ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
あと3話ぐらいで終わりにします。
戦況がルフィ達が優勢になる中、王宮では。
「ん? 何だそこか〝麦わら〟!!」
服装を変え――ただし覆面はそのままで――戦地を見下ろすバージェス。
もうドレスローザに長居するつもりはないのか、風呂敷を首に巻いて横で真結びにしている。
しかしその眼光は鋭く、未だ獲物を狙っているように思える。
(黒ひげ海賊団一番船船長ジーザス・バージェス……コロシアムでの戦いのあと姿が見えないと思ったら…こんな所に!!)
その様子を瓦礫の陰に隠れて見るコアラは、妙な胸騒ぎがしてならなかった。
というのも、かの伝説〝白ひげ〟の後釜に座った〝黒ひげ〟は、手段は不明だが悪魔の実の能力者を殺害して能力を奪い取る「能力者狩り」を行っている。当然、強力な悪魔の実を狙われるのであり、ルフィやサボ、テゾーロも対象となるのだ。
(……まさかとは思うけど…)
「追うか、待つか……どっちにしろ逃がしはしねェ!! 貰うもんは確実に貰う!! ゴルゴルの実も悪くねェしな……!! ウィ~~ッハッハッハ!!」
*
その頃、ゴールデンテゾーロの能力を解除したテゾーロは、中心街へと向かっていた。
このドレスローザ国防戦も、いよいよ大詰め。見聞色の覇気でトレーボルが倒された事を感知した為、残る敵はドフラミンゴ一人だ。
しかし、忘れてはならない
「どこに行った、バージェス!? まだ王の台地か…!?」
テゾーロが探していた敵は、バージェスだった。
彼もまた、殺害した相手から悪魔の実の能力を奪う手段を知っている為、早めに手を打たねばならない。原作ではサボが阻止してくれたが、自分が介入した世界も同じように行くとは限らない。
テゾーロが、孤軍で四皇の幹部を相手取らねばならないのかもしれないのだ。
(どの道ルフィを狙うはず……奴は絵に描いたような乱暴者だが、ただの筋肉バカじゃない。必ず海軍の目を掻い潜って――)
ドゴォン!!
「――うをっ!?」
突如、轟音と共に何かが降ってきた。
テゾーロは思わずギョッとしたが、土煙が晴れて見えてきた姿を目にしてさらに驚く事となった。
3メートル超えの長身、短く刈り込んだ金髪にピアス、ピンク色のファーコートが特徴的なサングラス男――
「ドフラミンゴ…!? って事は、まさか――」
テゾーロは空を見上げると、巨大な丸い物体が宙を駆けて急接近してきた。
いや、あれは丸い物体ではない。明らかな人影だ。
蒸気のようなものを纏い、肩や背中に入れ墨を思わせる形の武装硬化を彩った、金剛力士を思わせる巨躯。それは、あの男の変身・強化形態であった。
「ルフィか!!」
刹那、ルフィはテゾーロの立つ地面目がけて着地した。
ゴインゴインと小刻みに跳ねているのは、あまりにも強い弾力のせいだろう。
「おっ、テゾーロ!!」
「フム……どうやら加勢は不要のようだな」
彼の真意は知らずとも、一対一の勝負に水を差すつもりはないと解釈したルフィは、「あとは任せろ!!」とテゾーロに一声かけ、ドフラミンゴと向かい合った。
「行くぞ!! 〝ゴムゴムの〟ォ…」
「っ!! 〝
ルフィは弾力を利用した高速移動で距離を詰める。
ドフラミンゴはどうにか起き上がり、手の平から発生させた赤く太い糸を繰り出すが、紙一重で躱されてしまう。
そして気づいた時には、両足を圧縮させてのドロップキックを喰らっていた。
「〝
ドンッ! ボゴォン!!
ドフラミンゴは吹っ飛び、ルフィはゴムの伸縮性を利用して宙を蹴りながら追撃。
テゾーロは初めて目にするルフィの能力に、半ば気圧される形で目を見張った。
「これが…〝ギア
武装色で皮膚を固めて、張力を何倍もの力に引き上げる〝ギア
覇気とゴムの融合という強力な切り札だが、当然相当の
「うわっ!! 何で地面から糸が!? お前この町に何をしたんだ!?」
「いいかヒヨッ子、悪魔の実の能力にはまだ覚醒という上のステージがあるんだ!!!」
悪魔の実の能力は、稀に覚醒して己以外にも影響を与え始める。
色んな物が糸になるそのチカラは、
「お前はおれに近付く事もできない。お前の覇気が尽きた時が、おれがトドメを刺す時だ…!! フッフッフ」
覚醒したイトイトの能力で、建物や地面を糸に変えてルフィを翻弄する。
先端が武装硬化しているのもあり、真面に食らえば一溜りもない。
どう攻撃しようかルフィが回避しながら考えていると――
《――皆、聞いてくれ!! 私は元ドレスローザ国王、リク・ドルド3世》
「ん!?」
「あァ…?」
突如、国中の電伝虫からリク王の声が響いた。
《この国は今、現国王ドフラミンゴの始めたゲームによって逃げられない巨大な鳥カゴの中にある。更にその凶暴な鳥カゴは、町を切り刻み収縮を続けている。突如降りかかった現実に感情がついていけぬまま、ただ命を守っている現状だと思う…だがこれは夢などではない!! そして今日起きた悲劇でもない!!》
その声に、戦闘中のルフィとドフラミンゴだけでなく、あらゆる勢力が耳を傾けていた。
《私達は10年間ずっと海賊の支配するドレスローザという名の鳥カゴの中にいたんだ!! 10年間ずっと操られるままに生きる人形だった…これが現実なのだ!! だが、それももう終わる!!》
リク王の魂の演説に、熱が入る。
《誰も敵わぬと思っていたドンキホーテファミリーは、この国に居合わせた屈強な戦士達の手によって今や壊滅寸前!! ファミリーの幹部達は既に全滅!! 撃つべき敵はもはや現ドレスローザ国王ドフラミンゴを残すのみ!!! 相対するは海賊〝麦わらのルフィ〟……きっと彼こそが鳥カゴを破壊してくれる男!!! そしてかのギルド・テゾーロもまた、ドレスローザの為に我がリク王家に手を差し伸べてくれた!!!》
「リク王…!!」
《私は元国王でありながら、見知らぬ海賊や来賓に国の運命を託すしかない己の無力を痛感している。だが、こう叫ばずにはいられない!!》
リク王は涙声で叫んだ。
《勝つも負けるも、あとたった数十分!!! それまでは何としても逃げ延びてくれ!!! この縮みゆく国に誰一人押し潰される事なく、走り続けてくれ!!! 希望はあるのだ!!! どうか諦めないでくれ!!!》
そうして電伝虫の配信は切れた。
リク王の必死の叫びが届いていたルフィは、今一度気合を入れ直すかのように猛進。糸の嵐を回避しながら、ドフラミンゴに肉薄する。
対するドフラミンゴは、〝
「これが最後だ!! 〝ゴムゴムの〟ォ…」
「っ!!」
「〝
ズドォン!!
〝
その破壊力に、民衆は勿論、海兵やコロシアムの戦士達も驚愕するが……肝心の鳥カゴは消えなかった。
それはつまり、ドフラミンゴは完全に倒れていないという事に他ならない。
「くそォ…もう一発!!」
再び〝ゴムゴムの
同時にルフィは口から煙を吐き、ロケット風船みたいに飛んで地面に落ちた。
〝
「ハァ…ハァ…」
「ルフィ!!」
そこへ、たまたま近かったテゾーロが駆けつけ、完全に息が上がったルフィを支えた。
「よくやった、流石だな…10分ぐらいあれば大丈夫か?」
「あァ…何でわかるんだ…?」
「……おれも見聞色の覇気を使える。何となくだがわかる」
「そっか……覇気さえ戻れば…あと一撃で必ずカタをつけられる…!!」
弱弱しく笑うルフィに、テゾーロは「それまでは任せろ」と告げて振り向く。
すると、王の台地から降り立ったドフラミンゴが、邪悪な笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「フッフッフ…!! とうとう本命のお出ましだな。〝麦わら〟とぶつけさせ、おれを消耗してトドメを刺すつもりだったようだが…残念だったな」
「本命? バカ言え、ルフィが最初から最後まで顔役さ」
テゾーロはそう言うと、拳を地面に減り込ませた。
「〝
「っ!?」
テゾーロの覚醒したゴルゴルの能力により、金箔でも貼られたかのように地面が黄金に染まり、イトイトの影響をも浸食した。
かつてクロコダイルとの戦いで使用した、彼の事実上の切り札だ。
「さァ、ショウタイムだ」
減り込ませた拳を抜き、無造作に手を振ると、黄金となった地面が盛り上がり巨大な触手が現れた。
それを見たドフラミンゴは「猿真似が…!!」と苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、〝
超硬度の黄金は、素で凄まじい頑丈さを有する。ましてや覇気を纏えば、その強度・硬度は言語に絶する。
「ドフラミンゴ、一つ言っておく。おれは、あくまでもこの試合のスポンサーだよ」
「…………フフ…フッフッフ!! お前みたいなスポンサーがいるか!!」
拳を握り締め、ファイティングポーズを取って覇気を纏うテゾーロ。
ドフラミンゴはサングラスの位置を整えながら、うねる糸を構える。
〝天夜叉〟と〝黄金帝〟――国王同士による前代未聞の一騎打ちが始まろうとしていた。
今更なんですけど、本作が連載開始したのって2017年なんですよね。
7年もよく続けられるなァ……。