ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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やっと更新です。


第13話〝テゾーロとサカズキ〟

 30分後。

 大量の材木や食料を携えて、ギャバンとステラが帰ってきた。

「お~い、テゾーロ! 待たせたなァ!」

「お金余ったから服を買ってきたわ」

「二人共、お疲れ様」

 荷車で交流した物資を運ぶギャバンと買い物袋を携えたステラに、テゾーロは労いの言葉を投げかける。

「でも積むのは待って。ちょっとこの粗大ゴミをリサイクルしなきゃいけないし」

 テゾーロはそう言って、親指で後ろを指差す。

 その先には、ボッコボコにされ黄金の鎖で縛られた海賊共が。

「襲撃されたの……?」

「ただのカカシだった、問題はないしケガもない」

 テゾーロは笑いながら海賊を踏みつける。

 全員死にかけてるが命は落としていないのは、殺すと三割も値が下がるからという経済的な理由だ。

「一応近所の方に海軍に通報させておいたよ。なァに、捕まりはしないさ」

「……じゃあな!」

「待って下さいな」

 逃げようとするギャバンを止めるテゾーロ。

 その場から逃げようとする彼に黒い笑みを浮かべてテゾーロは問う。

「どこへ行くんですかな?」

「おれはまだ手配書破棄されてねェんだよ! このままおれがいたらお前らも海賊扱いされるぞ!!」

「最悪の場合はあんたも突き出すさ、問題ないから安心してください」

「えげつねェぞテゾーロ!?」

 冗談なのか本気なのかわからないテゾーロの毒にツッコミを炸裂させるギャバン。

「と、とにかくおれァ一度ズラかるぜ! 後は頼むぞ!!」

 そう言い、ギャバンは一旦逃走。

 それと共に、すぐ傍まで軍艦が迫っていた。

(さて、一体誰のご登場かな?)

 

 

           *

 

 

「何じゃあ、あの船は……?」

 「正義」を背負い、威風堂々と軍艦に立つ彼は、目の前にある黄金の船に戸惑う。

 〝(あか)(イヌ)〟と呼ばれる海軍本部中将・サカズキ――後の海軍大将であり、新世界編での海軍元帥――は、セント・ポプラ付近の海を荒らす海賊の討伐に来ていた。

 しかしながら、その任務すら一瞬で忘れてしまうほどのインパクトがある船に遭遇したのだ。それが、眼前の船である。

「……怪しいのう」

 海賊旗は掲げていないようだが、その船にはある違和感があった。

 それは、船を護る設備らしきものが一切見当たらないことだ。海賊共がのさばるこの海では、客船ですら大砲を用意している程の危険さに満ちている。それでありながら、大砲すらないあの船はなぜ無傷なのか。

 サカズキは警戒しながら港に降りてその船に近づくと、船の持ち主であろう少年が笑顔で出迎えてきた。

「これはこれは、海軍の方が来てくれるとは思いもしなかったよ。ちょうど私の船を盗もうとしていた不届き者を縛り上げたばかりでね……ぜひ預かってほしいんだ」

「不届き者……じゃと?」

「申し遅れました。私、ウォーターセブン付近の海域で賞金稼ぎ兼運輸業を営み始めたギルド・テゾーロと申します」

 サカズキに対し紳士的に接するテゾーロ。

「お時間あれば、私とお茶でもいかがですか? なァに、決して海賊稼業を営んでる身ではないのでご安心を…「世界の正義」を背負う者に危害など加えませんよ」

 淡々と言葉を紡ぐテゾーロに、サカズキは……。

「わしにそんな時間など無いわい」

「……ハァ……それは残念です」

 テゾーロは盛大に溜め息を吐く。

 本気で海軍中将とお茶を飲む気だったようだ。

「それはともかく、あの不届き者達の一件ですが……」

「お前が全員やったのか?」

「ええ……実は船そのものが(・・・・・・)敵を誘き寄せる罠でしてね。武装もしていない黄金の船があれば大抵の海賊は欲しがり、海へ沈めぬよう船を乗っ取ろうとする。その海賊の心理、正確に言えば「海賊の欲」を利用した合理的な船ですよ――どうですか? 中々のエンターテインメンツでしょう?」

 最後の方はともかく、テゾーロの理屈にサカズキはどこか納得した。

 海賊という「悪」の欲深さを、海兵たるサカズキはよく知っている。自らの欲を満たすために、民間人から金品や食料を略奪し、多くの国や島々を蹂躙し、破壊の限りを尽くし時には人々を犯し殺す。

 その貪欲さに目を付けた少年(テゾーロ)は、黄金の船を造り上げ海上を進む巨大な「仕掛け網」にして海賊を狩りまくるという手段に出たのだ。

「……貴様、能力者か?」

「! 御名答、よくわかりましたね……一言も言っていないのですが?」

「船の黄金でわかるわい」

 サカズキはテゾーロが能力者であるのを見破っていた。

 考えてみればそれが当然と言えるだろう……テゾーロは自己紹介の際に「ウォーターセブン付近」と言っていた。ウォーターセブンは廃れ始めた町であり、黄金が流通するなどあり得ない状況なのだ。ならば、テゾーロは黄金をどうやって手に入れたか?その答えは「能力者」に限られるだろう。

「貴様はどうやって海賊を倒した? 順を追って簡潔に話せ」

「――順を追ってですか……それは至ってシンプルです。向こうから襲いかかって来て、私の能力で一網打尽。それだけですよ?」

テゾーロは至極当然のことを言うかのように口を開く。

「倒した経緯はわかったわい……それよりも貴様、能力は何じゃあ?」

「お察ししているでしょうが、金ですよ。私は〝ゴルゴルの実〟の能力者……黄金を生み出して自在に操ることができるのです」

 聞き慣れない悪魔の実の名前に、目を細めるサカズキ。

 悪魔の実には多くの種類が存在し、食べた実の種類に応じて様々な力を得られる。人智を超えた能力が身に付く「超人(パラミシア)系」、動物への変身能力が身に付く「動物(ゾオン)系」、身体を自然物そのものに変化させ、自在に操れるようになる「自然(ロギア)系」に大きく分けられ、食べた実次第で脅威の力を得ることができる。

 テゾーロの言うゴルゴルの実は恐らく「超人(パラミシア)系」だろう。

「今は賞金稼ぎをしてますが、ある程度の財が得られれば辞めるつもりです」

「……おどれ、一体何を目指しちょるんじゃあ?」

「それはまだお教えするわけにはいきません」

 人差し指を口に当てて不敵な笑みを浮かべるテゾーロ。

 どこか野心的な表情に、サカズキは睨む。

 

「私の……おれの目的を語るには時期尚早。一時代が(・・・・)終わったら、是非ともよろしくお願い致します」

 

「!」

 意味深な言葉を口にするテゾーロに、目を見開くサカズキ。

 するとテゾーロは封筒をサカズキに手渡した。

「これからビジネスが忙しくなりそうですので…賞金首の額はこちらへ送ってください」

 テゾーロはそう言い、同僚であろう女性に声をかけて荷物を運び始める。

「何じゃあ、あのガキは……」

 大抵の人ならたかが商いを始めた賞金稼ぎにすぎないだろうが、多くの修羅場をくぐり抜けたサカズキは何か大きな力を感じた。

 それは世界を脅かすモノなのか悪の根絶やしに貢献できるモノなのかはわからないが、アレを野放しにするのはマズイのではないか……サカズキはそう感じたのだ。

「……まァいい……絶対的正義に盾突くんなら消すまでだわい」

 サカズキはそう呟き、部下達に捕らわれた海賊達を護送するよう指示する。

 そしてそれに対しテゾーロは……。

(おっかねェー!! ヤクザかよ!? 若い頃から極道一筋なのかサカズキ中将!? 立木ボイスじゃないけどヤバすぎだろ!!)

 人知れずサカズキの威圧感に、櫻井ボイスで内心ビビっていたのだった。




「ゴルゴルの実の能力は触れた黄金を操るだけで生み出す事は出来ない」という意見が感想でありました。
ですが、某百科事典サイトでは「金を生み出し自在に操る事が出来る」と書いてありました。
どっちが本当なんでしょうか…?個人的には「金を生み出し自在に操る事が出来る」だと思い執筆しています。

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