ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第8話〝スコッパー・ギャバン〟

 トムズワーカーズ。

 ここではステラはテゾーロの帰りを待っており、ココロと暇潰しに話し合ってた。

 容姿は違えど、女同士だからか会話が盛り上がっている。

「あんな若い子に会えるたァ、恵まれてるねェ!! んがががが!!」

 そう笑うココロに、ステラも微笑む。

「どうやって出会ったんだい? 落とし物を拾ってくれたのかい? それともどこかの曲がり角でぶつかったのかい?」

「いいえ、そんなありふれた話ではないですよ」

「じゃあ、どうして会ったんだい?」

 その時ステラは一瞬だけ暗い顔になり、気まずそうに口を開いた。

 ココロも思わず目を細める。

「人前では言いにくいんですが……私は売られたんです」

「!!? まさかあんた…奴隷だったのかいっ!!?」

「いえ……正確に言えば、〝人間屋(ヒューマンショップ)〟で売られてたんですが……」

 ステラは自分の身にかつて起こったことを話した。

 ステラは父のギャンブルが原因で人間屋に売られた。彼女にはその美しさと若さからかは知らないがかなり高い値を付けられており、何れ買われる日を待つばかりだったという。そこで出会ったのが、テゾーロだった。

「彼は私を楽しませるために、自らの夢を語ったり歌を歌ってくれた。それだけでも救いだったわ…」

 ステラの脳裏に、テゾーロの言葉が響く。

 

 ――君が好きだ。だから君を救いたい。奴隷になんてさせない!! 必ず救ってやる!!

 

「魔法の能力(ちから)で私を助けたあの日は、忘れられない。何十年経っても、決して忘れられないわ……」

「んがががが!! イイ旦那を持ったじゃあないか!!」

「だっ……!? い、いえ!! 私はまだ結婚してませんよ!?」

「だが好きなんだろう?」

「そ、それは……勿論……」

「んがががが!! 素直な子は嫌いじゃないよ。男は度胸、女は愛嬌で勝負するもんだしねェ!!」

 すると、トムがアイスバーグとフランキーを連れて帰ってきた。

 いつもピンピンした状態で帰って来るアイスバーグとフランキーが珍しくヘトヘトで、トムもいつも以上に汗をかいている。

 この日はそこまで忙しくない……どうやらテゾーロとは別行動で人材集めをしてくれたようだ。

「どうだったい?」

「ここ最近他所の人間は来てねェからな、今日はおらんかった。まァ、別の日に探してみるとするわい!!」

 その直後だった。扉を開けてテゾーロが帰ってきた。

 その後ろにはギャバンがいる。

「テゾーロ! すごいわ、一人見つけたの?」

「ああ、元海賊で新世界の海を航海した経験があるようなんだ」

 その時、トムが目を見開いて口を開いた。

「お前……ギャバンか!?」

「おお、トムの旦那! 久しぶりだな!!」

「トムさん、知り合いですか?」

「ああ、ロジャーの船に乗っとった男だ」

『……えェェェ!?』

 

 

 テゾーロが連れてきた男…スコッパー・ギャバンは、何とあの〝偉大なる航路(グランドライン)〟を制覇した海賊王ゴールド・ロジャーが率いたロジャー海賊団の元船員であったのだ。

 しかもスコッパー・ギャバンはロジャーや副船長のシルバーズ・レイリーと長い付き合いで、彼自身もかなりの実力者だ。

「ロジャーは不治の病に侵されてる……もう老い先短いだろう」

「そうか……もう会えんのか」

 ロジャーの寿命が残りわずかであることを知り、残念そうな顔をするトム。きっと、トムが作ったあのオーロ・ジャクソン号の事が気になったんだろう。

「トムの旦那、あんたが造ったオーロ・ジャクソンは立派だったよ。命があるわけじゃねェが、オーロ・ジャクソン(あいつ)もおれ達の大事な仲間だ」

「そうか。そりゃあ船大工冥利に尽きる…」

 安心しきった顔で言葉を紡ぐトム。

 そんな中、ステラはギャバンに声をかけた。

「ギャバンさん……」

「? 何だい、嬢ちゃん」

「海賊王は……ゴールド・ロジャーは今どこに?」

「……やっぱり訊くよな、それは。(わり)ィな嬢ちゃん、そいつだけは言えねェな……。然るべき時が来たら、教えてやるよ」

 どうやらロジャーが今どこで何をしているのかは元船員達は知ってても、ロジャー本人から他言しないよう言われてるらしい。

 テゾーロはその言葉の意味を理解しているどころかロジャーが今どこで何をしているのかも知ってるが、言わないことにした。

「海賊稼業から手は引いちゃいるが……船さえあればおれァどこへでも行けるぞ」

「それはありがたい、そういう方を待ってたんだ」

「ガハハハハハッ!! 随分と言ってくれるじゃねェか!!」

 豪快に笑うギャバン。

「そういやあお前、商売をするっつってたな。どういうのか教えてくれ。」

「ああ、実は……」

 テゾーロはトム達に話したことをギャバンにも伝えた。

 ギャバンはそれを聞き、笑みを深めた。

「成程……要は手当たり次第買いまくって売り捌くんだな? だが海賊船に出会ったらどうする? 船を奪い取って解体すりゃあ多少なり資材は揃うぞ」

「そこはトムさん達に見定めてもらうつもりです」

「そりゃそうだろうな、船大工にしかわからねェ事もあるもんだ。 じゃあ船ができるまで待ってるとするぜ。トムの旦那、もう一隻オーロ・ジャクソンを造ってくれよ」

「たっはっは!! まァ期待しているがいい。どういう船にするかはおおよそ決まっとる」

 トムは早速船の設計に取り掛かるために机に座って設計図を書き始めた。

 アイスバーグとフランキーもトムの元へ向かう。

「じゃあ、俺はこれで失礼するぜ。週一であの酒場で飲んでっから、船できたら呼んでくれ」

ギャバンはそう言い、豪快に笑いながら去っていった。

(ここからが本番だな……ギャバンさんと稽古でもして「新世界」で通用するレベルに成長しなきゃな)

 伝説の海賊が手を貸してくれるのは、テゾーロ自身も想定外だった。

 個々の力が驚異的に高いロジャー海賊団でも屈指の実力者かつ古株だったギャバンから覇気や悪魔の実の能力の稽古をつけて貰えれば、新世界での戦闘も何とかなるだろう。

 だがそれ以外にも海軍・政府との交渉やテゾーロ財団の発展など、やらねばならないことはたくさんある。

(まずは力を蓄え、強くなることだ。力が無ければ何も守れない)

 テゾーロの野望は、強くなることから始まる。


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