ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
モックタウンでの事件から2時間後。
現在、瓦礫の山となったモックタウンの郊外でテゾーロとステラは通報で駆けつけた海軍に事情聴取されている。
「貴様がギルド・テゾーロか? 私は海軍本部大佐のモモンガ……この部隊の責任者だ。今回の一件について暫く付き合ってもらうぞ」
「構いませんとも…損害の請求は分割ならOKですけどね」
余裕な態度を崩さないテゾーロに、目を細めるモモンガ。
一方のテゾーロは…。
(ヤベェよ、何だよすげェ怖そうなんですけど!! 赤犬の時もそうだったけど…海軍って暴力団の事務所か!?)
余裕な態度とは裏腹に、内心あたふたしていた。
「まず言っておこう……今回のモックタウンでの一件、我々海軍としても礼を言う」
「「!」」
「この島は以前から治安が酷くてな……海賊達の落とす金によって成り立つこの無法地帯をどうにかしたかった。まさかこのような形で解決するとは思いもしなかったが」
「ハハハ…まァ、気にせずともいいでしょうに」
どうやら海軍は今回の一件により、テゾーロに一目置いているようだ。
町中の無法者共をたった一人で捕縛したのだから当然と言えよう。
「しかし私が言うのもなんですが、無法地帯を放っておいて正義を名乗るのはいかがなものかと。駐在所でも設けて警備するべきでは?」
「――我々を非難しているのか?」
「どう捉えるかはそちらに任せましょう」
テゾーロの言葉に、モモンガは「そう言われては否定しようがないな」と言って溜め息を吐く。
実質、モックタウンの件は海軍は放置していた。それが原因で喧嘩や殺し合いの絶えない危険な町にしたのだから。
〝
それを怠るどころか放置するとなると、現実世界ならばマスコミから袋叩きにされかねない。怠るだけで責任者は世間から冷たい視線を浴び続けるのだ、故意に放置したとなれば手に負えない。その辺を考えると、世界政府とその関係機関はご都合主義かもしれない。
(しかし、たった一人の賞金稼ぎが無法地帯の問題を解決したと世間に知られては……)
今回の一件は、若き賞金稼ぎが海軍の尻拭いをしたようなモノだと断言しても過言ではない。海軍の失態は、政府の失態につながる。報道やテゾーロに対する対処は慎重にしなければならない。
現実世界では記者会見を行ったりFAXを使って新聞社に送ったり某ソーシャル・ネットワーキング・サービスを使ってコメントしたりなど様々だが、「
これらを踏まえると、世界政府が取る対処は限られるのだ。その上、世界政府は都合の悪い事に関しては隠蔽や情報操作、場合によっては海軍などの軍事力を用いてもみ消しを行う。今回の場合は軍事力を用いてのもみ消しはまず無いが、政府としては今すぐにでも
(いずれにしろ、この若者は無視できなくなるやもしれんな……。センゴク大将やコング元帥に報告しなければ……)
モモンガはテゾーロの将来性を予見し、口を開いた。
「いずれにしろ…この事で世間からの注目は浴びよう。そして政府からの認識も変わるだろう。妙なマネをすると政府は危険視して貴様を潰しにかかる…それを忘れるな」
モモンガはそう言い、テゾーロが捕えた賞金首を部下に引き取らせ、金を置いて去っていった。
「フ~ッ、危ねェとこだったぜ」
「……また逃げてたんですか、ギャバンさん」
「逃げるなという方が無理だろ! 下手に暴れるとガープとかセンゴクとかが来そうだからな」
ギャバンはそう言いながら頭を掻く。
「これでお前は世間から注目されるようになる…おれァ、アタッチに映りたくねェんだよ」
(アタッチ? どこかで聞いたな…)
謎の人物名の登場に、テゾーロは首を傾げる。
そんなテゾーロを代弁するかのように、ステラはギャバンに質問した。
「ギャバンさん……アタッチって、一体誰ですか?」
「カメラマンだよ。海軍写真部部長のな。確か〝アタっちゃん〟って呼ばれてたような……」
「あいつかァ!!!」
テゾーロは思い出した。
どんな場所にも潜り込み、「ファイア!!」と叫びながらシャッターを切る勇敢なるカメラマン〝炎のアタっちゃん〟を。
「ん? どうしたテゾーロ?」
「い、いや……何でもない……」
取り乱したテゾーロは、気を取り直す。
(と、とりあえず市長の依頼は果たしたな……後は戻って交渉するだけだ)
そう、テゾーロの真の目的は、戻ってからの交渉である。
ウォーターセブンの全ての造船会社を傘下企業として手中に収めることで更なる発展を遂げると共に力を蓄えられるのだから、せっかくの
(さて、どう交渉しようか……)
そんなことを呑気に考えながらテゾーロは船へ戻っていく。
そしてテゾーロは、今回のモックタウンでの一件が後に
なぜ大佐なのかは、お気になさらず。