

 一応建造が可能のようで、設計者はプルトンが万が一にも暴走的に使用された時の「抑止力」のために設計図を後世に残したらしい。

(っていうか、処分は考えなかったのか? 政府が所持した方が危ない気がするぞ、おれは……)

 よくよく考えてみれば、処分した方がいいのではと思う。

 現在のプルトンの在り処は、アラバスタにある歴史を記した石碑〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟に記されている。だがそれを解読できねば意味がないのではないだろうか。

 原作では、世界政府は〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟の探索と解読を死罪と定め禁止しており、多くの学者が命を落としている。

 政府の徹底した学者弾圧の影響で、読める人間は現時点でごく少数。トムがそれを知っていれば、もしかしたら早々にプルトンの設計図を処分して事なきを得たかもしれない。

(五老星も心の底から設計図を欲しがってたのかねェ……。原作コミックを思い返すと、しっくりこないんだよなァ)

 「世界を滅ぼす程の力を持つ兵器の復活に怯えるのではなく、それを政府が持ってその力を背景に大海賊時代を終わらせよう」というスパンダム――当時はCP5(シーピーファイブ)主官――の意見に対し、五老星は「一理ある」や「まずは設計図を持って来い、話はその先だ」という返答。設計図の強奪は許可したが、これはあくまでも「許可」であり「命令」ではないのだ。

 仮に設計図を持ってきたところで、五老星は「これはあってはならない、処分する」という結果もあり得る。どっちかと言うと「お前の言う通りだ、政府が保管しよう」という返答の方が確率的には高いかもしれない……政府に仇なす連中をプルトンを用いて消し飛ばせばいいからだ。

 だが万が一設計図(それ)を巡った派閥争いでも起きたら、それはそれで五老星が困るかもしれない。万が一だが。

(やっぱ、処分するべきだよなァ……)

 世界のことを考えると、設計図は処分すべき。

 それも踏まえて動く必要がありそうだ。

「テゾーロ!」

「! ステラ?」

「見えたわ!」

 ステラの指差す先には、島があった。

 そう、ついに着いたのだ。

「アレが…ウォーターセブンか」

 ついに着いたのだ。

 大海賊時代開幕以前の、ウォーターセブンに。

 

 

           *

 

 

「ん? あんたら、見ねェ顔だな……他所(よそ)から来たのか?」

「ああ、少し用があってね……」

 島に上陸したテゾーロとステラは、住民からよく声を掛けられた。

 話によると先程の船は一日にたったの2回しか運航していないらしく、物資もかなり少ないらしい。

(よくこれで街が成り立つな……)

 元々〝偉大なる航路(グランドライン)〟の島であるため、周囲の島との連絡がつきにくいウォーターセブン。

 テゾーロの狙うビジネスは運輸……うまくいけば莫大な財を築けるかもしれない。

「この島は昔から造船の盛んな島だがな……〝アクア・ラグナ〟や島全体の地盤沈下で毎年酷い目に遭ってんだ」

「〝アクア・ラグナ〟? それって、何ですか?」

「高潮さ……怪物級のな」

「それは大変そうね……」

「お前さんら二人のような客は滅多に来ないからな…そういやあ、用って何なんだ?」

「実はトムという船大工を探してまして…」

「ああ、トムさんかい? トムさんは廃船島にいるよ。あそこで船を造ってんだ」

 

 

 テゾーロはトムの居場所を突き止めることに成功し、住民と別れた後ステラと共に廃船島を目指した。

「ところでステラ……」

「何?」

「これからは組織的な仕事になる……今日からおれと一緒に働く事になるが、いいかい?」

「ええ、構わないわ――」

 

 ドパァン!!

 

「うをっ!?」

「えっ!?」

 突如船が何者かに放り投げられ、着水した。

 そのぶっ飛んだ光景に、唖然となる二人。

 すると、廃船島の奥の方から男性の声が聞こえていた。

「ん? 珍しいのう、客か?」

「え……あ、まァ客といえばそうだな……」

「たっはっはっ! そうか、わざわざご苦労なこったろう」

「あなたがトムさんですか?」

「いかにも」

 テゾーロとステラは、ここでトムと出会った。

 材木の上に座って握り飯を頬張っているところから、どうやら昼休憩のようだ。

 テゾーロはそれを見逃さない。

「トムさん、交渉しませんか?」

「……交渉?」

 

 

           *

 

 

 テゾーロはトムに自らの計画を告げた。

 それは、トムに大型貨物船を作ってもらい、その船で多くの島から良質な材木をはじめとした物資を手当たり次第買い取りウォーターセブンへ売り捌くという内容だ。さらにテゾーロは賞金稼ぎとしても活動し、稼いだ金の数割をウォーターセブンやトムズワーカーズへ提供するという。

「あなた方には損などありませんよ。このギルド・テゾーロが直々に支援します」

「……」

 トムは腕を組み、静かに目を閉じる。

 そして、口を開いた。

「わしは、このウォーターセブンがこのまま廃れるのを黙って見ておられん。だから、わしの計画として海列車という外輪(パドル)(シップ)を構想している。そしてそれを一日でも早く完成させたい」

「「……」」

「沈みゆくウォーターセブンの未来の為、お前さんらがわしに力を貸してくれるのなら……わしも、お前さんらにわしの力をドンと貸してやる!!」

「……では、話に乗ってくれるんですか?」

「男同士が未来の為に力を貸し合うんじゃ!! ドンと胸を張っておればええ!!」

 たっはっは、と豪快に笑うトム。

 どうやら力を貸してくれるようだ。

「そういえば、お前さんらは会社か事務所か何かか?」

「あっ…」

 テゾーロは顔を引きつらせて笑った。

 今までスルーしてたが、自分達が何者かなのかを名乗ってなかったのだ。

「たっはっ……!! っ……!! ……!! こりゃたまげた!! てっきり貿易会社か何かかと思っとったわい!!!」

「テゾーロ、せっかくだからここで私達の会社を立ち上げない?」

 ステラの提言に、トムも「その方がええ」と賛同。

 テゾーロはどういう会社名にするか必死に考えた。

(ヤッベ、すっかり忘れてた…!)

 悩みに悩んだ挙句、出て来たのはこんな名前だった。

「……テゾーロ財団……?」

「テゾーロ財団か……いい名じゃな!! たっはっは!!」

 急遽テゾーロ財団が創立。

「これから頼むぞ、「テゾーロ財団」よ」

「ええ、こちらこそ」

 

 こうしてテゾーロとステラは、伝説の船大工・トムの造船会社「トムズワーカーズ」と契約を結ぶのだった。




テゾーロ財団が出来ましたね。
訂正で、財団は理事長だったので……テゾーロ理事長とステラ副理事長になりますね。(笑)

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