ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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ついに始まった世界会議編。
テゾーロにとって、この二人はやはり野放しにしたくないようです。


第188話〝フリーにさせない〟

 ドレスローザの動乱が終わり、グラン・テゾーロに帰還したテゾーロ一行。

 それが終われば、待っているのはあの歴史的出来事。

「テゾーロ、準備できたわよ」

「よし、出航だ!! 目的地はニューマリンフォード付近の〝赤い港(レッドポート)〟だ!!」

 テゾーロの号令に、船乗り達は一斉に動き出し、船がグラン・テゾーロを発つ。

 彼にとってこの旅が、一番の人生の大勝負となる。なぜなら、聖地マリージョアで4年に一度行われる大会議〝世界会議(レヴェリー)〟があるからだ。

 世界政府の170にも及ぶ加盟国の内、毎回代表の50か国が出席している〝世界会議(レヴェリー)〟は、会議が始まる前には50か国の王族が1か所に集まるためちょっとしたお祭り騒ぎになる。そして1週間という長い時間をかけて行われる会議の終了後には、常に世間を驚愕させるニュースが飛び交う事が多い。

 今回の大会議では、テゾーロは事前にある男から話を持ち掛けられており……。

「……ついにこの時が来やしたね」

「イッショウ、護衛を担当してくれる事に感謝するよ。あんな大喧嘩をした後で申し訳ない」

「礼には及びやせん、仕事ですから」

 甲板で黄金のイスに腰かけるテゾーロの隣で、イッショウがうどんを啜っていた。

 暢気に食事をしているイッショウだが、先日やはりと言うべきか、海軍の面子を重んじる元帥サカズキと極道の会話だと感じざるを得ない舌戦を繰り広げた。

 売り言葉に買い言葉状態になった末、イッショウは〝麦わらのルフィ〟と〝死の外科医〟トラファルガー・ローの捕縛を遂行するまで全海軍基地の敷居を跨がせないと訓告されたが……。

「何か理論武装はしてるのか? 無いなら知恵を貸すぞ」

「心配には及びやせん、テゾーロの旦那。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

(思いっきり屁理屈だ……)

 うどんを啜りながらサラリと言い切るイッショウに、テゾーロは苦笑いし、彼の部下達は白い目でイッショウを見た。

 屁理屈も理屈だが、これを聞いたサカズキはさらに激怒しそうではある。

「……なら心配ないな」

「それよりもテゾーロの旦那……例の件ですが」

「王下七武海制度の完全撤廃か? あれに関しては、少し囲っておきたい人間がいるから慎重に進めよう」

「……海賊を庇う気ですかい?」

 テゾーロの言い回しに、イッショウは眉間にしわを寄せる。

 しかし、それには然るべき理由があった。

「何も全員庇う気はないさ……だが〝鷹の目〟と〝海賊女帝〟はフリーにさせるのはよくない」

「……一体どういう事ですかい?」

 テゾーロは、イッショウの疑問に答えた。

「まずミホークだが、奴の実力は四皇に匹敵する。そいつが世界政府と海軍に本気で牙を剥いたら、新兵器を開発したとしても海軍も相当な被害を受けてしまう」

「……」

「そしてハンコックはメロメロの実の能力よりも人間関係が厄介だ。何せあの〝冥王〟レイリーと縁があるんだからな」

「何と…!?」

 事情を知ったイッショウは驚きを隠せなかった。

 どれ程老いても、海賊王の右腕は今も海軍大将と張り合える強さを有している。もし拿捕に向かって長期戦となれば、レイリーがハンコックの応援に駆けつけてしまうのかもしれない。

 ゆえにこの二人に関しては、テゾーロが担当して民衆に危害を加えないように手を打つというのだ。

「幸い、あの二人は七武海の中でもマシな方だ。自分から世界をどうこうしようというタイプじゃない。ミホークに至っては平穏な暮らしを望む節もあるからな」

「……他の海賊達は?」

「まァ革命軍を野放し状態にするのもあれだろうから、そこは上手くやらないとな」

 そう、海軍が相手をしなければならないのは、海賊だけではない。

 世界政府を倒そうとする革命軍の台頭により、世界各地で反乱が相次いでおり、その鎮圧も海軍の職務だ。

 四皇に睨みを利かせ、世界的に影響を与える反政府組織を相手取り、さらに海に解き放たれた王下七武海という大海賊を拿捕しなければならない……海軍の重荷は、以前の海とは比べ物にならなくなっている。

 そもそも海軍本部や四皇と並んで世界の均衡を保っていたのだから、弱い訳がない。伊達や酔狂で大海賊時代の抑止力を担ってたわけではないのだ。

「ハンコックとミホークに関しては、こちらで引き受けよう。大事なのは特権を失った元七武海達のカウンターをどうするかだ。これで報復で海兵に懸賞金を懸けたなんてマネされたら、それこそ社会秩序を根底から覆しかねないし、海軍の士気にもかかわる」

 テゾーロの言い分に、イッショウは「それは盲点でござんした……」と頭を掻いた。

「まァおれの理想上、お前の意見には基本的に賛成だ。打てる手は打っておく」

「寛大なお心に感謝いたしやす」

 うどんを食べ終えたイッショウは、テゾーロに頭を下げた。

 やはり政治的な駆け引きとなれば、彼の右に出る者はいないだろう。

(あとはリク王とコブラ王だが……あの二人なら応じるだろうな、()()()()()

 テゾーロは愛妻(ステラ)が淹れてくれた緑茶を啜りながら、これからの展望を見据えたのだった。

 

 

           *

 

 

 その頃、〝凪の帯(カームベルト)〟の女ヶ島。

 女系戦闘部族「九蛇」を統べる現皇帝ボア・ハンコックは、テゾーロからの書状を受け取っていた。

「王下七武海制度を撤廃し、アマゾン・リリーを政府公認の「中立国」としたい…じゃと…!?」

 〝新世界の怪物〟からの手紙に、ボア・ハンコックに驚きを隠せなかった。

 現役の王下七武海に、制度を撤廃させて特権を剥奪すると事前に通達するなど、前代未聞だ。

 しかもその王下七武海制度を撤廃する代わりに、アマゾン・リリーを世界政府にも革命軍にも海賊にも与しない「中立国」としたいという提案まで持ち掛けてきたのだ。

「あの男は一体何を考えているのじゃ……!?」

 ハンコックはテゾーロの狙いが読めなかったが、彼女はこの申し出に悩んだ。

 王下七武海制度を撤廃すれば、海軍は総力で女ヶ島を侵攻する。自身の強さを疑うつもりなど微塵も無いが、国力と海軍の兵力との差を考えれば厳しい戦いとなる。仮に勝ったとしても、世界政府が諦めてくれる保証はできない。

 だがここでテゾーロの話に乗れば、世界政府が自国を侵略するという事態は回避できる。ただし中立を名乗る以上、たとえ四皇が攻めてきても世界政府は一切手助けしないという事でもあり、ある種の自己責任みたいな状況に置かれる。

 果たして、どちらがより国益に叶うか……。

「姉様、テゾーロからの手紙には何と?」

 難しい顔をする彼女の下に、妹のサンダーソニアとマリーゴールドがやって来た。

 柄にもなく悩む姉に、一抹の不安を覚える。

「……テゾーロが、王下七武海制度を撤廃する代わりに我がアマゾン・リリーを中立国にしたいと申し出ておる」

「えっ!?」

「そ、それは……!!」

 まさかの内容に、妹達も驚く。

 一連のやり取りを眺めていたグロリオーサも、黄金帝が世界の均衡を壊そうとしていると知って絶句していた。

「確かに中立国となれば、中枢は我が島を攻める口実が無くなるわ……」

「しかし誰の手も差し伸べてくれず、いかなる国難に見舞われても助けがない……」

「そうじゃ……じゃが少なくとも、テゾーロは本気じゃ。中立国ならそれを回避できる」

 テゾーロの提案に乗れば、世界政府も海軍もアマゾン・リリーに手が出せなくなる。

 しかしそれは同時に、何が起きても首を突っ込まないという事でもあり、たとえ四皇が攻めてきても素知らぬふりを貫く。他の海賊に侵略・略奪されても自己責任というわけだ。

「……妾は誰にも支配されとうない。じゃが……」

「「姉様……」」

 

 

 九蛇の蛇姫が悩んでいる中、クライガナ島シッケアール王国跡地では。

「……おれを囲うというのか、ギルド・テゾーロ」

 古城の一室でワインを飲むミホークもまた、ハンコックと同様にテゾーロから手紙を受け取っていた。

 その内容は、自身をグラン・テゾーロに移住してほしいという嘆願書だった。

(奴が本気で七武海を解体するとなれば、確かに拠点を移さねばならない…)

 ミホークは思案する。

 七武海でなくなれば再び追われる立場となる。平穏な暮らしを望む自身としては、テゾーロの嘆願は承諾するに値する。海に解き放たれたミホークを暴れさせたくないという魂胆もあるだろうが、年がら年中襲ってくる無益な戦いは正直面倒なので、黄金帝の権力の傘の下に入るのも悪くない。

 そうとなれば、今の内に向かう準備をしなければならない。運命の大会議の議決結果は約一週間後……それまでに海軍に悟られないよう、グラン・テゾーロへ向かわねばならない。

(……あのゴースト娘にも話はしておくか)

 ミホークは二年前から住みつく居候・ペローナを思い出す。

 奇妙な同居生活を送るハメになったとはいえ、弟子の修行でも一役買ってくれた為、邪険に扱うわけにはいかない。

「……善は急げということか」

 七武海が近い内に無くなる旨をペローナに話そうと、ミホークは腰を上げる。

 

 世界一の美女と世界最強の剣士は、怪物テゾーロの政治力を利用する事にしたのだった。




次回は聖地マリージョア到着を予定しております。
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