ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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遅れました、申し訳ありません。
しかし本編のステューシーの事はホント驚いた…。


第27話〝「世界経済新聞社社長」モルガンズ・後編〟

 こうして始まったテゾーロ財団とモルガンズの会談。

 話を切り出したのは、テゾーロだった。

「まずは先日語った「海の戦士ソラ」の書籍化についての確認をしましょうか」

 テゾーロの商談は、「海の戦士ソラ」の書籍化だ。

 世界経済新聞に載っているこの絵物語は、これまでの経緯でわかっている方も多いだろうが新聞にしか掲載していない(・・・・・・・・・・・・)のだ。

 テゾーロ自身、ソラの物語は見たことはあるが「新聞紙以外で掲載されている」のは一度も見たことが無い。例えて言えば、戦隊モノをTVでやっといてBlu-ray(ブルーレイ)及びDVD化しない…といったところだ。

「新聞紙にしか載ってないのでしょう? 筋金入りのファンなら第1話から読んでいる……だが新聞紙はいずれ捨てられ処分される。もう一度見たいと思う人は少なからずいると思いませんか?」

「確かに…世界中にファンがいるのは事実だ」

 (うで)を組んで頷くモルガンズ。

 彼自身も、そう思っているようだ。

「もっとも、新聞紙は亜麻仁油(あまにゆ)を使用している。無意識に読み終わったら捨てるので知ってる人は少ないですが……放置すると発火し火災の原因ともなるのですよ」

「え!?」

「何と、それは本当か!?」

 亜麻(アマ)という植物の種子から絞った乾性油である亜麻仁油は、油が乾燥する過程で空気中の酸素と結合し酸化反応を起こし、その際に微量の反応熱が発生する。

 丸めたり重ねたりして放置すると、酸化反応熱が蓄熱され、逃げ場を失った熱は次第に高温となり発火温度にまで達する危険性があるのだ。

 事実、テゾーロが転生する前に現世でも亜麻仁油の自然発火によって様々な火災が発生している。

「何なら実験しましょうか? 普通に重ねて長時間放置すればいいので」

「いや、結構」

 きっぱりと断るモルガンズ。

 それと共に、テゾーロに尋ねる。

「書籍化して売り出す際は、やはり新聞紙に記載されてない内容を載せるのもアリですかな?」

「!! ほう、さすがは社長。エンターテインメンツなアイデアを…」

 モルガンズの提案は、ソラの物語の絵コンテや原稿を付録として載せるというものだ。

 現実世界でも、大人気マンガ・有名マンガの原稿は非常に貴重であり、コレクターが20年以上かけて集めたというケースもある。筋金入りのファンは、きっと泣いて喜ぶだろう。

 するとここで、ステラが尋ねた。

「あの…よろしいのですか? 原稿は貴重なモノ……この世に1枚しかないのでは?」

「ご安心を! わが社は新聞社……複製など何枚でも刷れますぞ?」

「成程」

 さすがは大手新聞社、抜かりはないようだ。

「それでですが……あわよくば我々テゾーロ財団はあなた方世界経済新聞社のスポンサーにもなりたいのですが?」

「!」

 テゾーロはここで、「世界経済新聞社のスポンサーになる」という更なる交渉に出た。

 スポンサーとは、団体や個人などに広告やPRを目的に金銭を支出する出資者のことだ。スポンサー側にとっては世間に対し宣伝ができ、される側としては金銭などの援助が得られるので、決して悪い話ではない。

 モルガンズが政府とのつながりがあると推測したテゾーロは、テゾーロ財団が世界経済新聞社のスポンサーになる事で政府とのパイプを得ようというのだ。

「いいでしょう、あなたとのビジネスは面白そうだ!!」

「それはありがたい」

 モルガンズは快く応じた。

 どうやらうまい関係を築けそうだ。

「今回は実に有意義な時間でした。私の商談に合意してくれることを心から感謝致します」

「これから、よろしく頼みますぞ? Mr.テゾーロ」

 

 

           *

 

 

 同時刻、〝赤い土の大陸(レッドライン)〟。

 世界を一周するこの巨大な大陸にある世界政府の中枢・聖地マリージョアのパンゲア城の一室――「権力の間」にて、五人の老人が語り合っていた。

「テゾーロ財団か……ここ最近世間を賑わせる民間団体とやらが」

「随分と財を成してるようだ。今では数百億ベリーの資産を持ってるという情報がある」

「クザンやサカズキとも接触しておる……報告だと、一応我々に刃向かう立場ではないようだ」

 この五人の老人の正体は、世界政府の最高権力〝五老星〟…この世界の支配と秩序の為に、危険因子と判断したものを徹底的に排除している世界政府の頂点だ。

 そんな彼らが議論しているのは、テゾーロと彼が率いるテゾーロ財団だ。

「さて……どう思う?」

「このテゾーロ財団とやらは、今も成長中(・・・)だ。今後は更に莫大な財を成すだろう……その財は我々の資金源となってもらおう」

「諸国の代わりに〝天上金〟を払わせるのも悪くない」

「それはいい。そうすれば加盟国が減らずに済む」

 〝天上金〟とは、世界各国の一般市民が天竜人に対し財を納める「世界貴族への貢ぎ金」のことだ。この天上金はかなりの高額らしく、天上金によって一国が飢餓で滅んだ事例もあるため、五老星も悩んでいるのだ。

 五老星は天竜人の最高位であり、世界政府の最高権力者でもある。だが理知的な五老星と違って傍若無人な天竜人達は、五老星の苦労など意に介さず暴虐の限りを尽くしている。ゆえに大抵の天竜人は五老星の言葉に耳など貸さない。

 天竜人をどうにか宥め、それでいて国を滅ぼさずに天上金を納めるにはどうすればいいのか…そこで目を付けたのが、急激に財を成すテゾーロ財団だったのだ。

「うまく利用できれば政府における金の問題も解決できるやもしれん」

「とはいえ、相手は若者とて相当の切れ者……そう易々と頷くとも言えん」

「ならば、奴にとっても有益な話を持ってくれば良いだけの話だ。早めに手中に収めねば厄介事になる」

「うむ――ではテゾーロの件は、海軍に一任するとしよう。いずれ会談すると報告されているからな」

「よかろう、では次の話をしようか……」

 五老星は、今日も世界情勢の議論をし合う。


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