ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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イム様の能力は果たして……。


第192話〝世界一のタブー〟

 〝世界会議(レヴェリー)〟4日目。

 議論が白熱する中での休憩時間、テゾーロはアラバスタ王国のコブラ王と鉢合わせしていた。

「コブラ王!」

「おお、テゾーロ君……」

 家臣であるチャカとペルに護衛され、車イスを押すコブラ王。

「……お体の具合は?」

「まあまあだ……テゾーロ君、アラバスタ王国の復興の件、この場で改めて感謝する」

「礼には及びません、外交ってヤツですから」

 そんな軽い身の上話をしながら廊下を進んでいくと、護衛の兵士達が待ったをかけた。

「五老星との面会の許可はコブラ王とテゾーロ王のみだ」

 その言葉に、チャカとペルは体調が優れないのに離れるわけにはいかないと反論するが……。

「下がりなさい。すぐに終わるが、表で待つのも退屈だろう。ビビの護衛を頼む」

「これも何かの縁。私が容態を見ましょう。五老星も多少なりとも気遣うでしょうし。それにここは天竜人の土地…王女の身にもしもの事があってはならない」

「「……」」

 テゾーロに諭され、二人は一礼しながらその場を後にした。

「テゾーロ君、君には迷惑をかける……」

「ハハハハ、王様同士仲良くしましょう」

 テゾーロとコブラ王だけになったのを確認すると、護衛の兵士達は扉を開ける。

 コブラ王が乗る車イスを押しながら奥へ進むと、目の前に五人の老人達がコートを羽織って佇んでいた。

 天竜人の最高位に立つ、世界政府最高権力――五老星だ。

「何を聞きたい? アラバスタ王国国王コブラ、そしてグラン・テゾーロ国王ギルド・テゾーロ」

 ピーター聖が問うと、テゾーロは長居させては家臣やビビおい所が心配するからとコブラ王から語るよう催促した。

 コブラ王はテゾーロの気遣いに感謝しつつ、一呼吸置いてから語り出す。

「時に――世界政府という組織は800年前、〝20人の王達〟によって作られた。彼らは世界の創造主として一族でこのマリージョアに移り住み、やがて〝天竜人〟と呼ばれ、800年間世界のトップに君臨している」

「……」

「――内部では〝20人の王達〟はあくまで平等であり、一人の独裁者など生まれぬようにあえて〝虚っぽ〟の玉座を作り、誰もここに座らぬ誓いに王達の20本の武器でこれを囲った」

 それが、世界政府の権力の象徴であり理念でもある〝虚の玉座〟誕生の理由だ。

「一方、王族を失った20の国々では新たな王が選出され現在に至る。したがって最初の20人に名を連ねる王族の名は祖国には残っていない」

 しかし、アラバスタ王国だけは違うとコブラ王は続けた。

「ネフェルタリ家の女王リリィは最初の20人に名を残しつつも天竜人にならず、アラバスタに戻った事で今のネフェルタリの名は祖国に残り続けている…。――よって正確には玉座を囲む武器は19本しかない」

 ウォーキュリー聖は「――その通りだが…それがどうした?」と返すと、コブラはアラバスタ王国に残る古い書物を読み漁ったところ、知る事が出来るのは〝空白の100年〟()()()()()に書かれた歴史だけだが、そこにリリィ女王の名が一切記されてない事を告げた。

 つまり、リリィ女王は世界政府が誕生してから祖国に帰って来ていないのだ。

「コブラ王、それはつまり謎の失踪を遂げたと?」

「ああ……リリィ女王の弟が、その後のアラバスタを治めているのだ」

『……』

「アラバスタ王国に帰ってきてない彼女について、何か知れないか……?」

 コブラ王はテゾーロの疑問に答えると、改めて五老星と向き合い、リリィ女王の行方について問うた。

 世界政府最高権力である彼ら五人ならば、世界政府の歴史を熟知し、その足取りを掴めるのではないかと考えたのだろう。

 しかし、五人を代表するかのようにサターン聖が答えた。

「何かと思えば…800年も昔の話。確かにネフェルタリ家の王だけがここに住まなかったのは事実だが、我々とて国に帰ったものと考えていた。その理由も動向も――大昔の事。知る由もない。すまんな…わからぬ」

「じゃあ、五老星でも知らないという事は……世界政府ですら把握してないと?」

「左様。世界政府創立における記録では、「リリィ女王は天竜人にならず、アラバスタに戻った」とまでしか記載されておらん。その先の記録は無い」

 テゾーロも重ねるように問うが、サターン聖は首を横に振る。

 それならばと、コブラ王はもう一つの疑問をぶつけた。

「……では、〝D〟とは?」

『!!!』

  その問いかけに、五老星の表情が変わった。

「なぜ…それを聞く?」

 ナス寿郎聖は問う。

「実は…800年前の彼女の短い〝手紙〟が代々王家に受け継がれているのだが…」

 コブラ王は手紙の内容を明かす。

 その意味深な内容に、テゾーロは目を丸くし、五老星は目を細めた。

 

 

 手紙について語ったコブラ王は、五老星に再び問い掛けた。

「もう一度問う…〝D〟とは?」

「…下がれ。もう話す事は無い。次はテゾーロだ」

 取り付く島も無く、サターン聖はコブラ王を下がらせようとする。

 その時、カツン…カツン…と〝虚の玉座〟の付近から足音が聞こえ、目を向けると――

「……!? イム様、まだコブラ王とテゾーロ王がここにっ!!」

「なっ……!!」

(アレが……!)

「リリィ……」

 突如現れた謎の存在――世界政府の真の王・イムは、〝虚の玉座〟に腰掛け二人を見下ろした。

 それと共に五老星は横に並ぶ。

 本来、〝虚の玉座〟には何人も座ってはいけない。誰かの一存で世界を動かす事など許されないからだ。しかし世界政府は、それを許している。

 その事実に、コブラ王は絶句していた。

「ムーから話したい事が二つ…聞きたい事が一つあるぞコブラ」

「ゴホゴホ…あんたは誰だ…!? イムという名を知ってる。偶然とは思うが…〝最初の20人〟に…」

「詮索するな。答えやせぬ」

 ――いや、それ答え言ってるも同然じゃないか。

 テゾーロはそう思いながら、イムと五老星の動向を伺う。

「――しかし知りたい事を教える。〝D〟とは…かつて我々が敵対した者達の名だ。近年、各地に湧き出てきた〝D〟は己の名の意味も知らぬ〝抜け殻〟共…しかし、それも800年前のリリィ女王の〝大失態〟に起因しているのだ……!!」

「……失態!?」

「〝空白の100年〟をかぎ回る学者共も然り……!! 宝目当てに〝歴史の本分(ポーネグリフ)〟を求める海賊達も然り!! ()()()のリリィのミスがなければ!! 〝歴史の本分(ポーネグリフ)〟なる忌々しき遺物が世界中に散らばる事はなかったのだ!!」

 800年前に起きた歴史の真実を知る事になるテゾーロとコブラ王。

 それは、世界政府にとって知られたくない世界の真実でもあった。

「――この起きてしまった過去に最悪のシナリオが一つある。〝歴史の本分(ポーネグリフ)〟の解放が本当にミスだったのか…それとも()()()だったのか…」

 すると、五老星が一斉に武器を構えた。

 不穏な空気にコブラ王は狼狽し、テゾーロも思わず一歩下がった。

「――その〝答え〟が、アラバスタに届いた「リリィの手紙」にあるはず。ヌシア、さっきから〝ネフェルタリ家のリリィ女王〟としか言わないのは…なぜだ? 女王の遺した手紙の〝送り主〟の名を言え」

「あの……これ、私とばっちりじゃありませんかね?」

「……」

「ここは聖地。暴力は行けない。穏便に、口裏合わせて無かった事にしましょうよ」

 テゾーロはそう異論を唱えるが……。

「残念だが…「イム様」の姿を見た瞬間から、()()()の運命は決まっている」

 ウォーキュリー聖は淡々と告げ、銃を向ける。

 世界一のタブーに触れた以上、この部屋から生きて出す訳にはいかないという事だろう。

 偶然巻き込んでしまったテゾーロに内心謝罪しながら、抹殺を宣言され腹を括ったコブラは、正直に口を開いた。

「――こう書いてあった…800年前、アラバスタ王国を治めていた女王の名は…」

 

 ――ネフェルタリ・〝D〟・リリィ。

 

「〝D〟…」

 イムは一瞬俯く様な仕草をしたが、もう聞きたい事は無いと言わんばかりに矢印のような影を伸ばした。

 そのままコブラ王の身体を貫こうとした時、ギィン!! という高い金属音が鳴り響いた。

「――!」

 イムは何かに気づいたように音が鳴った方向を見る。

 何とテゾーロが、コブラ王を庇うように立ち、黄金の盾で防いでいたのだ。

「テゾーロ君…!!」

「今あなたを死なせる訳にはいきません!!」

「小癪な…」

 イムはそう吐き捨てると、次の手を打とうとする。

 が、そこへ思わぬ乱入者が。

「ん!?」

「サボ!?」

 革命軍の参謀総長が、炎を纏いながら跳び上がった。

「〝火拳〟!!!」

『ぬう!!』

 火力を高め、巨大化させた炎の拳で五老星を攻撃。

 すかさず左手で火を一点に集中、「(おう)()()(しゃ)」を〝虚の玉座〟目掛けて真っ直ぐに高速で走らせるが……。

「どこから入った…!!!」

 イムの目つきが鋭くなったかと思えば、巨大なヒトガタに変貌、牙を生やした大口で相殺。

 それと同時に、五老星も動物(ゾオン)系らしき能力で怪物に変身した。

「これは……!!」

「幻獣種か……!?」

「あわよくばここで全員刺したかったが……まさか世界のてっぺんに地獄があるとは」

 能力で「世界の王」及び五老星を仕留めようとしたが、彼らには炎の攻撃が一切通らない。

 サボはコブラ王とテゾーロの前に立ち、鉄パイプを構えながらそう呟いた。

「ゴホゴホ!! 君は……ルフィ君の……兄だな? 革命軍なのに…助けてくれるのか…!?」

「おれ達の敵は王達のその上…あいつらだ。なぜルフィを知ってるんです」

「彼は〝恩人〟だ」

 コブラ王の言葉に、サボは「……ハハ…ルフィらしい」と笑った。

 するとテゾーロが「そんな事言ってる場合じゃないぞ!」と一喝し、武装硬化した拳を構えた。

「敵は強大、絶体絶命……どうする? 参謀総長」

「逃げるしかないよな」

「逃がさぬ…!!」

 身構えるテゾーロとコブラ王を背負うサボに、イムは牙を剥く。

 世界一のタブーが、三人の目撃者を葬ろうと迫った。

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