ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
尚、タイトルと内容は作者視点で決めておりますのでご了承ください。
テゾーロ財団が設立され、半年が経過した。
ウォーターセブン周辺の海域を中心に運輸業を展開したテゾーロの総資産額は、早くも100億ベリーに近づこうとしていた。造船業の独占をはじめとした数々の利権を得ていく彼の成長ぶりは止まることなく、モックタウンでの一件もあってギルド・テゾーロという名は次第に広まり色んな意味で強大化していった。
「そろそろ「副業」に手を付けなきゃな……」
パーカーとジーンズを着た、某クズニート長男を思わせる衣装を身にまとったテゾーロは、レストランでカルボナーラを食べながら呟く。
仕事が忙しくなりつつあるテゾーロは、この世界に革命をもたらすことと同時に世界一のエンターテイナーを目指している。一応時間を見つけてはタップダンスやブレイクダンスの練習をしてるが、それを人前で披露してはいない。
(どっかダンスコンテストとかやってねェのかねェ……)
代金を払い、レストランから出て街を歩くテゾーロ。
その時、ある広告が目に飛び込んだ。
「〝サン・ファルドダンス大会〟か……」
それはウォーターセブン周辺の海域にある「カーニバルの町」サン・ファルドで行われるというダンス大会。
サン・ファルドはウォーターセブンから近く、一日もあれば着くほどだ。とんぼ返りでも問題無いだろう。
「開催日は明後日か……」
そう呟き、テゾーロはポケットに入ってたメモ帳を取り出す。
一財団の長になってから、休む時間というのが格段に減ってきたテゾーロ。ダンス大会のある日の日程を確認しているのだ。
「……明日、明後日は入ってないな、行くか!」
*
2日後。
サン・ファルドにある大きな広場。ここに特設ステージが設けられ、多くの人々が見物しに来て賑わっていた。
《今回で30回目を迎えるサン・ファルドのダンス大会!! 今大会には素晴らしい
盛大な拍手が湧きあがり、ステージへ上るテゾーロ。
その堂々とした姿勢と真剣な眼差し、司会者は息を飲むが……。
(アレ? どうしてこうなった!!?)
当の本人はガチガチに緊張していた。
ダンス大会であるのは知っていたテゾーロだが、まさかここまで有名になるとは思っておらずプレッシャーを感じている。
さらに追い打ちをかけるかのごとく、何とテゾーロは運が悪いことに順番が一番最後だった。一番最後は、紅白歌合戦でいう大トリのようなモノ…失敗は絶対許されない
(どうやって踊れと!?)
世の中には「本番は練習のように、練習は本番のように」という言葉がある。この言葉の意味は「本番のように緊張感を持って練習を行い、本番では固くなり過ぎずリラックスする」ということ…つまり、「本番でガチガチに緊張し過ぎないよう、日頃の練習から緊張感を持って真剣に取り組むように」という訳だ。
しかし本番には得体の知れぬ「何か」があるのを忘れてはならない。現実世界の世界的なスポーツ大会・オリンピックにはアスリートを苦しめる「魔物」がいるように、いざというときに限ってはた迷惑で余計な存在が出てくるのだ。
本番が練習のようにうまくいったら、誰だって苦労しないものである。
《さァ、テゾーロさん!! 今のお気持ちは?》
「トリなので辛いです」
《そうですか、でも頑張って下さい!!》
(えェェェェェェェ!?)
ほとんど投げやりである対応に、目を白くし口をあんぐりと開けるテゾーロ。
そんなことをしている間に、音楽が流れる。
(あ~、もうこうなりゃノリだ!!!)
初めてのデビューがある意味悲惨なスタートだが、テゾーロは我慢して踊り出すのだった。
一方、ウォーターセブンではステラが街中のカフェで絶賛ティータイム中だった。
テゾーロが不在であるので少し寂しいが、たまには一人でゆっくり時間を過ごすのも悪くないということで行きつけの喫茶店で自由に過ごす。
「美味しい……」
ティータイムなど、いつ以来だろうか。
父のギャンブルが原因で売られて以来、テゾーロに助けられるまではずっとできなかったステラにとって、ティータイムは穏やかに寛げる数少ない時間だ。
「テゾーロは用事があってサン・ファルドへ向かったそうだけど……何かあるのかしら……?」
その時だった。
「号外~~!! 号外~~!!!」
「……?」
大通りで、人々が騒ぎ始めた。
手には新聞を携えており、どうやら一大ニュースが飛び込んだようだ。
「どうかしたんですか?」
「嬢ちゃん、知らねェのかい!? これ見なよ、海軍が大手柄だ!!」
そう言って男が見せたのは、「海軍本部の大手柄!! 〝海賊王〟ゴールド・ロジャー、ついに逮捕」という大きな記事だった。
「大変……!!」
世界で唯一……いや、人類史上初の偉業といっても過言ではない〝
何より驚くべきなのは、ロジャーが〝
一応元
もっとも、世界的な大ニュースであるのは変わらないが。
「テゾーロに早く知らせないと……!」
時代が、うねり始めようとしていた。