ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
テゾーロとギャバンの修行が始まって早3日。
今日もテゾーロは厳しく扱かれている。
「〝
テゾーロは黄金の槌を生み出し、ギャバンに殴りかかる。
しかしギャバンはそれを真っ向から受け止め、弾き返した。だがテゾーロは挫けず、体勢を立て直して黄金のハンマーを構え、突進した。
「テゾーロ、そうやってバカ正直に突っ込んじゃあ勝てる敵にも手こずんぞ!!」
だが、テゾーロは黄金のハンマーを変成し、右腕に手甲状の黄金を纏わせた。
そして近づく身体を回転して、勢いに乗ったまま裏拳を打ち出した。
ズドッ!
「ぐっ!?」
予想外の攻撃に、ギャバンの表情が強張る。
その隙を見逃さず、テゾーロは今度は左腕に手甲状の黄金をまとわせ拳を放った。
腹に鋭く重い打撃を叩き込まれて、しかしギャバンは息を漏らす事を堪えた。
「うおォォ!!」
テゾーロは更に拳を連打させる。
それに虚ろな目をやったギャバンの目に、正面に跳び足を振り抜くテゾーロが飛び込んだ。
だが彼は笑みを深め、額で蹴りを受け止めた。
(マジかよ!? 今の結構本気だったんだぞ!?)
テゾーロは、放心にも似た虚脱から、数秒して立ち直る。
「いいなァ。やっぱ、お前、やるじゃねェか」
刹那、肉眼で捉えられないような凄まじいスピードで拳が振るわれた。
テゾーロは咄嗟に両腕で顔面を隠し腰を退かせるが、それを見越した拳が腹に叩き込まれ、衝撃だけは回避できなかった。
その結果、大きく後ろに飛ばされ、テゾーロは材木の山に叩きつけられる。
「ガハハハッ!! 今のは良い攻めだったぞ。人体急所を狙っていた……覇気を纏えば
豪快に笑いながら、テゾーロの戦いぶりを評価するギャバン。
修行を始めてまだ3日しか経ってないが、テゾーロは少しずつ強くなっている。
(懐かしいな……シャンクスとバギーを扱いた日を思い出すぜ)
ギャバンはロジャー海賊団の船員だった頃、二人の見習いを扱いたことがあった。
一人は、麦わら帽子を被り果敢に敵と戦った少年剣士――シャンクス。
もう一人は、ピエロのような顔立ちをしたナイフ使い――バギー。
二人共、〝白ひげ〟をはじめとしたロジャーの宿敵達を前にしても臆さず立ち向かったロジャーの大切な〝仲間〟だ。
そんな彼らをレイリーと共に扱いた日々は、一味の解散こそつい最近の話だが、今となれば懐かしい思い出である。
ギャバンは、テゾーロを無意識に二人と重ねて感じていたのである。
(こいつには……テゾーロには人の上に立つ素質がある。これからが楽しみだ)
ギャバンは笑みを浮かべ、心の底でテゾーロに期待するのだった。
テゾーロ財団とトムズワーカーズが結託して10日。
ついにその時は来た。
「ぬェい!」
ドパァン!!
廃船島にて上がる水しぶき。
それは、この場で完成した船の盛大な進水式だ。
「おお……」
「すごいわ……!」
「たっはっは!! 満足してくれて何よりだわい」
そう、テゾーロ財団が使う船が完成したのだ。
頼んだ船……キャラベル船は、見た目は普通の商船であり海賊が典型的に襲ってそうな雰囲気を醸し出している。
しかし乗るメンバーは油断大敵である。
〝ゴルゴルの実〟の能力者であるテゾーロ財団会長兼賞金稼ぎのテゾーロ、様々な学を学び始めたステラ、そして元ロジャー海賊団のギャバン。商船と侮ると手痛い目に合う連中ばかりだ。
「ほう、一週間で仕上げるたァさすがはトムの旦那だな」
「キャラベルじゃからな、結構作りやすい部類なんじゃ」
たっはっはと笑うトム。
「とりあえず乗っていいですか?」
「ああ、構わんぞ」
トムが用意した
甲板や倉庫等を確認し、その出来栄えに感心する。伝説の船大工は素晴らしいという言葉に尽きるだろう…。
(まァ、あくまで戦闘のための船じゃないからな)
テゾーロは賞金稼ぎだが、自分から攻める戦法よりも「誘き寄せてからホームグラウンドで叩く」戦法の方が向いている。
〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチのように丸太舟で大海を行く海賊団は例外だが、キャラベル船で〝
もっとも、船員が三人だけなのでキャラベル船が都合がいいだけなのだが。
「しかし、大砲とか積まんでもええのか? このご時世、自衛の術くらい得た方がええ」
「それに関してはご心配なく。おれの能力でサポートします」
「能力……そうか、悪魔の実の能力者か! たっはっは、なら心配せんでもええか!!」
テゾーロが大砲などの兵器を積まなかったのは、〝ゴルゴルの実〟で生み出した黄金で船をコーティングし、そう簡単に沈まないようにするだけでなく、自らの意思で船を自在にコントロールして侵入者を確実に仕留めるためだ。
この船は実際は未完成……テゾーロが〝ゴルゴルの実〟で最後の仕上げをすることで完成するのだ。
「じゃあ、後はおれに任せて下さい。明日までには終わらせますんで。」
「そんなに時間がかかるのか? 半日もありゃあ十分じゃろう?」
「おれにも〝拘り〟があるんですよ」
テゾーロの答えに、どこか納得したような笑みを浮かべるトム。
するとトムは「明日を期待しとるぞい」といい、陽気にトムズワーカーズへ戻っていった。
「ステラ、君もトムの元へ行くがいい。おれは大丈夫だ」
「大丈夫なの? もし海賊にでも襲われたら……」
「大丈夫さ、俺は賞金稼ぎだ。多少の危険くらいは承知の上だ」
いつ何時、悪党共に襲われるかわからないご時世だが、危険を顧みずにやらねばならないこともある…テゾーロはそう主張する。
もっとも、別にテゾーロ一人を狙って襲う輩などほとんどいないだろうが……。
「……無茶はしないで……」
「ああ、明日は君をびっくりさせるような素晴らしい出来栄えにするさ!」
テゾーロは満面の笑みで応え、ステラも微笑んで返事をする。
今この時より、ギルド・テゾーロ二度目の徹夜が始まろうとしていた。