ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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お待たせいたしました。
中々忙しくて投稿できませんでした。やっと更新です。


第34話〝スライスという男〟

 さて、〝海賊王〟ゴール・D・ロジャーがローグタウンで処刑されて早3年。

 トムズワーカーズを傘下企業にし、海軍とのビジネスを成立させ、世界経済新聞社や強力な実業家と手を組んだテゾーロは、今では〝偉大なる航路(グランドライン)〟屈指の大実業家として成長していた。

 林業、運輸業、造船業……様々な事業を行ったテゾーロの総資産額は、一国の国家予算に匹敵するだとか島10個買えるとかという噂が飛び交うほどとなり、まさしく現代社会でいうロックフェラーやロスチャイルドと化している。

 そしてここは海軍本部。海軍への軍資金を提供しているテゾーロは、ある海兵の自室にいた。

「ああ……久しぶりのお茶は美味い……」

「煎餅食うか?」

「あ、どうも……」

 緑茶を啜るテゾーロに煎餅を分けたのは、あのガープだった。

実はテゾーロは、つい最近ガープと茶飲み友達になったのだ。実際は仕事をサボっているガープがたまたま本部内にいたテゾーロを見つけて「わしと煎餅食わんか!?」と脅し…ではなく交渉をしたのだが。

「……まァ、こうしてお呼びしてくれるのは感謝します。私も最近は新規事業で躍起になって働き詰めなんで、ちょっとした休みも欲しかったんです」

「もう少し気楽に生きた方がええぞ、働きすぎは身体に毒じゃからな」

「1年中仕事サボってそうな人に言われたくないんですけどね」

「ぶわっはっはっは!!! 言ってくれるわい!!!」

 豪快に笑い飛ばすガープ。

 テゾーロは呆れた笑みを浮かべながらも、湯飲みの中の茶を飲み干して急須に手を伸ばす。

「それで……本当に茶を飲んで煎餅食ってで終わらせるつもりですか? わざわざ鍵を閉めて(・・・・・)までおれと話し合いたいことがあるんでしょう?」

「!」

 目を細めるテゾーロに、ガープは苦笑いする。

 どうやらテゾーロの予想は的中しているようだ。

「お前に頼みがあってな……聞いてくれるか?」

「……このおれにできることなら」

 いつになく真剣なガープに、テゾーロも真剣な目で彼を見据える。

 数秒の沈黙の後…ガープは重い口を開いた。

「実はの……」

「……はい……」

「わしの子の教育係をやってくれんか!?」

「ズコーッ!!」

 物凄くどうでもいい内容に、盛大にズッコケるテゾーロ。

 今までのあの雰囲気は何だったんだろうか。

「ガ、ガープ中将…何でおれにそれを言うんですか。もっと別の人いるでしょうに…」

「まァ、いるっちゃあいるんじゃがな……せっかくじゃろ。いずれお前も子を授かるんじゃ、ええ機会だとは思わんか? 毎晩腰振る必要もあるがな!! ぶわっはっはっは!!!」

「いや、産むかどうかはステラと決めるんですけど!! 何勝手に自分で決めてんですか!! ってか発言が際どいんですよ!!」

 怒涛のツッコミを炸裂させるテゾーロ。

 対するガープは意にも介しておらず、いつも通りの大爆笑。

「いやァな、少し前――と言っても3年ほど前じゃが……〝南の海(サウスブルー)〟にルージュという知人の女がいてな。わしはその女の子を預かっとるんじゃ」

(……? もしかしてエースのことか……!?)

 〝南の海〟でルージュといえば、あのゴール・D・ロジャーの妻であり、白ひげ海賊団2番隊隊長の〝火拳のエース〟ことポートガス・D・エースの実母であるポートガス・D・ルージュだ。

 彼女は海賊王(ロジャー)の血筋を根絶やしにすべく世界中を捜索していた世界政府から我が子(エース)を守るために20ヶ月間も胎内に留め、それが原因(もと)で亡くなっている。

 今は故人のはずだが……テゾーロは念の為、ガープに訊いた。

「そのルージュさんは、今どちらに?」

「……」

 無言になるガープ。

 やはりルージュは亡くなっているらしく、テゾーロは小さな声で「そうですか…」と呟く。

「とはいえ、何故その話をおれに? センゴク大将やゼファー元大将、おつる中将に世話をさせるべきでは? もしもその子を強い海兵にしたいのならば尚更――」

「それはわしが絶対に許さん!! わしを祖父と想ってくれんじゃろう!!?」

「いやいやいや、何でそういう思考回路に……」

 ガープのぶっ飛んだ理由に呆れるテゾーロ。

 同僚がそんなに信用できないのか……これほどまでに自由ならば、道理で智将と称されしセンゴクが頭を悩ませるわけだ。

「……生憎ですが、おれも仕事というモノがあるんで。その件は保留としましょう」

テゾーロはそう言って席を立つ。

 正直に言うが、テゾーロにだって優先順位というモノがある。今は力を蓄える時…その為に様々な大物達と連携しているのだ。一国の王となり世界を変えようと考えているのだから尚更だ。わざわざガープの案件に付き合う必要は無いのだ。

「そろそろ仕事の時間ですので。これにて失礼致します」

 テゾーロはそう言って、ガープの部屋を後にする。

 しかしガープは、ニヤリと笑みを深めていた。

「フッフフ……まァいいわい、いつか会わせてやる。お前もいつかは親になるんじゃからな」

 

 

           *

 

 

 新世界のとある国。

 国内一の豪邸に住むその青年は、ある新聞を見て笑みを浮かべていた。

「ギルド・テゾーロ……面白そうな奴だな」

 ストライプのスーツを着用し、その上に黒のコートを羽織った青年の名は、スライス。新世界の資産家で、気にいった企業や個人に対しては過剰なまでの出資をしている大富豪だ。

 彼は様々な企業や実業家のスポンサーになっているが、富裕層特有の退屈の影響で暇人になっていた。そんな中、スライスはテゾーロに関する情報を得たのだ。

「ゴミ屋敷みてェな無法地帯のモックタウンをシメた上に、色んな連中と手を組んで財を成してるのか? へェ~、面白い奴だな……会ってみてェ」

 スライスは今まで色んな実業家を相手にしてきたが、自分よりも年下で尚且つたった数年で莫大な財と強力なコネを得た者はテゾーロが初めてだった。

 ギルド・テゾーロは……彼は一体何者なのか。何を成そうというのか。何を目指すのか。

 そんなことを想像し、スライスは口角を上げた。

「コルト!! 仕事だ!!」

 スライスがそう言うと、白の詰襟の上に白いコートを羽織った青年が現れた。彼の名はコルトといい、新世界で傭兵をしていた実力者だ。

 彼はその実力を買われ、スライスに勧誘されて以来彼と行動を共にしている。

「どうなさいましたか?」

「こいつを……ギルド・テゾーロを調べろ! こいつは面白い男だ、絶対ビジネスで成功するぜ!」

「スライス様、なぜそう言い切れるのです? 確かにこの男の成長ぶりは他の実業家や商人、企業と比べると遥かに凄まじいですが……」

「勘だよ、勘!! だがおれの勘が外れた事は無いぞ? お前も知っているはずだ」

 自信に満ちた笑みを見せるスライス。

 それを見たコルトは呆れた笑みを浮かべながらも、彼の命令に従った。

(いいねェ、テゾーロ財団…おれも乗らせてもらうぜ)

 新世界の大物も、ついにテゾーロに目を向けた。

 後にテゾーロとスライスの二人は、世界中の大富豪達の頂点として新世界に君臨し、新世界の大物達すら恐れる程の強大な存在となるのは、まだ先の話。




今回登場したオリキャラ…スライスとコルトの2人は、第3回アンケートにてyonkouさんが送ってくれたオリキャラを自分なりに設定をいじって登場させました。
yonkouさん、ありがとうございます。
皆さんが送ってくれたオリキャラはこういう風に登場させますので、お楽しみに。まだ期限は過ぎていないので、ドンドン送ってください。

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