ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
皆さん、ありがとうございます。
聖地マリージョアのパンゲア城に辿り着いたテゾーロ一行。
ここは世界の創造主の末裔達が暮らす荘厳なる土地で、彼らは彼女らは城内の 「社交の広場」で世界各国の王族と会議前の対談をしていた。
(やはり、世界各国で革命の動きが盛んになってるな)
各国の首脳の言葉に耳を傾けたテゾーロは、まず思った。
大海賊時代の頂点で会った白ひげの死から二年。世界情勢は大きく変わり、黒ひげが新たな四皇となってから一気に革命軍の動きが活発化した。
革命軍は世界政府を支配する天竜人を標的としている組織だが、その主義主張はこの二年間で一気に拡散しており、今では多くの人間をその動きに引き入れている。
そして、
さあ、問題はここからだ。
(ミホークとハンコックには、こちらから話を振ってある。上手く行けばいいが……)
誰にも支配されたくない絶世の美女と、平穏な暮らしを望む世界最強の剣士。
二人を丸め込めば、王下七武海制度の撤廃に生じるリスクはかなり減らせる。革命軍をアシストすれば、自我を失ったくまはドラゴンが回収するので民衆に牙を剥く事はない。ミホークとハンコックの取引が成立すれば、二人が進んで海を荒らすマネはなくなる。そうなれば、ウィーブルとバギーさえ倒せればある程度海軍も楽になる。
問題なのは、クロコダイルくらいだろうが……七武海最弱とはいえバギーも油断してはならない。むしろ強運という面ではテゾーロ以上、下手をすれば海賊王にも迫る程だ。
(……ひとまず、しらほし姫の傍に居続けるべきか)
そう、会議前には身の程知らずのあの男が現れ、同胞にシバかれるというイベントがある。あれは後々の禍根に繋がりかねないので、阻止しなければならないだろう。
そう考えながら、しらほしの傍に付いた時だった。
「おい、テゾーロ!!! そこをどくんだえ!!!」
「?」
聞いた事がある語尾に反応し、テゾーロは声がした方に顔を向ける。
そこには、鼻水を垂らした天竜人が立っており、その後ろにはしらほしの巨躯と同じくらいの奴隷が従っていた。
天竜人といえばこの人、チャルロス聖だ。
「……これはこれはチャルロス聖。下界の王の集まりの中、一体何の御用ですかな?」
「決まってるえ!! その人魚をこのわちしのペットにしてやるんだえ!!」
「それは困ります。あなた方「世界貴族」の
テゾーロはたった一人で暴虐の限りを尽くす神の説得を試みる。
周囲は戦々恐々、自分の護衛や妻も数歩引き下がっており、無防備な天竜人が恐れられる存在という事が嫌でも伝わる。
「貴様、このわちしに歯向かう気かえ!?」
「別にいいですよ? ここで撃ち殺してしまっても。その瞬間、あなた方へ納める天上金は金輪際停止となります。あーあ、今度は2000億ベリーくらい納めようかなと思ってたんですが……処刑対象になったら仕方ないか」
『2000億ベリー!!?』
あまりにも破格すぎる金額に、誰もが唖然とした。
テゾーロは世界の20パーセントの財力を保有する程の男……カネなら腐る程あるという言葉の体現者だ。2000億という金額は、小規模な国なら買える領域の額。それを容易く出せるからこそ、黄金帝たる所以だ。
いくら傲慢さと身勝手さが過ぎるチャルロス聖も、何だかんだカネの力を理解しているからか、テゾーロの言葉を聞き流す事ができず引き金も易々と引けなかった。
「きっ…貴様……!!」
「もしそれでも、というのなら構いません。ですがその瞬間……我がグラン・テゾーロは、今日限りで世界政府から脱退させていただく!!! ――神を脅すのは後ろめたいですが、
ポケットに手を入れながら嗤うテゾーロ。
その気迫にチャルロス聖は怯み、思わず後退った。
「テゾーロ……」
「テゾーロ、お主……!!」
「これが〝新世界の怪物〟……何という剛毅……」
リュウグウ王国を庇うテゾーロの堂々たる態度に、周囲の者達は感嘆の声を零す。
この世界の構造上、一度天竜人の機嫌を損ねれば王族であろうと制裁は逃れられない。それどころか、制裁は王個人もしくは王家のみならず国そのものに影響を及ぼす事もあり、酷い場合は国が滅亡に追い込まれかねない。
だが財力や相応の資源があれば、それを手札に世界政府及び天竜人と交渉できる。それは暗に、暴力や武力が無くても神を説得して事を収められるという事実であり、テゾーロはこの場で世界中の王族に知らしめたのだ。
「どうでしょうか? あなた一人の判断が天竜人全体の繁栄に関わっている以上、社交の場で恐怖を与えるのは愚策じゃありませんか?」
「ぐぬ~……!! 気が削がれたえ!!!」
チャルロス聖はプンスカと怒りつつも、流石に自分一人の判断でテゾーロを失うのは無益と感じてくれたのか、そのまま奴隷を連れて引き下がり戻っていった。
「……ありがとう、テゾーロ。お主のおかげでしらほしを失わずに済んだ」
「あのような狼藉、よくぞ止められたな……」
「流石だわ、テゾーロさん!!」
ネプチューン王やサクラ王国のドルトン国王、アラバスタ王国のビビ王女がテゾーロの行動を称える。
天竜人に逆らって、五体満足はおろか説き伏せてしまうとは……。ギルド・テゾーロという男の凄まじさを痛感すると、思わぬ人物が現れた。
「おお!! テゾーロか、チャルロスを引かせたのは!!」
「あなたは…!」
「皆の者すまん!! バカが社交の場に恐怖を与えた!! 同じ天竜人として恥ずかしい、どうか許してくれ!!!」
『天竜人ォ!!?』
何と、再び天竜人の登場。
再びパニックになるが、様子が全く違うことに気づき、すぐ我に返った。
「私の事などお忘れだろう、ネプチューン王、オトヒメ王妃……しかし私にはリュウグウ王国への恩があり、この日を待っていた!! あなた方がここに来る日を!!!」
「あっ!!」
「もしや、お主……!!!」
「まさか!?」
頭を下げる天竜人に、リュウグウ王国の面々は愕然とした。
彼は確か、10年前に漂着した……!!
「ミョスガルドさん!!」
「ネプチューン王、オトヒメ王妃、再びお目にかかれて光栄に思う!! 全力であなた方の力になりたい!!!」
現れたのは、ドンキホーテ・ミョスガルド聖。
リュウグウ王国にとっては忘れられない天竜人であり、オトヒメとしても大切な人物だった。
程なくして、天竜人の騒ぎ故にほとんどの王族は城内に入った。
社交の場に残るは、ルフィやテゾーロと縁のある王族とミョスガルド聖のみだ。
「どの国も悪い者も良い者もいる。それは魚人族も同じじゃもん」
「あなたには何と礼を言うべきか……」
「礼など無用だ。10年前の恩を返したい。それに言うとすれば、私よりも早く動いてくれたテゾーロだ」
ミョスガルド聖曰く、会議中の7日間は天竜人の自分がしらほしに付き、姫達を守る戦いならば自分が全ての責任を取るとのこと。
10年前とは似ても似つかない成長ぶりに、思わずネプチューンとオトヒメは微笑み、遠くから眺めてたDr.くれはは「随分と変わり者がいるもんだね」と呟いた。
「――テゾーロ、クリューソス聖の事は気の毒だったな……」
「あの人には世話になった……死に目に会えなかったのが心残りだが、今が大事だ」
「……チャルロスは諦めないだろうな」
「諦めたら諦めたで不気味ですけどね」
そう言い、互いに顔を顰める。
あの下劣な人魚好きの事だ、機を伺ってしらほしを是が非でも手に入れようとするだろう。その時は武力衝突の可能性もあり得る。
だからこそ、今が大事だ。
「おれからも護衛を割いて、しらほしに付かせよう。最悪の場合も考えて行動しないといけない」
「わ、わかった! お前の部下の責任も私が取ろう、お前は会議に集中してくれ」
そんなミョスガルド聖に感謝の意を込めて笑顔で応じると、テゾーロはパンゲア城内へと足を進めた。
この先に起こる大事件が、原作以上の混沌と化すと知らずに。
*
同時刻、マリージョアの地下。
革命軍参謀総長のサボは、三人の軍隊長と作戦会議を始めていた。
「マリージョアの地理と城の構造は把握できた。だが問題は護衛だな。海軍大将も来てるらしい」
リンドバーグは、護衛に世界徴兵で大将に特任された〝緑牛〟アラマキに加え、テゾーロの護衛として乗り込んだ〝藤虎〟イッショウの姿を見たという。
イッショウは元帥サカズキと口論となり、ルフィとローの首を取るまで海軍基地の出入りを禁じられたという情報があった為、これは予想外だった。
「織り込み済みだ!! 誰が立ちはだかろうが、くまさんは必ず助ける!!」
「勿論だ。その為に来た」
強い決意を固めるサボに、カラスは頷いた。
「お前の弟達も世話になったんだっけな」
「ああ、おれが記憶を無くして何もできなかった時、くまさんはシャボンディ諸島で大将黄猿に追いつめられた弟達を逃がしてくれたんだ。弟が受けた恩も返さなきゃならない!!」
恩に報いる為にも、作戦は成功させねばならない。
無論、完全な人間兵器と化した奴隷のくまを解放したところで、元の人格が戻る保証はない。それに天竜人にはCP‐0と海軍本部がついており、作戦失敗は死に直結する。
それでも、自由の為に四人は戦うのだ。
「救いましょう!! くまちゃんを!! あたし達の仲間を!!!」
「「「ああ!!」」」
モーリーの言葉に、三人は威勢よく応じたのだった。