ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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久しぶりの投稿ですね。


第19話〝履歴書〟

「よもやこうも容易く解決してくれるとは……」

「――おや? 何か問題でも?」

「いいや、全く」

 ウォーターセブンへ帰港したテゾーロらは、早速市長との例の取引(・・・・)を始めた。

 内容は無論、ウォーターセブンの造船業の一任――ぶっちゃけて言うと独占――だ。

「では一応、このウォーターセブンにある造船会社の資料を渡そう」

 市長はテゾーロに封筒を渡す。

 封筒の中には数枚の書類があり、テゾーロはそれに目を通す。

(…成程、トムズワーカーズはロジャーの件のせいで戸籍すらないのか)

 このウォーターセブンには、様々な造船会社がある。原作でルフィらが関わった超巨大造船企業「ガレーラカンパニー」は、元々島内にあった7つの造船会社が統合されて誕生した会社だ。

 だが実際は8社である。トムズワーカーズがあるからだ。

 ぶっちゃけた話、造船技術ならトムズワーカーズが一番だという者も多く、市長も認めている。しかしロジャーの件のせいか、かなり肩身が狭いようだ。

「それで……君はその資料に載っている全ての造船会社を支配するつもりかね?」

「……手中には収めますが、それぞれの活動にあまり口出しする気は私には無いですね。まァ、有事の際は命じるでしょうがね……」

 テゾーロは基本、経営権こそ手に入れてもあまり口出しはしないつもりだ。

 造船業には造船業ならではの事務や作業があるのだから、そういう類の仕事は専門家に任せた方が効率が良いに決まってる。それに職人の仕事にこれからオーナーとなる若者が一々口出しするのも野暮だと言えるだろう。

(まァ…おれは商業よりも世界情勢に興味があるし)

 テゾーロは全世界に革命をもたらし、暴力や武力で支配する時代を終えて新たな時代を創ることが最大の目的である。

 その過程では、「FILM GOLD」同様にグラン・テゾーロを完成させ政府加盟国とするとか、〝ゴルゴルの実〟の能力を利用して経済的な改革をするとか、世界一のエンターテイナーになるとか色々目論んでもいるが。

「さて市長殿、こちらの書類を……」

 テゾーロが渡したのは、完成したばかりの契約書だ。

「ウォーターセブンの発展の為、何卒よろしくお願いします」

 そう言ってテゾーロは頭を下げる。

 テゾーロだって他人との交渉ぐらいは礼儀ぐらい心得ている。どこかの海賊女帝のような上から目線など決してしない。

「……わかった。ではまず……どれに、判を押せばいいんだね?」

(あっさり了解したな、おい……)

 

 

           *

 

 

 こうしてテゾーロは、ウォーターセブンの発展と稼いだ金の数割をウォーターセブンに寄付する事を条件に市長の許可を得て全造船会社の利権を掌握することに成功した。

 とはいっても、あくまでも「傘下企業」だ。テゾーロ財団自体は非正規雇用者含めメンバーは3人……明らかに人手不足だ。

 その人手不足を解消するのが、テゾーロに新たに課せられた課題であるのだが……。

(詰んだ……)

「……大丈夫?」

 頭を抱え、今すぐにでも白旗を揚げそうなどんよりとして雰囲気を醸し出すテゾーロ。

 さすがのステラも心配そうに見つめている。

(サイファーポールのことをすっかり忘れていたァァァ!!)

 そう、テゾーロはあることに気づいたのだ。

 それこそが、世界政府直下の諜報機関である〝CP〟ことサイファーポールだ。彼らが先日のモックタウンでの一件を見逃すはずなど無いということに今更ながら気づいたのだ。

(ヤベェ、どうしよう…うっかり募集かけられなくなった!! テキトーにビラ配って待ってりゃあどうにかなると思ってたのに!!)

 諜報機関の真の目的は、当然ながら一切不明だ。テゾーロとステラの素性や財団内の機密情報を抜かれてしまう可能性が高い。

 ましてや、「ONE PIECE」の世界は現実世界のようなファイアウォールを用いたコンピュータセキュリティではない。国家機密から本当にどうでもいい情報まで、最終的に管理するのは「人」なのだ。一度ミスすれば取り返しのつかない事になりかねない。

 人材の選択も間違えてはならない。組織である以上、優れた人材で構成せねば万が一の事態に対応できないということもあり得る。いずれにしろ、社員集めは苦労するモノである。

(どうすればいい……どうすれば……)

「テゾーロ、何か困ってるなら手伝うわ」

「! ステラ……」

 テゾーロの隣に座り、コーヒーを置いてステラが言う。

 微笑みながら告げる彼女に、「すまない」と言いつつテゾーロは相談する。

「モックタウンでの一件で、サイファーポールに目を付けられた可能性が高いんだ」

「! そうね、新聞で大見出しで記載されたもの……」

 ステラは机の上に置いてあった新聞を手にする。

 一面には「闇の無法地帯に光が」として、テゾーロのモックタウンでの活躍が堂々と載っていた。これにより、政府が先日の事件を把握済みであることが容易に想定できる。

 それにゴルゴルの能力の情報が外部に漏れている可能性すらあり得るし、現実世界の週刊誌の記者みたいなのを送り込んで情報を抜き取ろうとする者もいずれ出る。

「情報をリークする奴らは絶対に来る……財団の為に何とかしたいんだ……」

「素性は把握できないと不安だものね……どういう人でどういう経歴の持ち主かさえわかれば不安は取り除けるじゃないかしら?」

 すると、ステラの何気ない一言を聞いたテゾーロはパンッと手を叩いて閃いた。

「……履歴書……裏取りすればいいんだ……!」

「え?」

 テゾーロ、答えを導き出す。


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