ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
聖地マリージョアで大事件に巻き込まれたテゾーロは、海軍の目を掻い潜るように人知れず出航。
サボと別れ、コブラ王を連れてグラン・テゾーロへと進路を向け、新世界へと船を進めた。
「私は……とんでもないものを見てしまった…」
「あの姿を見た以上、おれ達の逃げ場はない…!! これはマズい展開だ…」
「すまない……私の為に、君まで危険に…」
「謝らないでください、コブラ王。おれの意思で決めたんです」
船内は地獄のように重い空気に包まれ、今の状況を冷静に語ろうとするが、思わず額から滝のように汗が流れる程に状況は良いとは言えない状況。
「……まさかあんな力を持ってたとはな……」
「……ああ、あれは間違いなく〝悪魔の実〟の力だ」
テゾーロは思い返す。
あの時見たのは、五老星とその上の存在の怪物のような姿。
この世で起こる不思議な事は、自然現象を除いては大体が悪魔の実によるものである事が多い。おそらく彼らもその「法則」から完全に逸脱しているとは考えにくいが……。
「……サボ君は、大丈夫だろうか」
「ビビ王女も心配だ……上手く逃げ果せてくれればいいんだが」
*
コブラ王とテゾーロ王が〝
各国の王達が帰路につく船には、密航者が息を潜めていた。
「これからどうしよう…レヴェリーで起きた事伝えないと」
「黙れよ!! そんな事してみろ!! 政府に消されるぞ!!」
理不尽にCP‐0に掴まった事を公表しようと考えるビビを、ワポルは必死に止める。
かくいうワポルも、見てはいけないモノを見てしまった立場。お互いに追われる身であり、迂闊に行動できない。
どうしたものかと考えていると、ふとワポルは思い出した。
「そうだ!!
「電伝虫!? いい物持ってるじゃない!!」
ワポルは自身の唯一の命綱である、世界的に有名な大物に電話した。
その相手は、〝
「モルちゃん! おれだ、ワポルだ!」
《おお、久しぶりじゃねェか。どうだったよ
モルちゃんと親し気に呼ばれた男――世界経済新聞社社長モルガンズは、ワポルからのリーク情報を期待するが、帰ってきた回答は「そんな事はどうだっていい」という切羽詰まったものだった。
《何かあったか? 言ってみろ》
「電伝虫で話せる事じゃねェ…バレたら殺されちまう!! だからネタと引き換えに匿ってほしいんだよ!!」
すぐさま重大情報と異常事態の気配を察知し、モルガンズは承諾。
今どこにいるかを問い質す。
「おい!! これはどこの国の船だ!?」
「エイギス王国よ」
《――わかった。取材と称して〝本社〟で船に近づく!! ――その間にこちらへ乗り込め!! バレるなよ》
「恩に着る!!」
その頃、聖地マリージョア。
「サボという男もまた、数奇な運命を背負った男だ…あれ程〝D〟に囲まれた人生を送る者もいまい」
「そろそろケリをつけたいのが〝エッグヘッド〟の件だが…」
ウォーキュリー聖とサターン聖が、今後について話し合おうとした時、机の上に置かれた電伝虫が鳴った。
その相手は、もはや言うまでもないだろう…。
「はい、イム様」
《ベガパンクが作ったという〝マザーフレイム〟を使いたい》
世界政府の真の王・イムの上意は、天才科学者ベガパンクが作ったと言われている発明品についてだった。
〝マザーフレイム〟。それは五老星の間でも大きな関心を寄せているものだ。実物は当然見てないし、その効果や実用性も不明である分、色々な可能性を秘めているだろう。
サターン聖は試してみなければ本物かどうかもわからないと、科学者としての意見を述べ。ウォーキュリー聖は実験結果次第で対応の検討を進めようと公言した。
「実験は海より森などがある方が…」
《ルルシア王国》
ナス寿郎聖が実験場をどこにするかと考え始めた矢先、イムは淡々と告げた。
「随分人がいます」
《構わぬ……》
ルルシア王国の国民が巻き添えになる事も厭わないイムに、マーズ聖は「世界は創造主の思い通りゆえ…」と承諾した。
そんな中、ピーター聖はイムに場所を決めた理由を訊いた。
「ルルシアを選んだ理由は?」
《近い》
「確かに」
マリージョアとルルシアは近い。
それが、決定的な理由だった。
「然るべく…準備にかかります。お待ちを」
「ルルシアは国民に反乱の兆候がある」
「いい〝見せしめ〟にもなるかもな」
「――いずれ、
「永い戦いが終焉を迎える…!!」
五老星はマザーフレイムに期待を寄せると、イムから二つ目の上意を聞いた。
《もう一つある。ビビが欲しい》
「「「「「御意」」」」」
主君の二つの命令に、五人の長老は静かに応じたのだった。
*
翌日、未だ国に帰還できてないテゾーロは、ある人物からの連絡を受けていた。
《おい、大丈夫か!? 今とんでもない事になってんぞ!?》
「だと思った……」
テゾーロは疲れ切った様子で、電伝虫の通信をする。
電話相手は、テゾーロのビジネスパートナーである長年の盟友――新世界の資産家で、代々石油業を営んでいる名門一族「スタンダード家」の現当主であるスタンダード・スライス。
彼とはどういう関係なのかは、地下闘技場摘発編などで確認してみてほしい。
《今朝の世経見たぞ……お前今行方不明者になってるぞ。しかもアラバスタ王国のコブラ王は生死不明で、下手人が革命軍の参謀総長になってる。どこまでホントなんだ?》
「大よそだよ……コブラ王は今、おれと一緒にいる。……スライス、お前は五老星の上って知ってたか?」
《――ハァ!!? マジモンのトップシークレットじゃねェか!!! お前、見たのか!!?》
「見たよ……おれもコブラ王も……」
テゾーロは事の一部始終を説明した。
〝虚の玉座〟について、その奥に座っているのが誰なのか。その姿は何なのか。そして彼らが何を話していたのか――一通り聞き終えたスライスは声を失う。
《……ヤバいだろそれ……世界をひっくり返せる爆弾じゃねェか……これからどうするつもりだ?》
「世界政府は、多分おれの国への侵略も視野に入れてるはず……ここまで来たら、あらゆる人脈を使って徹底抗戦するしかない。世界政府と全面戦争になるかもしれない」
《そうなったら、お前の家族も標的にされるぞ。――いや、既になっただろうな》
「…………そう、だな」
その時、テゾーロに嫌な予感が過ぎる。
これまでの人生の中で、最悪の未来を想像してしまう。
テゾーロの表情から読み取ったスライスは、こう忠告した。
《最悪の結末ばかり考えても仕方ねェ…。お前もお前の大事な人達も生きて帰ってくる事を信じて、今は進むしかないだろ》
「ああ……そうだな……ありがとう、スライス」
テゾーロは礼を述べると、通話を切り上げた。
*
魚人島。
聖地マリージョアの真下、海底10000メートルに位置するリュウグウ王国で、英雄ガープ中将の同行のもと、ネプチューンはしらほし達と共に帰国していた。
「やれやれ、やっと着いたんじゃもん…まったく地上とは遠い所じゃのォ~」
「長旅ご苦労様だったな、ネプチューン」
深く息を吐いて玉座に腰掛けるネプチューンを見て、ガープはぶわっはっはっは、と豪快に笑う。
魚人島を救ったルフィの祖父であるがゆえか、しらほしはガープを「ルフィ様のおじい様」と呼んで感謝の言葉を述べている。
「へとへとじゃもん。ガープ、お前さんもゆっくり休んでゆけ」
「まあ…茶の一杯ぐらいは貰っていくが、事態が事態…そうのんびりもできまいなァ…!! 〝
ガープは茶を飲みながら語る。
170にも及ぶ加盟国の国王の内、毎年代表の50か国が出席しているが、それぞれの国の内部も問題だらけな上、ほんの少しでも相手の機嫌を損ねれば戦争勃発の可能性が常に隣り合わせであり、一瞬たりとも油断できない。
また大国・強国は静かににらみ合い、自国の資源や技術を脅しの道具に使って子分の国を都合よく操る。立場は対等というものの、それはあくまで建前に過ぎず、貧富の差や宗教の違いが国王の横並びを許してくれない。
しかし、テゾーロが建国したグラン・テゾーロの影響力のおかげで、貧富の差の大きな要因となっている天上金の無償の肩代わりなどで、多少の平和的解決が望めているが、それでゃ笑顔で足を踏んづけ合うのだ。
「国民の為、他国の為の発言ができる王が果たして何人いることか…〝円卓〟が泣いておるわ」
「確かに王達の会話は一触即発………!! わしらもそうだが、国と国とのいがみ合いはそう簡単には解決できん。長い歴史が関われば、対立の根も自然と深くなる」
「争いがあろうとも、血さえ流れんのなら、わしゃコレを平和と呼ぶが…
ガープは徐に立ち上がる。
「今更じゃが…実はお前さん達に知らせておらん話がある。〝
「?」
「海軍は全力で事件解決に努めていくが――どうか地上を…!! 人間達を恐れんでくれんか!!」
「一体何が!? ガープ、お前さんが受けた報告とは…」
ネプチューンが身を乗り出すと、ガープは真剣な眼差しで告げた。
「アラバスタ王国と、ギルド・テゾーロに関する事件じゃ」
ガープの口から語られた事件に、ネプチューン達は瞠目するのだった。