ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
何年ぶりだろうか……?
シュガー復活という最悪の展開に、嫌な汗を流すサイ。
そんな彼を他所に、キャベンディッシュは立ちふさがるブリキの兵隊達を見やる。
「子供のオモチャにしては少々大きすぎるが…それ以上に趣味が悪い!! 一気に突っ切るぞ、ファルル!!」
「待ってください、数が増えてる! 大本を絶たないと体力を無駄に消費してしまいますよ!」
サイは慌ててキャベンディッシュを制止するが……。
「よし!! 全部ブッ倒しゃいいんだな?」
「ちょっと何言ってるんですか!?」
ブリキの兵隊は視界に入っているものだけでも十体以上。
シュガーが復活した以上、無尽蔵に増え続けるかもしれないというのに、ルフィはわざわざ全部倒せばいいと言い出した。それに便乗するようにキャベンディッシュも「やはり殲滅する以外手段はない」と言い始めている。
彼らの頭の中にあるのは敵を倒す事だけなのか……。
「ああー……もう、わかりました!! こんな所で時間を食ってるヒマはない、一気に片をつけましょう!!」
「最初っからそうすりゃいいじゃんか、お前も」
「〝勝ち方〟を考えてるんです!!! 出たとこ勝負でどうにかなったらドンキホーテファミリーなんか秒で壊滅できますよ!!!」
ルフィ達に散々振り回されて来たせいか、サイの語気も少し荒くなっている。
それから、キャベンディッシュに進言した。
「人形の相手なら私が全部引き受けます。あなた達は先に!!」
「なっ!?」
「し、しかしサイ殿!!」
「キュロスさん、あなたにもあなたの戦いがあるのでしょう? 戦力は多く、そして温存させるべきだ。腐ってもサイファーポール…この程度の相手、私一人で充分です」
先程の柔和な雰囲気が消え、殺し屋のように冷徹な目になったサイ。
彼は拳に覇気を纏わせ、武装硬化させて身構えた。
「あなた達は目的を果たす事だけを――ドフラミンゴを倒す事だけを考えていればいいんです」
「……感謝する!!」
キャベンディッシュは即座にファルルを走らせ、ルフィとキュロスを連れてブリキの兵隊の間を突破した。
そんな彼らに襲い掛かるブリキの兵隊達だったが、サイは武装硬化させた足による一振りで、人形を真っ二つに斬り裂いてしまった。六式の一つである〝
彼はそのまま、ブリキの兵隊達の間を駆け抜けると、武装硬化した指による〝指銃〟で、一体ずつ確実に破壊していったが……。
「……「血が出るなら殺せる」と昔教わりましたが、本当にその通りですね」
破壊された割り人形が元通りになる光景を前に、サイはそう呟いた。
やはり能力者であるシュガーの意識を奪うか息の根を止めないと、能力は解除できないらしい。
(肝心のシュガーさえ見つけ出せれば……)
そこまで考えを巡らせた時、突然ブリキの兵隊達が動き出し、一斉にサイへ襲い掛かった。
彼は咄嗟に飛び上がり、ブリキ達を飛び越えて距離を取ると、そのまま翻弄するように駆けて行った。直後、まるでその後を追うかのように、ブリキの兵隊達が動き出す。
サイは器用に攻撃を捌きながら、武装硬化させた足の斬撃で薙ぎ払っていき……やがてブリキ達が一塊になるよう誘導した。
(このまま決着をつける!!)
彼は武装硬化した四肢で地面を踏みしめると、そのまま大きく飛び上がり……空中で体を大きく捻りながら回転し、遠心力を利用して巨大な斬撃を放った。
「〝嵐脚・
サイが放った嵐脚はブリキの兵隊達を巻き込み、その全てを破壊した。
「よし……これで――」
彼は着地して一息つくと、背後から気配を感じて振り返る。
するとそこには、新手の頭割り人形の姿が。
「っ! 面倒ですね、本当に…」
頭割り人形は腕を振り上げると、そのままサイを殴りつけた。
しかし彼は武装硬化させた腕でそれを受け止め、至近距離の嵐脚で頭割り人形の腕を破壊する。そしてそのまま頭割り人形の胴体に連続蹴りを叩き込み……その体をバラバラにした。
だが、それでもなお、頭割り人形達は次々と現れてくる。
「ハァ……全く、キリがありませんね…」
これは長丁場になりそうだと、サイは溜め息を吐いたのだった。
その頃、ウソップ達はというと。
「あれは…シュガーが目覚めてるわ!!」
「え~~~~~~~っ!!? おい!! 何言ってんだ!! シュガーならおれ様の必殺顔面ビックリ箱で完全に気絶して2・3日は意識戻らねェ勢いで…」
その言葉にウソップは驚きを隠せず、ヴィオラも慌てふためいた。
なぜなら、ルフィ達は彼女の存在も能力も知らないからだ。
シュガーのホビホビの能力は、おもちゃにされた者はシュガーの契約に逆らえない上、世界中のあらゆる人間の記憶から改竄される形で抹消される。恋人や家族、親友、仲間のような深い関係であっても、彼ら彼女らは容赦なく記憶から抹消され、それを疑問に思うことができなくなるのだ。その為、シュガーは是が非でも仕留めなければならない。
「こうなったらやるしかない!! おれがここから狙撃する!!!」
「とはいえウソップ殿、この距離を狙撃とは不可能でござる!! 王宮など拙者の肉眼ではやっと確認できる程度、しかも敵は壁の向こう!! 見えもせぬ!!」
ウソップは特大パチンコ「黒カブト」を準備するが、それを錦えもんが制止した。
確かにウソップの武器で狙撃するしか方法がない。しかし標的は直線距離で何キロもはるか遠く。しかも壁の向こうにいる。通常の狙撃など全く意味を成さない。
だが、失敗すればシュガーも警戒して二度とチャンスは生まれない。どんな条件だろうと誰かがやらねばならないし、やるしかないのだ。
そして対するシュガーはというと……。
「うわあ~~~~~~~~っ!!!」
「え?」
「は…鼻の長い奴は私のそばに来るなァァァァ!!!」
完全にウソップの事がトラウマになっていた。
「鼻の長い奴はみんな死んで!!!」
「いや、シュガー様のお腹が空いてないかと…これを…」
「うわあ~~~~~~~~っ!!!」
「ただのソーセージですよ?」
ファミリーの下っ端達は、半狂乱なシュガーに首を傾げるばかり。
「長い物持ってくるな!! おやつならグレープでしょ!? バカなの!? あんたも頭割り人形になって戦ってきなさい!!!」
シュガーはそう言うと、その場にいた下っ端達に能力を行使。
全員を頭割り人形に変身させ、敵の迎撃に向かわせた。
「若様に申し訳ないわ、この国中の全員もう一度オモチャにしてあげる!!! まずは憎い憎い長鼻とその仲間、麦わらの一味!!!」
最も恐ろしい悪魔の実の能力者が、ルフィ達に牙を剥こうとしていた。
*
一方その頃、サボはイッショウと一騎打ちを繰り広げていた。
「火拳!!!」
火力を高めて巨大化させた炎の拳を放つサボ。
イッショウは仕込み杖――最上大業物の一振りである〝やくざ火線〟――を構えて重力操作。軌道を逸らし、頭上の鳥カゴに当てた。
「お前、一体何のつもりだ?海軍大将の力はこんなもんじゃねェハズだ。茶番はやめろ」
「おかしな人だ。あんたの目的は海軍を止める事でしょう?」
「いつまでシラを切り通すつもりだ?」
「シラ? ハハッ…何の事だか。あっしはご覧の通り…少し手加減してもらわねェと」
イッショウは閉じた双眸に手を当てはぐらかすと、サボは「おれは〝差別〟はしねェんだ」と返した。
「
イッショウは仕込み杖に重力を掛け、サボ目掛けて大きく振るった。
「〝
メキィッ!!
町一帯の建造物がまとめて破壊される程の重力に引き込まれ、サボは体を炎に変化させることで
(こいつ、何企んでる!?)
海軍大将の意図が読めないまま、攻撃を繰り出す。
それも容易く受け止められたので距離を置くと、イッショウが意味深な発言をした。
「一が出るか八が出るか……あっしは、この首一つ賭ける覚悟だ」
「!?」
「だが…転がすサイコロを失っちゃあ、ツボ振る前からお釈迦でござんす」
そう言うや否や、イッショウは仕込み杖を納刀した。
まさかの居合い抜きかと思ったが、鞘から抜く様子はない。何と、本気で戦うのをやめたようだ。
「同じ穴のムジナなんだ。あっしら海軍もドフラミンゴも筋違いだ。海軍はこの国じゃヒーローにはなれねェんですよ……
「〝新世界の怪物〟もか……!? そんな考え、もしバレたら…」
「いえ、あっしは
「!」
イッショウの言葉に、サボは目を丸くした。
彼が行おうとしているのは、間違いなく海軍や世界政府の不利益になる行動。海兵、ひいては政府側の人間としてはフリーダムな
しかし、その意図に黄金帝も賭けている。それが民衆の為ならば、サボとしても何も言わない。
「フッ…まるで博打だな」
「へへ……運はいい方で。それに賭け事ってのはそんなもんでござんす。――さァて、お開きにしましょうや。この場はお互い「痛み分け」って事で……」
イッショウは仕込み杖を白杖のように突きながら、その場を後にした。
ドレスローザ編は今年中に終わらせるよう努力します。