ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第14話〝排除か利用か〟

 セント・ポプラで物資を爆買いしたテゾーロは、途中で中将時代からヤの付く自由業であるサカズキ中将と遭遇するというハプニングに遭いつつもウォーターセブンへと帰港した。

 テゾーロ財団は、港についてから早速街の市場で物資の売買を始めている。

「こりゃあいい丸太だ!!」

「こんな材木見たことない!!」

「食材もかなり品質が良さそうだ!!」

「我がウォーターセブンに、ついに文明の光が……!!」

(いくら何でもオーバーリアクションでは……?)

 顔を若干引きつらせながらも、テゾーロは笑みを作る。それ程までに廃れていたのだろうか、ウォーターセブンは。

 ……さて、せっかくなのでウォーターセブンの市場に売り捌いてみた品物を一部紹介しよう。

 まずは「ヤルキマン・マングローブの一部」。言わずと知れたシャボンディ諸島産のヤルキマン・マングローブを角材にしたモノだ。実はヤルキマン・マングローブはたまに市場に出回ることがあり、おれが――金にモノを言わせて――買い占めた材木だ。ヤルキマン・マングローブは根っこから特殊な天然樹脂を分泌し、呼吸する時に樹脂が空気で膨らみ、それがシャボンとなりコーティングに使われる。ヤルキマン・マングローブのシャボンは深海1万メートルの水圧にも耐える代物で、それの成分が残ったまま材木として売れば航海者にとっては喉から手が出るほど欲しいだろう。

 次に「ロング・エレファントホンマグロ」。象のような長い鼻と大きいヒレを持つあのエレファントホンマグロの仲間で、〝偉大なる航路(グランドライン)〟の気候に適応するために巨大化したらしい。大きい分脂や肉質が良く、地元の漁師に訊いてみたら「さっぱりしてる」とのこと。

 そしてTシャツ。これがこれで問題だった。漢字二文字の単語が書いてあるシンプルなデザインなのだが……「破戒」だとか「極刑」とか物騒でとんでもない二文字ばかり。

(……これはアレか? 幼少期のエースが着てた謎のブランドか? 大海賊時代以前からあったのか!? しかも子供受けが半端じゃないぞ!! 何てモノを買って来たんだ、ステラよ!!)

「このTシャツ、やけに売れてるなステラ……」

「セント・ポプラでも大人気のブランドなの。シンプルだからとっても安いの」

「いや、それ答えになっているのかい?」

「答えよ♪」

 ステラのゴリ押しが想像以上で、テゾーロは何も言えなくなる。

(しかし、これは想定外だな。数分もあれば品切れか……)

 余程物資が足りなかったのか、数分で全ての商品が完売しそうな勢いだ。

 嬉しいと言えば嬉しいが、多少は余るのではと高を括っていたからか悩むテゾーロ。

(あの船だけじゃあダメだ。 もっと船が必要なのかもしれない)

 ここまで物資が不足してるとなると、思い切って造船会社買収するという手段もアリに思える。しかし首を横にブンブンと振り、まだやるべきではないと必死に自分の心に言い聞かせる。

 すると――

「……君がギルド・テゾーロ君かね?」

「? ええ、私に何か用で?」

 ふと、テゾーロに尋ねて来る壮年の男性が。

 黒スーツを着こなすその姿は、どうやら役人のようだ。

「私はこのウォーターセブンの市長だ。君の評判は聞いているよ……まず、このウォーターセブンに豊かな物資をもたらしたことには感謝する」

 市長さんはおれに頭を下げる。

(うわァ……いつの間にかすごい有名人になったモンだね、おれ)

「そこで折り入って話がある。今後のウォーターセブンの発展の為に、君達「テゾーロ財団」の力を借りたい」

「……新たなビジネスチャンスって解釈してもよろしいですか?」

 その言葉に、市長は静かに首を縦に振った。

 

 

           *

 

 

 一方、ここは世界中の正義の戦力の中枢たる「海軍本部」が置かれたマリンフォード。

 本部要塞のある一室では、海軍本部大将〝仏のセンゴク〟が中将サカズキからテゾーロの話を聞いていた。

 センゴクは〝海軍の英雄〟とも呼ばれる〝ゲンコツのガープ〟ことモンキー・D・ガープや海軍のご意見番たる〝大参謀〟つる、今は軍の教官を務める伝説の元海軍大将〝黒腕のゼファー〟らと共に大海の秩序の維持に貢献してきた歴戦の将だ。

「例の賞金稼ぎだな? クザンから報告書を貰っている…黄金を操ると聞くが、本当か?」

「本人が話しちょりましたわ。クザンの言う通りのようじゃけェ。ついでに奴ァ商いにも目を向けております」

「商い、か……」

「……わしは摘むべきじゃと思うちょります、センゴクさん。あのガキの能力は危険じゃけェ。ただの賞金稼ぎじゃありゃあせん、野放しにすればわしらの……正義の脅威となる」

「フム……」

 センゴクは思考に浸る。

 黄金を操るということは、武力的な一面よりも経済的・権力的な一面の方が大きな影響力をもたらす。悪魔の実の能力で生み出すとはいえ、クザンの報告書からはどうやら黄金の質や成分そのものは自然の黄金と全く同じらしく、現にそれで取引している。

 万が一テゾーロが海賊として名乗りを上げたら、その「神の力」で全世界のパワーバランスを崩しかねず、それこそこの世界の頂点ともいえる世界貴族〝天竜人〟すら引きずり下ろしかねない。そういう意味合いではサカズキの提言は非情だが一理ある。

 しかし、テゾーロを利用すると考えると、サカズキの提言は実行すれば甚大な損失となる。何だかんだ言って、世の中は金で動く。金の力は権力者すら懐柔できる程の強大さなのだ。彼の能力を利用し経済を活性化させたり海軍の軍事費に還元させるのもいいだろう。

 いずれにしろ、テゾーロの能力は世界政府にとって有益なモノになるのは間違いない。無論、政府に牙を向けるような行動が目立ったらそれこそサカズキの提言通り排除するまでだが、今は(・・)様子見といったところだろう。

「――わかった。その賞金稼ぎの一件は私が直々に五老星に掛け合おう。許可が下り次第彼と面会……交渉して我々に力を貸させる」

 センゴクはそう決断し、サカズキに「今は殺すな」と一言告げる。

「……センゴクさん、奴はわしら海軍に大人しく従いますかのう?」

「従う」

 センゴクはサカズキの質問に即答する。

「賞金稼ぎだけでなく商人の顔も持つならば、政府機関とパイプは繋ぎたがるに決まっている。奴の最終的な目標はわからんが、そんな男と関係を持つことは決して悪い話ではあるまい」

 センゴクはそう言い、好物のおかきを頬張り始めるのだった。


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