ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
ニューマリンフォード付近、〝
〝
防寒着に身を包んだロシュワン王国国王のビール6世と、その王女姉妹の通称「マトリョー姫」。
赤ワインが好物である、タジン王国のモロロン女王。
ソンブレロを被った、シシャノ王国のタコス国王。
歩みは遅いが決して引き返さないことが信条の、バリウッド王国のハン・バーガー国王。
四年に一度の大会議というだけあって、各国の首脳・重要人物に違いない人間が溢れている。
その中でも特大のニュースは、二つの国の参加だ。
「グラン・テゾーロのギルド・テゾーロ王だ!!」
「テゾーロさ~ん!!」
「ステラ様~!!」
まずは、
一代で天竜人に匹敵する莫大な富と権力を有し、世界の均衡にも影響を与えるとされる〝黄金帝〟ギルド・テゾーロが国王を務め、その財力は世界経済を容易く変えてしまうとされ、彼が関与したことで目覚ましい復興を遂げた国も多い。
そんな世界的にも類を見ない立志伝中の人を乗せた艦船オーロ・コンメルチャンテ号が寄港し、聴衆や各種メディアは大賑わい。おそらく、世界で最も注目されている人間の一人といっていいだろう。
「まさか王妃になるとは思わなかったわ」
「これだからこの世は面白いというものさ。――大将藤虎! 護衛感謝する」
「ヘヘ……じゃあ旦那、例の件は頼みやすよ」
杖を突きながら、藤虎は何処へともなく歩いて行ってしまう。
すると、港の方から黄色い歓声が上がった。
「海の大騎士ネプチューン王だ~!!」
「しらほし姫~~♡」
「オトヒメ様~!!」
聴衆の反応に、テゾーロ一行は笑みを浮かべて見やった。
そう、〝
リュウグウ王国が世界政府に加盟したのは今から200年前だが、中枢の差別やフィッシャー・タイガーが起こした聖地マリージョア襲撃事件の影響などのゴタゴタが相次いだ為、実は今回の会議への参加はたった2度目なのである。
「これはこれは、お久しぶりですね御二方」
「テゾーロ!! 相変わらず派手じゃもん」
「あの時は、本当にありがとうございました」
「こちらこそ」
テゾーロ夫妻とネプチューン夫妻は互いに手を取った。
200年ぶりに参加する海底王国と世界初の中立国家の国交の正常性を見せつけ、ちゃっかりアピールする。
そこへ、しらほし達も会話に割り込んだ。
「テゾーロ様!!」
「しらほし姫か! 思ったよりデカいな」
「我々もあなたと会いたかった。地上で最も影響力のある人間の一人である黄金帝なら、母の夢も…」
「その話は会議でやろう。今は堅苦しいのは抜きに」
フカボシ王子と握手するテゾーロ。
この世界的スクープの連続に、カメラのフラッシュが絶えない。
記者の声に耳を傾けると、「絵面が凄すぎる…!!」「特集組みますか、社長!!」などの興奮した声が聞こえる。
「おお、テゾーロ!! ちょうどよかったわい」
「ガープ中将!!」
「お前の嫁さんか? 長旅ご苦労」
そこへ、リュウグウ王国の護衛を務めた伝説の英雄・ガープが豪快に笑いながら歩み寄った。
「ガープ、テゾーロ! しらほしはすごい人気じゃもん!」
「魚人島の人魚姫といやぁ、海賊女帝ハンコックにも引き取らん美しさじゃと地上でも噂だけは駆けまわっとる!」
「あれ程の美貌だ、期待以上というものだ」
「何しろデカいしのう!!」
豪快に笑うガープは、バリバリとせんべいを食べる。
そこに朱色の仕込み杖を突き、白いラインが入ったフード付きの紺色のマントを羽織った和装の男が会釈した。
今回のテゾーロの護衛の一人…三つ目族の剣士・タタラだ。
「皆さん、そろそろボンドラが出発します。話の続きは搭乗してからでも…」
「それもそうだな。ではネプチューン王、ご一緒に」
「うむ!」
ガープとバトンタッチし、テゾーロはリュウグウ王国の案内人を兼ねてマリージョアへと向かう。
なお、ゴア王国の国王ステリーとガープがひと悶着あったそうだが、彼ら彼女らは知る由も無い。
地上からボンドラに乗り、〝
限りない空の高さ、果てしなく続く海、神々しさすら覚える太陽の輝き――それら全てにしらほしは魅了されていた。
「地上がこんなにも美しいものだなんて…なんて美しい世界!! お父様、お母様、叶うなら地上に住んでみたいです!! 王国の皆様にもこのタイヨウの世界を見せてさしあげたい!!!」
「そうか…頼んでみよう」
「その為の世界会議ですもの」
「私も力を尽くそう、しらほし姫」
そう和やかに会話していると、不意に視線を感じた。
どうやら〝
そんなまさかと思いつつ、テゾーロは振り返ると……。
「あっ」
「……」
何と視線の先に、壁の中から森を携えた巨人が顔を覗かせていたのだ。
どこへ進撃するんだろうかと思ったが、ふと思い出した。
あれは確か……!
(〝毛皮のモーリー〟…!?)
〝毛皮のモーリー〟――世界を揺るがす革命軍の西軍軍隊長を務める巨人族。
彼はあらゆるものを壊さずに押しのける事ができる〝オシオシの実〟の能力者であり、それならばこんなところにいるのも頷ける。
それはつまり、革命軍が今回の〝
(まァ、その方がこちらとしても好都合か)
こちらが気づいた事にハッとなったモーリーは、一瞬で壁の中へと消えたが、それを密告するのはやめた。
少なくとも革命軍の活動は、テゾーロの目的とする革命を後押ししてくれるだろう。
彼自身も、旧体制をぶち壊して新しい秩序の下で世界を良くしたいと思っている。それを加速してくれるのならば本望だ。
「ところでじゃがテゾーロ……我々の提案を果たして世界はどう思う?」
「私という仲裁できる有力者がいる以上、出来る限り事は穏便に進めます。会議はいつも大事件を呼びますから…」
ネプチューンの問いかけに、テゾーロは答える。
マリージョアに集った王族は、ほんの少しでも相手の機嫌を損ねれば国同士の戦争を勃発させる可能性と常に隣り合わせで過ごさなければならない。また強国は自国の資源や技術を脅しの道具に使って子分の国を都合よく操る上、貧富や宗教は各国で異なる故に国王の横並びを許してはくれず、会議の結論が穏便に出ないものも珍しくないのだ。
今回は中立国家の元首が会議に参加する為、どの国もテゾーロの対応に興味を示すはず。それを彼は利用する魂胆だ。
「いつまでも慣例通りじゃ、世界は進みません。ここらで一度、大きな勝負に出ましょう」
テゾーロの言葉に、ネプチューン達は強く頷いたのだった。
*
その頃、テゾーロ達よりも一足早く聖地に辿り着いた藤虎は……。
「サカズキさんが、アンタを見つけて追ん出せってよ…」
日光浴をしながら元帥サカズキの連絡を受けた緑髪の海軍大将・アラマキは、目の前で堂々と、というか暢気にそばを食べてるイッショウに声をかけた。
イッショウはサカズキと大喧嘩し、海軍の敷居は跨がせないと厳命されたが、テゾーロが何も知らずに護衛を頼んだ事と「軍の敷居はマリージョアにはない」という理論武装で突破。案の定サカズキは「ただの屁理屈」と怒ってしまい、アラマキにマリージョアからも追い出すよう伝えたのだが……。
「……
「らははは、勘弁してよ、やだぜおれァ! 別に会議をブッ壊そうってんじゃないでしょ?」
「ふふ…ええ…まあ……あっしが壊してェのは…〝制度〟だ」
あくまでも目的はこの会議である議題を進め、それを採決させる事――それがイッショウの悲願だ。
聞かん坊な彼でも、空気くらいは読める。
「どうもゴチになりやした…うまかった!」
そばを平らげたイッショウはお椀を置き、湯呑みの茶を啜る。
「長旅だったね。どうだった? ベガパンクのおっさんは」
「――えェ…見えやしねェんですが、すげェモンが完成してやした」
「ほう…つまり?」
「〝王下七武海〟は、もう要らねェ………!!!」
イッショウは確信を持って断言し、それをアラマキは「酔狂だぜ」と爆笑する。
その上で、彼はテゾーロについても触れた。
「テゾーロの旦那も、あっしの悲願を達成する為の根回しをしてくれてやす……撤廃後の事も考えてくださって…」
「成程、政治をやってるだけはあるってか」
アラマキは感心する。
王下七武海制度を撤廃するということは、
流石は〝新世界の怪物〟と言ったところだろうか。
「へへ……どうでもいいけど、ここのメシはさすがにうまい。食ったらどうです? 相変わらずまだ
「らはは!! おねーちゃんがあーんってしてくれたら食っちゃうなー!! 面倒でもう3年は何も食ってねェけど!! らはは!!」
同時刻、聖地マリージョアのパンゲア城内。
世界最高権力の五老星の下に、ある人物が謁見を求めた。
「何の用かね? わざわざここまで」
世界政府の法制度および治安対策等に関する事項を分担管理する「法務武神」のトップマン・ウォーキュリー聖は尋ねる。
「今はレヴェリー、立場上君は政治に関わるべきではないぞ」
「君だから時間を取った」
財政および世界経済・金融等に関する事項を担う「財務武神」の イーザンバロン・V・ナス寿郎は、環境政策等に関する事項に携わる「環境武神」マーカス・マーズ聖と共にそう言い放つ。
「ええ、感謝します」
「聞こう。兵は出ろ」
護衛の兵士に部屋を出るよう、科学技術政策と防衛政策の担当者である「科学防衛武神」のジェイガルシア・サターン聖は命じる。
そして、マントに身を包んだ男はソファに腰を下ろした。
「ギルド・テゾーロとある海賊について話が…」
「何…?」
あの四皇〝赤髪のシャンクス〟に似た容姿の男が口にした名前に、農業・食料政策等に関する案件を任されている「農務武神」のシェパード・十・ピーター聖は驚いたのだった……。